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政治・経済に関する雑記

なるべく独自の視点で、簡潔・公平に書きたいと思っています。

消費税の軽減税率

2013-12-26 01:15:10 | 税制・補助金
アベノミクスのインフレ政策には賛成なので不満もなく久しく書き込みしなかったが、久しぶりに書きたいのは消費税の軽減税率のことである。公明党あたりが推しているし世論も賛成多数だが、こんなバカな政策はない。飢える人も家がない人も(本人が望まない限り)いるはずのない現代の日本で、何が必需品で何がぜいたく品なかど、誰も決めることはできない。そんなことを政府に決めて貰いたいというのは奴隷根性だろう。

低所得者が困るというなら民主党が推した給付付き税額控除や負の所得税のほうがずっとクリアで公平だし強力だ。軽減税率を言い出したら各業界がゴリ押しするのは目に見えている。新聞もすでに「自分たちには軽減税率を」とキャンペーンしている。では雑誌や書籍はどうなのか。漫画、競馬新聞、週刊○衆はどうなるのか?

税率を決める権限を持つことになる政治家や官僚にとっては、内心嬉しい話だろうが、国民にとってよいことは何もない。何が社会的に有用かを決めるのは政府ではなく国民・消費者であるべきだ。

多くの国が軽減税率を導入している現状を見ると、日本も同じ轍を踏むのかもしれないが、よくよく考えてほしい。軽減税率という発想は根本からおかしい。

消費税の問題点

2012-08-11 22:59:36 | 税制・補助金
消費税の増税がほぼ決まったようだが、今の消費税制度には問題があり、税率が上がれば問題も拡大する。

第一は年間売上1000万円以下の事業者が免税になっていることだ。その関係で設立2年目までの会社の多くも免税になる。こんな脱税の記事もあるが氷山の一角だろう。会社を分立させて消費税を「節税」するのはよく聞く話で、多くの場合は違法とも言えない。

第二は住居の家賃や医療費などが非課税になっていることだ。非課税の病院経営者が、消費税を払わないばかりか仕入れにかかった消費税まで補填せよとの裁判を起こしたらしい。長期的には非課税業種は得をしているので強欲な話だが、たしかに消費税増税時には、非課税業種は短期的に苦しくなる面がある(課税商品の仕入は値上がりするが自分の非課税商品は値上げしにくいので)。家主の中にはむしろ「我々にも消費税を課税してほしい」との声すらある。この問題の一番よい解決策は、非課税業種をなくし、すべての商品・サービスに一律の消費税をかけることだ。

軽減税率の話も出ているが、非課税業種と同様、利権と不公正と不効率の元になるからやめたほうがよい。今の世の中では何がぜいたく品か決めることが難しい。質素な家に住んでいい車に乗る人もいれば、車を持たずにいい家に住む人もいる。そんなところで何がぜいたくか線引きをしようとしたら必ず陳情の嵐になり、官僚機構が利権を得て肥大化し、国全体が貧しくなる。

それに、非課税業種や軽減税率を導入すると、国民の消費行動に政治が介入することになる。家賃が非課税で自宅購入が課税なら家を持たないことが推奨されてしまうし、食品が非課税なら飽食を奨励することになる。弱者への再配分をするならば、相続税や負の所得税など、もっと直接的で強力な方法によるべきだ。

医療費や葬儀代にまで課税するのか、といった議論もあるが、税金というのは(最近流行の言葉で言えば)社会貢献の最たるものであり、社会の成立に必要な「絆」である。罰金ではない。医療費や葬儀代の一部を税として社会に還元することを拒否する理由はないはずだ。

それにしても今回の増税法案は、消費税増税だけの食い逃げになったのでほとんど改悪だと思う。無駄遣いする子供を叱らないで、またお金を与えたようなものだ。「社会保障・税一体改革関連法」も成立したことになっているが言葉だけではないか。納税者番号制度(マイナンバー制)の導入、相続税増税、超高額所得への累進課税強化、社会保障の抜本的改革などはみな先送りになった。なにより納税者番号制と相続税強化は早期に成立させてほしい。

なぜ所得税増税なのか

2011-09-28 00:24:28 | 税制・補助金
野田政権は所得税と法人税を増税しようとしているが、いぶかしいことである。前の管政権が2011年度税制改正で消費税、相続税、環境税を上げようとしていたことに比べると、ほとんど逆方向だ。なぜ時代に逆らうような方向に進もうとするのかわからない。

震災復興のための一時的な増税だから消費税より所得税のほうがよいなどと言うが意味不明だ。一時的に所得税を上げてまた下げ、消費税にバトンタッチするくらいなら、最初から消費税を上げればよいではないか。相続税を一時的に上げるとその期間に死亡した人にとって不公平とも言うが、どの道財政に余裕はないのだから相続税も恒久的に上げねばならない。

所得税や法人税は、現在働いている若い人や稼いでいる会社にとって重く、今の日本の問題を拡大してしまう種類の税金だ。これからはもっと、資産を持つこと、資源を使うことに徴税の重点を移していくべきだろう。

電気料金を値上げせよ

2011-04-22 00:58:13 | 税制・補助金
電気料金を値上げすべきだ。この政策はなぜか非常に人気がないが、もともと電気やガソリンには環境税をかける必要がある。化石燃料の消費と二酸化炭素の排出は社会的に大きなコストだからだ。さらに今は電気が足りないという理由が加わった。巨額の復興費用も必要になる。だから電気料金を値上げすべきだ。

反対が多い一因は、電気料金の値上げ分が東京電力の懐に入るように思えるからではないか。当然そういうことではなく、値上げ分は復興税として被災地の復興に使うのである。そこを明確にすればもっと賛成が増えるのではないか。

輸出戻し税で大企業が儲けているのか

2010-06-23 09:56:58 | 税制・補助金
消費税と海外取引の関係を調べてみたら、インターネットでは輸出戻し税がなかなかホットに議論されていることを知った。そこでまずはこれについて考えてみた。

輸出戻し税で大企業が儲かりすぎているという議論が圧倒的だ。だが冷静な議論に限ると輸出戻し税は必要だという意見も多い。本当はどうなのか。

私が理解したところでは、輸出戻し税で儲けられるのは、自国の消費税率(付加価値税)が相手国のそれより高い場合に限られる。消費税の低い日本の輸出企業・大企業は、輸出戻し税で儲けているというより、その程度では足りなくてむしろ損をしている

具体例で考えよう。税別価格60で仕入れた商品を税別価格100で日本国内に販売した場合、その会社は40×5%=2の消費税を払う。これに対して、60で仕入れた商品を100で輸出すると、仕入にかかる60×5%=3の消費税が戻ってくるが、輸出先で100×5%=5の消費税を払うので、結局、差し引き2の消費税を払うことになる。国内販売でも輸出でも、支払う消費税は同額だ。

だが、これは輸出先の消費税が日本と同じ5%だった場合である。普通外国ではもっと高く、たとえば15%くらいあるだろう。そうすると合計の消費税は-3+100×15%=12となり、輸出での負担は国内販売の6倍となる。

(輸出先での消費税は輸出企業ではなく外国の輸入業者が払うのだから輸出企業の負担ではないとの異論があるかもしれないが、そうではない。消費税を実際に納税するのがお店であるからといって、消費者は消費税を負担していないとはいえないのと同じである。取引にかかる税を当事者のどちらが負担しているか論じても無意味だ。)

輸出先の国内で同様の商品を仕入れて販売する外国企業はどうか。その企業が税別価格60で仕入れた商品を税別価格100で国内販売すると、40×15%=6の消費税を払うことになるだろう。これと比べても日本からの輸出には2倍の消費税が課されている。

最後にその国の外国企業が同じ製品を日本に輸出することを考える。輸出戻し税が60×15%=9還付され、日本で支払う消費税が100×5%=5なので、差し引き4の消費税を貰えるだろう。これなら本当に儲かっている!(だから実際には、消費税が高い国では輸出戻し税を全額は認めていないこともある。)

以上は輸出先の消費税課税制度が日本と似ている前提での話だが、いずれにせよ、輸出戻し税によって輸出企業が儲かるのは、自国の消費税が輸出先より高い場合といえそうだ。日本は逆で損する側である。

日本は諸外国に比べて、法人税が高く、消費税が低い。日本の輸出企業は、高い法人税を払いながら生産した製品を、今度は高い消費税のかかる外国で売らねばならない。外国企業が日本に輸出するときは反対に、低い法人税で生産した製品を低い消費税で売ることができる。

日本の輸出企業が外国企業と比べて過重な負担を強いられていることは否めない。現在の日本の法人税率41%がそれ自体で高いかどうかは、人によっていろいろな見方があるだろう。だが、現在の国際環境で自国だけ高い法人税と低い消費税を維持するのは、やはり愚かな選択といえそうである。

消費税と所得税はどこが違うか

2010-06-22 12:51:45 | 税制・補助金
管首相が果敢にも消費税アップを明言したので、消費税について改めて考えてみた。

消費税=所得税+法人税

消費税と所得税・法人税はどこが違うか。前者は間接税、後者は直接税といわれ、全然違うように思われているが、よく考えてみるとそれほどでもない。

経理の実務では、消費税と法人税の扱いは実によく似ている。法人税は利益だけにかかるのに対して、消費税は利益+給与にかかるという点が主に違うだけである。ここから見ると、消費税は法人税と雇用税を合わせたようなものだ。企業から雇用税を取るのは、従業員から所得税を取るのと長期的には同じだから、消費税=所得税+法人税といってもよい。消費税をたとえば5%上げることは、法人税と所得税の両方を一律5%ずつ上げることと同じである。

ただし課税のタイミングは違う。一般に消費のほうが収入より一定しているから、消費税のほうが法人税+所得税より安定した財源になる。また一般に消費のほうが収入より地域偏在性が少ない。

消費税は資産課税

消費税には現在の金融資産を目減りさせる効果がある。稼いだときではなく使うときにかかる消費税は、まだ使っていない過去の所得・利益にも課税されるからだ。つまり、5%の消費税アップは5%の(一回限りの)資産課税でもある。

消費税は誰が負担するのか

消費税は消費者が負担するといわれるが、間違いではないだろうか。消費税は売買取引にかかる税であり、それを売り手と買い手のどちらが負担するかを論じても意味がない。

意味があるのは、せいぜい「消費税導入時に消費税分が価格転嫁される」ということだ。だから消費税の増税時にはその分だけインフレすなわち資産課税が発生することになる。

(欧米で「消費税」にあたる言葉は「付加価値税」(VAT: Value-Added Tax)だし、中国では増値税というようだ。消費者が負担するかのような名前を付けているのは日本だけなのだろうか。)

消費税の「逆進性」

所得税と違って消費税は累進課税ができない。だから消費税を上げるなら所得税の累進率を上げないと再配分の力は弱まる。再配分強化の手段として給付付き税額控除(負の所得税)はよい方策だ。

消費税の軽減税率は経済をゆがめる。たとえば食料に軽減税率が適用されれば、食料が過大に消費されて資源の無駄遣いになる。国民の行動を政府の意向で縛ることにもなり、よくない考え方の典型だ。どの品目に軽減税率を適用するかで政治的駆け引きも生じる。現在も家賃などの非課税品目があるが、これらにも軽減税率と同様に弊害がある。弱者の保護は、消費税率を複雑にするのではなく、累進課税の強化と給付付き税額控除に任せるべきである。

消費税は脱税しにくいのか

消費税は法人税よりごまかしにくいと言われるが本当だろうか。

たとえば売上100=仕入50+給与40+利益10の会社が、10の売上を申告漏れした場合、消費税10%なら減った税金は10の10%で1となり、法人税10%+所得税10%なら減った税金は法人税10×10%がゼロになるのでやはり1となる。経費の水増しでも同様の結果になるから、意外なことに、脱税への耐性は消費税でも所得税+法人税でも変わらない。

ただし、インボイス方式が導入されれば消費税はごまかしにくくなる。最終消費者に販売する事業者は依然としてごまかせるが、他の事業者に納入する事業者はごまかしにくい。いちいち紙のインボイスをやり取りするのは事業者にとって面倒だが、やはりインボイス方式はよい考えだ。ただし将来は、取引記録の電子化を進め、効率と捕捉率をさらに上げるべきだろう。

消費税はアングラ経済からも徴収できるのか

無申告の悪徳企業や暴力団は所得税・法人税を払っていないが、消費税なら(物を買ったときに)払わざるを得ない、と言われることがあるが本当だろうか。

残念ながらこれも正しくないようだ。消費税による商品の値上り分は、税金の預かり分というより、インフレと考えたほうがわかりやすい。たとえば消費税が5%上がり、すべての商品も5%上がったとする。悪徳企業の支払いは5%増えるが、売上も5%増え、利益も5%増える。ただこれはインフレ分だから、結局、悪徳企業は損得なしである。

以上、消費税について考えてみた。消費税と法人税・所得税とは意外に似ているが、消費税のほうが税収が安定すること、地域による偏在が少ないこと、資産課税効果があることを考えると、やはり上げるなら法人税・所得税より消費税だろう。相変わらず無駄の多い政府に増税させてよいかはまったく別問題であるが

なお当然、現在の免税業者(課税売上1000万円以下)への益税はなくさねばならないし、いい加減な簡易課税制度(仕入れ比率見なし制度)もやめるべきだろう。

以上では国際取引をまったく考慮していない。次回は輸出入や法人税減税競争への影響を考えてみたい。

関連:消費税は逆進的か

スーパーコンピュータ開発への補助金は是か非か

2009-11-26 18:14:36 | 税制・補助金
民主党の「仕分け」に関連してスーパーコンピュータ研究開発のための補助金が注目されているが、こうした補助金は必要なのだろうか。私にはそうは思えない。

日本にとって大切な技術だから補助すべきとの意見があるが、この技術が大切だとしたら、それは日本の経済的競争力を高めるから、すなわち将来お金を生み出す可能性があるからだ。基礎研究や考古学のような学術研究とは異なり、スーパーコンピュータ技術は、成功すればお金になり、逆にお金にならなければ失敗である。

お金に直結する技術を政府が税金で支援する必要はない。お金になる研究なら放っておいても民間がやる。そして民間がやるほうが効率がよいのが世の常である。政府が手を引けば、代わりに営利企業やファンドが自費で研究を行うだろう。誰もやらないとしたら、その研究は有望でない、つまり研究費が捨て金になる危険が高いと判断されたことになる。

リスクの高い研究だからこそ政府が関与すべきだという説明もよくあるが、このケースでは妥当な考え方ではない。失敗する可能性が高いだけなら、同じお金をほかのもっと有望な研究に使ったほうがよい。失敗の可能性が高くても成功時のリターンが大きければやる価値はあるだろうが、その場合は民間の企業連合やファンドが手を出すから、やはり政府の関与は必要ない。

有望な研究なら民間が効率よく引き受けるし、民間がやろうとしない研究なら将来性がない。いずれの場合も政府・自治体が税金を投入すべき理由は見当たらない。

高速道路無料化とガソリン税廃止はよい政策か

2009-09-11 11:50:13 | 税制・補助金
民主党は高速道路無料化とガソリン税(揮発油暫定税率)の廃止を打ち出しているが、世論は賛否両論とも多いようだ。どう考えるべきか。私が思うには、高速道路無料化はよい政策だが、ガソリン税廃止は非常に悪い政策である。

賛成派は、景気浮揚効果がある、地方が活性化する、日本にとって重要な自動車産業が栄える、いまや自動車は必需品である、通行税のようなものは悪税だから廃止すべき、といった理由を掲げる。反対派は、炭素排出量の増大を招く、環境悪化につながる、受益者負担の原則に反する、渋滞が増える、フェリー・鉄道・近場の観光地などがトバッチリを受ける、道路を造る原資がなくなる、といった理由を挙げる。

賛成も反対も理由が多くて、どう考えるべきか迷ってしまうが、原理原則で考えれば、こうした公共的料金や税金は、該当行為が生じるために公的部門が負担しなければならない限界費用をまかなうように設定されるべきであろう。言い換えると、その行為(自動車の走行)によって生じる「迷惑」を補うように決めるべきである。なぜならそれが市場経済の根本的な原理であるからだ。

そう考えると、自動車の走行自体は多くの迷惑(環境汚染や騒音等)を引き起こしているから、ガソリン税は高くすべきだが、高速道路を走ることが一般道路を走ることより特に迷惑という理由はなさそうなので、高速道路に高い料金を設定すべきではない。

ガソリン税を高く、高速料金を低くすることが、最も効率的で社会全体の幸福につながるはずである。特に、高速道路を無料化するのであれば、その分も含めてガソリン税を上げねばならない。どうしても「ガソリン税を廃止」したいのであれば、代わりに環境税を創設すべきである。

関連:ガソリン税を下げるな高速道路無料化と環境問題

子供手当てはよい政策か

2009-09-07 11:55:31 | 税制・補助金
民主党の目玉政策の1つは子育て支援だというが、意外なことに、有権者の半分以上がこの政策を支持していないとの世論調査があった。だが私はよい政策だと思う。現在の子育ては機会損失(フルに働けないことによる収入の低下)が大きく、子育て世帯には家計が苦しいところが多い。子供を育てるという社会的な責任を引き受けているのだから支援されるべきだとの考え方も成り立つ。

何より、子供手当ては平等な「バラマキ政策」であることがよい点だ。すべての親にお金を渡し、親の判断で使ってもらう。従来の日本の各種支援政策では、国民でなく、国や官僚がお金の使い方を決めることが多かった。国民が「文明開化」されていない時代ならいざ知らず、現代の日本のような国ではそうした家父長的政策は古いと知るべきだろう。

親にバラ撒くより保育所の拡充に使ったほうがよいとの意見があるが、それだと保育所を利用しないで自分で子育てする親は何も貰えず不公平だ。「保育所はあまり必要ないけれどタダだから利用しよう」という親が増えれば不効率だ。どの施設を支援するのか決めねばならないし、支援した施設が真面目にやっているかどうか監視し続けなければならない。こうしたことはすべて公的権力の肥大と無駄遣いの拡大につながる。

保育所の数や待機児童について、「~までに~を~%にします」といった数値目標を掲げて、それを目指して予算を重点投下する形もよくとられるが、往々にして単なる「点取り虫」になっている感がある。そのうえ目標がコロコロ変わって、過去の対象者は簡単に見捨てられる(エコ政策でもよく見られる)。そんな数値目標を立てても弊害ばかりだ。

親にお金を渡すと子育て以外に使ってしまうかもしれないから用途を制限しようとの意見があるが、これもよくない発想の典型だ。第一、何が子供のための支出か決めるのが難しい。食費のうち子供向けの分はどれほどなのか、住宅費はどう考えるか、子供向けブランド服は支援対象か、子供と一緒に高級レストランに行った場合はどうか、等々、一概に決められないことが多く、業界団体による圧力、族議員の発生、利益誘導、といったお決まりのコースをたどるのは必然である(ちなみに消費税率を「必需品かどうか」で変える発想にも同様の問題がある)。行政側の手間も増えて税金が無駄になる。親の行動が心配なら、親に対する啓蒙活動や相談窓口を増やすのが筋である。それでも最終決定権者はあくまで親自身であるべきだ。国民が信用できないから官僚が主導するというのは、開発独裁や社会主義の考え方である。

育児休業時への給与支給などのサポートを企業に対して義務付けようという考え方があるが、これも悪い政策の代表例だ。そういう押し付けをすると、企業は必ず、子育てする人やこれから子育てしそうな人を敬遠するようになる。職場でも「あの人のせいで...」となる。結局、苦しむのは育児する人自身である。また中小企業に勤める人は大企業ほどのサービスを受けられないことが多く、不公平である。育児・産休の支援費用は、企業ではなく国・自治体が負担すべきだ。

富裕層は手当ての対象から外せとの意見があるが、これは本来、累進課税や相続税で対応すべき問題だ。こんなところに所得制限を持ち込んでも、制度が複雑化するだけである。日本によくある再配分後の所得逆転(たくさん稼いだほうが再配分後の所得が低くなる)という愚かな制度にもつながる。所得の再配分は、累進所得税・相続税・資産課税等にまとめるべきだ。各種の所得制限を撤廃して、代わりにこうした課税を強化するのがよい。

ただ、子育て支援は、高齢、病気、障害などに対する給付や低所得者への支援と比べたとき、不運な人や弱者ではなく、最も幸せであるべき人々を支援するという点で珍しい政策である。よい結婚相手がなかなか見つからない人や望んでも子供を持てない夫婦も多い中で、そうした人々から幸福な家庭へ所得を移転するのであるから、支援される人は感謝の念を忘れてはならないだろう。

農家への所得補償と関税はどちらがよいか

2009-08-28 16:48:22 | 税制・補助金
今回の選挙では自民党も民主党も農家への直接所得補償を謳っている。WTOも関税より所得補償を好ましいものとしているようで、この流れは現在の世界の趨勢だ。だが本当に所得補償は関税より優れているのか。

農業について「デカップリング論」というものがある。いろいろな意味で使われるが、もともとは「農産物の価格を支持すると、農家の所得が増えると同時に農業生産の刺激にもなって生産が増えてしまうが、この2つを切り離して(デカップリングして)、生産を増やさずに所得だけ向上させよう」といった意味だ。「生産量に影響を与えるような市場歪曲的機能の切り離し」と表現されることもある。

だが普通、農業をやれば補助金が貰えるとなれば、農業をやる人が増え、農業生産も増えるのが当たり前である。それなのになぜデカップリングが可能かというと、所得補償する人を絞るからだ。昔から農業をやっている人だけ、現在の大規模農家だけとか、過去に持っていた農地の面積や牛の頭数を基準に金額を決めるなど、絞り方はいろいろあるが、いずれにしても過去のデータで決めるのであって、今後の実績や努力、未来のデータを考えに入れてはならない。そんなことをしたら農業生産を刺激して「市場歪曲的」になってしまうからである。

いかにも不公平で社会を硬直化させる考え方だ。誰をどの程度補助するかも政治的・恣意的である。そのうえ、農産物の過剰生産に悩んでいたEUとは異なり、今の日本は食料自給率を上げようとしているところだ。生産量に刺激を与えない「非歪曲的」な政策では、もとより役に立たないのである。実際の運用も関税より複雑でコストがかかる。なぜこういう考え方が世界の潮流になっているのか不思議だが、EUや米国の国際的・国内的な政治的妥協の産物という面があるようだ。自由経済や自由貿易を尊重するような装いを凝らしているし、農家にとっても一応お金が貰える政策なので、日本でも特に反対する人は少ないようだ。しかし、以前も書いたが、考えれば考えるほど、問題ばかりの政策である。

直接支払い政策の(非)経済学」という古い記事を見つけたが、誠に同感だ。

[高校生の経済学] 関税と所得補償」という新しい記事は、経済学的に所得補償のほうが関税より優れていると論じている。興味ある論点なので考えてみた。高校レベルよりずっと難しいと思うのだが、それはともかく、この記事の記号を使わせて貰って関係者の利得を整理すると次のようになるだろう。

 関税の場合補償の場合
国内生産者BdBd
海外生産者FDdEF
消費者(国産分)AABb
消費者(輸入分)AABbC
政府BbDd-B-b


補償時の全世界の利得から関税時のそれを引いた差を求めると、海外生産分の死荷重C+Eがそのまま残るので、たしかに所得補償のほうが関税より利得が多い(本当は国内分と海外分に同じ需要曲線を適用することはできないが、ここでの結果には影響しない)。

しかし、これは国内生産量を固定した場合の話であり、貿易非歪曲的な所得補償には食料自給率の低下という代償が伴う。それでよいのかどうか。日本の農業が本当に高コストを免れないのか、また食料自給率を本当に上げる必要があるかという点は議論のあるところだが、仮にそうだとした場合、所得補償のほうが関税より好ましいとは言えないのである。

それでは、国内生産者の生産量を固定するのではなく、食料自給率をたとえば50%として固定したとき、同様に経済学的にコストを考えたらどうなるだろうか。これは後日また書いてみたいが、ちょっと試算したところでは、関税と所得補償のコストは同程度になりそうだ。だとすると、所得補償には他の問題が多いので、関税のほうがすっきりして優れていることになるだろう。

ただし、関税と所得補償には、1つ重要な違いがある。海外から見た場合、関税は日本政府に入ってしまうが、所得補償なら自分たちの利益も増える。輸入国(国内生産者+消費者+政府)は関税のほうが得だが、輸出国は所得補償のほうが得なのである。米国等が所得補償を推す大きな理由はここにあるのだろう。

「だから日本としては関税のほうがよい」と単純に言いたいわけではない。相手のあることだから、自分の利ばかり追ったら合意が成立しない。しかしこうした損得勘定を考えておくことは大切だ。もし関税のほうが世界全体として利益になるのであれば、関税をWTOで承認させるために、輸入国が徴収した関税の一部を輸出国政府に支払うといった条約を提案してもよいかもしれない。

私有財産を自分の会社に高値で売る

2009-03-27 13:54:22 | 税制・補助金
財務副大臣が私有の公開株を自分の会社に高い値段で売ったということで、大臣規範に抵触するとか道義的に問題だとかで辞任したが、その程度の問題なのか。

議員は「自分の株を自分の会社にいくらで売っても損得なし」と説明しているようだが、普通に考えればそんなことはなく、税金が大幅に安くなるはずだ。個人が株で利益を得ても20%分離課税されるだけだが、会社が高値で買った株を安く売れば損失が出て、黒字であれば(もしくは将来黒字が出れば)法人税が減る。今回のように実質3億円の株を6億円で会社に買わせれば、最大6,000万円ほどの「節税」効果になる可能性がある。

もしこんなことが許されるなら、会社のオーナーなら誰でも簡単に法人税を実質20%まで減らすことができる。当たり前すぎる話なので私が何か誤解しているのだろうか。

自営業者の所得の把握

2008-01-10 09:52:56 | 税制・補助金
自営業者(個人事業主)の所得の捕捉率が低いと言われ続けて久しく、もう半ば常識のようになっている。私も自営業者のようなものだが、たしかに税務署による所得の捕捉方法はゆるいと感じる。

自営業者や小規模事業主が必要経費を過大に計上しがちだとよく指摘される。それもあるかもしれないが*1、私の見るところ、売上や収入の捕捉率の問題が一番大きいのではないか。現在は多少の売上を「忘れた」ことにしてもほとんど見つからないし、もし見つかっても「申告漏れ」になっていした罰は受けない。多少の額なら見逃して貰えることすらある。意図的な操作と認定されれば「脱税」になって一応犯罪になるが、それでも重加算税が課される程度でたいしたことはない。有名企業や有名人ならマスコミに書かれて困るだろうが無名の事業主にはさしたるダメージがない。なおこれは自営業者に限ったことではなく、サラリーマンでも副業の所得を正しく申告しないことがあるようだ。

*1 もっとも個人事業主には給与所得者控除(150~200万程度)がなく青色申告控除(65万円)しかないから、実質的な経費計上額は自営業者のほうが少ないとも思われる。

対策は本来簡単だ。各事業主の売上と経費と相互参照すればよい。これはパソコン1台で日本のすべての帳簿を相互に付き合わせることができる程度の作業量だ。ただ現在は納税者番号のようなものがないので各事業者が明確に区別できず、また帳簿の電子化もされていないので、このようなチェックはほとんど行われていないようだ。税務署が怪しいと睨んだごく一部の事業者について取引先に電話して調べているくらいである。効率が悪いしカバレッジも低い。

納税者番号制の導入と経理帳簿の電子ファイル化が必要である。そうすれば間違いや不正が大幅に減り、税務コストも減少するだろう。帳簿の電子化は高齢者など一部の事業者にとって負担になる可能性もあるが、一定規模以上の事業主とすべての税理士事務所に電子帳簿の提出を義務付けることは可能なはずだ。最初は奨励金付きの自由選択制でもよいだろう。

実際に付き合わせるとあまりに多くの矛盾が生じて税務署ではいちいち対応できないかもしれないが、それでも金額の大きなものからチェックするとか、スポット的にチェックするとか、やりようはいくらでもある。予防効果も大きいだろう。

なお現在、申告漏れが見つかるとその部分に対する税金は1.2倍程度になり、脱税が見つかると重加算税が課されて1.4倍程度になるようだ。見つからない確率も高いので、ある意味、これくらいでは「やり得」になっているようにも見える。先進諸外国ではもっと厳しいようだ。だからこれらを加算税をもっと高率にすることも考えられるが、ただ現実には「合法的な節税」と「単なるミスや思い違い」と「意図的な脱税」の区別は微妙で恣意的な面もあるから、難しいところではある。

私は必ずしも正しく申告していない人が悪いと言いたいわけではない。不明朗であることが当たり前のようになっている社会制度、そしてそのような社会を放置してきた政治(つまりは国民)がよくないと思うのである。最近は品格や教養といったことが話題にされることが多いようだが、それ以前にもっと基本的な部分でなすべきことが多いのではなかろうか。

その1つとして、政府部門の電子化を進め、社会の公平性、透明性、効率性を高めてほしい。以前は「国民総背番号制」に反対する人が多かったが、最近は賛成意見のほうが多数派になりつつあるようだ。我々国民が近代社会の構成員としてそれだけ成熟したということだろうか。

関連項目 給与所得者控除の損金不算入
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研究開発減税は必要なのか

2007-12-26 19:30:05 | 税制・補助金
また先日の自民党税制改正大綱についてだが、研究開発減税も疑問に感じる。

もともと、見込みの費用対効果が大きければ企業は研究開発をするだろうし、そうでなければしないだろう。そこに優遇策を持ち込む必要があるのかどうか。

研究開発の優遇には「成功したとき波及効果が大きく国民全体に益があるから」という理由がある。しかし本当に効果が大きく成功率の高そうな研究なら、優遇されなくても企業は実行するだろう。優遇されて初めて行われるような研究は、費用対効果が低そうなものだけである。そのような研究を、この財政難の折に税金で優遇する必要性が果たしてあるのか。

また昔なら「研究は失敗するリスクが大きいから優遇策がないとなかなか実行できない」と言えたかもしれない。しかし現在では証券市場やベンチャーキャピタルなどの金融が発達しているから、この理由は弱まった。今では政府より市場のほうがリスクに対する許容力が大きいはずだ。

何が優遇対象の「研究開発」に当たるかの線引きも難しい。だから今回の減税案でも細かい条件が規定されているが、条件が細かければそれだけ企業や政府の無意味な仕事が増え、また節税対策がうまいかどうかで企業の競争力が左右されやすくなる。複雑な支援税制は、結局はむしろ日本の産業競争力を落とすことにつながらないか。

今回の大綱では中小企業向けの研究開発減税が拡充される一方、今までの大企業向けの同政策は反対に縮小された。なぜなのか。もし中小企業対策ということであれば、研究開発減税の本来の意義を自ら否定するようなものだ。このように恣意的に拡充したり削減したりできるということがまた、この政策は初めから必要ないのではないかとの疑問をいっそう強める。

北朝鮮による拉致問題が起こったとき、当時の福田官房長官は、北朝鮮との間であっても約束は守るべきだとして筋を通そうとした。そうした印象から私は福田内閣に期待していたのだが、今は失望している。政策が場当たり的で理念が感じられない。かつての宮沢内閣に似ているかもしれない。その場限りの甘そうな政策に振り回される社会を構築してはならないと思う。

「使ったら貰える」政策の愚

2007-12-20 19:19:27 | 税制・補助金
先日発表された自民党税調の税制改正大綱には、好ましくない政策がかなり混じっているように思える。次のような政策だ。

  • 中小企業オーナーの相続税を軽減する事業承継税制
  • ベンチャー企業への投資を優遇するエンジェル税制
  • 情報投資の優遇
  • 省エネ住宅への改修優遇
  • 200年住宅の支援


最初の2つについては先日書いたが、他もよい政策とは思えない。これらはいずれも「何かを買ったら税金が安くなる」、すなわち「お金を使ったら貰えるが使わなかったら貰えない」種類のものである。こうした政策は以前から多いが、本質的に無駄遣い・過大投資を招くものだ。

情報投資の優遇がいい例だ。普通、会社がコンピュータを買うのは、コンピュータの代金を超える効果が見込めるときである。だが税制による優遇があると、効果より高額な、つまり本来不必要なコンピュータでも買ったほうが得になる。個々の会社にとってはそれがお得な選択だが、国民全体から見るとマイナスになってしまう。いわゆる合成の誤謬である。

そのうえ、制度がややこしくなって、何が優遇対象の情報投資に当たるのかという問題に多くの人が頭を悩まし、企業内でも政府内でも無駄な仕事と人件費が増えることになる。これも結構大きな損失になるだろう。

省エネ住宅や200年住宅は、資源節約や環境保護の観点からは推奨されてよいかもしれないが、優遇税制によるのは筋が悪い。エネルギーを節約する方法はたくさんあるのに、特定の工事だけを優遇すると、そうした工事ばかり不必要に多く行われる恐れがある。改修用資材の生産に必要なエネルギーを考えると省エネに逆行する可能性すらある。それよりエネルギーの使用そのものに環境税をかけるべきなのだ。そのほうが簡素で合理的である。

なぜ複雑で副作用の多い優遇策が多用されるかと考えると、おそらく特定の税金が安くなるそうした政策のほうが、特定の税金が高くなる環境税に比べて国民受けがよいと思われているのだろう。だが特定の税金が安くなれば当然他の税金を上げざるを得ないわけで、両方ともその点で損得はない。国民はこうした錯覚に惑わされるべきではないし、また政治は錯覚を助長すべきではない。

こうした優遇政策の中で長続きするものはほとんどない。このことからも、それらが本当に必要ではない場当たり的なものだということがわかる。新築住宅の優遇税制は引き続き行われるようだが、なぜ新築ばかり優遇するのか。資源の節約には中古の改修のほうがよいかもしれないではないか。

全国で無駄な公共事業が行われがちなのも、上と似た理由による。たとえば地方自治体がダムを作れば国から補助金が貰えるが、作らないと貰えない。そのため各自治体は競って公共投資を行うことになり、全国で公共事業の過大投資が行われている。

理念なき「使ったら貰える」政策は、無駄遣いを奨励して財政と環境を悪化させる。諸悪の根源と言ってもよいと思う。

関連項目 英会話学習への国庫補助

エンジェル税制の根拠

2007-12-13 12:14:57 | 税制・補助金
先日、自民党税調の税制改正大綱が発表されたが、その中にベンチャー企業への投資を優遇するエンジェル税制の拡充がある。創業間もない赤字企業の株式を取得すると1,000万円まで所得控除されるというものだ。

手っ取り早く言えば、これはベンチャー企業への投資を慈善活動等への寄付と同様に扱うことである(実際には上限金額が大きいから多くの場合はそれ以上の優遇だろう)。おかしくないか。たしかにベンチャー企業は社会の活性化に寄与するかもしれないが、当然民間の営利企業なのだから、公的組織や非営利の慈善団体を同列に扱うべきものではないはずだ。

それでも税金の投入によって将来性のあるベンチャー企業が増えるなら考える余地はあるが、私にはそうは思えない。むしろ安易な投資が増え、したがって失敗するベンチャー企業が増えるだけではないだろうか。

余談だが米国のサブプライム問題の根底にある原因は、税金による保証があると誤解されたためにリスクに見合わない投資(ローン貸付)が蔓延したことである。政府による支援がリスク判断をおかしくするという点では、エンジェル税制もこれと共通している。

エンジェル税制は、ベンチャー企業のリスク判断をゆがめ、不効率な特殊法人に近づけるような政策だと言ってもよいのではなかろうか。