神足勝記を追って

「御料地の地籍を確定した神足勝記」を起点として「戦前の天皇・皇室・宮内省の財政について」のあれこれをとりあげる

No.186 2つの私的所有

2024-05-31 00:30:06 | 余録

    ネモフィラとポピー:昭和記念公園

 きのうの「生と死」の関係、納得できましたか?

(1)生命体の例ような自然科学の問題なら、すぐに納得できますね。
 オスとメスという2つの対立する関係が「否定」されて受精・出産されると個体が生まれます。ところが、この個体が発育・成長を続けると、みずからその生を否定する要因を作り出して死に至らしめるのです。
 つまり、最初の「否定」が起こった結果、「その否定」(「否定の否定」)が視野に入ってくるのです。
 これを否定して、「自分は死ぬのはイヤだ、なんとかしたい」ともがくと、不老長寿の薬を求めて実験したり、旅に出るという珍事になります。

(2)では、社会科学の問題になるとどうでしょうか。
 そこで、きのうの「(資本の)本源的蓄積」についてあらためて取り上げてみます。あまり時間もスペースもないので、ザクッと行きます。
 まず、「本源的」は、元はドイツ語の「ursprünglich」で、意味は「最初の」「根源的な」「当初の」というようなことです。ですから、これを「原始的」と訳した例もありますが、要するに、「(資本の)蓄積」が行われるようになる「始まりの蓄積」ということです。
 上の自然科学の例に合わせて言い直しますと、「始まりの蓄積」は「受精」とか「出産」です。そして、「資本」が生まれると、こんどは成長していくわけですが、それにあたるのが「(資本の)蓄積」ですが、「(資本の)蓄積」が発展すると、自分(資本主義経済)を滅ぼす条件を作って行ってしまいます。
 ですから、マルクスは、『資本論』を書いてその仕組みを解明しようとしたわけです。

   

(3)ところで、私的所有には2種類のものがあります。
 ひとつは、日本でいえば、「つい最近までの農民や職人」のように、「自分で農地や道具をもって、自分で稼いでいる人のような所有」です。「自分の労働に基づく私的所有」です。 これより古い時代になると、もっとそうなります。
 これに対して、明治からあと、とくについ最近のことですが、「土地や資金や工場など」をもっているものの、自分では使いきれない人と、これに対して、働くエネルギーや能力を持っているが、それを発揮する場所を持たない人とがいます。つまり、「雇う人」と「雇われる人」が生まれています。
 もう一つの私的所有とは、この「雇う人の私的所有」です。
 大量にもっている資金や工場などを「雇った他人(従業員、労働者)に動かしてもらい、それによって自分の資産や生活を維持する人の所有、つまり、「他人の労働に基づく私的所有」です。

(4)かいつまんで言いますと、本源的蓄積というのは、「自分の労働に基づく私的所有」によって生活をなりたたせていた経済が解体させられて、「他人の労働に基づく私的所有」に移行する歴史的事件の事をいいます。
 前者の私的所有が解体された結果、いまの日本や世界の資本主義経済が始まったわけですが、そうすると、資本や資本家はお互いに競争してますから、負けて没落しないために、できるだけ自分を大きくしようとする結果、儲け一辺倒になりがちです。
 その結果、勤労者は低賃金のままで、内部留保は積み上がるとか、環境が悪化しても対策がなかなかとられないとか、儲かれば憲法違反の武器輸出までやるようになるとか、資本や有力者に有利な税や福祉政策が取られるなど、様々な問題を引き起こすことになり、新しい社会を求める人々を生んでくるというわけです。

   

(5)もう、いままでのやり方でよいと思っている人はないでしょう。問題は、それをどうやるかです。良い知恵を出し合いましょう。
 パーテイー券、キックバック、政治資金、官房機密費・・・まともな説明はせずに逃げ一方です。都議選も動き出しました。国政選挙もありそうです。

 つまり、マルクスが言おうとしたことは、すでに「新しい歴史の過程(本源的蓄積)」が行われた、やがて「その次の過程(その没落)」が必ず起こるということを弁証法の論理に従って起こることとして予言しているわけです。
 マルクスが、やがてそういう動きが出て来るに違いないことを、『資本論』で科学的に研究したうえで論理的予言をしているわけです。科学的予言です。
 でも、どうするかを決めるのはいまの国民です。

 ちょっと頑張りすぎました。では。

   

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