さらさらきらきら

薩摩半島南端、指宿の自然と生活

どうするどうする総選挙

2012-12-14 14:49:28 | 世の中のこと

洋上はるか薩摩硫黄島(本文とは関係ありません)。

総選挙の投票日が目前に迫ったが、どうにも盛り上がっていないように感じる。前2回は新時代を予感させるような強い追い風が吹いて、結局は幻想でしかなかったが日本が良くなるような期待感があった。今回も初めのうちはそれ以上の風が吹きそうになったが、あっという間に乱気流になって消えてしまった。今はすべて逆風となって古い時代に吹き戻らされようとしている。

マスコミや評論家などは相も変わらず、日本の未来がかかっている、国民の命運を決める大事な選挙だ、各党の政策をじっくり読み比べろ、候補者をしっかり見定めろとか、偉そうなことを言っている。しかし私は逆に聞きたい。そういうあなた方はいったいどこを選ぶのか、誰に投票するのか。能天気なことばかり言っていないで具体的に示して欲しい。本当にこの国を託せるような政党や政治家がどこにいるのか教えて欲しい。

私もそれなりにいろいろ調べてみた。まずこの国の最大の課題は経済だろうが、しかしこの問題は一般国民には判断しようがないとしか思えなかった。なにしろ数多くの専門家の言うことが全く食い違っているのだ。それにもし何か正しい方策があれば世界のどこかで成功しているはずだ。しかし実際は米国でも欧州でもどこでもうまく行っていない。おそらく経済というのはどんな学者でも本当のことは判らず、過去を振り返ってどうのこうの言うのが関の山なのではないか。ということは現実の政治では、たぶん良いであろうと思われることを恐る恐るやってみるしかなく、その結果を慎重に見極めて次の手を考える、といった試行錯誤の繰り返ししかない。そういうことを正直に言う政治家がいたら私は投票する。しかしどの政党も、さもすべて判っているかのように、自分たちこそ経済を立て直せると見栄を張るばかりだ。これは嘘つきなのか、それとも本当にそう信じている愚か者なのか。まあ本当のことを言ったら当選できないという選挙事情のためなのだろうが、ともかくそんな調子で突っ走られたら危なくて仕方ない。

次に多くの同胞を不幸のどん底に落とし込んだ原発問題だが、こちらは科学技術が根底なのだから経済などよりずっと冷静に議論し判断できるはずなのだ。しかし多くの政治家は反原発感情を煽るばかりで、また踏み込んだ話になると判断放棄や責任逃れだけで、全くまともな議論にはなっていない。

まず即時「原発ゼロ」を訴えている政党がある。しかし反原発感情、いや反体制感情を煽っているだけで具体的道筋は示せていない。そもそもこうした連中は弱者の味方だとか言っているだけで、国全体をどのように成り立たせていくのか考えもなく、自ら政権を取るつもりもない。だから何でも勝手なことを言える。エネルギー体制など国の根幹であり、性急にいじくったら国の経済はめちゃくちゃになって誰も彼も共倒れになってしまうはずなのだが。

さて多くの政党は脱原発を主張しているが、それは現実的に10年とか20年先のこととしている。しかしこの主張も冷静に考えるとおかしい。もし原発にそれほどの危険性があるのならそんな悠長なことを言っていられないはずだ。10年先とか言うのなら、その10年間はまず大惨事など起こらず何とか持ちこたえられるだろうという前提でなければおかしい。それなら10年大丈夫だったら続いてもう10年も大丈夫だろうという話になっても良さそうだ。それにその10年の間に技術も進み災害対策もずっとしっかりしたものにできるはずだ。どんどん安全になっていくのに何でやめる必要があるのか。福島の事故において、米国は日本人には知らされなかった真実が伝えられたため正しく判断して欧米人を東京から避難させた。実際にはそこまでの大惨事にならずに済んだわけだが、それは有り得ないほどの偶然が重なった極めつけの幸運でしかなかったと言われている。しかしともかくそれが判った今、その偶然を必然にする方策を立てることができるわけだ。

また主力政党は、原子力規制委員会が安全と言ったら再稼動を容認すると言っている。これは責任放棄もはなはだしい。もし原子力規制委員会が本当の専門家集団だったら、彼らはどのような危険があるか、その度合いがどの程度なのかを示すだけで、安全であるなど保障するわけがない。すべてのことに100%安全はありえない。世の中は必要性と危険性の間のどこに線を引くかだ。その線引きは科学者や技術者ではできない。もちろん一般国民にもできない。そもそも正解などないのだ。それでも少しでも良い選択をするためにすべての情報を公開し議論し叡智を集め、その上で最後は統治者が自ら重い責任を持って決断するしかない。

ところで使用済み核燃料の処理ができないから原発は駄目だという議論もある。しかし今さらそんなことを言っても、もう膨大な量の使用済み核燃料が溜まってしまっているのだ。本来こうしたことは最初から判っていたのだから日本は原発に手を出すべきではなかったというのは正論だろう。しかし歴史は変えられない。国民を騙してこんな目にあわせてしまった長期独裁政権の自民党は罰せられるべきだろうが、ともかく我々はこれから莫大な国家予算をつぎ込んでも何とかして核廃棄物の処理方法を考え出さなければならないのだ。そしてそれができた暁には、何と原子炉を止めなければならない大きな理由の一つがなくなったことになる。

以上は原発擁護というのでなく各政党の非論理性を突いてみたのだが、どうにもまともな主張をしている政党はなさそうだ。しかしともかくその中から選ばなければならない。私は今の住所に引っ越してきて初めての総選挙だが、気が付いてみたらここは徳田たけしさんの地盤だった。あの日本の医療体制に大変革をもたらした徳洲会の御曹司だ。それではと期待を持ってその主張を読んだのだが、これはまた失望どころではなかった。まず第一項目がTPP断固反対なのだ。「行き過ぎたグローバル化であり、外交敗北そのもの」と説明書きがある。しかしグローバル化に行き過ぎはないだろう。各国の都合で様々な条件や例外が設けられるのは仕方ないが、基本的には徹底していくべきだ。それは各国の経済発展のためでありそして世界平和につながるというのは世界の共通認識のはずだ。またこれから交渉しようというのにその前から「外交敗北」と決め付けるのはどういうことだろう。この後の主張を読んでも、どうにも狭い地域に捉われ過去の利権を維持継続しようといった後ろ向きの発想ばかりだ。どこにも未来を切り開くような気概は感じられない。彼は明日の自民党を担う有力な若手議員のはずだから、これでは自民党の将来も思いやられる。

さて民主党はあれだけの失政をしたのだから今度は退場するというのは民主主義の原則である。しかし振り返ってみれば自民党は長期間にわたってもっともっと失政を繰り返してきたのだ。そして懲りることなくその当事者の一人を擁立している。「日本を、取り戻す」という標語は過去に戻ろうと言っているわけでどこにも反省はなく希望も感じられない。今何より大事なのは、そして国民が期待しているのは「新しい日本を作る」ということのはずだ。そういうことを主張しているというのでは第3極があるが、こちらはスタート前から国民の期待を裏切ってしまった。まともなのはみんなの党くらいで、私も彼らはなかなかいいことを言っていると思う。しかしこの3年間、それなりの議員がいたのに国政の場で何か活躍したことがあっただろうか。第3極の中心にもなれなかったし、きっとリーダーの資質か何かに問題があるのだろう。翻って民主党は数々の失政を謝罪し、その元になった人たちの多くを追い出して生まれ変わろうとしている。その期待に私はもう一度賭けてみようと思う。