マーサの昔話

デジカメでの景色や花、動物などの写真
海外体験談、今日の一品、糖分控えめ?なおやつ等‥‥‥

タクシードライバー

2011年08月05日 | Un fenómeno sobrenatural

 今晩は、大阪市内に住んでいた時の話です。

 民営化前の公社で、事務員として働いていた時、民営化の準備の為
毎日残業で、それから飲み会に行く日などは、最終のバスが間に合わなくて
タクシーで帰るのですが、ある日、奇妙な行動を取るドライバーを見かけたんです。

 JR00駅で下りたのは23時30分過ぎ、もう最終バスはありません。
 南側の駅前に出て、タクシーがちょうど1台止まっていたので、乗ろうと思い
タクシーをめがけて歩いて行ったのです。

 ドライバーは、私を見たのか、ドアを開けてくれましたので、乗り込もうとした時
いきなりバーンとドアが閉まったのです。

 危うく怪我をするところでした。 本当に危ない事。 思わず

 「え~? それはないでしょう。」って感じで、助手席側の窓をノックしました。
  
 ドライバーは10cm程、窓を開けてくれました。

 「あのう、乗せていただけないんですか?」

 「ご免ね。 先に待っていらっしゃるお客様が優先ですから、10分程、待って
頂けますか? 無線で、仲間を呼びますから。」

 「お客様って? 誰も乗っていませんけど・・・」

 ドライバーは後部座席に向いて「どこへ行きます?」と1人で話しています。

 そして、車は発進して行きました。
  
 私は、「変なドライバーね。」と位に思っていたのです。
 「タクシーも乗る人を選ぶのかしら? 最低! そんなの辞めてしまえ。」と
内心、ぷりぷりでした。

 しばらくして、あのドライバーが言ったとおり、同じ会社のタクシーが来て
乗り込んだのです。 

 「お待たせしました。 お客さん、どこまで。」

 「00までお願いします。」

 「はい、00までですね。」

 「ええ・・・実は先ほど、こんなことがありました。」

 先程あった事を、そのドライバーに話したんです。

 「ハハハ、それはないでしょう。 客を選んでいたら、この商売できませんわ。」

 「でしょう?」

 「シゲちゃんかな?」

 「シゲちゃんって、先程のドライバーの方?」

 「あの人は・・・たまに姿のない方を乗せているようですよ。」

 「嫌ね。 ちょうど、お盆だからって。 そんな話・・・」

 「お客さん。 お盆だからですよ。 怖い話平気ですか?」

 「平気ですけど。 何か?」

 「実は、お客さんが乗られたタクシー乗り場ね、終戦の前日、つまり
1945年8月14日に大阪大空襲があって、600名以上の犠牲者が出ている場所
なんですわ。 ちょうど上り列車・下り列車の2本が入線したところで
居合わせた多くの乗客が、高架上の影になる場所に避難していた処に
1発の1トン爆弾が高架を突き破ってホームに落下して爆発し、避難していた
乗客らが爆弾の直撃を受けたそうなんです。 だから、慰霊碑を建てて
毎年、この場所で、遺族が供養祭をしているんだけど、無縁仏さんも
結構、多いらしくて、多分、シゲちゃんには、見えるのかな・・・」

 「なるほど、そういうことですか、私には何も見えませんでした。」

 「そりゃそうだ。 普通の人間には見えないからなあ。」

 「今の私は蛻の殻ですから・・・あなたは見たんですか?」

 「いや、本物は未だに経験無しです。 ただ、1度だけ、幽霊詐欺師には
引っかかりましたがね。」

 「例のあれですか? 現地まで行って、お金を取りに行くと帰って来ないから
家に行ったら、乗せた人が亡くなっていた。 怖くて逃げ出したら、実は
生きていたという・・・」

 「ああいうことを平気でやっている輩だ。」 

 「まあ、強盗も怖いですけど・・・ドライバーさんも大変ですね。」

 「お客さんも、気をつけた方がいいですよ。 霊より人間の方が怖いからね。」

 「まあね、霊にもいろいろありますけどね。 シゲちゃんは大丈夫でしょうか?」

 「連絡取ってみようか?」

 ドライバーは連絡していたようですが、結局、確認できなかった模様。

 タクシーから降りる時、

 「戦争のお話、有り難うございました。 大阪の人間でありながら
知りませんでした。 恥ずかしい事です。 でも、何とも悔しくて悲しい話ですね。
終戦前夜に大空襲があったなんて・・・平和な今に生きていられる事を
感謝しなくてはいけませんね。」

 その時、車内でやり取りがあり

 「シゲちゃん、服部まで行ったらしいよ。」

 「服部・・・ああ・・・あの服部ね。」

 「そう、あの服部。 そのまま、会社に戻るってさ。 貴女に謝っておいて
くれって言ってました。」

 「いいですよ。 シゲちゃん、ちゃんとお客様を乗せて行かれたのだから・・・」

 「・・・ある意味、そうだな。 悪く思わないで下さいよ。」

 タクシードライバーさんとこんなに話したのは初めてだった。

 でもこの夜の経験で、過去を忘れてはいけないんだという事を
改めて感じました。

  

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