辞書引く日々

辞書が好きなのだ。辞書を引くのだ。

言海と大言海

2005年08月25日 | 
言海大言海はともに有名な国語辞典であり、いまさら説明をするほどのことは何もないようである。

明治時代に大槻文彦が官命を受けて作りはじめ、この時代を代表する高級辞典となりたるのが言海で、昭和のはじめにこれを増強して編んだのが大言海ということになっている。

がいして辞書ファンには言海のファンが多いようで、これは一つには漱石などの有名人が愛用していたという事情があるのかもしれぬし、大言海は、言海と比べたときに増してある部分が存外いいかげんだとされるところ(語源などはそのさいたるものなり)が、敬遠される理由なのかもしれない。

私も辞書ファンには違いないが、辞書は正確であるべしという崇高な理想がすぐ目の前で実現しなくても一向に落胆しない。したがって、かなり怪しげな辞書でも、「怪しいなあ」とつぶやきながら、使うのを常としていて、まずこれは検索エンジンで知りたいことを調べたときに「ほんまかいな」といいながら、その場の用がふたがればまずは満足するというのに似ている。

そんなわけだから、大言海のここが怪しいとかあそこが怪しいとかいうのを耳にしても、これを米櫃(こめびつ)にわいた虫のごとくに憎む気にはならぬし、ぎゃくに私があまり愛着を感じない有名な辞典の誤りをあげつらうのを聞いても、べつだんたいしてうれしくは思わないのである。

私にとって大事なのは、ようは楽しめるかどうか、ということの一点である。そして、楽しみの最大のものが用例にあることに間違いがない。となると、言海はほとんど用例というものが載っていないのに比べて、大言海は出典を示した用例をたいへん多く載せているから、やはり大言海のほうが楽しめるということになる。

ちなみに、現在手軽に手に入る大言海と呼ばれている辞書は、新編というやつで、見出語を新仮名に改めたものである。これなんぞも旧来の言海ファンには我慢ならぬところなのかもしれないが、便利なことには間違いがない。大いに支持するところである。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ヽヾとゝゞは違うのか? | トップ | 秋の空 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

」カテゴリの最新記事