goo blog サービス終了のお知らせ 

そよかぜノート

読書と詩の記録

あかね色の風

2007年07月22日 | book 文庫
あさのあつこ
幻冬舎文庫 495円
2007年4月 初版  『あかね色の風』1994年作品  『ラブレター』1998年作品

 『あかね色の風』 2007.7.15

遠子は小学校6年生。彼女の家に、今度転校してくる千絵があいさつにきた。でも、「仲良くしてね」という千絵の祖母の言葉に何も応えない。陸上部を止めて、真反対の歴史研究部に入った遠子。千絵も同じクラブに入ってきた。複雑な家庭の事情を持ちながらも、屈託なく話す千絵。そして犬の散歩をしていた遠は、リュックを背負った千絵に出会う。化石が好きで、一人でも自分の好きなことに心を傾ける千絵に、遠子は少しずつ惹かれていく。

巧もそうだったが、どうしてそんなに冷めた感じでいられるのだろう。結果的には、関わり合い影響しあう。でも、それは自分から意識してそうなったのではない、あくまでも自分はそこらにいる人間とはちがう。そう言って人を見下している。そんな人間を優しく見守る豪や千絵がいじらしく思える。確かに遠子自身もクラブのことで傷つき道をさまよっている。そんな迷いの中で悶々としている人間こそ、身近なのかもしれない。むしろ、千絵のように自分の周りには不幸だらけなのに、それを苦にするような表情も言葉も出すことなく、笑顔で遠子に接し、いつのまにか人の心に安らぎを与える。そんな人間の方が希なのかもしれない。
化石を求めて山の中を歩く。ワクワクするその先にあるもの。同じ空を見て、同じ気持ちでいられる二人、それは友情とか親友とかではなく、まるでもう一人の自分が姿をかえて今そこにいるような、ぴったり重なった気持ち。
「あかね色」ってどんな色だろう。夕焼けではなく朝だと千絵は言う。夕焼けだと終わりがくるけど、朝焼けだと今から始まるから。あのワクワク感はあのときに生まれたものだけど、同時にあのときに始まった。そしてあのときの風を今もときどき感じることができる。
ムカデだけはいやだったな。山に行くのが怖くなったよ。

 『ラブ・レター』 2007.7.16

愛美が書こうとしている直人への手紙。

ラブレター書きたくなる気持ち、よくわかる。だれかに手紙をだしたくなる気持ち、よくわかるなあ。愛とか、好きとかそんな言葉で表したくないものがあの時代にあった気がするなあ。でも直人のように素直に受け取る子はいないよなあ。書こうという気持ちはだれにでもあった。でも、多くの子は渡さなかった。自分の宝箱にしまって、いつか忘れていった。文字にしなくても心の中で書いた手紙も多いことだろうなあ。それを現実のものにして渡してしまったら、多くはきっと幻滅してしまうんだ。
あのあと愛美と直人はどうなったろう。きっといつもの日常があるのだろう。


最新の画像もっと見る