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西宮砲台の内部公開

2010-09-26 | 身辺雑記帳
西宮市の御前浜にある国史跡「西宮砲台」が公開される
という話を伝え聞き、本日昼過ぎに現地へ赴いた。
ここは私の芦屋時代の旧宅(とは云っても五階建の賃貸
マンションだが)からも遠からず、御前浜周辺は当時の
お気に入りの散歩コースとなっていた。
通常は金網越しに眺めるばかりの、旧幕時代の遺物は、
立ち入りが許可されていない以上、いずれは満たすべき
好奇心の対象群から除かざるを得なかったもの。
それが関東での八年余の歳月を隔てて、内部公開される
仕儀となったのだから、脚を運ばない訳にはゆかぬ。
天気は頗る良好。空は秋めいて鰯雲が一面に浮かぶ。
こころは自ずと逸った。阪神・香櫨園駅を出ると、嘗て
知ったる、否、知り尽くしたルートをひたすら往く。
二本の脚の動きは機会仕掛けの人形のように単調である。

やがて海景が展けた。それは永く仕舞いおかれた屏風絵
の如くしずしずと開陳され、故意にミュートされた動画
を再生するように黙然として私を迎えたが、それは予期
していた通りのもので、私を最も安堵させる流儀だった。
現地には近隣住民を中心に百人以上の人々が集っていた。
このようなささやかなイベントに何たる健気さ。
周囲ではボランティアの方が砲台の歴史に関する講話を
戦前の青空教室然と行っており、そこから幾らか離れて、
砲台の内部へ通ずる扉が四角い口を黒々と開けていた。
外光に慣れた眼には内部空間は暗澹として気味が悪い。
私はカメラを手に扉を潜り抜け、瞳を凝らした。
第一印象は祭壇も何もかも取り去った中世ヨーロッパの
朽ちた礼拝所の遺構といったところか・・・
生きている間にこの扉が開くことはもう無いかもしれぬ
という思いも手伝い、半ば憑かれたようにシャッターを
切った。折しも砲台の分厚い壁越しに幼い子供らの笑う
無邪気な聲が響き渡って仄暗い虚空を幾許か満たした。





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