仙丈亭日乘

あやしうこそ物狂ほしけれ

2010 10/17 仲道郁代 『ショパン 鍵盤のミステリー』 第4回「祖国への遺言」最終回

2010-10-18 09:02:50 | クラシックはいかが
昨年7月26日以來、兵庫縣立藝術文化センターで行はれて來た 仲道郁代さん の『ショパン鍵盤のミステリー』シリーズも、今囘でつひに最終囘を迎へた。
この全4囘のシリーズは、ピアノ演奏と映像、そして仲道さんの解説で、ショパンの生涯を浮き彫りにしようといふ試み。
これまでの3囘、演奏も仲道さんの解説もともに素晴らしく、私のやうな普段ショパンを殆ど聽かずショパンの人生についても無知な者にとつてさへ、とても樂しい經驗だつた。

10月17日はショパンの命日なのだとか。
命日に最終囘を迎へるなんて、よく考へられてゐる。
さすがは仲道さん!

恆例のクイズでわかつたこと。
1.英國の淑女の皆さんは、ショパンの演奏を「水のやうだ」と表現した。
2.ショパンが最期を迎へた家に移る際、「すみれの花」を飾つて欲しいと依頼したこと。すみれの花はショパンのお氣にいりだつた。

演奏では、「幻想ポロネーズ」と「ピアノソナタ第3番」が特に良かつた。
私の好きな曲なので、今囘これが聽けただけでも倖せ。
どちらの曲にも好きなフレーズがあつて、ふだんはアルゲリッチの演奏で樂しんでゐる。
今囘、實演で接すると、當然のこととはいへ、仲道さんの演奏はアルゲリッチの演奏とはまつたく違つてゐた。
特にピアノソナタについては、すり込みとでも云はうか、アルゲリッチの演奏に慣れてゐる私には、その私の好きなフレーズが少し物足りなく感じられた。
幻想ポロネーズは、冒頭の和音に續いて綺麗な音が上昇していくところ、ここがもうたまらない。
ピアノの音の美しさに、背中に電流が奔るかのやうな感動を覺えた。
これは實演でないと經驗出來ないのではないだらうか。


今囘、改めて思つたこと。
仲道さんの演奏は、左手が強い。
曲を支へる低音が強いので、骨組のしつかりした安定した演奏になつてゐるやうに思ふ。
これは今囘のショパンよりも、むしろベートーヴェンの演奏で美點になつてゐた。
ショパンの場合は、それが美點であるところもあるし、逆にはたらく部分もあつたやうに思へた。
もしモーツァルトを彈くとすれば、この特徴は細心の注意をはらつてコントロールする必要があるやうに思ふ。

もうひとつ、仲道さんのピアノの音について。
これは言葉では表現しにくいのだが、音が擴がるといふか、響きが擴散するといふか・・・
音の粒が凝集して丸くころがるやうなイメージではなく、空間に茫洋と擴がる感じ。
著名ピアニストの音に例へると、アシュケナージの音に似てゐるやうな氣がする。
ホロヴィッツやグルダのコロコロ系、グールドのやうなパラパラ系の音ではないし、と云つてリヒテルのやうな凝集系の音でもない。
この仲道さんの音の特徴をうまく活かすのは、どちらかと云へばショパンよりもシューマン、モーツァルトよりもベートーヴェンなのではないかと思つた。


全4囘にわたるこのシリーズ、ショパンの魅力をあらためて教へて頂いた。
仲道さん、どうもありがたう。
願はくば、仲道さんのベートーヴェンやシューマンをもつと聽きたい。
あと、ブラームスも。
これからも兵庫藝文センターで演奏してくださいまし。






<過去の記事>

2009 7/26 仲道郁代 『ショパン 鍵盤のミステリー』 第1囘「天才誕生」

2010 3/6 仲道郁代 『ショパン 鍵盤のミステリー』 第2回「鍵盤の白と黒」

2010 6/26 仲道郁代 『ショパン 鍵盤のミステリー』 第3回「ノアンの風」






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