仙丈亭日乘

あやしうこそ物狂ほしけれ

山行7:南アルプス・白峰三山 (1976年8月)

2004-04-04 17:27:44 | 想ひ出の山
場所 :南アルプス
時期 :1976年8月
ワンポイント :初めての個人山行
コース : 廣河原 大樺澤 八本齒のコル 北岳 (3192mH) 北岳稜線小屋 (泊)~ 間ノ岳 (3189mH) 農鳥小屋 (泊)~ 農鳥岳 (3026mH) 大門澤 奈良田

<同行者>マツコ

ほんの2週間ほど前、山岳部の夏山合宿の最中に三俣小屋近くのテントサイトで市立千葉高校のテントを發見して、
世間は狹いなあと思つてゐたら、なんのなんの、もつと世間は狹かつた。
中學の同級生で市立千葉高校に入學したマツコが、何とその山岳部に入部してゐたのだ。
お互ひに吃驚である。
早速二人で山に行くことにした。
日本第二の高峰北岳を含む白峰三山である。

<1日目>

甲府からタクシーに乘つて、未明の廣河原へ。
新宿から甲府までの列車内では殆ど眠れなかつたので少々睡眠不足氣味である。
ヘッドランプを着けて、大樺澤沿ひの道を歩く。
明るくなつてきたところで、輕い朝食。
うう、それにしても眠い。
標高2000メートルを過ぎると徐々に登りがきつくなつてくる。
右手にバットレスを眺めながら、どんどん高度を上げて行くが、この急登が睡眠不足にこたへる。
八本齒のコルに着いた時には、たうとうたまらず、マツコに斷つてひと眠り。
快晴の空のもとでの晝寢もまた格別で、目覺めた時には氣分爽快であつた。
ずゐぶん眠つたつもりだつたが、聞くと、30分程だつたさうな。不思議なものだ。
稜線小屋への分岐にザックを置いて、頂上までピストン。
頂上からの展望は素晴らしかつた。
甲斐駒・仙丈、鳳凰三山、富士山、行く手には間ノ岳のとてつもなく大きな山容が目前に迫つて見えてゐる。
仙丈の姿はいつ見ても穩やかで、いつかあの山に登らうという氣にさせられる。
眺望を滿喫したあとは、分岐でザックを背負ひ、北岳稜線小屋へ。

<2日目>

相變らずの快晴である。
朝日を背中に浴びながら、間ノ岳をのんびりと登つて行く。
まさにジョン・デンバーの音樂を彷彿とさせる世界であつた。
間ノ岳山頂からは、北岳、農鳥岳、そして鹽見岳のハーフドームのやうな山容がよく見えた。
けふはまつたく急ぐ必要がない。
農鳥小屋には10時頃には着いてゐたが、宿泊の申込をする。
小屋のあるじには、こんなに早く宿泊申込を受けるのは初めてだと云はれてしまつた。
遊ぶ時間はたつぷりとあるので、水の補給がてら、東側の斜面を水場まで下る。
旬の季節には少し後れてゐるが、途中のお花畑は評判に違はず綺麗であつた。
夕方、とても美しいゆふやけであつた。
ゆふやけをバックにしてケルンのシルエットの寫眞を撮影する。

<3日目>

昨日のゆふやけにも拘らず、朝からガスつてゐる。
西農鳥まで登り、農鳥へ向かふところで、ガスのために道を見失つてしまつた。
2つのピークを卷くやうに道がつけられているのだが、
2つ目のピークを卷くあたりで、實際には左手に登るところをそのまま直進してしまつたらしい。
小さな澤状の地形を過ぎたあたりで、まつたく踏み跡らしきものがなくなつてしまつた。
無理せずにもと來たところを引き返さうとするが、もともと岩のこすられた跡を辿つてきたやうなものなので、
なかなか同じところまで引き返すこともできなかつた。
30分ほどうろうろして、あせりだした頃に、やうやく見覺えのある岩を見つけた。
この岩の上のはうにペンキの○印を發見、本來のルートに戻る。
わずか小一時間ほどのことであつたが、視界が效かないとこんなこともあるのだと云ふことが良くわかつた。
農鳥岳の頂上にある大町桂月の碑の前で記念寫眞を撮影し、そうそうに下山する。
農鳥から下山するに從ひ、だんだんとガスが薄くなつてくる。
農鳥から廣河内岳への稜線は二重山稜のやうなところがあつて、ガスの濃い時には氣を付けないといけない。
大門澤の下降點からは標高差1000メートルを一氣に駈け下る。
大門澤小屋はもう下界である。
きのふ農鳥小屋に泊つたのは正解だつた。おかげで貴重な經驗をすることもできたし・・・
早川沿ひの林道に出る手前近くで、登山道から澤に降りて躰を洗ひ、Tシャツに着替へる。
あとは奈良田のバス停までのんびりと歩くだけである。

その後、マツコは、
「俺は山より海の方がむいているみたいだ」
と年賀状に書いて寄越して來た。
當時流行りだしてゐたサーファーになつたらしい。






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