without a trace

ヤマザキ、フリーターを撃て!

血は渇いてる

2005-10-31 03:43:47 | 映画
 映画「血は渇いてる」

 監督、脚本:吉田喜重。佐田啓二、岩崎加根子、三上真一郎。60年

 従業員解雇に抗議して会社の人間の前で拳銃自殺しようとする男。一命を取り留めるが彼はマスコミの寵児となっていく。本人は何も考えてないんだけど周りが彼を利用し始める。CMで起用され、労働大会に呼ばれ演説する。しかし彼は何も考えてない。無気力人間というか、受け身態勢全開だ。美人な奥さんを貰えるということはそれなりに優秀、レイオフに対抗するくらいだから彼には衝動があるはず。しかし抜け殻状態。大衆の「祭り」の象徴になり、その反動を喰らわされる。

 冒頭から面白い。戦死した兄の形見の銃(男根)を自分に向ける主人公。だからもちろん奥さんとは子供なし、奥さん欲求不満。彼は社会から取り残されてもいるんだ。解雇には自殺未遂という公開自慰で対抗し、体制側の象徴としての右翼に刺される(男根の使い方を自覚させられる)。反逆の塊みたいな反体制の週刊誌の男は男根の使い方をそれが社会的でなくとも自覚してる。もちろん主人公の対極で複数の女がいる。彼にとっての武器は脅迫的な写真だ。

 体制としての企業による広告写真、この映画では写真は週刊誌の男の反体制としての象徴でもある。矛盾してるんだ。そしてそれによって左右される大衆。当時の時代を感じさせるけど非常に面白い映画。なんだかよくわからない感想になってしまった。
 ★★★★

デリーは燃えているか

2005-10-30 02:41:15 | Weblog
 デリーで同時爆弾テロ発生らしい。ニューデリー駅前の地区といえば泊まったことがある。上野のような商店街に安宿が並んでる。通りの店は観光客慣れしすぎててむかつくのが多かった気がする。やはり欧米人が多いから狙われたんだろうか。
 インドにはホテルに丁稚のガキがいて面白いのが多い。夜にこの地区のホテルの廊下でガキと一緒に蜜柑食べながら隣の家の屋根に投げてたら、路上でケンカが起こってる。商売人同士の揉め事かなんかで追いかけまわしてる。ガキが言うにはありゃヒンドゥー教徒とイスラム教徒のケンカだべさ。そして彼は言ってた「必ずムスリムを殺す」と。このあたりの地区は時たま暴動もあるから銃が必要だと。日本人には理解できない何かが渦巻いてるのだなと驚いた記憶がある。

 インドには見えないけどカーストの階級があるのでその憎悪も渦巻いてるらしい。山際素男さんの本によると、タージマハルで有名なアーグラーって町は人口が100万くらいの中都市。80年代にその町では仏教徒の被差別民とヒンドゥー教徒間で抗争が起こり数万人もの死者が出たという。もはや内戦状態で武器を持たない下層階級の人間は死体を積み上げて壁にして戦ったという。ここまでくると人間の憎悪とはいかに恐ろしいかぞっとしてしまう。宗教、階級、人口爆発、貧富の差、なぜかインドって国には世界の縮図を感じてしまう。

 うろ覚えだけど昔好きだったドイツのパンクバンドの歌

 騎兵隊にインディアン
 共産主義者に資本主義者
 金持ちは貧乏人を食い物にし
 貧乏人は金持ちを食い物にする
 そんなもんさ

ろくでなし

2005-10-28 01:00:05 | 映画
 映画「ろくでなし」

 監督、脚本:吉田喜重。津川雅彦、高千穂ひづる、渡辺文雄。60年

 愚連隊のような大学生たちの青春。津川雅彦だし「狂った果実」系の若者暴走映画。時は安保で社会や大学は荒れてるんだけど、そんなの知るかよと何か気だるく生きている学生たち。戦前の親世代と戦後育ちの息子たちでは価値観が違う。傷つくのが怖いくせに何もかも否定するかのように生きてる。大学にも居場所はなく、友達ともいつ切れるかもわからない、傷つくのが怖いから相手を傷つける、他人は構わないでくれ、おいらは一人が好きなんだと振る舞いながらも相手の言葉に過剰に反応する。そして装置としての拳銃が登場。これをブルジョワ息子がオヤジにぶち込むか、貧しい側の学生がやっぱりブルジョワオヤジに撃って戦前と戦後、あるいは持てる者と持てない者として和解するのが筋なんだけどそうはいかない。

 監督はまだ27歳でデビュー作なんだけどさすがだなと思う。否定して生きてる人間を否定してるっていう二重の否定。貧乏学生が撃ち殺されて兜町みたいな金の集まる地区の路上でのたうちまわって死ぬ。ゴダールの「勝手にしやがれ」と似てる。ちょうど前年に作られてて監督は見てないらしいが同時代的な感覚。北野武の「その男、凶暴につき」にも似てる気がする。人間が死ぬかどうかって所をカメラが悦楽的に後ろから追ってる。なにが「ろくでなし」かって見てるお前ら自身の中にも存在するんだよって、津川雅彦が高千穂ひづるに唐突に指摘されたように映画から自覚させられる。それに過剰に反応できるのかだ。
 ★★1/2

着信アリ

2005-10-27 03:39:14 | 映画
 映画「着信アリ」

 監督:三池崇史。原作:秋元康。柴咲コウ、堤真一

 携帯電話に自分の番号から連絡が来ると死んでしまうホラー映画。あの三池がホラーってことで冒険しすぎだろと見たんだけど、怖がらせ方が「呪怨」に似てる。「リング」なんかは心霊現象を科学的に解明しようっていう視点があったからこそ面白かった。「呪怨」は意味不明なストーカー私怨と恐怖の連続でこれまた面白かった。この映画は警察や葬儀屋、テレビも登場してきて盛り上がりそうな雰囲気はあるんだけど繋がらない。しかもそっちで登場する脇役が目立ちすぎ。刑事の石橋蓮司、死体好きの葬儀屋の岸谷五郎、テレビディレクターの松重豊とこっちのメンバーは何もしてなくてもホラー状態。全体的にあまりジメジメしてないような。いかにも続編作りますの展開がどうにも。。それでも怖いかどうかといったら怖い。
 三池崇史鑑賞8本目。★★

刑務所の中

2005-10-26 02:25:56 | 映画
 映画「刑務所の中」

 監督:崔洋一。原作:花輪和一。山崎努、香川照之 、田口トモロヲ

 刑務所での実話を漫画にしたものを映画化。同じ房のメンバーが山崎努、香川照之、田口トモロヲ、松重豊、村松利史とそんな刑務所があったら入りたいよと言いたくなるメンバー。外国の映画だと刑務所と言えば刺すか刺されるか、誰が掘られるか、虐待してくる看守、そして暴動と殺伐しすぎだろうと大体決まってる。以前に立ち読みした刑務所本によると日本では刑務所では50年代くらいまでは毎年看守が殺されたり暴動が起きてたりとしてたらしい。これは北海道の田舎の刑務所なんでのんびりしててそんなのとは無縁。撮影場所が網走刑務所ってのが最後の笑える場所なんだ。

 日本刑務所名物の軍隊式刑務所。見てるうちにこういう生活もそれなりに面白そうだなとか思えてくる。あまりにも管理されてると快感になってくるのかもしれない。それで一般人とのギャップが見てて面白いんだけど本人たちはおそらく真剣なんだ。いい年したおっさんたちが修学旅行生みたいにじゃれてるのがおかしい。おかしくて山崎努のモノローグの世界にこっちまで入っちゃう。やっぱり刑務所ものはハズレが少ない。
 ★★★