さらさらきらきら

薩摩半島南端、指宿の自然と生活

政局安定化の予感

2012-11-30 11:14:27 | 世の中のこと

晩秋の海を臨む(本文とは関係ありません)。

もうじき総選挙ということになった。と言っても喜んでいるのは野党政治家たちぐらいで、多くの国民はどこにも誰にも期待できず、いいかげんにしてくれといった気持ちだと思う。中でももしかしたらと少しは希望のあった第3極が、ここにきて離合集散の繰り返しでますます国民を失望させている。

ところで私は、どの政党も選挙に立つ限り誰を首相にするか、そして国全体をどのように統治するつもりか明確にするべきだと思っている。脱原発だとか福祉向上だとか、一つかそこらのことだけ主張するのは何かの利権団体などと同じで公党としては無責任であり、そんな人気取りが衆愚政治に陥らせるのだ。そう考えると多党乱立であっても選択の余地はほとんどない。単純に言えば誰に総理大臣になってもらいたいか、具体的には可能性のある3人、野田さん、安倍さん、石原さんの3択問題でしかない。それならば私は野田さんを選ぶ。

野田さんは前任者たちがめちゃくちゃをした後、また魑魅魍魎といった党内事情の中でいくつか重要なことを成し遂げている。決断力、実行力は抜きん出ているようだし、こうした状況において仕事を投げ出さなかったのはかつての安倍首相や福田首相に比べて遥かにたくましいということだろう。今度の解散劇における駆け引きは見ごたえ十分だったし、安倍さんとの党首討論では貫禄の違いを見せ付けていた。また最近民主党を追い出された鳩山さんが「弱き者、小さき者の声に耳を傾ける政治」など負け惜しみを言っていたが、鳩山さんは上から目線で聞いてやるというだけで、それは安倍さんも石原さんも同様だ。「弱き者、小さき者」の気持ちを理解できるのは全くの庶民の出である野田さんだけだろう。

安倍さんは党首討論で不意打ちを食らわされて、上ずったような声で見当外れのことをわめくばかりで、これでは一国の宰相として檜舞台に出すには恥ずかしいと思わずにいられなかった。基本的にお坊ちゃまで、まあ鳩山さんほどではないがやはり異質な人間の気がする。

石原さんは論外だ。いつか聞いたことのあるような日本賛美と反米反シナといった威勢のいいことを言うけれども、具体的にどのような外交を推し進めていくつもりかさっぱり判らない。確かに多くの日本人も他国になめられっぱなしで口惜しいのは石原さんと同じ気持ちだが、しかしだからといって中国と戦争をしたいとは思っていないし米国と離れてやっていけるとも思っていない。それより今の日本の最大の課題は無人島のことなどでなく国力の長期衰退化であり、この人口減少と急激な高齢化の中でどのように経済を立て直すかということのはずだが、それについてどんな具体策があるのか。そもそも石原さんは長年の都知事在任中、東京都の振興や都民の生活向上にどのくらいの業績を残しただろうか。いや本当に都知事として仕事をしたのか。本来、統治というのは24時間365日全身全霊をささげなければできるものではなく、尖閣問題に関わる暇などあったはずがないのだ。結局ほとんど実務はお役人に任せっきりではなかったか。それなのに官僚体制打破が第一だと言うのも矛盾している。

そもそも都庁に週2日かそこらしか出勤しなかったような人に激務の国の宰相が務まるはずがない。まあ本人もそのあたりのことが判ってか首相になる気はないと言っている。では誰が候補かというと平沼さんだそうだ。え、平沼さんって誰?と、ほとんどの国民は思うだろう。だいたい平沼さん本人が国民の前で総理候補として抱負を述べたことがあっただろうか。それに石原さんは黒幕になると言いたいのだろうか。こんな無責任で訳の判らない連中に国を託すなどとてもできない。

維新の会の本来のリーダーである橋下さんは大阪のことより日本の方が大事と、すべてを振り切って自ら先頭に立つべきであった。それを逆の選択をしてしまったのだから一般国民が失望するのは当然だろう。それどころか肝心の時に逃げたという印象が強く、結局口舌の徒でしかなくリーダーの器ではなかったと思わざるを得ない。

選挙で最も大事なのはイメージだ。民主党が前回の選挙で大勝できたのはマニフェストなどでなく、虚像ではあってもイメージだった。日本維新の会は理想に燃え日本の根本的改革を目指す清新溌剌とした集団といったばら色のイメージを何よりも大切にし維持し続けなければならなかった。そうして自身は純潔を保ち、その上で実際の選挙においては柔軟に他党と政策協定しできる限り幅広く連携して多数を狙う。しかし橋下さんのしたことは全く逆で、とても相容れるはずのない昭和の政治遺産のような老兵たちを引き入れ党のイメージを台無しにし、一方双子か兄弟のような人たちとは喧嘩するといったものであった。

これでもう維新ブームは終わったと思う。まあ話題には事欠かないから飯の種を追い求めるマスコミなどに世間は踊らされて少なからぬ当選者は出るかもしれない。しかしそのほとんどは雑兵だ。それでもずば抜けた大将が統率すればそれなりに働きどころを得られるだろうが、維新の会は大将たちが逃げ回ってしまっているのだ。今までの何とかチルドレンたちにはともかく親がいて後ろ盾になっていたが、今度はすがるべき親のいない孤児の群れだ。これでは国会の中で働くことなどできるはずはなく税金泥棒で終わるのは目に見えている。

さて何はさておき、今の情勢では安倍さんが首相になるのは確実だろう。そして安倍政権は案外長続きするような気がする。それは彼に実力があるということでなく、状況がそうさせるのだ。もう首相がくるくる代わるのには国全体がうんざりしている。どうせ誰になってもたいして期待もできないのなら、無難なところでともかく安定して欲しいと願っている。

そこで安倍さんだが、政策面でかなり過激なことを口走っているが、前近代的な党内事情や本人の実力の問題もあり実現性には乏しいだろう。TPPについて参加するべきとの声も大きい一方、最近我が家に入ってきた自民党議員のビラには断固阻止と大書してあった。交渉には参加する、世界に向かって堂々と自己主張するなど当然のことと思うが、そんなことが選挙直近になっても党内で統一できていないのだ。これでは大胆な金融政策や憲法改正などごり押しできるわけがない。それでも過去に懲りて党内の足の引っ張り合いは表向き減るだろう。そして何よりこの政権は、今の政治家の中ではピカ1という評判の石破さんが裏で支えている。安倍さんと石破さんが喧嘩別れしない限り(それは安倍さんが石破さんの話をよく聞くということだが)結局何ごとも無難な線で粛々と国政が遂行されていくような気がする。

野党も、第3極はてんでんばらばらでとても政権を揺さぶる勢力にはなり得そうに無い。民主党はこの3年間の大失態があるから以前のように何でも反対とは言えないだろう。そもそも野田さんたちの考えは基本的に自民党とたいして変りはない。それにもう政権交代を迫る力も当分ないだろうから案外協力的かもしれない。国民も前回の政権交代のおかげでずいぶん勉強した。長年の自民党独裁政治がいかにでたらめなことをしてきたか判ったし、またその後始末に民主党が全く対応できないことも判った。政治家とは嘘つきか馬鹿か、ともかくろくでもない連中であることを思い知らされた。そうした虚脱感の蔓延と政治空白の中で、今度の復古的政権はぐずぐずと続いていくのではないだろうか。もちろんそれではこの日本の長期衰退に歯止めが掛けられるわけはない。しかし一方、とんでもない方へ迷走したり突然沈没するということもなさそうだ。それが今のこの国にとっては一番いいことかもしれない。

さて民主党は激減するだろうが、切り捨てられるのはだいたい贅肉で、おかげで痩せても筋肉質になれるわけだ。野田さんはまともな政党に生まれ変わるための大手術に着手した。本来なら前の選挙で惨敗した自民党がそれをしなければならなかったのだが、彼らはその絶好の機会を逃して前近代的な田舎政党のままとどまっている。これからしばらく安倍政権が命脈を保って平穏が続く中、生まれ変わった民主党が着々と有能な人材を集めて強力になっていく。そして何年か後、捲土重来を果たしてやっと日本の政治の近代化が実現することに期待したい。