さらさらきらきら

薩摩半島南端、指宿の自然と生活

ツグミ

2013-02-15 11:03:55 | 


冬の間、公園の芝生広場には必ずと言っていいほどツグミがいる。ふつう、小鳥というものは木々の枝葉の間で動き回っているから見ずらいものだが、ツグミは開けた地面でじっとしているので観察しやすい。小鳥としてはわりと大柄の方で色合いも濃くなかなかきれいだ。そして仕草もかわいらしい。



目の上の白線、首の白、胸から脇腹のうろこ模様などが目立つ。足を広げてじっと仁王立ちしている姿も、こんな格好をするのはまずこの鳥だけだろう。そっと近付くと首を回してまん丸い目でじっとこちらをうかがっている。



背中はかなり赤みがかった茶色の複雑な模様でなかなかしゃれている。しかし冬枯れの中では枯草に溶け込んでしまう。腹側のうろこ模様も同様に保護色なのだろう。ツグミ自身も判っているようで、芝の養生のため囲まれて青々している区画があるが、そこにいることはまずない。



別に何かがあったわけでもないのに突然走り出す。普段は小鳥らしく両足をそろえてピョンピョン跳ぶのだが、急ぐときは我々と同じように足を交互に出して走る。体勢を低く保ち上下動することなくなかなかの速さだ。ただ両足の左右の間隔がだいぶ開いているのでがに股走りになってしまう。それでも安定感があるのは足がかなり大きくがっしりしているからだろう。



そうして何十歩か走ると急に立ち止まって気を付けの姿勢になる。胸を張って、両手を体に付けてまっすぐ下ろし思いっきり背伸びしている。こんなに反り返ることができるのは尾で後ろを支えているからか。しばらく微動だにしない。いや首だけそっと動かし周りを見ている。背伸びしているのはできるだけ遠くまで見渡すためだろう。

この小走りと突然の静止。それが昔の子供の遊びである「だるまさんが転んだ」にそっくりだと言われている。あれは鬼に気付かれないようにしながら逃げていく遊びだが、この鳥も同じ目的なのだろう。こんな開けたところにいるのだから、のろのろ動いていてはすぐに外敵に見つかってしまう。さっと動いてじっと静止。そうして捕食者の目をくらましているのだろう。さてこんな方法を考え出したのは人間の子供とツグミ以外にほかにいるだろうか。



何か食べ物を見つけたようだ。こういう時は小鳥らしく両足をそろえて短く跳んで至近距離に近付き狙いを定める。



ぐっとくちばしを地面の中まで突っ込む。こうして地中のミミズなどを食べているようだ。またよく松林の下などにもいるが木の実草の実も食べるそうだ。

冬はたいてい地面に一羽でいる。たまに他の鳥が近付いたりすると、キュキュとかクックッとかいった声で短く鋭く鳴いてさっと逃げ、低く飛んで少し離れた所に舞い降りる。徹底した孤立主義者だ。いや孤独が好きというのでなく地上で群れていたら外敵に見つかりやすいということなのだろう。実際秋に渡ってくるときなど大群で、そしてしばらくは一緒に木の上で生活しているそうだ。残念ながらそういうのを見た覚えがないのは今はそれほど数は多くないということだろうか。昔はカスミ網で大量に捕獲され食用に流通もされていた。ムクドリは相変わらず大群を見かけるので環境悪化のための減少ではなさそうだ。ムクドリが狙われなかったのはあまりおいしくはないということか。ツグミは美味しいよと言っていた人がいたが、どうして知っているのか、それを聞くと次に何を言えばよいか戸惑いそうで口をつぐんでしまった。