社長の写真撮影

１０時過ぎ帰宅。
会社を出たのは７時半なのだが、外で食事をして帰るとどうしてもこんな時間になってしまう。

今日の私の一番の仕事は社長の写真撮影。
といっても実際に撮ったのは私の部下なのだが。

じつは私の働いている会社では毎年全社員の顔写真を載せた社員アルバムを作っている。
社員数７００人程度の会社で、しかも出版・印刷部門を持っているからこそ出来ることだが、素晴らしいことだと思う。
先週の水曜日と木曜日に本社の社員の写真撮影をした。
社長にも声をかけなければと思いつつ、社長は忙しいしかなり怖い。
そもそも社長室の電話番号が公開されていないので、直接社長室に行って話をしなくてはならない。
機嫌が悪いと怒鳴られるのがオチだ。
まだ入社して２カ月も経っていないが、そういうことは既に理解している。
ビビっているうちに今日になってしまった。

で、今朝のこと。
会社の入り口で、暗証番号を入力しようとしていると、内側から自動ドアが開いた。
親切な人が開けてくれたのだった。
顔を見たら、なんと社長。
こういうシチュエーションはこれで２度目だ。
あはようございますと挨拶をしたら、どうも機嫌が良さそうだったので、思いきって切り出した。
「写真アルバムを作っているのですが、写真を撮らせていただけますか」
すると社長曰く、
「福山雅治の写真で代用しておけ」
はあ？
どうやらジョークらしい。
へらへらと笑いながら、
「まあ、そう仰らず、お願いします」
「了解」
そういって社長はエレベーターに乗っていった。

部内での朝礼が終わり、９時過ぎに社長室へ。
あらかじめ撮影を担当する部下と、写真を撮るセッティングをしておいた。
おそるおそるお願いすると、「今からか？」と言われたが、ここで引っ込むと面倒くさいことになるので「はい、お願いします」
クールビズで上着なしでノータイだった社長、「準備するから少し待て」
待つことしばし、ダブルのスーツに身を固めた社長が現れた。
写真は６枚ほど撮り、気に入ったものを選んで貰った。
撮影が終わって社長曰く、
「福山雅治の写真だったら会社も変わるだろうな」
私はつい、「ええ、そうですねえ」

社長、くるりと振り向いて、「おまえの腹の中が見えたな」
え？
「ふつう、そんなことないですよ、と云うもんだろうが！」
しまった・・・
根が正直なもので。

ともあれ、こうして先週からの懸案事項が片付いた。
やっと肩の荷がおりた気分だ。

明日は、私の歓迎会という名の宴会。
社長も出席するらしい。
新参者としては社長に酌のひとつもせねばなるまい。
きょうのことで弄られそうな予感がする。