without a trace

ヤマザキ、フリーターを撃て!

東京失格

2009-08-31 04:43:55 | おっぱいなし映画

 映画「東京失格」見る。監督は井川広太郎。30歳を迎えた友達が再び出会うという作品。見る前にオサレ系映画だったらどうしようと思っていた。だが見事に裏切られてドキュメンタリー調で素晴らしい。この作品は監督自身の体験から作られてるので現場で泣きながら撮ってたとか。大学時代にバンドを組んでいた親友三人。司法浪人生、バンドマンのフリーター、もう一人は会社員。三人は四谷だか市ヶ谷だかあの周辺のお堀で桜見をしている。昼間から酒を飲んで楽しそうだ。そしてタイトルが始まって葬式帰りになる。司法浪人生が自ら命を絶ったのだ。

 学生時代の友人たちが集まるが少しお話して帰ってしまう。そういえばあいつは結婚したの?まだバンドやってるの?お前変わらないね。悔しいような嬉しいような悲しいような顔をするバンドマン。旧友たちはおれたち忙しいからとさっさと帰っていく。結婚とかしたらあんま会えないよなって。この展開がリアルだ。だが残された友達二人は帰りたくない。自殺を選んだ友達についてまったく触れようとしない。この映画は関係性を描きたいのかなと思えてくる。あえて触れないのだけども見てる側にも悔しさや悲しさが伝わる。インディーズのバンドの後輩を集めたり、会社員の彼女を連れてきたりして飲みニケーション。なんで飲みなんすか?と若いの。まずは飲みから関係は始まるんだよとうざい30代のバンドマン先輩。彼らはどこまで二人の友達が死んだ事を知ってるのかまったくわからない。人間関係での情報は個人によって違う。そもそも二人はどこまで死んだ友達の事を知っていたのかもわからない。結局は孤独でしかないのかと思えてくる。会社員には同棲してる彼女がいるがどうやらうまくいってない。すごく彼女に気を使ってるのがわかる。映画「歩いても歩いても」なんかもそうだけどドキュメンタリー調だが語ってるんだ。

 以下ネタバレ

 飲んだらラーメン屋。なんで飲んだらラーメンなんだと話し合う。外人って飲んだら何食うの?と疑問になってじゃあ外人が多い店に行こうよとなる。そこでアジア人だらけの池袋の店で聞きまわる。最初は会社員がバンドマンがヤケで飲みすぎてるからと気にして追っている。だが彼自身もヤケになってる。バンドの練習に付き添ったりとこの友情が何とも言えないんだ。いい年して何やってるの?なんて決して言わない。バンドのメンバーなんてハゲちゃってるわけですよ。この悲しさは「なんで急に飲みなんスか?」と言ってる若い世代には伝わらない。リスペクトってのは相手をリスペクトしないと得られない。プライドってのは出すもんじゃなく、持つものなんだ。だがそういう人って会社での仕事はきっとうまくいってないんだろうなと。

 ビリヤードをしてナンパしちゃおうかと一緒にカラオケに。相手は専門学校生で10代。今まで散々若いのとつきあってたバンドマンがぶち切れ。つまんねえよ!10代と話なんてまったく合わねえよ!おれたちがやりたいのってこんな事なのかよ!確かに30代以降になって10代とつきあえる男はいろんな意味ですごいと思う。パンクバンドをやっていた人の言葉を思い出す「30歳を越えてパンクをやってるやつは本物。社会に恨みがある」。10代にジャニス・ジョップリンって知ってる?と聞く30歳。もちろん何も起こらず。バンドマンが切れたのも彼らの関係性はその場その場で変化する。当たり前だけども飲み会、三人での再会、ラーメン屋、ビリヤードなどその場でテンションも話す内容も変わる。そして出た言葉「おれたちがやりたいのはこんな事なのかよ」。

 バンドマンが会社員を車で送っていく。おれが子供の名前をつけてやるよとか他愛のない話ばかりしてるが会社員は言う「おれ帰りたくないよ」。彼が今まで築きあげてきた現実には戻りたくない。バンドマンはじゃあうちに泊まっていくか?とは決して言わない。それはやっぱ関係は常に変わっていくから学生時代には戻れない。それに過去に帰りたくないともとれるんだ。二人は別れてバンドマンは一人で泣く。初めて友達への感情が直接に現れる。おそらく彼ら二人はあまり会わなくなるのかもしれない。友達が死んでも日常は続いて埋もれていくんだっていう悲しさ。監督はジョン・カサヴェテスが好きらしくて追いかけてみたいなと思ったね。

lost in tokyo (2006)-Trailer (old small version) 予告編。1:30
http://www.youtube.com/watch?v=PFonIWYUtPI 


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