女優の桜むつ子さん、83才で死去。2005年の1月23日のことだったそうです。
もう6月になっているが、私が桜さん死去の報に触れたのは今日のこと。現実の話としては、50年以上映画界で活動していても、一人の女優の死は大きなニュースとして報じられることはない。
桜さんの出演作の中で私が観て記憶に残っているのは、『シコふんじゃった』『がんばっていきまっしょい』、そして遺作となった『スウィング・ガールズ』の三作のみ。ただ、『がんばっていきまっしょい』と『スウィング・ガールズ』は私の大好きな映画で、DVDを買って何度も観直しているから、「悦子のばぁちゃん」であり「友子のおばぁちゃん」である桜さんには、なんだかずいぶんと馴染みがあるように感じる。作品の中では何年経っても決して歳をとることのない俳優さん・女優さん。そんな役者さん達も、現実の世界では観客と同じ一日を過ごして年を重ねていく。いずれは天寿を全うするのが当たり前なのだが、なんだかとても切ないことのように思えて、ショックなのは確かだ。
このニュースをネットで知った瞬間には、『う~ん』と唸ってしまった私。でも、女優さんとしても、一人の映画ファンとしても、たぶん一人の人間としても、結構幸せな晩年だったのではないかと想像してみる。もちろん、事実は分からない。
1998年のキネマ旬報の邦画ベストテンで第三位になった『がんばっていきまっしょい』と、『ウォーター・ボーイズ』に続いて異例のロングランを続けた『スウィング・ガールズ』。どちらも名作ではないが、何年も愛され続ける映画だ。ちなみに、1998年のキネマ旬報の邦画ベストテンの一位は北野武の『HANA-BI』、二位は『愛を乞うひと』。私は映画が好きな方だが、どちらも観たことはないし、『愛を乞うひと』にいたっては聞いたことすらない。映画は前評判や口上ではなく、愛されて、くり返し観られることにこそ価値がある。そういう作品で若い世代と一緒に仕事をして、いつまでもスクリーンの中にその姿をとどめていられる晩年は、私には幸せなものだったように思える。心からご冥福を祈りたい。
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