『 螺鈿迷宮 』 （上・下） 海堂 尊

『 螺鈿迷宮 』（上・下）　海堂 尊

お薦め度 ： ☆☆☆＋α
２００９年３月１０日讀了


『チーム・バチスタの栄光』、『 ナイチンゲールの沈黙 』の舞臺となつた地方都市・櫻宮。
その櫻宮にある、「終末期醫療モデル多面展開」の候補、醫療法人碧翠院櫻宮病院が、この物語の舞臺となつてゐる。

麻雀に負けたお蔭で、この病院に潛入する破目になつた醫學生の天馬大吉が主人公。
彼の名前はじつにお目出たいのに、何故か「不幸のスパイラル」に見舞はれる。
今囘も、ボランティアに應募しただけなのに、いつの間にか入院することになつてしまふ。

その當事者が看護婦（看護師といふのだつたつけ）の姫宮。
前作『 ナイチンゲールの沈黙 』で白鳥が、自分の部下の「氷姫」を櫻宮病院に潛り込ませてゐると話してゐたので、おそらくこの姫宮が「氷姫」なのだらうと見當がつく。
しかし、イメージが・・・
とにかく、この姫宮、ドジなのである。
彼女のドジさ加減には笑はせられた。
なにせ、彼女の看護を受けると１週間以内に亡くなつてしまふといふのだから、ただ事ではない。
はたしてラッキー・ボーイの大吉くんは無事にこの病院から出られるのであらうか？

櫻宮病院に咲いた３つの花。
亡くなつた葵、冷靜な小百合、情熱的なすみれ。
葵はともかくとしても、小百合、すみれともにキャラクタが明確で良かつた。
特にすみれ。
最後はどうやら生き延びたらしいので、ぜひ、また登場させて欲しい。

白鳥・田口コンビ、白鳥・姫宮コンビ、大吉・葉子コンビ。
これからの活躍を期待したい。

最後に。
この物語を支へてゐるもののひとつに、櫻宮病院の「建築」があげられる。
「かたつむり」のやうな構造で、上へ行くに從ひ「死」に近づく。
この建築物が、この物語のおどろおどろしさを釀し出してゐる。
ラストでこの建物が炎上するシーンは、きつと映像化すると美しいだらう。

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