繁縷

2011-03-17 09:12:49 | Weblog
一株の繁縷の花ののびのびと
石楠花は川音と和し色冴えて
杉の花黄を集めて風となり
一汁に目刺し噛み締め偲ぶ夜
芽生えたつ土筆の旅の風情かな
椿咲く遥かになりし父偲ぶ


煮凝

2011-01-20 12:48:52 | Weblog
煮凝の融けゆく湯気の朝餉かな
手を顔に思わず添える寒の入り
寒波来るくるくる大雪降らせ来る
白雲の形自在に寒の空
窓越しに人影無視し寒鴉

開戦記念日
開戦を記念する気の薄かりき
今は亡き竹馬の友の絵を飾り
天皇誕生日神ならぬ身を祈りつつ

ポインセチア
ポインセチア部屋一杯を赤く染め
一等と不意を突かれし年の市

枯萩
枯萩の白花零し軽く揺れ
冬の夜の露と別れし二重窓
手袋になお息掛ける寒さかな
お歳暮と誕生祝パジャマかな

冬構

2011-01-20 11:59:51 | Weblog
冬構
ベランダに音のはためく冬構
茎漬けの歯切れの音も新たなる
塩鮭の切り身の色の鮮やかさ
待ちかねし柚子風呂つかる身の軽さ
重さで温し軽さで温き冬衣
思えども進まぬ非力年用意
折角の日当たり惜しむ畳替え
耳を染め林檎生まれの白兎
土あれば葉を輝かせ石蕗の花
寄せ鍋や一人増えれば弾む味

松葉蟹
松葉蟹囲む笑顔の誕生日
坂道を風の連れ去る落葉かな
白菜の割られて淡き芯の色
赤い実を捧げて重し実千両

日向ぼこ
漫画手にしばし眠気の日向ぼこ
風の児の鏡に映す冬帽子
散り積もる公孫樹輝く黄色かな

枯蔓
枯蔓の線画となりて色を消し
暮れなずむ聖樹象る灯のよもる
山茶花の互いに競う花に酔う

寒菊
寒菊の小粒揃いし黄の眩し
流星を着ぶくれて追う深夜かな
手袋を忘れし悔いの道半ば


2010年省みて

2011-01-20 11:25:38 | Weblog
初日記
初日記掻きだす一字力こめ
東天にあまねく彩る発茜
初声やつがい晴れやか窓越しに
初鴉羽ばたく群の今日新た

冬の梅
一枝の日ごと一輪冬の梅
福引にメモ蝶選ぶ齢かな
白梅を背負いて千両鮮やかに

侘助
侘助の一輪の侘び静まれり
葉牡丹の渦巻く色は寒に耐え

水仙
水仙の気品支える直線美
雪に埋め雪より生まる冬林檎
目印を探し求めて寒鴉
大寒を越えし日射しの温かさ

春一番
春一番鉢を倒して二度三度
初雪の名残を残す薄氷

梅林
梅林の姿に見いるニュースかな
ベランダに春めく木々の芽は動き
裸木の梢春めく赤らみて

2009年冬

2011-01-20 11:06:13 | Weblog
冬衣
冬衣時代とともに軽くなり
手間だけで恵み丸ごと布団干し

冬の空
ひよどりの鋭き眼冬の空
誕生日こころ尽くしの師走かな
箒目にいろつき目立つ落葉掻き

冬至
暮れ合いの冬至ゆらゆら湯気の中
加湿器の音い融け込む寝息かな
透明になりゆく葛湯目を凝らし
言外に消息こめて賀状書く
冬の空塒に帰る影早し

蔦紅葉
幾たびかいろ変わりゆく蔦紅葉
冬晴れの時間を惜しむ忙しさ

木の葉落つ
木の葉落ち滑らかな肌輝かせ
熟れ蜜柑飛び来る小鳥楽しげに


2008年冬

2011-01-20 10:48:07 | Weblog

音枯れて色こもごもに冬木立
冬の雨ビルを洗いて白々と
蜜柑だと一樹指差す児童列
冴えわたる空の深さは冬の色
枯れて知る枯蔦強く広がりし


ぬか床に指先触れる蕪の白
白菜の抱きし芯は色温し
音もなく動き鈍らす冬の年の雨

年の暮
賀状書くカタカナの何時のまに
湯気たてて寝息うかがう静けさ
間に合うと加湿器選ぶ年の暮れ

平田弘集「松籟45句」/俳句文芸精鋭選集

2007-08-16 23:52:02 | Weblog
■俳句文芸精鋭選集
□天満書房
□平成19年8月6日発行
□定価3500円
□平田弘集「松籟45句」掲載(57~66頁)

●抄出7句
夕空に鋏光らせ豇豆摘む
初なりの南瓜切り取る重さかな
鳴子ゆれ実りの秋の穂の重さ
秋晴に無限の空の深み見る
落葉焚く煙の中に火の見ゆる
風騒ぎ色そのままに紅葉散る
白鳥を待つ人水辺見回りぬ

●鑑賞1句
風騒ぎ色そのままに紅葉散る
風がさわさわっと騒いだと思うと、紅葉が、今の今まで枝に付いていたままの鮮やかな色で散った。散るものの華やかなまでの美しさに魅了される。(高橋正子)

▼ご感想などを下記の<Comment>にお書き込みください。(高橋信之)