先日の参院選では農業補助金が1つの焦点だったようだ。民主党の主張する「全農家への補助金」はバラマキの感もあって評判がよくないが、しかし自民党や多くの専門家が主張する「大規模農家だけに補助金を払う」というのも素朴に考えて違和感がある。弱い小規模農家を補助して強い大規模農家は補助しないというならまだわかるが(それもよいことではないかもしれないが)、逆に強いほうをさらに援助しようというのだから意外なことだ。
もっともこれは世界的にも珍しい考えではないようで、農地を集約させて農業生産性を向上させることを目指したものである。ついでに当面の補助金の対象を減らして財源を節約できる点もメリットなのかもしれない。それらも無意味ではないだろうが、しかし恣意的に大規模農家を優遇することまで行うべきなのか。工業やサービス業でも一般に大企業のほうが中小企業より生産性が高いが、だからといって大企業だけに補助を与え、中小企業を大企業に吸収させよう、などという政策は聞いたことがない。
そもそも自由競争の下では、大規模なほうが生産性が高いのであれば、自然に大規模な生産主体が増える力が働く。一方、小規模でいいから自分でできる範囲で生産したいとか、小さいほうがリスクに対して安心だとか、小さな畑しかない山間部で暮らしたいとか、生産者のさまざまな気持ちも重要なのだから、必ずしも生産性が高ければよいというものでもない。政策的に大規模農家を増やそうとするのは、そのような各農家の事情を捨象することになり、結局、国民全体の福利にとってマイナスにならないだろうか。
農業の問題はむしろ、多くの規制や税制で自由な取引が制限されていることにあるのではないか。たとえば今の税制では農地を貸すと税金が上がってしまうために貸したくても貸せないとか、なぜか農業は会社組織による運営が原則禁止されているなどの問題がある。米の減反と価格統制は何十年も続いている。そのような歪みを徐々にでも取り除いていけば、政策で不自然な優遇をしなくとも、大規模農家と小規模農家が適正なバランスで共存するようになるはずだ。
日本国内の農業は複雑な規制や税制のために歪められているが、その歪みを正そうとして、また別の歪みを持ち込もうとしているのが現在検討されている大規模農家優遇措置ではないだろうか。
もっともこれは世界的にも珍しい考えではないようで、農地を集約させて農業生産性を向上させることを目指したものである。ついでに当面の補助金の対象を減らして財源を節約できる点もメリットなのかもしれない。それらも無意味ではないだろうが、しかし恣意的に大規模農家を優遇することまで行うべきなのか。工業やサービス業でも一般に大企業のほうが中小企業より生産性が高いが、だからといって大企業だけに補助を与え、中小企業を大企業に吸収させよう、などという政策は聞いたことがない。
そもそも自由競争の下では、大規模なほうが生産性が高いのであれば、自然に大規模な生産主体が増える力が働く。一方、小規模でいいから自分でできる範囲で生産したいとか、小さいほうがリスクに対して安心だとか、小さな畑しかない山間部で暮らしたいとか、生産者のさまざまな気持ちも重要なのだから、必ずしも生産性が高ければよいというものでもない。政策的に大規模農家を増やそうとするのは、そのような各農家の事情を捨象することになり、結局、国民全体の福利にとってマイナスにならないだろうか。
農業の問題はむしろ、多くの規制や税制で自由な取引が制限されていることにあるのではないか。たとえば今の税制では農地を貸すと税金が上がってしまうために貸したくても貸せないとか、なぜか農業は会社組織による運営が原則禁止されているなどの問題がある。米の減反と価格統制は何十年も続いている。そのような歪みを徐々にでも取り除いていけば、政策で不自然な優遇をしなくとも、大規模農家と小規模農家が適正なバランスで共存するようになるはずだ。
日本国内の農業は複雑な規制や税制のために歪められているが、その歪みを正そうとして、また別の歪みを持ち込もうとしているのが現在検討されている大規模農家優遇措置ではないだろうか。