神足勝記を追って

「御料地の地籍を確定した神足勝記」を起点として「戦前の天皇・皇室・宮内省の財政について」のあれこれをとりあげる

酒巻芳男『皇室制度講話』つづき

2023-12-19 23:01:03 | 皇室会計
 前に、酒巻芳男が『皇室制度講話』(以下、講話)を出版する前に『皇室制度概論』(以下概論1、概論2)という講義案を2度作っていたことについて書きました。今日はその続きを少し書きます。ブログですから、細かいことは省いて、大きな点についてだけです。
 
 酒巻は、概論1⇒概論2⇒講話の順でどこを改定したのかというと(皆さんが概論1・概論2をご覧になれませんから、これを講話の目次でいうと)、概論1⇒概論2では、第7講までで約630ページあったものを180ページに圧縮し、編成替えをし、そして、第8講陵墓の制(42ページ分)と第9講皇室財産制度(39ページ分)を追加しました。

 次に、概論2⇒講話では、上記の第9講までに第10講皇室の経済制度(244~286ページ)と第11講皇室の裁判制度(287~299ページ)を加えました。

 言い直すと、講話をそういう目で見るならば、概論2⇒概論1と推測が可能ということになります。繰り返しますが、これは大筋です。

 以上の改訂について私が注目したのは第9講と第10講です。とくに酒巻がどんな先行研究によってこれをまとめたかです。
 ここでは、一般的な国の法令や宮内省の法令、帝室林野局の法規官制はよけて、次の4点があげられていました。
 1 『帝国国有財産総覧』(澤来太郎)
 2 「御料林事業小史」(和田国次郎、『御料林』昭和5~8年所収)
 3 「皇室会計法大意」(高木三郎、昭和4年)
 4 「皇室会計法規要義」(池田秀吉、昭和9年)
 このうち、1は、皇室財産として所有する有価証券が国策的なものに限られているということを言うくだりで言及されています。2は、収入としての御料林事業の沿革や内容を言うために依拠しています。したがってこの1と2は差し当たりは除けることにしましょう。問題は3と4です。
 結論から言いますと、この3も4も、酒巻の概論1や概論2と同様に宮内省の職員講習のために作り用いたものです。では、どんな内容(概要)でしょうか。ちょっとメンドウになりましたね。
 つづきは明日にしましょう。

  長岡で見た花

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