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ヤマザキ、フリーターを撃て!

2006年見た映画まとめ

2007-01-06 05:16:33 | 映画
 昨年見た映画の中で特に心に残ったもの。基本というかほとんどWOWOWとNHKの衛星にレンタルビデオで借りてる。あまり新作は無いけどいいじゃないか。
 自分で言うのも何だけど前と比べても良作を多く見たと思う。特に邦画再発見といった感じで星印は邦画。感想書いてなかったり、いつもつけてる評価があまり意味ないのもあるけどもそこは置いとこう。未見のみ。既に見たのも入れれば「ウォリアーズ」とか「ミーン・ストリート」なんかもやはりトップクラス。

1月「ドッグヴィル」 規範のない社会。アパム!弾もってこーい
「アビエイター」 自己の二面性と戦い続ける男。欲とエロスと仕事とひきこもり
 
2月★「秋立ちぬ」 人生のメタファーのような町の光景を見つめる少年
「悪魔のいけにえ」 ヒッチハイカーが素敵すぎる

3月★「狂い咲きサンダーロード」 見所はスーパー右翼。傑作
「狼よさらば」 ブロンソンはもはや法律。傑作
「さらば冬のかもめ」 負け組と社会の接し方。後から後からじわじわ来る。傑作
「ショーン・オブ・ザ・デッド」 脱力ゾンビと負け組イギリス人たちの戦い。自動的に勝ち組は殺されます
「バス男」 映像に音楽とセンス抜群。いかにアメリカ負け組映画が熱いかわかる。傑作

4月「八仙飯店之人肉饅頭」 ウォン様劇場
「インファナル・アフェア」 シリーズ通して素晴らしい。トニー・レオンの顔
「バス174」 ブラジルのバスジャック事件ドキュメンタリー。メディアの問題も絡めて
「ヤコペッティの残酷大陸」 モンド・ミーツ・ひらきなおり
★「妻として女として」 成瀬の完成形に近いような

5月★「少年」 戦争で傷つき無鉄砲な当り屋へ
★「水のないプール」 ロックンローラー地下鉄職員。裕也内田の勇姿を見よ。傑作
「ネバーランド」 控えめだけど素晴らしい
「シュガーベイビー」 カウリスマキ系の脱力感とメッセージ
★「女の中にいる他人」 サスペンスを作っても一流の成瀬。傑作

6月「ケス」 鳥である貧しい少年は常に巣に戻ってしまうのだ。傑作
「カンバセーション・・・盗聴・・・」 他者への覗きは自己へ向かう。傑作
★「十階のモスキート」 ロックンローラーパソコン警察官。内田裕也の勇姿。傑作
「さらばアフリカ」 必見モンド

7月★「ドグラ・マグラ」 精神病の頭の中へ
「フォッグ・オブ・ウォー/マクナマラ元米国防長官の告白」 WW2とベトナムを見てきた男のドキュメンタリー
★「清作の妻」 元祖あややこと若尾文子の勇姿。傑作
★「教祖誕生」 宗教のバカバカしさ
「マイ・ネーム・イズ・ジョー」 ケン・ローチは似たような映画があるけどなぜか心を打つ

8月★「人間の條件」 シリーズ通して面白い。仲代達也の過剰すぎる演技が笑える
「インサイド・ディープ・スロート」 映画のもう一つの側面はいかがわしさ。ポルノドキュメンタリー
★「浮雲」 これも後からくるタイプ。傑作
★「吸血鬼ゴケミドロ」 この適当さ
「不思議惑星キン・ザ・ザ」 グルジア流の脱力SF
 
9月「ザ・コーポレーション」 民主主義に反する企業は人々によって規制すべき。ドキュメンタリー
★「祇園囃子」 芸者という名の再チャレンジ
★「盲獣」 盲人アーティストによる40歳の童貞男日本版。傑作

10月「MON-ZEN」 ゲルマン神経症と禅の融合
「ロバート・デ・ニーロのブルーマンハッタン」 デニーロミーツテロリスト。傑作
★「十九歳の地図」 排泄の町を浪人生が走る。傑作

11月★「書を捨てよ町へ出よう」 さいなら映画こんにちはルサンチマン。傑作
「サマリア」 父と石が見つめる援助交際
★「にっぽん昆虫記」 今村昌平はパンクすぎる。傑作
「春夏秋冬、そして春」 そして無常

12月「アメリカン・バイオレンス」 昔の衝撃映像やってた頃のテレビを思い出す
★「無常」 今見るべき映画。傑作
★「哥」 5時以降は1秒たりとも働きとうないんです
★「田園に死す」 オカンとボクと、時々ボク。傑作
「失われた龍の系譜~トレース・オブ・ザ・ドラゴン」 ジャッキー・チェンのドキュメンタリー。中国現代史

ザ・リング2

2006-11-09 01:18:20 | 映画
リングの中田秀夫がハリウッドでリメイクした第二作目。日本版とは全然違う話。東大出てロマンポルノ行きの世界のナカタだから、そんなキラーパス誰も対応できないぜと言いたくなる展開もあり。前作と比べるとダレるけど後半は面白いと思う。

 アメリカンホラーらしく序盤は高校生カップル。とにかくエロそうな連中から死んでいただくという、作り手やホラー好きが10代にどういう寂しい人生を送ってたかを表現するアメリカンホラー。そして主演は脱げます女優ナオミ・ワッツ。脱がないけどノーブラで水かぶせるというナカタのパスにはしびれた。24でいったらジャック・バウアー娘のキムちゃんのような扱い方。そしてナオミの息子がオーメン系の不思議っ子。なんか小学生クイズとか強そうな感じの何ともいえない雰囲気の男の子だ。

 子供の体温が下がって病院連れてったら虐待と間違われたりとアメリカ調。でも水の使い方が間違いなく中田秀夫だ。井戸ロッククライマー貞子もあっちこっちで暴走。今村昌平の「神々の深き欲望」では大きな岩が嵐と共に突然あらわれる。その岩を落とすために延々と家族は穴を掘る。性行為の象徴のようで穴は子宮のようだ。ここでは井戸に落ちるってのは、同様に子宮の象徴のようだ。そこから抜け出せない。そして水に子供を浸けようとするのはキリスト教ぽい。井戸を登って無理矢理這い出してエイリアンのように飛び出すしかないのだ。
 ★★1/2


盗まれた欲情

2006-11-04 04:02:02 | 映画
 58年。監督は今村昌平。今村昌平が大阪でフェリーニやったらこうなりました状態。舞台は大阪の通天閣周辺の新世界にいるどさ周りの劇団。まず大阪城が写って戦後13年、復興した町は豊かさ溢れるのであると。そして通天閣がバーンと写って新世界へ。ここではストリップ小屋に学割まであり、人数足りないともぎりのおばさんまでが脱ぐというど根性エネルギー溢れる町であるとの説明。ケンカしてる横ではトルコ風呂の文字、劇の途中で給料貰ってないと殴り合い、90分で「アホ」が50回くらい出てくる。

 それで追い出されて今度は河内の田舎へ。鶏盗んで川原で食べたりとか無理矢理に社会派も込める。長門裕之がえなりかずきみたいな顔して大卒のエリート。新劇を辞めてどさ周りに飛び込んでいる。彼は両親兄弟とみんな死んでいて、自分のすべてをかけられる何かが欲しい。役者に命をかけている旅一座に惚れこんで一員になってる。好きな女は一座の人なんだけど人妻。彼は孤独という影があるからモテルんだ。町は戦争をひきずってなくても、個人はまだまだ支配されて生きている。

 長門が言うには「おれは嘘で塗り固められた社会から逃げてきた。生まれも何も関係ない、能力がすべての世界だからおれはいるんだ」と。田舎に行くと役者はモテモテなんだ。すると男はすぐに芸の肥やしと手を出し、女が風呂に入ってると村のちょい悪な若い衆が除きに来るという今村節。芸に命を賭けてるはずの人間たちは好き放題でまとまりなど無い。幻滅していく長門。彼は孤独の埋め合わせとして何か信じられるものを求めている。みんな孤独で所詮は我儘なんだと映画は展開していく。彼はそれを受け入れられない。しかし自身も性欲には勝てないという人間ぽさが溢れている。

 回り道だと思ってたのが真っ直ぐな道かもしれんと女は言う。そして男女は去っていく。一座はトラックで村を去り、皆は笑顔で手を振り、ちょい悪の男衆は去にさらせアホと怒鳴りながらも手を振っている。こうして人情と笑いを決して忘れない河内のカーニバルは終わっていくのだ。

 
 このタイトルからしてエロ全開かと思ってたけどまだ50年代だし、そうでもない。今村昌平は「神々の深き欲望」と「赤い殺意」を最近見たんだけど、共通してたのは宿命のような生まれ。生まれながらにして差別される存在というのをかなり意識している。「神々の~」では近親相姦を平然と繰り返す一家、「赤い殺意」では妾の孫という事で差別されて育つ女が登場する。しかも後者では性的なシーンでは村のひそひそ話が流れてくる。この映画でも河原や歌舞伎が登場して匂わせている。水戸黄門で有名な西村晃がいいキャラしてるんだ。この人は実際に特攻隊員だったらしい。黄門様は特攻隊だったのか。
 ★★★。今村昌平鑑賞6本目。

MON-ZEN

2006-10-31 03:02:10 | 映画
 これは面白いよ。ドイツ映画独特のよくわからない脱力感が全開だ。30代くらいのドイツのダメダメ兄弟が日本でちょいロストしちゃう映画。人生に疲れた男二人が禅を求めて日本に来るという話。mon-zenとは石川の門前町にある寺のこと。タイトルのmon-zenはfドイツ語わからないんだけどもフランス語なら私の禅になるし、門前払いかと思いきやちょっと違う。石川の門前町にある寺のこと。そこを目指してゴーゴージャパンだぜ。ナチス時代のドイツと共同制作だった「新しき土」と比べると面白いね。あの映画は原節子主演で寺の卍を写してさすが同盟国であるなんてやってたからw

 兄の一家は子供も多くにぎやか。しつけはすべてが妻の責任としていて、うるさいと妻のせいだと決めつける。ガキがうるさいと彼はさっさとジョギングに行き、帰りはタバコ吸いながら帰ってくるという矛盾しているような男。仕事はできるけど家族は妻にまかせっきりで横柄というタイプ。
 一方の弟は子供のいない夫婦。彼は禅にとりつかれている。朝から禅プレイで人生のわずらわしさを落ち着かせてから働きに出かけるという生活。夫婦は無農薬野菜を食べてそうな世界市民タイプ。彼は家を回って風水アドバイザーみたいな事をしている。ひさしぶりにいく日本旅行に心躍る毎日だ。今度はなんと妻を置いて一人で禅の寺で修業という何かを得るためのアジア旅行なんだ。

 兄が仕事から帰ると妻と子供はいない。置手紙によると弁護士から話がいくのでよろしく。なんてことだと酒に溺れて落ち込んでしまう。この兄弟は両親は死んでおり、ウマは合わないがお互いしかいないので兄は弟に頼ってくる。寂しくて死にそうだからおれも日本に連れてけこの野郎!連れてかないと自殺するぞ。まったくしょうがないバカ兄貴だと二人で仕方なく日本に旅立つのだった。酔いが冷めると兄は言う「おれは中国なんて行きたくないよ」。もうチケット買ったよ、しかも中国じゃないんだよ兄貴。こんな兄弟による珍道中は始まるのだ。

 
 以下ネタバレ


 まずは東京に来る。兄はベッドのサイズを測って1メートル75ってどうやって寝るんだよと頭を抱え、弟は風呂でお祈りのようにしてリラックス。細かい兄と無理にリラックスしないと自分を保てない弟という二人の性格が見事に別れている。出かけるときにパスポートと旅券は持ったほうがいいかな。日本は安全だからホテルで大丈夫だよなどリアルすぎる会話が繰り広げられる。

 東京の町は混雑していて覚えられない。とりあえずkawasakiとEPSONのネオン看板でこりゃ便利だなと覚える。調子乗ってバーで乾杯。なぜか600ドルも取られてお前らどこで飲んでるんだよとw 帰ってくるとあれれネオンが消えている。どうしよう迷ってしまった。

 弟の妻に電話すると地球市民の彼女は浮気に忙しい。ホテルの電話を探してくれと頼むもキスに忙しくて切れてしまう。銀行のカードは使えず、どうしようとついにパチンコに全財産(300円)を賭ける事に。全部無くしてダンボール軍団を眺めはじめる。ホテルに戻れないならこれだとダンボールハウスを作って墓地で泊まる。バックパッカーにドヤ街が流行してるらしいけど、その生活をリアルでしてしまう。万引き、食い逃げとお前ら日本に何しにきたのかとw

 なんとかバイトにありつき金を稼いでようやく門前へ。3時半にたたき起こされておいおい何なんだここはと驚いてばかり。しかもこれ以上やる必要があるというほどに掃除をさせられる。ちょいデブの弟は雑巾掛けができなくて泣いているダメ人間全開。明け方から水を頭からかぶり、掃除、延々と続く読経、食べ方も厳格に決まっている食事。文句たらたらだけど何とか耐えていく、大金はたいて日本に来たんだから。

 そこの坊さんが言うには「汚い綺麗が問題なのではない。不安や心配を掃くために掃除するのだ」。ここではすべての生活が単調で単純化されている。すると彼らの感覚は変化し始めて自己に向かっていく。兄は弟にお前はいつだって几帳面で怖がりで何もできなかったと言い、ああおれは不器用で何もできなかったさ、でも兄貴は自分のことしか考えないから家庭が崩壊したんじゃないかと。自己に向かうのは厳しく他者を責めている。

 坊さんは例えばなぜお茶をこぼすのかという話をする。運ぶ時に茶碗の素晴らしさや温かさに匂いに気づかないからだと。茶をこぼすまいと考えているからこぼしてしまう。失敗してもいいのだよと。またもや感動して泣き始める弟。ついに雑巾掛けも少しだけどできるようになって、おれだってできるんだぞと。清掃するたびに自分のガラクタを取り除いて自分が大きくなっていくのを理解していく。兄の気持ちも変化し、妻に対する怒りしかなかったが、出て行ったのは出て行ったという事実でしかないという現実を掴む。

 兄弟は感謝して寺を去っていく。そして弟は秘密を話し、兄は受け入れていく。二人で東京に戻りまた墓地でテントを張って読経していく。


 まったく期待してないバカ映画だと思ってたんでヒット。几帳面な兄と強迫神経症ぽい弟という、なんかドイツだなって頷いてしまういかにもっぽいキャラで憎めない。禅に日本人の自分がドイツ映画から興味を持たされてしまったという事実。
 ★★★1/2

Vフォー・ヴェンデッタ

2006-10-30 04:40:03 | 映画
 なんだか意味がわからない、わからないけど心に残る作品ってのがある。例えば「マトリックス」や「ファイトクラブ」なんかがそうだった。それに「未来世紀ブラジル」、「未来は今」あたりなんかが好きな人は必見。この映画はマトリックスのウォシャウスキー兄弟製作。原作者のアラン・ムーアは貧しい労働者階級の出身で、80年代前半にコミックで描かれたので新自由主義社会での閉塞感をも感じる。舞台は英国ロンドン。第三次大戦が始まりアメリカは崩壊、イギリスでは危機感から保守党のサトラーがうまく扇動して終身議長となっている。一つの党が一つの美しい国を作るために社会のすべてを管理しているのだ。それに革命を起こさせるという映画。大英帝国名物といえば爆弾と暴動である。そして流行ってるのか90年のロンドンでの人頭税反対リアル暴動映像をあちこちで挿入している。

 400年ほど前にロンドンで一人の男が国会議事堂を爆破しようとして逮捕された。彼は民主主義という理念のために、民意の反映されない国会など爆破しようと特攻してたのだ。彼は公開処刑の前に言う「人間は必ず死に忘れ去られる。しかし理念は決して忘れられないのだ!」

 そして現代。テレビには毎日サトラー総統率いる党御用達の番組だけが報道されている。党の代弁者のような気合入ってる司会者は言う「テロリスト、同性愛者、不治の病の患者のようなクズどもを殲滅して、よりよい英国を作ろう」と毎日呼びかけている。みんなは同じでないとならない。異質な人間は排除して最強の大英帝国を再建するのだ。人々の住む家は盗聴され、秘密警察が街中を見張り、夜は外出禁止、言論や思想は党が決定するという素敵な国。

 ナタリー・ポートマンはテレビ局に勤める真面目な女性。親や兄は党に反対したので粛清され、彼女自身も幼い頃から強制収容所のような所で育ったのだ。彼女が夜の町に出かけると外出禁止令が出されてる。秘密警察に捕まり、さては貴様非国民だなと強姦されそうになる。そこに奇妙な仮面を被ったVが助ける。男は彼女を連れていき、今から演奏会を見せてやると。そしてクラシック音楽と共に裁判所を爆破。彼は400年前の男の理念を復元しようとしている。

 次の日に国営放送では裁判所の爆破は職員たちの素敵な解体で驚きましたと報道。すべてのニュースは党の方針によって決まる。人々は報道など嘘だと気づいている。そこにVが爆弾を体に巻いてテレビ局乗っ取り。勝手に放送しはじめる「今から国民の皆に革命を起こしてもらいます。独裁体制を倒して400年前の理念を再現するために国会を爆破するのだ!」。こうして物語は始まっていく。


 以下全部ネタバレ

 
 なんだかんだとあって展開早すぎなんで割愛。あと1時間は必要なんじゃないかってくらい。物語の基礎はジョージ・オーウェルの小説「1984年」そのまんま。

 オーウェルさんマジリスペクトの雰囲気漂いまくりなんで1984年の世界がどんな感じか。あの小説だと家にはモニターがあって常に監視されている。ビッグブラザーの言う事はすべてが正しい。言葉さえも変化されて悪いという単語さえ存在しない。正しいか正しくない、goodかungoodしか存在しないのだ。badという単語は使われなくなり、そもそも存在などしてなかったとすべて書物は書き換えられる。つまり言葉から思考能力を奪い取る。
 革命者の一人で味方だった人間が実は敵のスパイであり、彼に対して毎日のようにみんなで怒りをぶつける時間は強制である。アメリカだけでなく国家は崩壊し連邦のような共和国で世界はわけられ、敵が次の日には味方となるようで上層だけは世界で繋がっているらしい。都市は階級で地域が別けられている。普通の国民が住む地域と下層プロレタリアが住むスラムでお互いに触れ合う事もない。スラムだけが各国からなぜか攻撃され一般国民が死ぬことはない。下層階級の人間の思考は金、酒、セックス、サッカーという欲求であり労働力がある程度減ってもまた増えるので問題なしと判断されている。この欲求は一般国民には存在せず性行為は子供を作るための行為に過ぎなくて快楽という概念はない、しかしスラムでは売春婦が当然のように立っている。こんな感じの大英帝国全開ワールド。

 この映画でもそうだけど攻撃は実は国内からされているとはっきり描かれている。もちろん911テロ以降のアメリカを匂わせる。1984年でも拷問されていく。拷問も今までにない完璧なやり方。いかにして殺さずに完璧に洗脳させるかという拷問。Vによる拷問はよく理解できない。恐怖の克服だと言うけど押し付けに見えるんだよね。ユダヤ系のポートマンを丸刈りにして映画ではナチスの収容所のように描く。ポートマンを愛していたからこそ理念の共有をしたかったのじゃないか。レズ女の遺書を持ってたり祀ってるのも理念を保つため、400年前の理念と違う、収容所で理不尽に殺されていったものたちへの弔いと自身の復讐のための理念。Vは新たなビッグブラザーでもある。

 人々は仮面を被って個人は個人でなくなる。白鯨でグレゴリー・ペックが言っていた「すべての存在は仮面であり、その内面である人間の根本を追うのだ」を思い出す。とりつかれたように人生すべてを仮面の内部のために戦う。仮面をかぶってないサトラーと仮面をかぶってるかのように誰かわからない党の重要人物を暗殺して復讐する。
 ポートマンはVを描くためのモニターにすぎない。彼は実験で自己を無くし、仮面の内面を無くしもはや誰でもない。自殺願望漂うデスウィッシュ野郎だけどチャールズ・ブロンソンのように鬼ではない。ヒトラーと戦ってた頃のマークであるVを人々は落書きしていく。原作の80年代ロンドンはおそらくアナーキストのAが描かれていたんだろうか。V曰く「爆破は象徴であり、象徴が人々に支持されれば世界は変わる」。ファイトクラブなのか911テロなのか。
 ★★★1/2


 youtube 映画で使われていた新自由主義の進んだロンドンでの暴動。 3分6秒