諸喝采

ふんわりと紫揺らす諸喝采
菜の花の実は高々と咲き続け
大木の幹にびっしり銀杏の芽

シクラメン

シクラメン清き一つの花残る
空に向け並木若葉ののびのびと
摘みゆきて一花となりしシクラメン

松の花

松の花伸び行く先に空高く
水玉の光で奏でる春の雨
石楠花の開ききったる明るさよ

蔦若葉

つややかに屋根を染めゆく蔦若葉
親子連れ躑躅指差し見詰め合う
藤の花うすむらさきの風となり

杉の花

重たげな杉の花割れ黄をこぼし
春天の銀杏並木に若葉満つ
春愁や生に反転なきことを

竹の秋

身を細め乾ききったる竹の秋
葉に譲る王座の花の影淡し
開ききる前の姿やチューリップ
はるばると黄砂の旅を雨後に見る

躑躅

茂みより躑躅の白の見え隠れ
蒲公英や路地裏に咲く黄の香り
軽々と落花の浮かぶにわか雨

いかなご

鮊子の春送られし釘煮かな
これよりは桜並木と空淡く
辛夷咲く駅前広場の心となり

春陰

春陰やゆったりとした歩調かな
間近にと巣箱を結ぶ高さかな
雨静か花の滴はゆるく舞い