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仙丈亭日乘

あやしうこそ物狂ほしけれ

読書録 2025年4月下旬

2025-04-30 20:20:00 | 読書録(備忘)

4月25日読了
『剣客商売 番外編 ないしょないしょ』 池波正太郎
1988年9月刊行

 再読。ぼくの好きな長篇。
 お福という女の、16歳から36歳で亡くなるまでの物語。とは云え、物語の中心は16歳から20歳までの四年あまり。女は強い。
 以下、長文ご免。

 お福16歳。
 越後・新発田城下の剣術道場で、主人の神谷弥十郎に犯されてしまう。下男の五平が使いに出されるたびに陵辱され、お福は憎しみのあまり、弥十郎の味噌汁に鼠の糞を刻み入れる。
 その神谷弥十郎が弓で射られたうえに斬殺された。その日の朝、弥十郎は、自分が生きて戻らなければお福と分けるようにと云って十五両を五平に預けていた。弥十郎の死顔は穏やかだった。
 弥十郎と同じ一刀流の道場をかまえていた松永市九郎が出奔した。松永は御前試合で弥十郎に完膚なきまでに叩きのめされたことがあったために、その怨みを晴らしたらしい。
 お福の弥十郎への憎悪は次第に消えてゆき、弥十郎を殺した松永への憎しみが湧きあがるのだった。

 五平とお福は、五平の甥・久助を頼って江戸に向かった。
 久助はお福に、奉公口を見つけておいてくれた。三浦平四郎という隠居の下女働きである。三浦平四郎は68歳、根岸流の手裏剣の名手で、お福は平四郎から手裏剣を学ぶのだった。「このことはないしょ、ないしょだぞ」と平四郎。

 お福18歳。
 主人の三浦平四郎は、お福を軍鶏鍋屋「五鉄」や橋場の料亭「不二楼」へ連れて行ってくれる。
 幸せに過ごしているお福だったが、平四郎の使いで外出した際に、両国橋であの憎っくき松永市九郎を見かけたのだった。
 秋山小兵衛が三浦平四郎を訪ねてくる。このとき小兵衛は53歳、鐘ヶ淵の絵師の家を買い、四谷の道場は閉めて、年内には鐘ヶ淵に移り住むつもりとのこと。
 小兵衛に教えられた蕎麦屋「花駒屋」で碁をうつことにした平四郎だったが、その相手が松永市九郎だった。
 碁の勝負にこだわる松永市九郎が三浦平四郎を斬殺。
 
 お福は五平の古くからの知人・倉田屋半七の下女奉公をすることなった。
 その矢先、今度は五平が松永市九郎に斬殺されてしまった。
 倉田屋半七は水茶屋と出合茶屋を経営している顔の広い男で五平より六つ歳上というから67歳。五平から松永市九郎を探し出すように頼まれていた。
 お福は、茶屋に顔を出さずに住居のほうで半七の世話をするだけで良い。
 茶屋と住居との間をつなぐ渡り廊下をやってくるのは、富五郎という無口な男だけ。

 お福20歳。安永二年(1773年)、倉田屋半七に引き取られて、はや二年。
 新発田を出てこの四年の間に、神谷弥十郎、三浦平四郎、五平と、3人もが松永市九郎の兇刃に倒れた。
 秋山小兵衛は55歳。「ずいぶん年齢が違う女を女房にもらったらしい」と宗哲が云っているが、おはるを女房にしたのは小兵衛60歳おはる20歳のことだったはず。まさか、おはるに手をつけたのは、おはる15歳の時か?しかも数え歳だよな。満14歳はさすがにあかんやろ!
 
 倉田屋半七のもとに、松永市九郎が江戸に戻っているとの情報が入った。
その矢先に、倉田屋半七は心臓発作で亡くなってしまう。お福は半七の遺言を受けて、倉田屋のおかみとなった。
 裏庭で二年ぶりに手裏剣の稽古を始めるお福。「たとえ一本でもあいつに当たれば、殺されたってかまわない」。
  
 上野山下で松永市九郎と浪人二人を見かけたお福は、彼らを尾行した。蕎麦屋に入り、衝立の陰から通路向こうの三人に目を凝らしていたお福の肩先をそっと押さえたのは秋山小兵衛。
 小兵衛は蕎麦屋を出て行く三人を尾行して住処を突き止めた。
 その翌日の早朝、小兵衛は弥七と傘徳に三人の住居を見張らせ、お福に協力、お福は手裏剣を松永市九郎の左目と背中に的中させ、見事に仇討ちを果たすのだった。

 お福はそののち富五郎と夫婦になり、倉田屋の女将として商いに精を出すのだが、6年後に富五郎が急死してしまう。お福の周りの男たちが五人も死んだことで、お福は自分は周りの男たちを不幸にする因縁をもっているのだろうかと悩むのだった。

 さらにその9年後、お福35歳、呉服屋「白木屋」の主人・新兵衛の後添えとなる。内儀としての働きも間然するところなく順調な生活をおくっていたのだが…
 そのあくる年、寛政元年(1789年)の師走に、お福は風邪をこじらせて逝ってしまった。36歳であった。
 駆けつけてきた秋山小兵衛は70歳になっている。小兵衛に向かって、「これで安心をいたしました」というお福。新兵衛を不幸にする前に自分が先に逝けることを喜ぶのだった。

両眼をしずかに閉じたお福の口から、
「みなさん、お先に…」
と、つぶやきが洩れた。 
 


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