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この島で生まれた息子はなんと中学生。ほぼ育児日記です。

『ピアニストの・・・』(4)音楽とIQ・数学能力・言語能力

2019-06-19 | 読書メモ
覚え書き(4)
 
この本に書かれている
音楽のトレーニングにより向上した能力と
他の能力との関係についての説明は、
半分納得、半分疑問、という感じでした。

(オマケ程度のトピックスだから
 適当なのかもしれないけど・・・)

でも、話題としては面白いです。
ざっくりまとめてみました。


★音楽とIQ

6歳児を3つのグループに分け、
それぞれピアノ、声楽、演劇のレッスンを
1年間受けさせると、
対照群のレッスンを受けなかった子どもに比べ、
ピアノと声楽のレッスンを受けた子は
IQテストの向上が著しかった。
(演劇レッスンを受けた子は、
 他人との協調性が特に向上した。)

そこから、音楽のレッスンは、
音楽能力だけでなく、他の認知機能も向上する、
と研究者は結論する。
(理由は解明されていない。)


・・・ネタ的には面白いけど、
え?説明、根拠、これだけ?
と思ってしまいました。

ならば、協調性に問題があるクラスに
演劇レッスンを受けさせたら改善するの?とか、
IQの向上はどの程度まで持続するの?とか、
歌・楽器・演劇だけではなく、
スポーツやアウトドアをやらせるグループとも比較したら?
(もしかしたらスポーツの方が
IQ、協調性ともに向上しちゃうかもよ?)とか、
いろいろ知りたくなってしまう。



★音楽家と数学能力

数学と音楽能力の関係は、
関連があるとしたものと、無いとしたものが半々。
必ずしも関連性があるとは言えない。

と言いながらも、
わざわざカラヤンやアインシュタインの例を出し、
いかにも「関連あるんじゃない?」風に
書いているところを見ると、著者は
「めぼしい実験結果は無いけど、関連があると信じたい!
と思ってるんだろうなー(笑)


これを読んで思い出したのは、
ピアノの先生の言葉。

理系の子は練習の仕方
(プロセスの組み立て方)が違う、
と言ってらした。

一つの曲を仕上げるためにこなすべき課題は
変わらない。
しかし、曲を仕上げるまでの
ルート(練習方法)が理系の子、文系の子で違う。
(性格によっても違う)
得意、不得意も違う。

いずれにせよ、
練習の中で何らかの壁にはぶち当たる。
それを超えるために
それぞれにウンウン苦しむものなので、
どれが良いとか悪いとかいう問題では無いが、
ただ違う、ということだ。

・・・という話だったような。
(記憶がおぼろげなのだけれど)



また、(理系文系に関わらず)
頭の良い人は合理的に効率よく練習するので、
上達が早い、とも仰っていました。

旧帝大に上手いアマチュア音楽家が多いのは、
恵まれた家庭環境に育った人が多いからだと
言われているけれど、それだけではなく、
勉強の仕方と楽器の練習の仕方に
共通するものがあるのかもしれないな。

とすると、つまり、
音楽家と数学能力に関係があるのではなく、
音楽家として優れた人の中には頭の良い人も多く、
さらに、その中には
文系的思考に長けたタイプもいれば
数学的思考に長けたタイプもいる
ってことなんじゃないのかなあ。

さあ、どうなんでしょう。



★音楽能力と言語能力

音楽も言語も、ピッチ、リズム、文法がある。
脳の言語野は、音楽を処理するためにも働く。
音楽家は、言語のニュアンスを聴き取る能力も高い
音楽家は、一般の人よりも、
脳幹(耳から入った音の信号を最初に処理する脳の部位)が
言語のピッチの上がり下がりを正確に捉え続ける。

自閉症の中には、言葉の語尾が上がっているのに、
脳幹は語尾が下がっているように
音を処理してしまうことがある。
(疑問文、肯定文が聞き分けられない)
ピッチの聞き分けは、言語に含まれる意味を
正確に捉えるのに不可欠である。

感情を伝達しようとする声に対しては、
音楽家の脳はより敏感に反応する。
音楽家は、他人の話し声に現われる
感情の変化に気付くのが得意である。
雑音の中から注意を向けた音だけを聞き取る能力も高い

新しい言語の習得も早い。
(実験結果ではなく、伝聞の範囲)

これらの実験をした教授は、
音楽教育は、言語能力や
他人の感情を理解する能力を発達させるとして、
学校教育から音楽教育を減らす動きに反対している。



ここに書いてあるようなことが気になり、
以前、アップしたことがありました。


そのリンク先に
「聞き分け耳」のことが書かれていますが、
まさにそういうことが
ここでも言われています。



この本の記述(実験した教授の主張)には
賛同できるところもあるのですが、
でも、大きな疑問も残ります。


音楽家は「音」に敏感で
言語を真似るのも上手、
というのには納得できるけれど、
それは、他人の感情を察知する能力と
イコールにはならないと思うのです。

「察するのが苦手」な障害を考えれば分かりやすい。
「音の高低」が正確に聞き取れていても、
その先の処理に問題があり
他人の感情が読めない人もいるはず。

視覚に問題がなく、
むしろ写真記憶が出来るなど
視覚優位の優れた記憶力とがあったとしても
(インプットに問題は無い)
人の表情から感情を的確に察知できるとは限らないし
(処理に問題あり)
それを受けて適切な社会的振る舞いをするのは困難
(アウトプット、ハードル高し)
・・・というのと同じ。


「察するのが苦手」「対人関係に問題がある」
という特徴を持つ障害の一群には
音楽的に飛び抜けて優れた人(音に敏感過ぎる人)
もいるという、矛盾する事象もある。

これをどう説明する?

この本には、こうしたことに関しては
何の説明もありません。
興味あるんだけどなあ。


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