1.前書き(&記事訂正)
先日、「新HSK5級筆記の模擬問題を解いてみたが、簡単すぎて受ける意味がなさそう」的な記事を書きました。
ところが、もう少し調べてみると、そうとばかりもいえないようでした。
(前の記事は訂正しました…。)
以下に、新HSK5級の試験内容についてもう少し詳しく紹介します。
・情報は、HSK日本事務局公式サイト
・本文中、新HSKの情報はすべて5級を指しています。(記載を省略している箇所があります)
2.新HSK5級の試験内容
新HSK5級は、以下のように「聴力」「閲読」「書写」の3部門に分かれています。
語学学習は、「聞く・話す・読む・書く」の4つの能力をバランスよく伸ばしていくことが理想ですが、新HSK5級はそのうちの、「聞く・読む・書く」に対応していますね。
また、新HSKではペーパーテストの他に「会話試験」が実施されることになりました。これを加えるとちょうど「聞く・話す・読む・書く」すべてを測ることができます。
一方で、従来のHSKは、「聴力」「語法」「閲読」「総合填空」の4部門各100点満点の試験でしたが、聴力以外の3つは「読む」の能力に大きく偏っています。(語法はすべての能力に影響するし、総合填空の漢字問題は「書く」の能力とも言えますが。)
つまり、新HSKの形式は『聞く、読む、書く、(話す)」をバランス良く測る試験にしたかった』のだと見て取れます。
<新HSK5級の試験内容> (HSK日本事務局公式サイトより)
第一部分 第二部分 第三部分 合計 満点 試験時間
聴力 20問 25問 - 45問 100点 約30分
閲読 15問 10問 20問 45問 100点 40分
書写 8問 2問 - 10問 100点 40分
3.新HSK5級のレベル等
(1)客観問題(120点分)は簡単だが、他に80点分の記述式問題がある
こちらで公開されている模擬問題は、53問でした。すべて選択式の客観問題です。
「えらく半端な問題数だなー」などと思っていたのですが、実はこの模擬問題は、
閲読の45問(100点)+書写の8問(20点)を抽出した問題だったようです。
つまり前の記事では、筆記試験200点分のうち120点分しか見ずに「簡単すぎる」と断じてしまったわけです。
残りの80点分は、80字程度の作文を2つ書くことを要求される(※)とのこと。これではちょっと「簡単すぎる」とは言えません。
(※)書写試験・第二部分の作文問題
第一題はいくつかの中国語単語が用意され、その単語を使って80文字程度の中国語文を作る。
第二題は一枚の図片が用意されている。その図片の内容を80字程度の中国語文を作って説明する。
(2)新HSK5級=HSK初中等6級?
こちらの公式サイトによると、 「旧HSK初中等に相当」と記載されています。つまり、旧HSK3級~8級相当ということになるので、合格レベルはだいたい旧HSK5~6級レベルを想定しているのでしょう。
#なお同サイトによると、語彙量は2500語程度とのことです。これはHSK基本語彙「甲」「乙」合計の約3000字よりも少ない語彙数です。さらに、「中国語の新聞・雑誌を読んだり、中国語のテレビや映画を鑑賞することができ、中国語を用いて比較的整ったスピーチを行うことができる。」レベル、とも記載されていますが、2500語程度でそこまでのレベルに達するものなのでしょうか???
(3)合格に要する得点率は60%
新HSK5級の級認定は、300満点中180点(=60%)の取得を要するとのこと。
これは旧HSK6級における得点率(263点/400点=66%)にちょっと満たない程度の得点率です。
(4)聴力は旧HSKと同程度か
上記(2)(3)から考えると、聴力も旧HSK初中等と同レベルの難易度と予想できます。
以上から、旧HSK初中等と新HSK5級の対応を大胆に予測してみます。
(あくまでも予想です。)
旧HSK 新HSK5級
5級 = 180点未満 ⇒不合格
6級 = 180点(60点平均)~ ⇒合格(低レベル)
7級 = 210点(70点平均)~ ⇒合格(中レベル)
8級 = 240点(80点平均)~ ⇒合格(高レベル)
仮に上記のような対応だとすると、HSK7級の私のレベルでは、8割以上得点しての「高レベル合格」は難しい。
つまり、「簡単すぎて受ける価値がない」というのはちょっと言いすぎだった、というわけです。
短絡的な考えで極端な記事を書いてしまったことをお詫びします。
(おまけ:点数予想)
今の私のレベルであれば、こんな感じになると思われます。
聴力67点 ⇒ 旧HSKの直近2回(60、74)の平均点
閲読90点 ⇒ 模擬試験の結果から。
書写66点 ⇒ 第一部分18点(9割。模擬試験の結果から)、第二部分48点(6割程度と推測)
合計223点⇒74%。上記のレベル対応だと、中レベル合格。
(おまけのおまけ:受験結果)
上の記事を書いてから9カ月後の2010年11月14日に受けた5級の結果です。(結果記事)
聴力80点 ⇒ 上記点数予想+13点
閲読80点 ⇒ 上記点数予想△10点
書写82点 ⇒ 上記点数予想+16点
合計242点⇒81%。上記のレベル対応だと、高レベル合格。
3分野それぞれで評価するんじゃなくて合計点でのみ評価するので、やっぱり甘いは甘いのではないかと思います(日本人なら閲読でゴッソリ点が取れてしまいますし)。
語彙も5000語→2500語に落とすのも、結構無理があるような気も・・・
新3級=旧基礎(1~3級)
新4級=旧初等(3~5級)
新5級=旧中等(6~8級)
新6級=旧高等(9~11級)
…というレベル分けの方が自然に思えるんですけどね。
「CEF」なるものが、どれほど学術的裏付けがある基準なのかがよくわからないのですが、CEFに合わせることありきで設計された試験のように思えました。
(お気づきだと思いますが、級が1つ上がるごとに、必要語彙が約2倍になっています。)
合計180点で合格という基準は、おっしゃるように閲読で稼げる(聴力で稼げない)日本人に有利に働くと思います。
教育部が今年6月、新HSKと旧HSKの学部留学の基準について発表しました。
ttp://www.hsk.org.cn/news/news20100716_c.html
ついでですがCEFの上の級はもっとレベルが高いような気がします。
情報ありがとうございます。
新HSKが始まって随分経ってからの発表だったんですね。
ブログ記事に書いたのは全くの推測です。今年中に1度受けてみてレベルを実感してみるつもりです。
色んな記事でものすごく綿密に考察されててとても参考になります。
一つ気になったのですが、新HSK5級の書写のセクションの配点って公開されているのですか?公式ページを眺めてみたものの閃かなかったもので・・。ソースを教えていただけるとすごく助かります。
採点基準がいまいちわからないまま80点は大きいなぁ、と。
はじめまして、ようこそ!
全くの不覚なのですが、配点のソースは忘れてしまいました。
記事を書いた当時に、なんらかの情報を参照したことは確かです。記事中に「・情報は、HSK日本事務局公式サイト」と記載しているので、恐らくそちらを参照して書いたのだと思います。
記事を書いた当時、HSK日本事務局のサイトはリニューアル前だったのですが、現在はリニューアル前の情報は消えてしまっています。
今、HSK日本事務局と、汉办と、北京語言大学のそれぞれのサイトで探してみましたが、問題数のみで、配点までは記載されていませんね。
・・・というわけで、配点については参考程度に見ていただければと思います。
6級も受けられたみたいですが、やはり5級と6級の差は結構ありますか??
すみませんが新HSKの6級を受けたことはないのです。もし誤解を招くような箇所があれば教えてください。(旧HSKで6級を取得したことはあります。)
で、新HSK6級のレベルですが、旧HSKの高等よりは格段に易しいと思います。旧HSKで8級なら合格圏、7級レベルでも聴力のレベルが低くなければ、十分可能性はあるのではないでしょうか。
あと新HSK6級のリスニングは、旧HSK高級のように方言まじり、CCTVの内容を録音したようなやつがなく、会話スピードもゆっくり目で標準語だったので、とても簡単だと思いました。
正直、新HSKがこんな易しくていいのか、っていう批判も結構上がってるらしいですね。漢弁に知り合いがいるのですが、そこらへんは今後調節するとのことです。
ではー。
新HSK6級の情報ありがとうございます。
合格ラインが低いこともさることながら、問題そのものも旧HSK高等よりも簡単になっているようですね。語彙も5000語レベルとのことだし。
6級のもう一段上の級ができると、旧HSK高等を目標にしていた方にちょうどいいくらいなのでしょう。