『 うさぎの言霊 』 Rabbit's Kotodama 

宇宙の謎、神と悪魔と人とは?

《 序章 》 〈 第二十話 〉 悪魔の偵察隊

2019年02月01日 19時56分13秒 | 小説




    《 キャラクター&キャスト 》

総  帥 サタン (ルシフェル/クラウド) アントニオ・バンデラ〇

  彼を知らない方へ、下記をクリック! イケメンですよ~~!
    画像集 アントニオ・バンデラ〇 
    映画 PV デスペラード


    ( 七大悪魔 ) 

  通説の呼称を無視し、私が命名致しました。
  あたくし作者なので職権乱用です!
  悪魔ちゃん、ごめんなさいね ・・・

司令長官 アンドラスタ / ジョージ・クルー〇―
 将 軍 グリオス   / アンソニー・ホプキン〇
 将 軍 オルゴラン  / トミー・リー・ジョーン〇
 将 軍 バクスト   / ウイル・スミ〇
 将 軍 ドルン    / ウェズリー・スナイプ〇
 将 軍 シアニード  / アンジョリーナ・ジョリ〇
 将 軍 フレッタ   / アン・ハサウ〇イ



      《 推奨BGM 》

   Queen - Innuendo イニュエンドウ





   二〇XX年十二月十八日(木) 23:30
      カウントダウン ( 79:30 )

(執筆当時の作者時間) 二〇〇九年五月二十九日(金)午前一時



   我等が駒沢公園を抜けて上昇していたその時、見えました。
  「神の光玉」の光の輪郭が ・・・何と美しいことでしょう。

  この輪郭は結構厚みがあるようで、
  まるで地球の成層圏の青い輝きと似ています。
  ただ、部分的に光の強弱や、くすんだ所が見受けられます。
               
   その時、三十郎様が眉を顰(しか)めて仰せになりました。


《 居たな、あの馬鹿者めが、おぬしにも分かるじゃろう、
 あの黒光りした魂が・・・》


「・・・とおっしゃいますのは、
 光玉外の横浜付近に蠢(うごめ)く邪気を帯びた光の中に、
 一段と強い邪気を放つ光の事で御座いますね。」


《 その通りじゃ。
 いいか良く聞くのじゃ、そして目に焼き付けよ。

 あれは邪神軍の「アンドラスタ司令長官」じゃ。
 奴は「サタン総帥」の右腕じゃ。

 サタンの命で偵察に来たのじゃろう、部下は数万居るわ。
 奴は、邪神軍の中では最も冷徹で狡猾で、
 飴と鞭をうまく使い分ける戦術を得意としている。

 勿論、腹では部下など単なる捨て駒位にしか思ってはいないがな。》

    チュウチュウ! 

「 邪神アポフィスの手下ということで御座いますか?。」

《 何故、邪神の名を知っておる?》

「 知っているというか、
 魂に焼き付けて頂きました ・・・スミレ様に。」 


      チュウカ。  ルンルン♪  ルンルン♪


《 ほう、そうか。
 では臆病者で卑怯者で、最低な馬鹿者である事もお教え頂いたか?》


「 はあ? いいえ、そのようなことは ・・・
 私が見たのは、十二神将をも恐れぬ、
 大胆不敵な奇襲を仕掛けようとした邪神という、
 スミレ様の恐るべき演出で御座いました。」 フンフン♪  フンフン♪  
  

《 ははは、さもありなんじゃな。

いいか、奴は臆病で用心深い、故に面に出すのはいつも部下だけ。
わしもここ数千年は奴の姿を見てはおらぬ。

邪神軍を任されているのは、サタンじゃ。
全ては奴が作戦指揮を取っておる。

 その作戦を、忠実に完璧に遂行するのが生き甲斐、
 というのがアンドラスタ司令長官ということじゃ。》


「 ところで、そのアポフィスは、
 一体何処で何をしているのでございますか?」


         コレイイカンジ♪  ルンルン♪


《 奴は、地球マントル深くに亜空間を造り、
 そこと本拠地 「 小惑星アポフィス 」
 その他の小惑星に次元光廊で繋げておるのじゃ。

幾つかの拠点を行ったり来たりして、所在を解り難くしておる。
それが臆病者たる所以じゃ。

 わしの様な下級の神には所在は分からぬが、
 上級以上の神々は把握出来ておる。
 その辺は下級の神の鍛えなのじゃ・・

  それと奴が普段何をしているのか?

 ・・・それは、ピアノで演奏と作曲をし、
 部下の楽団を指揮して演奏を楽しみ、
 それ以外は盆栽の手入れをしながら、
 メソメソと自作の絵を眺めている・・・

  というのがわしの掴んだ情報だ。

 奴は芸術の才能に秀でておるのじゃが・・
 プライドが高過ぎて、己の才能より優れた神に喧嘩を吹っ掛け、
 それに敗れたばかりか大神様にお叱りを受けたのが我慢出来なかった。

 それが原因で不平不満を募らせ果てには邪神に堕ちた。
 全く男神の風上にも置けぬ奴じゃ。

  終いには妻に逃げられ行方知れずじゃ。》 


   アホアッホ、アッポヒチュウ!

    デキタッデチュウ♪  ビーズのアクセサリー完成なの~♪
    鏡を出してと・・アラアラ、われながらイイデキですわ!


「 いやあ、驚きました。全くイメージが違っておりまして・・・」


《 そうであろう。

 全ては神々もしくじる
 「我と慢心」を制御出来ん事が要因となっておる。

 天狗の鼻はへし折られると、人に示した通りじゃ。
 わし等も常に気を付けなければならん事柄であるがな。

  あ~~ところでチカチュウ殿。

 さっきから、チマチマ何をしておるかと思えば、
 アクセサリーなど造りおって・・・》 イカガデチュウカナ?


  ・・・あれれ~~、何時の間に洒落た宝石かビーズの装飾が・・・
  額から後頭部を通り、首飾りへと繋がっている。
  こんなデザインは見たことがありません。

  気品に溢れながらも派手過ぎず、流れるように纏まっています。
  あ、それと黄金の腕輪も。

     モット、ホメテチュウダイナ。


《 なな、なんじゃ!
 いい気なものじゃな全く・・・ 女鼠わ~。
  うさぞうも褒めるでない!》


   お洒落は、女神のたしなみジャぞよ、チュウ~!!             

  あわわわわ、お鎮まり下さい。

  あ、あの、ナセル様は私のポケットから、
  ピヨ~ンと三十郎様の髭に飛び移られました。


《 コオラッ、髭をかじるな! 止めんか、分かった、悪かった・・
 その程度は許されるであろう。多分な・・・

  はあ、そろそろ富士山麓に到着じゃぞ・・・
  しかし汚いな、ゴミだらけじゃ・・ん~?

 ほ~ら、案の定、富士の樹海にサタンが居るぞ。

  自殺の名所で、
  自縛霊共を集めて強制的に軍に入隊させておるわい・・

 ちぃ、数百万は居るかのう・・・馬鹿な堕天使めが ・・・
 ふん、気に入らんのは奴の長い黒髪じゃ。
 まるで女のように気色悪いわい。》 チュウデス。


「 はあ、しかし恐ろしい邪気で御座いますね。
 他に部下はいないので御座いますか?」


《 そりゃあ居るわい。
 サタンを除く堕天し悪魔と化した奴は七人じゃ。

こやつ等は七大悪魔と言われておる。
さっきの司令長官に加え、四人の男に二人の女。

何れも超弩級の馬鹿者であ~る。
皆、位は将軍で一人に付き数千億の部下がおる。

 ただ何かと将軍同士で対立しておるのじゃが、
 サタンと邪神には絶対服従しておる。

 奴等は腐っても鯛。身の程は弁(わきま)えておるのじゃよ・・・
 次は、関西に行くぞ。》 


  チュウチュウ♪  タコカイナ~♪  タコヤキッ♪


「 はは! た、たこ焼き食べた~い。」


《 戯けめ、まとめて食べてやろうかあ?・・・

 ああ、まだ三日もあるぞ~。愚痴を言っても仕方がない・・・
 さてと、大阪を過ぎて~~、ん~!
 おいっ、あそこにおったぞ~、血に飢えたハイエナが。》


             ナンデ、オオサカスギタノ~?


「 あ、あれで御座いますね。
 何とも不気味というか悪趣味でド派手な服装ですねえ。」


             グリグリグリオ~ッス♪

  チカチュウ様をニヤッと御覧になられて、
  三十郎様はおっしゃいました。


《 奴の名は、「グリオス将軍」と言うのだが、            
 奴はその風貌のままに相当灰汁(あく)が強い性格じゃ。

常に冷静で、恐ろしい任務を、
癖のある演出で坦々と確実にこなして行く・・・

 それが奴の生き甲斐、快楽なのじゃ。

何れにしても将軍クラスは、曲がりなりにも完璧主義者揃いじゃ。
皆、目標は同じ方向なのだが、やり方は違う。

 やり方が同じなのは、手下の邪霊共を操る方法が
 「極限の恐怖と苦痛」であることだけ・・・

それに加えて「快楽と飴」をうまく使うのがアンドラスタじゃ。
故に、邪神と総帥に信頼を得、司令長官にまで昇り詰めたのじゃ。

つまりは善悪を問わず、トータルバランスに優れ、
大局を見据えて任務を遂行出来る者が、神に使われるということじゃ。》


   チュウナノデチュウ。
   やっぱり卵って回さなきゃいけないわよね。フンフン♪


「 では、少なくとも日本には邪神軍の総帥と、
 その側近が二人もいる訳ですね。
 やはり、決戦の舞台は日本になるということでしょうか?」


《 それは勿論じゃ。

 富士山麓にサタンがいたのは、
「神の光輪」が出現する場所だからじゃ。

 他の奴が東京関西にいたのは「神の光玉」への偵察もあるが、
 もう一つ・・・日本で最も邪気が溢れた都市だからじゃ。》


「・・・ 邪気が溢れた都市で御座いますか?
 それは分かりますが ・・・
 悪魔がいた理由とは・・・?

 以前、三十郎様が仰せになられた、人の想いが、
 恐ろしい化け物になるとか ・・・
 それに関係があるので御座いましょうか?」


《 まあ、そんなところだが、
 もっと想像を働かせるのじゃ、うさぞうよ。

良いか、邪気が溢れ渦巻く場所に化け物が出現する、それは間違い無い。
日本では二箇所と見た。他は中心核となるような場所が無い。
サタンの作戦は、関東と関西を手始めに火と血の海にするつもりじゃ。

 まず、日本を混乱に落とし入れ、
 西と南に別れ徐々に他の将軍達と合流しつつ五大陸を制覇し、
 日本に戻り止めを刺すつもりじゃ。》


   チュウナノ? 
   ホホホ、ワタシノタマゴ、ツンツン♪ コロコロッ♪


「 それで、正神軍はどのように対抗して?
 あッ、いや、それは、
 人の主神様への愛の祈りしかないので御座いますね ・・・
 ところで 「神の光輪」 って一体何でございましょう?」

《 んん~? ちょっと待て・・スミレ様からじゃ・・
 はは、仰せのままに・・よし、東京へ急ぎ戻るぞ。》 


          エエ~、ホナサイナラ~~!


「・・・はい、畏まりました。」


  ・・・あれ、あれれ? 

  さっきからお腹の中が妙な感じ?

  ・・・エエ~、ソウナノ? フフ ・・・


   現在時刻、あっ、午前零時を回り、三十分か ・・・

    とうとう、十九日に入ってしまった。
     明日の七時まで六時間半。

        カウントダウンは、七十八時間三十分。




《 序章 》 〈 第十九話 〉 光の絹織

2019年02月01日 19時25分10秒 | 小説





    《 キャラクター&キャスト 》

氏神 スプリングフィールド (三十郎) / ジャン・レ〇
湖神 ナセル (チカチュウ) / キャサリン・ゼータ・ジョーン〇
うさぎの妖怪 : 信造 : 作者  / 伊藤  敦〇



東京光玉の聖者 ( 黒須 光明 ) 高橋  秀〇

聖者補佐 ( 土門 剣三郎 ) 渡〇  謙
聖者補佐 ( 土門 ミツエ ) 松坂  慶〇
     ( 土門  拳三 ) 妻夫木  〇
     ( 土門 かすみ ) 成瀬  璃〇

マーフィー・ラッセル / ヘイデン・クリステ〇セン
エミリー・マーティン / ベッ〇―
ミランダ・マーティン / アヤカ・ウィルソ〇

聖者補佐  川島 章二 / 草薙  〇
父島島民  駒田 幸雄 / 水谷  〇 




   二〇 X X 年十二月十八日(木) 22:10
        カウントダウン ( 80:50 )


《 さて、この聖紀のイベントを静観せねばならぬのは、無念であるが止むを得ん。 一瞬も見逃さず魂に焼付けようぞ。》 ソウシマショ。

「 は、畏まりました。」


さてさて、いよいよ見た事も聞いた事も無い「招喚の儀」 が始まるようです。剣三郎がトランシーバーで準備の為、他の二箇所と連絡を取り合っています。

   暫くして、聖者 黒須 からの通信があったようだ。
   彼の思念を読み取ると、
   「 招喚の儀 」 と 「 次元光廊 」 の説明がなされていた。

  彼はメモ帳に書き取ると、暫し戦慄で茫然としていたが、
  直ぐに気を取り直し、ミツエと川島に思念波で伝えた。

   聖者補佐同士は思念波での交信が可能なのです。
   思念波が使えない者はトランシーバーで交信しています。

  先程の皇居からの光の帯は、今は見えていない。
  即ち、救いを求める者の祈り次第ということだ。

   皇居内の様子はどうなのだろうか?
   少なくとも、数万以上にはなっている筈である。

《 五万五千名を越えたようだ。
スメラミコトと皇族は、宮中三殿の境内で祈りを捧げておる。
神前には上がらず、皆と同じ地面に座して祈りたいとの事だ。
 ミコトはそこまでせんでもよい事だが、
 その徹底した神に対する真摯な想い、見事と言う外ない。
その神々しい程の姿に群衆は心打たれ、
体力や自信が持てなかった者達も魂が震い立っておるのだ。

 何しろ、ミコトと皇后の肉体も年じゃ。
 それより若い者達が、不平不満を漏らせる筈もなかろう。
 このわしでさえ感動で涙が止まらん。
 これでなくてはならんのじゃ。

高貴で高潔に加え、威厳があるのに決して驕おごらない人間等、
この現界では数える程しかいなくなった・・・実に残念じゃ。》

    チュウチュウ~~。

「 何と、そうで御座いますか。
 陛下らしい慈愛と無私な御姿が目に浮かんで参ります。
 これぞ、世界を統べる王たる証で御座いますね。

 あ、あの、ところで皇居の情報はどのようにして
 お知りになられたので御座いますか?」

                       
《 戯けめ、あんな近くのもの「神の霊眼ひがん」では、
 いとも簡単に見えるわい!

鷹の目でも、数キロ先の獲物が見えるのだぞ。
それに地獄耳じゃから、ひそひそ話も聞こえるのじゃ。

 驚いたか! ふふ~~ん?
 ・・・いかん、しょぼい人間なんぞに自慢話とは情けない。 
                
ああ、それとな、次元光廊を潜れた者は、まだ三名しかおらん。
神の審査は厳しいからのう。》        


「 こ、これは恐れ入りました。
 しかし、まだ三名とは ・・・何とも歯痒いですね。
 裏を返せば認識が甘い、或いは危機感が無いか、
 信じていないか、知らないか? でしょうね。」    


    デチュウヨネェ。 チ、チーズタベタイデチュウ。
    ン~ト、カマンベールトカ・・・


《 まあ、そんなところだろう。
 今だにこの事態を知らぬ者も居るでな。
 それも己の曇りよ・・・ん~?

 どうやら一人目の依頼が来たようじゃ。》



         (推奨BGM)

    ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
    『 ロマンス 』 第二番 ヘ長調 作品五十   

    Orchestra: Berliner Philharmoniker

    Conductor: Daniel Barenboim

    Violin: Itzhak Perlman   





  剣三郎は 「 招喚の儀 」 の説明を皆にした後、
  どよめく群衆に対し正座をして合掌するよう指示を出した。

   そして、次にメモを見ながらこう言った。


「 ・・・ 招喚の対象となる人は、
 小笠原諸島・父島在住の駒田幸雄様、五十六才で御座います。
この方は、妻と子供一人をインフルエンザで亡くしているそうです・・・

 では、これより招喚の儀を執り行います。

私が祈りの文言を口に出して言いますので、
皆さんも私に続いて御唱和して祈って下さい・・・

 主神様、父島の駒田幸雄様を、
 この場に招喚賜りますよう御願い申し上げます。もう一度 ・・・」


   剣三郎は何度か繰り返した後、自分もその場に正座をして祈った。
   だが、暫くして後ろが騒がしくなったので振り向いて、驚愕した。

  彼が見たものは群集全員の美しき 祈りの光線 であった。
  それが上空に行くに従い左に巻き付き太い光の帯になっていく ・・・

   あたかも 「 光の絹織 」 のように ・・・
   太さや強さは違えどはっきり光線が見えるのだ。

    一人一人の脳天から美しき絹のような光線が ・・・

   剣三郎は元より群衆達は、
   自分の光と周りの人達の光を見て感動に打ち震え泣いていた。
        
  興奮の坩堝と化した競技場ではあるが、
  間も無く光が薄くなってきた事に皆気付いた。
  当然だ。祈っている者が少なくなっているのだから。

   剣三郎は慌てて、皆を宥(なだ)めてからこう言った。

                          
「 皆様、如何ですか?
 神の偉大なるみ業を、そして我等の祈りが通じることを ・・・

 さあ、感謝と感激を以って強く祈るのです。
 主神様と黒須様、そして駒田様と我等が繋がるようにと ・・・

 では、改めていきますよ・・・」

 
   剣三郎は、また愛の言霊を繰り返した。 幾度となく ・・・

    おお、これは ・・・

  先程とは比べ物にならない位、
  強い光の絹糸がゆっくり絡み合い紡がれてゆきます。

   その美しき愛の織物が次第に上昇し、
   聖者黒須が待つ皇居上空三千メートルへ向かって行きます。

  耳をすませば、その聖者の言霊が聞こえて来ます。


 ( ・・・ もう少しだ。もっと、もっと、がんばって下さい。
   もう少し ・・・ そう、三分の一位まで昇っています。
     がんばれ、がんばれ ・・・)


  こうしている間にも、続々と人が集まって来ている。
  「光の絹織」 を見て興奮したのだろう、目付きが違う者が多い。


「 三十郎様、我々は何も出来ないのですか? 」


《 出来る。観察じゃあ。一人一人感性が違うし、霊層も違う。
 守護霊の導きも違うしな・・・その違いを見極めよ! 》 チュウ!


「 は、はい、畏まりました。」


   いや~、しかし、小さいから良く見えないが、
   守護霊は皆必死で呼び掛けている。

    見渡せば、十人十色の魂の輝きです。

   ん~、祈りへの想い入れが弱く、
   広く深いイメージを持てない人が、多いような気がしますねェ。

  まだ、指示通り義務的な祈りの方が多い気がします。
  ただ、これは積み重ねでコツを身に付けるしかありません。

  それでも魂の光が強く愛情深い者の祈りは、
  人の何倍もの強く太い光線になっています。

   競技場では、およそ五百名中十名程か?
   中位の強さの光線は百名位。

    後は弱いですが ・・・ 徐々に強くなっています。

   体力が弱い人は、それに比例して気力も弱いようです。
   隣の病院からいらした方々は相当きつそうです。

  中には看護士に付き添われ点滴を打ちながら、
  車椅子で祈りを捧げるお年寄りの方も ・・・

   しかし看護士とお年寄りの祈りは、
   かなりの強い光を発しています。

  並々ならぬ覚悟が伝わって来ます。
  実に神々しくあります。涙が溢れて来ます・・・

   何とか一日でも持ってほしいものです。


  この段階で、亡くなりそうな方が数人おります。
  周りの人が励ましています。

    しかし、強い意志を感じます。
    きっと、死しても祈る資格がある人に違いありません・・・

   せめて明日の七時まで持てばよいのですが?


    ところで思い出しました。


「 三十郎様、一つ忘れていたことが御座います。

 明日の六時に何か御褒美があるような話を聖者がしておりましたが、
 それって一体何かお教え頂けますでしょうか?」


《 あん? まあ、よかろう。但し、守護霊達には内緒だぞ。》

「 はい、お約束致します。」

《 それはな、も~ち~じゃ。》 モチュウデス。喪中ジャナイヨ、プッ。

「 はあ、もっ、餅で御座いますか?」

《 そうじゃ、木になるであろう?》 ププッ。

「 はあ、はい。はっ?」

《 木に生る餅じゃ!》 モチュモチュモッチュモチュ♪

    オモチュウダイスキ。テヘッ、チ~ズアジガイイナ~。

「 木に生る餅ですか。どどど、どの木に生るのですか?」


《 光玉内、各聖域全部の木にじゃ。

 たわわに生るぞ、たわわにぃ。

 腹が減っては戦が出来ぬと申すでな。但し、一人一個じゃ。
 足りるじゃろ。前祝いじゃ、ははは・・・》


「 でえ~っ全部の木にですか、
 うっわあ、それは元気百倍になりますね。」


  だ、唾液出てきた。・・・チュウナノ? 垂らすでないぞよ。

  ・・・は、はい。


《 あ~それとな、木が少ない聖域や北国では降り積もった雪が餅になる。
 砂漠地帯では砂が餅に成るのじゃ。掌一杯が一人分じゃ。

 それを食べれば二、三日は食べずとも空腹にならずに済むのだ。
 どうじゃ夢があるじゃろう。
 これが神の愛なのである。感謝せねばな。》 チュウダゾヨ。

「 ははあ、もうお聞きしただけで有り難くて、
 お腹と胸が一杯になりました。」  アラチュ~ウ?



    二〇 X X 年十二月十八日(木) 22:30
       カウントダウン ( 80:30 )



  おお ・・・こうしている間にも、
 光の絹織が深紅のスクリーンに鮮やかに映し出され上昇してゆきます。

  次第に太い筒状の帯に織り込まれて行く様は、
  何と幻想的なのでしょう。

   それは神と人の愛 ・・・そして光の芸術、
   赤いオーロラとの競演 ・・・

  その様子を、第二の太陽となったベテルギウスと、
  深紅の三日月は優しく見守っています。

 暗黒惑星二ビルのアヌンナキは、神々の監視により地球に手出しできず、
 不満と鬱憤は頂点に達していることでしょう。

  ムムッ ・・・ 更なる共演者が合流してきた模様です。

  それは、蒼く輝く星 ・・・ あれが 「第二の地球」 と呼ばれる
  「 第十一番惑星 クラリオン 」 なのだろう。

 その「クラリオン」は地球と同じ軌道を公転しているという。
 いつもは太陽の影に隠れて見えないのだ。

信じられないと言っても見上げれば存在していますよ。ここでは・・・



  そのクラリオン及び主な太陽系内惑星情報 ・・・

 下記の情報は既に地球内部世界アガルタに、
 アセンションを果たされた K さんによるものです。


11.ク ラ リ オ ン ( Clarion )

  『 反地球 』 地球とほぼ同じ大きさ

  推定総人口数 : 3 億 6 千 400 万人
  物質 - 非物質次元領域 ー 5.1次元領域 ~ 6.9次元領域
  霊的次元領域 ー 8.1 次元領域


12.二 ビ ル ( Nibiru )

  『 暗黒惑星 』 地球の約250倍の大きさ

  推定総人口数 : 1278億人
  物質次元領域 - 3.1次元領域 ~ 4.9次元領域
  霊的次元領域 - 5.1次元領域


3.地 球 ( Earth )

  推定総人口数 : 70億人 ( 地表 )
           180億人 ( アガルタ )
            90万人 ( シャンバラ )

  物質次元領域 - 4.1次元領域 ~ 4.9次元領域 
           ( 3次元から上昇している為 )

  霊的次元領域 - 5.0次元領域 ( 地表上 )

  内部世界 ( アガルタ ) 
     - 5.1次元領域 ~ 6.9次元領域 ( 2010年2月時点 )
  内部世界 ( シャンバラ )
     - 9.1次元領域 ~ 11.1次元領域 ( 2010年2月時点 )

   シャンバラマスター ( 聖白色同胞団 ) 144000人
   アセンデッドマスター ( 大聖 ) 144人


〇 火星と木星について

  火星と木星は、現在、
  地球からの3-4次元領域移行転生の受け入れ中で、  
  これは西暦2020年末まで続きます。

   また、火星と木星では多少事情が異なります。

  火星は地球物質界での学びが希薄で、
  無に等しい方々が対象となっており、
  木星は霊性進化の学びを、
  少しでも習得することが出来た方々が対象となっているようです。

   火星よりは木星での転生のほうが、
   まだ比較的安心できる世界のようです。

  ちなみに、火星と木星の次元領域は以下の通りです。

物質次元領域 - 1.0次元領域 ~ 3.9次元領域
霊的次元領域 - 4.0次元領域 ~ 4.1次元領域


* 太陽の次元領域

( 太陽は地殻天体である。
 電波望遠鏡により証明済み! 当然隠蔽されている。)

 太陽内部世界の非物質次元領域 - 16.1次元領域
 太陽内部世界の霊的次元領域 - 23.1次元領域

 ニュートリノは、太陽内部世界より、
 1985年 2月3日 午前 0 時 0 分から、
 地球に降り注がれてきている素粒子です。

 太陽内部に住む太陽神人たちは、
 これを地球のアセンション計画に伴う、
 地球人類の霊性進化のために開始しました。


   K さん 情報はここまで ・・・



 あっ、忘れてならないのは太陽の存在です。
 例え夜でも関係ございません。

  つまり太陽は地球の裏側を現在照らしているのです。

 それでも太陽から放出されるニュートリノや、
 光子(フォトン)は、地球を貫き我等の体も貫き、
 一つ一つの細胞内の原子にエネルギーを、
 送っているのではないでしょうか?

  ニュートリノは人の体を、一秒間に数百兆個も貫いているそうです。

 これこそ太陽神の愛が物質化した姿なのだ。 
 ありがたいことですね。

  あなたの時間は今現在、夜ですか?

では休む時は、主神様と地球の裏で御活躍の太陽神に感謝して寝て下さい。

  あ~~宇宙は夢とロマンに溢れていますねェ。

そう、我等人類神の子人は常に、天の川銀河のオリオン腕に抱かれた
太陽系の宇宙共通惑星 地球という、奇跡の星に住まわせて頂いているのです。



 そこは、無限の主神の「天意の光と夢」に包まれた世界なのです。
 これ以上、何の不足があるというのでしょうか ・・・

あっ、宇宙科学、天文学の勉強もお忘れなく ・・・
要点だけでいいんですから。

 注意点としては、一つの事だけに熱中し過ぎると、
 他の大事な部分が身に付かず、
 欠陥人間になり神様は使いずらいですから、
 満遍なく学ばせて頂きましょう。

ただ人間様の作った仮説を捏ねくり固めた文明って、
つまらなさ過ぎますよねェ。

 それを真に受けて生きる人には、夢も希望もロマンも一握り。

 神の世界は無限の愛で満ちているというのに、
 いやはやお叱りを受けて当然ですね。


 こうして天空全体を見渡すと、赤き炎の正神軍が、
 愛と正義を誇示しているようにしか見えません。

  邪神軍からは鬱陶しくも嫌味な、
  宣戦の狼煙にしか見えないでしょう ・・・

 奴等の歯軋りが聞こえて来そうだが、
 恐らくはこれだけの神気が充満していれば、
 そうそう邪魔は出来ない筈です。

しかし、どこかで必ず奴等は隙を伺い潜んでいるでしょう。
何しろ 「神の光玉」 内で活動出来るのは、
後八時間十五分程でしかないのですから ・・・


 さて遥か彼方、海の向こう側からの祈りの主は、
 必死で叫んでいるに違いありません。

  もう少し、もう少しで光の帯は聖者黒須の十字架に届きそうだ。

 剣三郎や拳三、マーフィーにその他の奉仕者達は、
 光の弱い人に激励をしています。

  その甲斐あってか、あまり利他愛の無さそうな人も、
  祈りの波動が強くなって来ている。

   チラチラと、上昇する光の束を確認する度、
   勇気と力が湧いて来ているようだ。

   ・・・ あああ、遂に遂にこの時が ・・・


   駒沢公園に集結した、千数百名の皆様の祈りが、
   光の絹織が今、光の十字架に繋がった!

  おお、聖者黒須の十字架が強烈な閃光に包まれた瞬間、
  南の空の彼方に太い黄金のビーム光線が放たれました。

 しかし何故か、そのビーム光線と地上からの光の帯は、
 一瞬で弾け散りました。


  ・・・おおお、その光の粒子が頭上から、
  まるで大輪の花火が散った後の枝垂れ落ちる火花のように、
  宙を舞ってゆらゆらと降りて来ます ・・

  美しい ・・・ 言葉が出ません。

   皆、見とれて溜息があちこちで漏れています。

    「 あああっ!!」

   ぬ、群衆の後方で誰かが叫んだ。そうか忘れていた。
   皆が向いた場所には、光を帯びた一人の男性の姿があった。


《 良くやった、見事だ! 我が子供達よ。》

  チュウダワネェ、ホホホホ。

「 本当に良かったですね。」

 
  その男性、駒田の元に皆集まって行く ・・・
  彼は横になって倒れている。

  表情は夢見心地という感じである。
  だが、直ぐに意識を取り戻した。


「 ここは、一体何処です。・・・どど、どうなっているんだ。」

「 ここは、神の光玉内の駒沢公園、祈りの聖域ですよ。」

  近くの女性が答えた。
  彼は、興奮して事の経緯を話し始めた。


「 わわ、私は見たんです! 天使様を!
 ・・・ 薄っすらと光の中に、優しく微笑んで ・・・

 こっ、この私の体を抱きかかえ ・・・
 それから意識が無くて、気付いたら此処にいました。

  そ、それがまさか、駒沢公園とは ・・・
  信じられませんが、祈りが通じたんですね ・・・

 か、神様、本当にありがとうございました。
 天使様ありがとうございました。
 ううう、うあっ、ああああ~~~っ!」


   拍手喝采の中、駒田は周りの皆から胴上げをされた。


「 やった、やったんだ! 俺達はやったんだ。」
「 凄いよ! 奇跡が起きたんだ。祈りが通じたんだ。うあ~~!」


  皆、喜び涙を流しながら、
  お互いを讃え合い神の偉大さを実感していた。

   感動とは神動。歓喜は神喜なのだろう。

  皆の血が沸き立ち、無限の力が噴出するのを感じます。

  更に私が体感した、あの大霊宮、神議り場での
  究極の感動の一端を垣間見た瞬間でもありました。

   実に素晴らしいことです。

  しっかし、天使が次元光廊を潜って来ていたとは ・・・
  何とも凄い演出です。


《 そうじゃろう。神の演出とは芸術そのものじゃからのう。

   「神様お願い申し上げます。 ポンッ!」

 で目の前に現れたら芸が無いし感動も薄れるからのう。

 そうは思わんか?》


    ポンッ!?? 

  ・・・ああ、あ、アレッ? タマゴ 産まれた、フフ・・・


「 おっしゃる通りで御座います。
 では、先程三十郎様が天使の件をおっしゃられなかったのも
 演出といういことで ・・・」

《 おお、分かるようになって来たではないか。
 物事、始めから全部言ってしまっては、
 面白くないからのう。ホーホホ。》


   お、他の二箇所からの人達も駆け付け、祝いの輪に加わった。
   ミツエとあの姉妹の姿も見受けられる。

    剣三郎か連絡を取ったのだろう。

   そこに、群衆を掻き分け剣三郎が入って来て、
   南方からの同志に挨拶をし、
   涙ながらに 「招喚の儀」 の説明をして聞かせた。


「 ・・・ そのようなことで、あなたは此処に招喚された訳です。
 本当におめでとうございます・・・

  お集まりの皆様!
   盛大なスタンディングオベーションをお願い致します。」



    うおおおおおおおおお~~~~っ !!!


    と、歓声交じりに万雷の拍手が巻き起こりました。
    いやあ、彼は人をうまく乗せる術に長けていますねェ。

   すると、剣三郎に新たな指令が下った様だ。
   彼の大きな目が更に大きく見開いた瞬間、
   慌てて左のポケットからメモ帳とペンを取り出し書き取り始めた。

    そこを拳三がペンライトで照らしている。

   次に走りながら元居た場所に戻るよう皆に指示した。
   急いで拡声器のマイクでメモを見ながら話始めた。


「 え~、黒須様から、次の指令を頂きました。
 それは、この光玉外に救いを求める人がいるとのことです。

横浜市港北区の相田由実子様、62才、一人暮らしで足腰が弱く、
近所では直ぐにこちらへ向かう人が居ない為、
大通りで車に乗せてもらおうとして、
そこに向かう途中転んで足を捻挫して、
その場で動けなくなったそうです。

 この方を、直ちにこの場にお連れするようにとのことです。
 つまり、招喚の業は余程の事が無い限り許されないのです ・・・

  拳三、この役はお前に任命する! いいな!!」


   この時私は、拳三に流れる血が一瞬で沸騰したように感じた。


「 はいっ、喜んでお受け致します!」 けっ、敬礼ですか! 


  うひゃひゃひゃ、やったぞう! 一人レスキュー隊だあ。
  ヒーローだあ、くうう~。あ、いや不謹慎だな。
  それに、そうはしゃいでもいられない ・・・

   拳三の思念である。 彼らしい発想だ。


「 ねえ父さん、その相田さんは、ど、どうやって探すのかな?
 携帯もここ数日、通話もメールもダメだし、番号分かるの?
 それとも住所で探すの?」

「・・・それが、何でも赤い光が指し示すとの事なんだが、
 お前見えるかああ~、あれじゃないか?
 ああ~そこだよ、あそこ~!」


   剣三郎が指さした先には、
   光の灯台から伸びた赤い光が確かに見える。


「 えっ、うっわあ、見えるよ。
 あの先にいらっしゃる訳だ。凄いよ全く!」

「 えっ、どこどこ? 僕には何も見えないけど。」

  マーフィーが顔を顰めた。

「 あ~たしも、見えないいーー!」


  かすみが双眼鏡を覗きながら叫んだ。何持って来てるんだ。

「 ちょっと貸しなさい ・・・ああっ、あたしもーーー!」

  ミツエが、その双眼鏡をかすみから取り上げて叫んだ。 あのネェ ・・・

「 え~、どこなの、どうなってんのよ、お~い!

  叫んでどうすんのよ~い。

「 ああ、お姉ちゃんのお腹がグウッて鳴った。ププッ。」

  ソッチですかぁ~い。ミランダをニランダエミリー、ププッ。


「 ・・・ お、お前達なぁ、

 いいか、あの光は私と拳三、
 つまり救いに向かう者にしか見えないそうだ。

 これから、何人も人海戦術で救わねばならない為、
 混同しないようにとの配慮からだ。

 いやあ、全く素晴らしい ・・ ん? 
 おいおい、ミツエと川島君達は早く戻って ・・・

 あ、そうだ。体力、特に持久力に自信のある者を選抜しておいてくれ、
 指令が降りたら順次救いに向かってもらうからね。頼んだよ。」


「「 はい、了解しました!!」」


  そう敬礼して、ミツエと川島は、
  それぞれ連れて来た同志達と戻って行った。

  皆、高揚して益々血が熱く燃え滾って来たようだ。
  お互い笑顔で励まし合っている。

   団結心が更に増したことでしょう。




       (推奨BGM)

  ジョージ ・ ウィンストン  DECEMBER


  




  二〇 X X 年十二月十八日(木) 23:00
     カウントダウン ( 80:00 )



   さて、剣三郎は拳三と何人かで、
   地図を囲んで道順を検討している。

  これは大事な作業だ。

  赤い光線辿って行けばと思っても、
  徒歩で道を誤れば数十分かそれ以上の時間が無駄になる。

 光線はカーナビのように、道路の上には示されない。
 故に最短距離を導き出す作業は絶対不可欠だ。

  こういう時に無計画な奴は使えないし使われない。
  なんとかなるさ方式も通用しない。

   人の命が懸かっているのだ。

  どうやら道順が決まったようだ。
  車椅子を押しながら向かうことになるので、
  ここから横浜まで、片道一時間以上は掛かるだろうか?


「 父さん、じゃあ行って来ます。連絡は取れなくなるけど、
 必ず相田さんを連れて戻るから祈っててよね。」

「 勿論だとも。それと、今気付いたんだが・・・
 あの赤い光線は私にも見える訳だから、
 お前がこちらへ向かうようになれば一目瞭然だ・・・

 こりゃあ凄い。何かあれば、助っ人を向かわせる事も可能だ。
 これは、何と言う神様の御愛情だ。」


   なるほど~。ナルヘソ~。


「 いやあ、ホント凄いや。と、とにかく行って来るよ。
 それでは皆さ~ん、行って来ますので応援宜しくお願い致しま~す!」



  と、手を振り、群衆からの声援を受け、
  空の車椅子を押しながら拳三が走って行った。


「 お~い、ペース配分には気を付けるんだぞ。
 ああっ、おい待て~、水を持って行けぇ~!」


  慌てて剣三郎が、水の入ったペットボトルを抱えて走って行った。
  そう言えばそうだ。水無しじゃ無理だ。危ないところだった。

  ということは、予備の水がかなり要りますネエ。


《 まあ、それもそうだが程々にせんとな。
 人間、無いものねだりもするが、
 有ればいいだろうということにもなる。》 チュウダヨネエ。

「・・ それは、つまり明日からの話ですね ・・・
 二日目位で自分の水が無くなった時、
 予備の水をくれという事になると ・・・」

《 その通り。忍耐と自己管理の訓練でもあるのに、
 それではいかんじゃろうが。》 チ~カ。

「 水をニリットル以上飲むと、いったいどうなるのでしょう?」

《 いや、それは飲めんじゃろう。
 何せ規定の量を超えると、水が血に変るのじゃからな。
 神は甘くはないのじゃ。》 チ、チカ、血~カ? 血ュウ~~!

「 うえっ、血で御座いますか。それは、飲まないでしょうねえ。
 で、では木に生る餅を二つ食べたら、如何でしょう?」
      
《 その場はお咎め無しじゃ、
 だが勿論、神との約束を守れん奴は使えない。
 因って七時までの命となる。言うまでもないわ。》

    ハシタナイデチュウ。

「 はは、本当の最期の晩餐で御座いますね。怖い。」

《 ふん、食べられただけでも増しじゃろう。

 どれどれ、あまり一箇所に留まっていても状況は掴めん。
 あちこち視察と洒落込もうかのう。

 スミレ様からは、その辺の自由は与えられておるから心配は無い。
 どうじゃ、チカチュウ殿に信造よ。》 

 イイゾヨ、チャンチュウロウ殿。

「 私も賛成で御座います。」

《 しかし何だな信造。

  そんな姿なのに、おぬしだけ愛称じゃないとは・・・
   これから「 うさぞう 」と呼ぶが、良いな。》 

「 ははあ、有り難き幸せに存じます。」  

   ウサゾ~~オサン、ゾ~~オサン、ププッ・・・

《 よ~し、では出発進行じゃあ!》

 チュウ~~!

「 おおお~~~!」




 あああ、木に生る餅食べたいですねェ ・・・

ところで、その木に生る餅ですがぁ、架空の話ではないのです。
この地球は過去に幾度も大天変地異がありました。

 その都度、人類の救済措置として、木に餅が生ったと、
 人類最古の古文書である、「竹内文書」に示されているのです。

それ故、日本人は特にそのご恩を忘れまいと、
正月には餅を神前や仏前にお供えしたり、
東北や一部の地方では、
紅白の餅を小さく丸めて木に直接つける風習があります。

また旧約聖書にも、モーセとイスラエルの民がエジプト脱出した後に、
荒野をさすらい苦しみましたが、ある時の夕方、
うずらが飛んできて宿営を覆い、
朝には、宿営周辺に霜が降りたといいます。

その霜が、「マナの奇跡」と言われる、白く甘い食べ物だったのです。

 ただ、旧約聖書はサタンが書いた
 偽書であるとの情報がありますが ・・・

それに、これから起きうる七度目の大天変地異の際には、
どうなるかは知れません ・・・

 あったらいいですね!



《 序章 》 〈 第十八話 〉 招喚の儀

2019年02月01日 17時03分05秒 | 小説

 


     駒沢オリンピック公園総合運動場  参照



                          
        ( 推奨BGM )

      サンクスギヴィング ( リピート )
      ジョージ・ウィンストン ( ピアノ )



    

 二〇 X X 年十二月十八日(木) 18:30
      カウントダウン ( 84:30 )



  拳三達は、まず剣三郎の所へ向かった。

駒沢公園内の陸上競技場に入り、東側トラック中央付近に行くと、
集まった数百人の中に剣三郎の姿があった。

 いち早く集まった者達の魂は、流石に強く光って見える。

剣三郎の脇には暖を取る為のドラム缶から、バチバチと炎が上っている。

それに拡声器にメガホン、トランシーバー、
大小様々なライトと電池に ・・・

 これは何の為に使うのか、車椅子が十台程と担架? が並べられていた。

場内の前後には発電機から電源を取った、
大きな照明のライトが煌々と光っている。

  剣三郎は拡声器で皆に何やら指示を出している。
  拳三達は、話が終わるまで待たねばならなかった。


「・・・それでは皆さん、
 今お話した事をしっかり念頭に置いて行動して頂きたいと思います。」


   剣三郎の話が終わった。

  自警団のジャケットを着たメンバーは、
  拳三達に笑顔で手を振りながら球場の外へ走っていった。
  その他の人の一部も後に続いた。

   剣三郎は、拳三達に話し掛けた。


「 皆、御苦労だったな。

見ての通りまだこれしか集まってはいない。
ここで二百十二名、母さんの所は百五十、川島君の所は百二十五名だ。

黒須様のお話ではトータル千名集まらないと、
次の指令の内容は明かせないとの事だ。

だから、何としても早急に千名集めなければならない。
それはお前達にも協力してもらう。
道路に出て呼び掛けてきて欲しい。

但し、強引過ぎてもいかんぞ。
純粋な祈りが出来なければ意味がない。分かったな。」


「 分かったよ父さん ・・・

僕は父さんの事を凄く誇りに思ってる。

同じように、補佐役になりたかったけど・・・
でも考えてみれば、すべき事は同じなんだよね。

僕は精一杯、父さんの補佐役に徹すればいいんだ。
父さんの子供で良かった。

ありがとう、父さん。本当にありがとう ・・

・・うあああ~~っ ・・・」


   拳三は剣三郎に抱きついて、大声で泣いた。


「 私もがんばる ・・ 父さんありがとう 、父さん ・ うう ・・」

「 先生、僕も ・・ 全力で ・・・ ううっ。」

叔父様ぁ~~、うわ~~ん ・・・」

「 パパー ・・ うう ・・・」 ミランダには、パパなのですね。


  剣三郎は皆を抱き寄せ、ただ黙って涙した。
  聞こえて来るのは、心に響く愛の言霊です。


( 果たさねば、我等が使命を ・・・ 
  示さねば、光ある道を ・・・
   この子達と、世界の同志の皆様と共に ・・・
    何としても神が望まれる文明の礎を築かねば、必ず、必ず。)


  目をカッと見開き歯を食い縛り涙を流しながら、
  炎の闘志が更に燃え上がっていった。 


「 お前達は ・・・ 私の誇りだ。
 そして世界にも神様にも誇れる。

 母さんも言ってたぞ、
 お前達との生活が幸せで仕方ないと、
 いつも神様と御先祖様に感謝してた。

 マーフィー、君のアメリカの御両親も
 神の光玉に向かっている筈だ。
 連絡が取れなくても心配はないだろう。

 地球の何処にいても、
 我等が使命は変らないのだからな。」


「 はい、ありがとうございます。
 僕は、聖者木戸様のお話を聞いて、
 強い人類愛が無いと、神様には通じないことが
 嫌と言うほど分かりました。
 それにどれ程、主神様を蔑ろにして来たことも ・・・

 だから、僕は与えられた使命を全力で遂行します。
 拳三とみんなと力を合わせて・・・」


「 良く言ったなマーフィー。同感だ。
 君は僕の兄弟だ。永遠にだ。覚悟しろよ!」


  二人ともニヤッと笑うと、抱き合ってまた泣いた。
  するとエミリーが剣三郎に言った。


「 叔父様、私とミランダは
 叔母様の所でお手伝いをしたいんです。
 行ってもいいでしょうか?」


「 勿論だとも。お前達がいれば母さんも喜ぶだろう。

 ミランダ、お前はまだ若いが立派に神の使命を果たせる力がある。
 エミリーと他の皆さんと力を合わせて、
 神の子人にはまだ大きな愛があることを、
 主神様にお見せして救って頂くのだ。」


  剣三郎は片膝を着いて、ミランダを優しく抱きしめた。


「 パパ、私出来るよ。主神様のお役に立ちたい。
 だから ・・・ 辛くてもがんばる。」

「 そうか、お前ならきっと出来る。」


   剣三郎は、ミランダの涙を優しく指で拭った。


「 さあ、みんな。任務だ。
 千名集めるのは特別な理由があるに違いない。
 これは神の試練だ。急がなきゃいけない。」 拳三が言った。


「 拳三、エミリー。
 これを持ってゆけ、周波数は合わせてある。
 人数が揃った時点で連絡するから急いでくれ。頼むぞ、みんな!」


「「「 はい!! 」」」


  剣三郎は、笑顔でトランシーバーを二人に渡した。
  拳三はエミリーに、歩きながら使い方を教えた。
  すれ違いに、祈りに加わる者達が歩いてくる ・・・

 後、五百名余り、どれほど時間が掛かるだろう。
 残った者はお年寄りと病弱な者ばかりだ。

その人達は、一人でも多くの同志が参集出来るよう祈っている。
それとは別にカウンターを持って、
集まった人数を数えている人がいる。

  なるほど抜かりはない。
  しかし、千名集まると伝えられる使命とは何か?


《 知りたいか? 》 チ~イ?

「 えっ、宜しいのですか?」
 
《 構わん。その前にあれを見よ。》


  三十郎様の指差した上空には、
  皇居付近から一直線に伸びる太い光の帯が、  
  上空の光の灯台に繋がっている。

  そして、その光の灯台から南の方角に、
  更に強くなった光の帯が伸びたと思ったら、一瞬で消えた。


《 今の地上の光源は皇居からのものだ。
 そして 光の灯台、聖者黒須 からの光の行き先は、小笠原諸島じゃ。》

「 西の富士上空ではなく、南にですか?」

《 思い出すがよい聖者木戸の話を ・・・
 何らかの理由で「神の光玉」に来られない場合は、
 最期まで諦めずに祈れと。

つまり、その強い祈りを持つ者が南の島々に居るのじゃ。
離島では、ヘリや飛行機でなければ明日の朝までは間に合わん。

 自衛隊の協力が無ければな。が、それは無い。
 政府は島民からの要請を拒否した。

その憐れな者達への救済措置が
「 招喚(しょうかん)の儀 」というものじゃ。》

チュウデス。
   

   招喚 = 招き入れること。  
   召喚 = 役所が人を呼び出すこと。強制的な意味。

 

「 招喚の儀、で御座いますか?
 え~、瞬間移動のようなもので?」


《 まあ、似て非なるものじゃが・・・
                   
つまり、先程の「光の帯」の中は「次元光廊(じげんこうろう)」になっており、「神の光玉」に入るに相応しい者だけが通り抜ける事が出来るのじゃ。
勿論、一瞬にな。

 千人という数が必要なのは、神議りでの決議故の事。

言ってみれば神鍛えなのじゃ。
明日からの本番に備えての予行演習も兼ねている。

 神に祈りが通じる事の実感をしてもらう。
 それが、今の人類には最も大事な事じゃからな。

それに、皇居内は付近の住民で溢れるだろうから、
他に振り分けねばならない。

まず、島にいる者からの強い祈りを受け、
この場内に入る資格者の名前を一人ずつ祈り迎える。
その繰り返しで、明日の六時ギリギリまで続ける。

 全世界でも同様にだ。

又、関東付近の障害その他の問題を抱え、
光玉に来れない者が居るが、そこは人海戦術となる。》


「 それで、車椅子や担架があるのですね。」


《 その通り。

 神から許された者は、聖者から地上の補佐役に
 名前と住所が伝えられえる。

それだけでは不十分だから、
その者から発せられる祈りの光線を、肉眼でも見えるようにする。

 つまり、本人と聖者との間には、
 分かりやすいように赤い光線が道標となり、
 救うべき者の場所へ確実に導く。

その赤い光線は混乱を避ける為、
救出する者だけにしか見えないようにするのだ。

ただ承知の通り、全ての道は放置された車が溢れておるから車は使えん。
歩く他ないから、距離があるほど時間が掛かる。
その時間と体力と人数。車椅子や担架では二人必要じゃな。

 後は何人かで行って、
 背負うのを交代しながら戻るの繰り返ししかないか・・・

余りの遠距離であったり、時間的な問題があれば、
特別に 招喚の儀 による救済が許されるだろうが、
何れにしても祈りの強さの度合いで決まる。》


「 これは、なんという細やかな御配慮であることか、
 私、感動致しました。
 ただ、人を真の意味で救うということは、
 とてつもない神と人との愛の繋がりがないと適わないのですね。」

    チュウダヨ!





      ( 推奨BGM )

 エクトル・べルリオーズ / 幻想交響曲 Op.14

 指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
 ベルリンフィルハーモニー管弦楽団




  二〇 X X 年十二月十八日(木) 18:30
       カウントダウン ( 84:30 )



《 では、ここに居るより
 拳三達の働き振りを見たほうがよかろう。参るぞ。》

  チュウ~~。

「 はい、畏まりました。」


  私達は拳三達の後を追った。

  陸上競技場の入口では、女性の案内係りが一人立っている。
  今、一人入口に入ろうとした人に、
  元気よく声を掛け励ましている。

 見ていて気持ちがいいですね。

ところでェ、一つ忘れていたことがございます。
それは、豆柴、犬四郎のことですが、
彼は祈りの聖域には入れませんので、
駒沢公園の入口付近で待つように拳三に言われていました。

 拳三達が自由通りに出ると、
 犬四郎と合流して主人のお手伝いをすることに ・・・

ただ車の渋滞は相変わらずですが ・・・?
あれっ、もう諦めたのか車の中には人影が無かった。

 皆、歩道を力無く歩いている。
 当然、ぼやく声が聞こえる。


なんてことだ。家まで十数キロはあるのに ・・・
しょうがない、近くの駅わ~っと、都立大学だったか?

 でも、混んでるだろうな。
 しかも、本数も大分減ったし、でも歩いた方が速いかもな・・・

祈るのはどうしよ。
はああ、俺なんて居ないほうがいいに決まってるし、
三日もどうしろってゆうんだ。

 地獄の惑星の転生とか業火は嫌だけど、
 政府やマスコミの言うとおり  
 宇宙人の侵略説も有りかもしんないし、んん~~ ・・・

でも、あの光の灯台とかの光も望遠鏡で見れば、
ちゃんと聖者の姿が見えるって言うし、
まあ、聖者かどうかは分からなくても、
光自体の存在はここからでも見えるし、
あの聖者の言う事は説得力あるしな。

間違いなく政治家なんぞより、
言ってることが遥かにまともだし愛情も感じる ・・・
まあ、まだ時間あるし家帰ってからじっくり考えよ ・・・


 これは、二十代位の男性の思念であるが、
 彼の言う通り大都会での交通機関は乱れに乱れ、
 JR職員も現在では以前の半数以下になってしまっている。

何故なら細菌性、ウイルス性の伝染病は、
交通機関から広がってしまうという宿命があるからだ。

 勿論それ以外の人が大勢集まる公共施設、
 スポーツその他のイベント会場も、大概は運営を自粛していた。
 というより、状況が許さないと言ったほうがいいだろう。


  さて恐ろしい事が起きる前夜です。
  今し方、あり得ない物が見えて来ました。

    血のオーロラです。

  いやあ、お見事ですねェ。
  正しく芸術そのものではありませんか ・・・

  ワインレッドのカーテンが夜空に映えて、街行く人に ・・・
  そりゃあ歓声は上がりません。

 益々恐怖が圧し掛かり、人々の心の悲鳴だけが響いて来ます。

神様の演出は強烈ですね。
戦慄が全身を貫き血の気は失せます。         
ある者は血が滾(たぎ)るかも? 私は両方です。
ははは、血は霊そのものです。

その血が失せたり、滾ったり、凍ったり、
燃えたりするとは実に面白い!

 神々に恐れを、そして賛辞を ・・・
    
この真紅の緞帳(どんちょう)が上がった瞬間、
流星火矢が天空から降り注ぎ、三日間に亘る短くも長い、
全次元を巻き込んだ激闘の舞台が始まります。

 そして三日後、
 幾億万年の「正邪の戦い」に終止符が打たれるのです。

そうだ、陛下の御生誕の日は四日後だ。
いやあ、おめでたいことですねェ。
偶然? 在り得ないでしょ。必然ですよ、神仕組みですから。

 それに月ではない、何か不気味に光る赤い巨星が見えます。

  これが噂の二ビルなのでしょう!
  アヌンナキの巣窟、悪魔の星、邪神の故郷 ・・・

 更には、オリオン座のベテルギウスが大爆発を起こし、
 太陽の如くに輝いております。

  日が落ちるまでは、太陽が三つ存在したと言えるでしょう!

 まあ、この異常な状況ですから、
 何があってもおかしくはありませんが ・・・
 ただし月は新月間近の為、細い三日月での共演です。

  これでは月の赤うさぎがどこにいるのか? 
  あ~~、分っかりません!


《 紅の二ビルと、太陽と化したベテルギウスと血のオーロラか・・・
 もう一人の役者はまだだな。

 信造よ、おぬしも良く見ておくのじゃ。
 この光景が見られるのも今晩だけじゃからのう。

 何せ明日からは地球全体が厚い雲の絨毯で覆われてしまうのでな。》

  チュウチュッ。 

「 はい。」


  だいたい大きな天体の動きは、
  NASAやら世界中の宇宙観測をしている科学者等は、
  かなり性格に把握していた筈です。

 ただ、人類の存続に関わるような恐ろしい事実は、
 各国示し合わせて報じられることはありません。

  メディアには強力な圧力が掛かっているからです。

 恐怖に慄きながら暮らすよりは、最期まで能天気に暮らして、
 真実を知らずに天国に召された方がよっぽど良いと言う訳です。

  それは、止むを得ない措置であるとは思いますが ・・・

 当然、イルミナティーを始めとする世界の重要人物、
 一部の金持ち権力者等は、必死で生き残る方法を模索し、
 地下に潜ってジッ、としていようとか下らない策を巡らし、
 巨大な地下施設を作ったりしている訳です。

  見苦しくも無駄な事ですが ・・・

 正神軍は、そういう邪心邪欲を逆利用して、
 自らの墓穴を掘らせているのですがぁ、 
 本人達には知る由もありません。

  お気の毒ですがお別れです。

    モグラの皆様、永遠に ・・・


  ところで、え~、拳三達はと ・・・ あっ、いたいた。
  拳三がさっきの青年に声を掛けている。
  犬四郎も尻尾をフリフリ愛想を振りまいている。  

「 あの、すみません。家に帰るところですか?
 それでしたら、帰らないで下さい。

 この駒沢公園が「祈りの聖域」になっていますから、
 家に帰って心の準備したいでしょうけど、
 今、千人集める使命が神様から与えられましたので、
 何としても早急に人数が必要なんですよ。」

「・・・ い、いや、でもちょっと家に帰って、
 風呂入って旨い物食べてからにしたいんだけど ・・・
 来ないと不味いのは分かるんですが、
 決心が今一つ付かないというか ・・・」

  暗いし冴えない。以前の私みたいだ。

「 家は遠いんですか?」

「 川崎なんですけど、
 まあ歩いても今日中には着けるんじゃないかと・・・」

  歩くのか?・・・今、19 時を回ったところ ・・・

「 川崎は光玉の外に出てしまいますね。
 ・・・ のんびりしていると、戻れないか?
 もしくは、光玉内に入れないかもしれませんよ。
 この中に居ることが重要だと思うんですが ・・・

あなた見てると、ホント入れなくなるかも?
ああ、悪気は無いんですが、危険ですよ外は ・・・

 あっ、水の準備ですか?
 僕の家、近いので持って来ますから、
 まず競技場に行きましょうよ。

偉大なる神の御計画に参画出来るんですから、
迷わずに行きましょう。ねっ・・・」

  そうだ~。チュウ~。ほほほ~いいぞ~い。

 暗い青年は、しぶしぶ拳三に付き添われて
 競技場に入って行った。

  おっ、他の人もぞくぞく連れて来た。
  みんな必死でがんばっている。

 拳三達は手分けして、何往復もして人を集めてきた。

剣三郎から集合の連絡が来たのは、
22 時を回った頃であった。無理もない。

 あの青年じゃなくても、
 ゆっくり考える時間が欲しいと思うのは誰しも同じ事だ。
 一回帰ると言い張る者がほとんどであった。

  まあ、家族と話す時間も欲しいだろうし ・・・

 ただ時間が在り過ぎると、
 堕落した人間は重い腰が更に重くなる傾向がある。
 だから、半日余りしか時間の猶予が与えられなかったのだ。

  神は全てお見通しということだ。

 しかし、時間は十二分に与えられていたのだ。
 何千年も前から、幾多の預言者や聖者を通して
 警告を発せられてきた事をお忘れなく ・・・

 
自由広場のミツエの様子は、
女性らしい細やかな気遣いと的確な指示に、
皆、喜んで従っているようだ。

 エミリーとミランダは、
 テキパキと満足そうにお手伝いをしている。

他にも、進んで世話役を買って出る者が多数いるので楽しいだろう。

 ミツエは不安で暗い想念になる者達に対して、
 主神様にお使いする喜びを力説し、やる気を出させている。

硬式野球場の川島にしても、
聖者からの指名があるだけに中々の働き振りである。

 この辺は自警団で剣三郎から、
 厳しく鍛えられていただろうことは容易に想像が付く。

  群衆からの不平不満に戸惑うこともあるが、
  他の自警団のメンバーと協力して、
  人々の想いを主神様に向かうように、
  試行錯誤しながら訴え掛けていた。



《 序章 》 〈 第十七話 〉 神の光玉

2019年02月01日 16時03分48秒 | 小説



  二〇 X X 年十二月十八日(木) 18:00
       カウントダウン ( 85:00 )

( 作者執筆当時の時間 ) 二〇〇九年四月二十五日 午後五時十分



 ところで我々は真っ暗になった外に出ましたが、
 皆、LEDのライトを手に持ちリュックを背負って歩いています。

  駒沢公園は近いのでしょうね。
   ビル明かりも疎らな大都会の現在。
    私には天の川が辛うじて見えています。

    無粋な車のクラクションや、その他の騒音は聞かぬ振りをして、
    あの音だけに集中して下さい。



        ( 推奨BGM )

       ジャン・シベリウス作曲
    「 樅(もみ)の木 」作品七十五―五 (リピート)

       (演奏者) 志鷹美沙

 これ以上、私のイメージに合った演奏が探せませんでした。

        


          

      何処からか、ほら、聞こえて来るでしょう ・・・

     私とあなただけに聞こえる儚げなピアノの音色 ・・・

   ただ、聞き耳を立てているのは我々だけではありません。
  守護霊に街路樹や風の精霊達。

そして、隙あらば人間を不幸に落とし入れんとする邪念の持ち主 ・・・
邪神の操り人形である憑依霊・浮遊霊、自縛霊等。

ですが、気にする必要はありません。
邪念邪心邪欲を持たずに、
ひたすら神の御為と人類愛で祈り行じれば、
邪霊悪霊の類は邪魔出来ないのです。

それは、守護霊が邪魔出来ないよう守護して下さるからです。
天使や神も後押しをして下さいます。

 そして大愛なる神は邪霊をも救おうとされます。

  何故なら、皆、我が子だから・・・


   愛する人を守る。

  誰もが望む事ですが、
 人間一人の力が及ぶ範囲は余りに狭いものです。

守りたい救いたいと願う範囲が、自分だけか?
恋人だけか? 身内だけか?・・・それでは範囲が狭すぎます。

その狭い視野には、全人類と神の姿は入ってはいないでしょう。
であれば神に祈りは通じません。

神を信じていると言って、僅かな賽銭を無礼にも放り投げ、
自分や家族のことしか祈らない。

 神に礼を尽くさず、侮辱した振る舞いに加え、
 普段は信仰心の欠片も無いのに、
 その時だけの俄(にわ)か信心からなる祈り。

 人間でも、その卑しき心は見抜けます。
 加えて、たいした努力もしない人間を
 守護してあげよう等という神は、何処にも存在致しません。

狐狸(こり)の類に化かされ面白がられるのが関の山です。

遂には守りたいと思った人は、目の前で不幸に落ちてゆく。

もはや、御利益信仰が罷(まか)り通る時代ではないのです ・・・
時代遅れだと神に呆れられます。

我々の魂の寿命は永遠です。そう考えれば百年足らずの人生は一瞬。

ですが、我等人類に残された時間は後僅かです。

その貴重な時間の中で、与えられた型示しから、
 神の御意志を少しでも掴ませて頂きたい切なる想いを常に持ち、
  聖使命に邁進させて頂きたいと思うのであります。

   くどいようですが、その道しかないのです。 

    ほら、まだ聞こえているでしょう・・・光の音霊が・・・


   ピアノは美しきアルペジオから、緩やかに鍵盤を指が滑りゆき、
  清流の水面に煌くような音色を奏でる ・・・ 

一音一音、一滴一滴。

広がる波紋が幾重にもなり、儚く消えゆく神の紋様 ・・・

その華麗なる旋律は時に激しく、時に優しく響く光と音の芸術。
それは音霊と数霊の妙技であり、宙を舞う見えない光の幻想。

 一瞬の芸術。

  その悲哀に満ちた調べは、
  人類の醜い文明の黄昏に失望した神々の
  溢れる涙の雨音のように、私の胸に落ちて参ります。

  この憤りと哀しみに涙する心は、あなたにもある筈です。

  何故なら、あなたは赤い神の血が流れる神の子であり、
 私の家族の一員なのですから ・・・


ピアノが奏でる愛の波動。

作曲者シベリウスが見上げた樅の木は、
北欧の寒空の下で枝葉が揺れていたのだろうか?

そんな情景を音霊で奏でるピアニストの愛、
そしてその音色に乗せた神と私の愛。

 その愛は、きっとあなたの心の奥底にある、
   魂まで響いていることでしょう ・・・



   ふと、拳三が立ち止まった。上空を指差している。

  一同は一緒にその方向を見上げると、
 強い決意と燃える思いが更に増してきました。

おお~、そうかあれが関東圏の「光の十字架」「光の灯台」なのだ。
聖者木戸の光にも匹敵する強烈且つ美しい光だ。

希望の光の主は、確か黒須光明。 クロス は 十字 なのだ ・・・


聖者や救世主の魂は、
天上界から天降る為に魂が綺麗な夫婦の女性に宿す必要がある。  

 いつ、どのタイミングで宿すべきなのか ・・・?


 ・・・ この夫婦は産児制限をして暫く子を作る気はないようだな。

   守護霊は、指導霊は何をしておる、
  愚か者め、産めないようにしてくれようか ・・・

 しかし、今でなければ間に合わん。誰か他はいないのか?
もう、何ヶ月も待っておるというに、候補者の名簿を見せよ ・・・

止むを得ん、強行策を取る。
少々曇り深い一族だが、この夫婦に汝を託す事にしよう。

この夫婦の曇りに釣り合わせる為、
汝には産まれて直ぐ障害を与えねばならん ・・・

 す、すまぬが耐えるのじゃ。苦しみも喜びとせよ。
  行け~い、愛する我が子よぉ!・・・ 

    「 ははぁ!! 」


このように 『 産霊(ムスビ)の神様 』 の
御苦労なされる御姿が脳裏に浮かんで参ります。

 上記の描写は勿論、私の推測でしかありませんが ・・・


落ちぶれ果てた我等が人類。
恥ずかしくはないのか? 余りに情けない、無様だ!

 もう、人間ですらない・・・

残念ながら今の現代人は、
殆ど地獄界、あるいは火星から転生してきているのが実情です。

辛い地獄の修行に明け暮れ、サトレずに更に堕ちる者もいるでしょう。

そんな中、物質界で人間の男女がSEXをしたとすれば、
妊娠後その男女の曇り(悪徳)と
釣り合いが取れる魂が胎児に宿されます。

 善徳や能力は別になります。

どういうSEXかはともかく、曇りを積む一方で、
神と己の為に向上しようという努力が無ければ、
ほぼ間違い無く地獄から魂が招喚されます。

 そして、妊娠から十月十日前後に誕生する訳です。

当然、SEX は夫婦の営みでなければならないと私は思いますが ・・・
現代人にはその常識が通用しないですね!

 完璧に狂っているのです!

ここは、よくよくお考え頂き、
淫らな性欲を抑制して頂きたいと思います。




  ところで、彼等の服装。

エミリーは洒落たスーツ、ミランダは学校の制服。
二人ともコートを羽織っている。

拳三、かすみにマーフィーは藍色の道着の上に、
自警団専用と思しき 深紅のジャケットを着ている。
そしてオレンジ色の手袋、足にはスニーカー。

 彼等もスーツは持っているでしょうに
 気合が入る方を選択したのでしょう。

そのジャケットの胸と背中には、
オレンジ色と黄色い炎のような 「暁」 という
筆文字のマークが貼り付けてあります。

 その文字と前腕の外側 ・・・ん? この部分は妙にゴツイ。

これ ・・・ 恐らくは急所を防御する為、
ナイフ等の刃を通さない素材と、
光を反射する素材とが使われているようだ。

 街灯や懐中電灯に強く反射して光っている。

確か光玉内の気温は世界中どこでも二十度に保たれるとのことですが、
それは当然、明日の七時になってからでしょう。

今はかなり寒いですから、厚着をしていないと風邪を引いてしまいますね。
私のウサギスーツは寒さは感じませんが ・・・

彼等は途中、示し合わせていたのか御近所の皆さんと合流しながら、
駒沢公園に向かっている。ただ、どうにもならない車の渋滞です。

 バイクや自転車、徒歩の者しか進めないようです。

そして聞こえるのは、車の乗員の罵声とクラクションです。
これは、戦で小競り合いをしているようなものです。
車で何処に行くのか?

 それぞれの祈りの場所への移動手段なのか?
 単なる夕方の渋滞なのか?

何れにしても、交通の大混乱は避けられないとは思いましたが
収拾はつかないでしょう。

 当然ながら、汚い言霊を使って罵声を上げる者の魂は真っ黒です。

何しろ汚い言霊を使った時は、まず己の魂と心を曇らせ、
言霊から音霊が融合し、
最後に言葉に変化し周りの人の心と魂を曇らせます。

言葉に加えて顔が醜い表情になると、相手に与える影響は増します。
すると他人を苦しめた罪が、
又、己に戻って来て汚れるという悪循環が生まれます。

 その汚れは肉体、特に血液に大きく影響していきます。

   血は霊そのものなのです。

 普段から不平不満の想いを募らせ、
 汚い乱暴な言霊と言葉を使う人は常に魂が汚れ、
 邪霊・憑依霊に操られ易くなりますから要注意です。

  言霊の力は人を生かし、殺す事も出来るのです。

 こうして醜い魂から溢れ出た濁微粒子が、
 まるで汚泥が流れ落ちるかの如く地面に溜まっていきます。

 その影響は連鎖反応をして周りに広がって行きます。

  邪神の思う壺です。

   こういう人達が明日、流星火矢で亡くなるのでしょう ・・・


拳三達は、この状況に呆れながらも時たま、
車を降りて駒沢公園に向かうよう勧めています。

 たいがいは罵声が返ってきていますが、
 守護霊の皆様も五人に一生懸命働き掛けています。

歩道を歩いて公園に向かっている人の魂は、比較的綺麗に見えます。
勿論それは、命懸けでこの人類の一大危機に立ち向かおうという
覚悟がある人だからこそでしょう。

 ただ、皆一様に表情は硬く青褪め、
 心は不安と恐怖に満ちています。

無理もありません。
しかし人類はこの難局を何としても乗り越えなければ、
未来は無いのです。


  距離にして約三百メートル。
  信号のある十字路に差し掛かった。

 左手は駒沢公園だ。随分近かった。
 右手には東京医療センターという病院がある。

そこから、ぞくぞくと入院患者と思しき人達が、
家族に付き添われ歩いている。

 車椅子の人や、ある者は一人でよろよろ歩いている。

拳三達は手分けして、歩くのが辛そうな人や車椅子の人に
手を貸し励ましながら付き添って歩いた。

当然と言えるが、彼等の心情は死を覚悟して悲愴感が漂う者と、
生きがい死にがいを見付け、
目が爛々と輝き気迫に満ちた者とに分かれた。

 恐らく、信じない、やる気のない者は病院から
 出よう等とは思わないだろう。

体力が無い者は、三日間水だけでは身が持たないのは明らかだ。

いずれにしても魂の曇りはともかく、
何処までやる気があるか否かが問われることになるでしょう。


 駒沢公園内に入ると、
 拳三達は五人集まって両親どちらに付くか相談している。

 ただ、もう腹は決まっているようだが、離れ難いようだ。

彼等もいい大人だ。
この状況では、好きに場所を移動出来ないこと位分かっている。

どうやら三十郎様のおっしゃる通り、拳三・かすみ・マーフィーは剣三郎に、
エミリー・ミランダはミツエに付くことになった。

 彼等の話によると、剣三郎は陸上競技場に、ミツエは自由広場に、
 自警団員の川島は硬式野球場にいるらしい。


  風が強くなってきた。

 闇の中で、街路樹が大きな枝葉を揺らしている。

 風の音や樹木の枝と葉が擦れ合う音も、
 落ち葉が地面と擦れ合う音も実に悲しげだ。

今、世界中で我等が家族同志同胞の皆様の心情は幾許だろうか?

この瞬間にも、天災人災あらゆる災厄で、
苦しみ抜いて亡くなる方が何千何万とおられるでしょう。

 どれほど無念なことか、そして残された御遺族の悲しみは・・・?

そして、その姿を常に見続けなければならない主神様のお苦しみ、
お悲しみは計り知れません。

  それを想うと、胸が張り裂けそうになる。

 ただ、主神様の天意に目覚め奮起して、
 希望と救いの灯台を目指している人は大勢いるに違いない。

  そんなことを、ふと想いました・・・


  その時、大きな樅の木が怪しく光りだした。

  そこから現れたのは木龍神様だ。
  穏やかな眼差しでこちらを見ておられる。


《 お役目ご苦労。全ては主神様のみ心のままだ。
 心して掛かるのじゃ、手筈通りにな。》

  チュウ。

《 心得ております。》

 木龍神様は会釈をされ、静かに樅の木と同化してゆきました。

  木龍神としての修行は、いつまで続くのだろう。
  百年か? 二百年か? 木が朽ち果てるまでか?

そうだ、水龍神の御修行は楽しいのでしょうか?
チカチュウ様、如何ですか?

 タノチュウヨ!

そうで御座いますか、
湖の守護神で在らせられるのですから、やり甲斐がありますね。

 私もがんばらねば! ガンバッテネ!フフ。


 拳三達は、まず剣三郎の所へ向かった。

陸上競技場の中に入り、東側トラック中央付近に行くと、
集まった数百人の中に剣三郎の姿があった。

 いち早く集まった者達の魂は、流石に強く光って見える。

剣三郎の脇には暖を取る為のドラム缶から、バチバチと炎が上っている。

それに拡声器にメガホン、トランシーバー、大小様々なライトと電池に・・・
これは何の為に使うのか、車椅子が十台程と担架? が並べられていた。

場内の前後には発電機から電源を取った、
大きな照明のライトが煌々と光っている。

 剣三郎は拡声器で皆に何やら指示を出している。

 拳三達は、話が終わるまで待たねばならなかった。



《 序章 》 〈 第十六話 〉 決戦前夜

2019年02月01日 14時20分01秒 | 小説

 


   《 キャラクター&キャスト 》

東京光玉の聖者 ( 黒須 光明 ) 高橋  秀〇

聖者補佐 ( 土門 剣三郎 ) 渡〇  謙
聖者補佐 ( 土門 ミツエ ) 松坂  慶〇
     ( 土門  拳三 ) 妻夫木  〇
     ( 土門 かすみ ) 成瀬  璃〇

マーフィー・ラッセル / ヘイデン・クリステ〇セン
エミリー・マーティン / ベッ〇―
ミランダ・マーティン / アヤカ・ウィルソ〇
豆芝 : 犬四郎 /  加藤 〇史郎
聖者補佐 ( 川島 章二 / 二十七才 ) 草薙 〇



      《 推奨BGM 》 




    二〇XX年十二月十八日(木)16:30  
      カウントダウン ( 86:30 )


  ・・・ はぶるる ・・・ ビュルルるる~~ ・・・
・・・・耳がプロペラ~~ ・・・ 遠心分離機い~~・・・
・・ ヒュルヒュルルル ~・・ ゴヒュウ ~~ ・・・ キキキーーッ!

・・ あうう~? 止まった。 しかし、随分回ったなあ。 いやあ~参った。
   まだ、くらくらする。 ののっ、脳みそが偏った。

 あっ、そうだチカチュウ、お前まだ石を持ったままだな。

その両手の石は僕のポケットに入れて置きなさい。もう使わないだろ、きっとね。
ついでに君もポケットに入って、顔だけ出していればいいよ、チカチュウ!

なはは、かわいいな君は ・・・ チ~カ ・・・ ぷッ、ピカチュウみたいだ。
それに僕カンガルーの気分だ。 あと、ドラエモン。


   《 お~い、もし。わしを忘れておるぞぉ。》 へッ?


     うわあ、龍の円座から声ががががぁ ・・・ 
      しかも上半身を持ち上げられて ・・・

        気が変になりそうだ。


「 ああ、これは失礼を致しました。あのお、龍神様でいらっしゃいますか?
 それに、ここまでお連れ頂きましたのも、あなた様のお陰ということで?」

《 まあそうだが。あまり硬くならんでよいぞ。三日だけの付き合いじゃ。
 スミレ様からは下座の行じゃとの仰せでな。
 つまりは、おぬしの監視役ということじゃあ。

 しかし面白い組み合わせじゃのう。龍と鼠と兎か、はははは ・・・

 ところで、わしの名は ・・・ 

 そうさなあ、三 十 郎 で良いわ。椿が好きだからな。
 生まれて三十九万年、もう直ぐ四十郎だがな。まあ、宜しく頼むぞ。》 


    さ、三十郎様? しかもパクリ?  ・・・ 
    これ、映画「 椿 三十郎 」 の名場面です。 

   流石は神様、パクる部分が違いま? 
   ああ、とんだ失礼を ・・・ に、睨んでおられる ・・・・・


「 は、はい、あ、御挨拶が遅れまして、私、関口信造と申します。
 こちらこそ宜しくお願いを申し上げます。
 しかし、このままのお姿で三日で御座いますか?
 私はとても恐れ多くてなりませんが。」

《 ん~、気持ちは分かるが、おぬしはおぬしで、
 常に神に対してのお詫びと感謝の想いを強く持つということが大事じゃ。
 その行をせよということなのだよ。
 それに、スミレ様もいちいちおぬしに構ってはおられないのでな。》

「 はは、胆に命じまする。
 はあ、ど、どうりで円座が妙に暖かい訳です。
 それに、単に『 とぐろ 』 を巻いておられるだけで御座いますね。
 しかしながら我々のこの姿、
 鏡で見たらさぞかし奇妙に写るのでしょうね。」

                 チュウチュウ。

《 奇妙で滑稽なことがお好きなのが、スミレ様じゃあ!
 このトリオの絶妙なバランスは凡人には理解できんじゃろうな。》

「 そうおっしゃいますれば、そうで御座いますね。
 あっ、ところでここは土門家の居間に戻ったのですが、
 誰もおりませんねえ。
 ああ、豆芝の犬四郎が部屋に入って来ました。
 お~い、犬四郎。みんなは何処に行ったんだ?」


「 そ、そとだよ。あとはよくわからないよ。」 クウ~ン??


  プッ、相当不思議そうだ。無理もない、この姿を見ればね。
  それに知る訳がないよなあ。

  きっと、あの聖者が示したことを信じて、
  親戚、友人、知人や御近所の人を救う為に駆けずり回っているのだろう。

《 わしも、おぬしの考えた通りじゃと思う。
 暫くすれば帰って来るだろうから待っておれば良い。》

「 はい、畏まりました。」  チカチュウ!


《 では、待つ間に伝えておこう。
                 
よいか、この関東の聖者は黒須光明(くろすみつあき)と申す者でな、
既に「神の光玉」の上空に居る。「神の光玉」の中心部は皇居である。
そして、この家の場所は東京の八雲である。
ここは光玉内であるから移動することもない。

何処か近くの大きな公園その他の広場などが 「祈りの聖域」 となり、
そこに付近の者は参集して祈るということになっておる。

 ここからだと 駒沢公園 が「祈りの聖域」 に指定されておる。

ただ東京の神の光玉は、世界の要の領域になるのでな、
特別に範囲を広くして、30キロ圏 となっておる。》


「 そうで御座いますか。ところで三十郎様。
 気になるのは「神の光玉」内に於いての事で御座います。

 つまり、あの掟の三ヵ条の中に、
 相応しくない者は追放されるという件ですが、
 この光玉内で仕事場や住居を持つ者の中にも、
 相応しくない者など何百万人も居ると思うのですが、
 いったいどうやって三十キロ圏外に追放するというのでしょう?」 

                          チュウ?
                    
《 それはな、「 流星火矢(りゅうせいびや) 」 を使うのじゃ。
 この神裁きの三日間では、
 光玉内での善魂悪魂を選り分けるのは神々でも厄介でな。

そりゃあ、魂の光具合で区別は付くが、
物理的に悪魂人間だけ外へ出て行けというのは、土台無理な話だ。

 そこで、主神様は流星火矢使用の決裁を成された。
 その火矢の特性は、人の肉体に外傷を付けない事にある。

一瞬で脳幹の神経を貫き絶命させる。痛みすら感じずに死ねる。
それは傍(かたわら)に居る者を含めての配慮であり、神の慈愛じゃ。

 但し魂が肉体を離脱し後は光玉から追放され、憑依した霊と共に
 三日間激痛を味わうことになる。

それから動物や昆虫はペットを含めて、
聖域である光玉から外に追い出すことになっている。

 地震の時と同じように電磁波その他の粒子を使ってじゃ。
 ただ、檻や室内にいるものはしょうがないがな。》


「 はああ、お、驚きました。
 そのような細やかな御配慮が成されていたのですね。
 考えただけでも恐ろしいですが、
 その流星火矢はいつ放たれるのでしょう?」


《 それは、明日の午前七時丁度にだ。
                                           
 七時に光玉の門が閉ざされたその直後、
 光玉上空から火矢を番えた弓を持つ
 数千の裁きの天使達 が一斉に火矢を放つ。

一度に十の矢を番(つが)えて射る事が可能だ。

その火矢が一斉に放たれる様は、
まるで流星群のように見えることから、流星火矢と名付けられたのじゃ。
まあ火と言っても肉眼では光のシャワーにしか見えんだろうがな。

 明日からの三日間、
 空は厚い雲で覆われ太陽を拝む事は出来ないから、 
 火矢の光は鮮やかに見えるであろう。》

「 えっ、肉眼でも見えるのですか?」 チ~カ?

《 見える。そればかりか 祈りの光の帯もじゃ。
 おぬしが霊眼を以って見えるものが、常人にも多少は見えるようになる。

人間は他人と比べ愕然とし、誰にも頭が上がらなくなるであろう。
つまりは魂の光を実感させ、
己が神の子であることを自覚させることが目的なのじゃ。

 又、唯物主義の人間に、
 神の存在を分からせる為の強硬手段という意味もある。

それと火矢を使うのは随時じゃ。
その為、裁きの天使達は人間には分からぬよう、
常に光玉内を監視するという役目を帯びているのじゃ。》

「 そ、それは、なんと恐ろしい事でしょう。
 つまり、それらは主神様が封印を解かれた力なのですね。」 チュ~ウ!

《 その通りだ。まだまだ人と神を鍛える為の仕組みが幾重にもある。
 それらは段階的に執行されてゆく。
 そこで人と神は徹底的に鍛え育てられる。

 でなければ、これから迎えようとする神と人とが一体となった、
 神十字文明を成就することは適わないのだからな。》

「 そうで御座いますか。
 そこ迄の大いなる神の愛の中で生かされて来た人類なのに、
 神を蔑ろにし恨み呪う者さえいる始末。

 そのとてつもない罪穢を、
 明日からの三日間でどれだけ真剣にお詫び出来るのか?  
 私達には、祈りつつ最期まで見届ける以外にないのですね。」

《 まあ、そういうことだ。
 今のおぬしには、直接人間に関わる事は許されてはいない。
 そして、わしと、その鼠もじゃ。》  チュウチュウ!

「 ところで、もう一つ御質問を宜しいでしょうか?」

《 構わんぞ。どうせ暇じゃからな。》

「 ありがとうございます。

 え~、主神様の封印されていた力は、
 邪神にも与えるということで御座いますが、
 実際はどのような形になるので御座いましょう?」 チュウ?

《 世にも恐ろしい事になる。な~に実に簡単明瞭。
 人間の望んだ物が形になるだけのこと、
 それが正義の味方か悪魔か化け物か?

 人間の望むイメージが物質化する。

恐怖の体験、痛快な出来事、
栄光の日々に戦争の悲劇、それに伴う喜怒哀楽。
それら人間の過去の、
あらゆる感情や転生中の潜在的記憶も影響してくる。

 つまり堕落し神から離れた人間の悪い部分を炙り出し、
 再認識させた上で払拭フキハラウという、
 主神様の最終手段なのじゃ。
    
言っておくが、それは邪神軍だけでなく正神軍にも影響するのだ。

光玉内でも力でなんとか邪神軍をねじ伏せよう等と、
良からぬ邪念が過(よぎ)ることが推測出来るからのう。》

「 こっ、これは声も出ません。
 精神的に付いて行けない者も出て来るでしょうね。」

《 ふっ、なんだ、怖気づいたか? 侍が聞いて呆れるぞ!
これでは、池の中の鮒じゃ。ふなふな、鮒侍じゃ、ぶはははははーー!

いや~、龍の空飛ぶ円座花火は実に痛快じゃったのう。
 思い出すだけで笑えるわい! 

 が~はははは。

おぬしが大山様とのやり取りで、
途中からスミレ様がおぬしの口を借りて、うまい芝居を打たれて、
大山様を褒め称えられた時は、
流石は主神様の御嬢様だと感心しきりじゃったわい。

 しかし、あのスリルときたら ・・・ 
  小筒花火を銜えて ・・・ぷぷっ。》


「 あの~笑い事では御座いません。

 確かに私も感心は致しましたが、
 ああいう目に会ったのは二度目なんですよ。

 もう~~、幸い気絶は致しませんでしたが。」


《 なんじゃ二度目じゃったのか。
 聞いたか、ねずみぃ。だあ~はっははは・・・》    

   チュチュ~ウ。

「 あ、あの、もう一つ御質問が ・・・

 あの、こちらの鼠様はもしかして、
 神の化身だったりするのではないかと・・・?」

   エッ、チ~カ?

《 決まっておるじゃろう! 何だと思ったのじゃ、戯け!
 いつ気付くか見ておったが ・・・

寝惚けた事を言っておると、亀から追い抜かれるぞ。
兎は足が速いと自惚れ油断し過ぎるのが欠点じゃ。

 おお、そうじゃ、おぬしは鮒侍じゃなくて、
 居眠りこいて鼻風船を膨らます鼻風船侍じゃ。
 ふはふは、ふはは?・・・いや~、ちと長いなあ。

これでは減点の対象になるぞ、いかんなあ ・・・鼻侍?
風船兎。捻りがないぞ、ぬうう ・・・》


「 あああ~~、何と言う失態を~~。
 鼠様、もーしわけ御座いませんでした。
 ところでこちらの鼠様のお名前は何と申されるので ・・・」 

   チカチュウ!

《 あん? チカチュウで良かろう。この者も気に入っているようだしな。》

   チカチュウ!

「 しかし、それでは余りにふざけていると・・・」

《 あ、そうそう。別に内緒にする必要もないから言っておこう。
  良いなチカチュウ殿。 ぐふふふゥ ~~ 》 ・・・チチチ、チ~カ。

《 なあ、おぬし、あの神議り場におったであろう。
 それで、大黒天様からお叱りを受けた
 下級神がいたことも間近で見ていた ・・・

  恥ずかしながら、その下級神の中に我等がいたのじゃ ・・・

 わしの名はアメリカの氏神、
 マサチューセッツ州の スプリングフィールド じゃあ。

そして、こちらの鼠様はエジプトの偉大なる湖神 ナセル 殿じゃあ。

 だから、胸を張って名乗れなかったのじゃ。
 全く情けないわ。おまけに、しょぼい兎の面倒を見る羽目になるとは ・・・

  ああ、いかん。愚痴と不平不満はいかん。  
  スミレ様、申し訳ございませんでした。お許しを~。》



     《 キャラクター&キャスト 》

氏神 スプリングフィールド (三十郎) / ジャン・レ〇
湖神 ナセル (チカチュウ) / キャサリン・ゼータ・ジョーン〇
うさぎの妖怪 : 信造 : 作者  / 伊藤  敦〇



   二〇 X X 年十二月十八日(木) 17:10
      カウントダウン ( 85:50 )



「 ああ、じ、事情は良く分かりました。
 でもあの時、下級神の皆様は地獄界に行って一千万の魂を集めるという、
 恐ろしいお役目を頂かれたのでは?」 チ~?

《 まあ、そうなんじゃがのう。

わしら二人はスミレ様の特命を受け、急遽おぬしと合流した次第じゃ。
訳は申されなんだが、わしらは足手纏いになったのかもしれんのう。

・・・んん? いや、そうじゃそうじゃ。
その暗い発想がいかんのじゃ。

 どんな、しょぼいと思われるみ役でも、
 一つ返事で謹んで御受けし、全身全霊で遂行するが神の使命なれば、
 愚痴を言うなど言語道断とお叱りを受けるは必定。

そうじゃスミレ様はわしらの欠点を見抜き、
わざとしょぼいおぬしの元で修行をするよう仕組まれたのじゃあ。

 おお、なんと有り難い大愛なるみ意じゃ ・・・のう、鼠殿。
 おぬしも地獄での魂集めに気が向いていたところに、
 肩透かしを食らったようじゃと嘆いておっただろう。

良いか、わしらは他の神々とは一線を画し、
この兎と共に明日からの三日間、
戦いの最前線を渡り歩き、
神々の偉大なる御業と天意を我等が魂に刻み付けるのじゃ!》 

  チュウチュウ! しょぼ~い、おっしゃる通りです。ガクッ。

「 私も胆に銘じまする。
 と、ところでナセル様はなんとお呼びすればよいので ・・・?」

《 じゃから、チカチュウで良いと申しておるに分からん奴じゃ。
 それで、わしは三十郎。良いな!》 チュウ!

「 畏まりました ・・・ ところで、チカチュウ様は
 普通にお話することは禁じられているのですか?」 チ?

《 ばはははは。この鼠殿はのう、余りにおしゃべりが過ぎたのが原因で、
 過去に幾度となく失態があっての。

 きっと、それでスミレ様はおぬしに対して、
 通常の言霊はなるべく使わんようにと仰せになったのじゃろうて ・・・ 》

  あは~~、それはそれは・・・

     わんわん、わんわん。

  犬四郎が玄関に走って行った。誰か帰って来たのだろう。

 外は随分暗くなって来ている。現在時刻、午後五時を回ったところです。 ただ、私達のこの姿を彼等の守護霊が見たら、悲鳴を上げて卒倒するかも?

《 構わんじゃろう。この位で驚いていたら、
 これからの地獄の光景には耐えられんぞ。
 それと流星火矢と他の事柄は内緒にしておくのじゃ、分かったな。》

「 はい、畏まりました。」




      ( 推奨BGM )

   ペーター・チャイコフスキー作曲
   舟歌 「四季 作品37b第6曲:六月」 (リピート)
  ピアニスト 不明





   むむっ? どやどやと、何人かが部屋に入って来た。

  犬四郎は大喜びであるが、守護霊の皆さんは私達を見た途端、
  悲鳴を挙げたと思ったら直ぐ頭や体の後ろに隠れた。

   守護霊は一人に一人付くという決まりはなく、
   志願した者はなれるようですので、
   ここの住人にはかなりの人数の守護霊が付いています。

  それを他所に帰ってきた住人は、興奮して話続けている。


「 おいっ、みんな急げ。そこの棚に空のペットボトルがあるだろ。
 後、ライトと電池とメモ帳とペンを有りっ丈いるぞ。
 それと、地図がこの付近から ・・・
 川崎と横浜だったな、そのコピーを有りっ丈。

 後は、犬四郎の水とご飯を四日分位はないとな ・・・
 えーと、水の貯蔵タンクはと ・・・ 
 あっ、これくらいあれば足りるだろ。」

  拳三が言った。マーフィーは地図のコピー。エミリー姉妹は犬の世話。
  かすみは、水をタンクからペットボトルに移し替えている。
  水道は止まっているのだろうか?

メモ帳は恐らく、聖者から受け取った指示を書き留める為のものだろう、
間違って伝えては話しにはならない。成る程抜かりは無いようだ。

  ただ、剣三郎とミツエがいない。

    別行動か?・・・ 


「 三十郎様、チカチュウ様、守護霊に事情を聞いてみましょうか?」

《 うむ、そうするがよい。まずは挨拶からじゃ。》 チュウ! 

   は、畏まりました。

「 守護霊の皆様ぁ~。お取り込みのところ恐縮ですが、
 こちらへいらして頂けないでしょうか?」

  恐る恐る、皆の守護霊が集合した。

 まずは私から三十郎様とチカチュウ様の御紹介をさせて頂き、
 次に守護霊から、それぞれ挨拶をして頂きました。

  それから事の経緯を説明させて頂きました。
  言わずもがな、皆、神妙なお顔で聞いておられました。

   私もかなり複雑な心境でありますが、
   彼等の方は余裕が全く無い様子なので、
   手短に質問を投げ掛けました。

「 剣三郎さんとミツエさんは、どうされたか教えて頂けますか?」

   すると拳三の守護霊、栄来様が答えて下さいました。

「 はい彼等は聖者 黒須様の御指名により補佐のみ役を頂き既に、
 この近隣の祈りの聖域として選ばれた駒沢公園に向かいました。
 私等は単に水を人数分と、
 筆記用具その他を持ち帰る為だけに戻った次第に御座います。」

「 何と夫婦共にとは ・・・
 それでは夫婦といえど持ち場は離れなければなりませんね。」

「 おっしゃる通りです。しかし、御心配には及びません。
 彼等の絆は半端なものではありません。喜んでみ役をお受けしたのです。
 その時程、我等先祖が歓喜したことはありません。

ただ子供達はそれぞれ辛い立場で、特に自尊心の強い拳三は、
自分が補佐役に選ばれなかったことが、かなり堪えておりまして ・・・」

「 しかし、彼はまだ若いではありませんか。
 あのような覇気が無くなるほどのことでしょうか?」

   若干、気の抜けたような拳三を見ながら私が言うと ・・・

「・・・ それが、同じ自警団のメンバーに
 二才上の川島章二という男がおりますが、
 これが補佐役に選ばれまして ・・・ 

 勿論それに相応しい魂と人格の持ち主ではありますが、
 内の子孫とマーフィーと比べても格下にしか見えないのに何故かと、
 我等守護霊も思案に暮れているので御座います。」 チュウ。

《 まあ、汝等の気持ちは分かる。
 不満に思っている者は居らぬようだから訳を話そう。

良いか、拳三、マーフィー、かすみの三人には
特別なみ役が与えられておるのじゃ。
まだ、その時が来ていないだけの事。恐らくは二日目以降となるだろう。

 詳細は言えぬが注意点として、拳三は侍の血が強く出ており、
 正義感が暴走し血気に逸(はや)る嫌いがあるという事。

それを汝等守護霊が抑えていたから、暴力沙汰にならずに済んだのだ。
マーフィーは若干温厚だが、拳三と同調する事が多々あるから、
これらに気を付けねばならん。

 かすみの役目は、
 強い正義感が暴走しないように間に入って緩和させる事にある。

これから二人の正義感を刺激するような、邪神軍の攻撃が一層激しくなる。
だから憎しみや怒りの想念での反撃や先制攻撃をさせてはならん。

あくまでも徹底した慈愛の心を強く引き出すのじゃ。
皆、それを胆に命ぜよ。》 チュウ。

「「 はい、畏まりました。」」

  皆さん納得した返事でありますが、エミリーとミランダの守護霊の、
  アルクルとメイフィは随分気まずそうだ。

  無理も無い、彼等の一家から聖者の補佐役は出ない上に、
  新型インフルエンザの犠牲者を三人も出しているのだから ・・・

  すると、三十郎様がその辺を察してか、二人に話掛けられました。

《 おい、アルクルにメイフィ。汝等は自分のお家の霊的水準が、
 土門家にかなり劣っている事が負い目のようだが、
 そのマイナス思考が良くないのじゃ。卑屈になるでない。

人と比べるのも悪くは無いが、そのお家の良い所から学び行じて、
更に上を目指すのが基本の信仰の考え方でなくてはならん。

 それに三人が亡くなったことで一族の曇りがアガナわれ、
 かなり汝等の負担も軽減したであろう。

だからこそ土門家との縁も深まり、
子孫共々高水準な修行をすることが許されたのじゃ。

 加えてこれからの三日間で、更に大きく救われ、
 一族全体が栄えてゆける機会が与えられたのだから、
 一心不乱に精進することじゃ、良いな。》 チュウチュウ!

「 ははあ、有り難いお言葉を賜り恐縮に存じます。
 我等と子孫共々、断固遂行の想いで精進致しまする。」

   感極まったアルクルが応えた。

《 うむ、良いか、汝等二人はミツエの側に居て彼女のみ役を補佐するよう、
 エミリーとミランダに働き掛けるのじゃ。

 ミランダはまだ若いがミツエを助けようと、必死でがんばる筈じゃ。
 更にエミリーと助け合い、
 多くの迷える人々に強く神の愛を伝えられる魂であり、
 将来有望な神の使徒に相応しい者に昇華出来ると、わしは信じておる。
 主神様も確信を持たれての、この度のお仕組みなのじゃ。

そして、他の三人は剣三郎の側に付いて、
しっかり補佐するよう働きかける事。
皆、その事を胆に銘じるのじゃ。》 チ~カ!

皆の守護霊達は、三十郎様の深い慈愛の波動に感銘を受けておられました。
そして、三日間の夢想だにしない修羅場を迎える緊張感があるにも関わらず、  沸々と湧き上がるような強い闘志に、自分で驚いておられるようでした。

   皆の気迫の強さは、魂と目の輝き、
   そして全身全霊からなるオーラの光に表れていました。

  実に頼もしい限りです。
  三十郎様もチカチュウ様も御満悦の様子です。

   そして拳三の守護霊、栄来様が御礼を述べました。

「 三十郎様、我等守護霊に対し直々のお言葉を賜り
 真にありがとうございます。

明日からの大節の三日間を迎えるに当たり、
我等は極度の不安と緊張を持っておりましたが、
それも今は全く御座いません。

 この御恩に報いる為にも、我等が先祖と子孫一丸となり、
 与えられた聖使命を全力で全う致す所存に御座いますので、
 宜しく御願い申し上げます。」

《 良くぞ申した。見事な心掛けじゃ・・・

良いか、主神様は汝等に多大な御期待を寄せておられる。
それを重荷と思わず喜びを持って、
どんな神鍛え神試しをも乗り越え任務を遂行するのじゃ、
頼んだぞ、我が子等よ!》 チカチュウ!

  守護霊の皆様は、それぞれ感極まり涙しながら、
  三十郎様とチカチュウ様に御礼を述べられました。

《 よいよい、ほら、子孫達は準備が出来たようじゃ、もう行きなさい。
 我等も、暫くは駒沢公園で様子を見て居るから安心しなさい。

それから、光玉内にのさばる馬鹿者どもが、
何かとちょっかいを出してくるだろう。

嫌がらせ、暴力に殺人、邪神の操り人形になり襲って来るだろうから、
その時は迷わず恐れず皆を落ち着かせ神に祈らせるのだ。

さすれば、神は直ぐ様その者に金縛りを掛ける。

 誰にも、暴力で対抗させてはならんぞ。
  曇りを積み、光玉から追放されてしまうからのう。

    ささ、一緒に参ろう。》 チュウ。


    「 参りましょう、皆様、いざ出陣ですぞ~! 」

    「「「 おお~う! 」」」


そんなこんなで、三十郎様から温かくも的確な御教示を頂き、
守護霊の皆様はやる気満々の様子で、それぞれの子孫に付き添われました。

 むむっ、拳三達の心が悲しみに満ちている。

    何故だろう ・・・



     ( 推奨BGM )

ジョゼフ=モーリス(モリス)・ラヴェル ピアノ協奏曲ト長調 

指揮・ピアノ:レナード・バーンスタイン 

フィルハーモニア管弦楽団 録音:1946年1月7日




   そうか、犬四郎は置いていかなければならないのだ。

  皆、犬四郎を見つめて涙を流している。これは辛い別れだ。
  全員が生還出来るか否かは、未知数でしかない。

  犬四郎もそれを察してか、とても不安げで落ち着きがない。
  エミリーが抱っこをしている。


「 ねえ、犬四郎。私達必ず戻るから、いい子で待ってるのよ。
 人間って身勝手だから、
 いつも何かあれば犠牲になるのは動物に自然よね。
 不用品は殺して捨てて破壊して・・・

 私達人間は、その責任を取らなければならないの。
 人間が神様から見ていい子にならないといけないのよ。

 そうでなければ何も解決しないんだわ。
 ごめんね ・・・ 私達いい子になって必ず戻るから、
 こう見えても結構丈夫だし、食は細くても働き者だしね。
 だから、あなたもがんばってね。うう ・・・ 犬四郎。」


    クウン、クン・・・ウウゥ ・・


  犬四郎は、エミリーの頬に伝う涙をペロペロと舐めた。
  涙を流しながらエミリーは、ミランダに犬四郎を渡した。


「 ごめんね犬四郎。わたしも必ず戻るから、
 どんなことがあっても外に出ちゃダメよ。
わたしの大好きな犬四郎。三日だけ我慢してね。うわ~ん、うう ・・ 」


    ウウゥ、ワンワン ・・・


  ミランダは犬四郎を静かに床に置いた。
  ただ何だろう? 犬四郎は納得していない様子だ。


 (( いやだよ、置いてけぼりはぜったい やだよ! 
     ぼくだってみんなの役に立てるよ!))


  犬四郎の思念は、そう叫んでいる! 流石は日本犬だ!
  すると拳三が腕組みをして犬四郎に話し掛けた。


「 犬四郎、お前は土門家の末っ子として育てられた。
 まだ四才だがこの家は一人で守れる筈だ。

 いいか、僕達が帰るまでお前は一家の主だ。それを忘れるなよ。
 それに、自警団のメンバーの一人であることもだ ・・・

 そうだ三日間家を守り抜いたら、
 お前専用の自警団のジャケットを作ってやるよ。」

   ワンワン、ワンワン!!

「 何だ! どうした犬四郎。留守番は嫌なのか?」

   ワワン、ワン!!!

「 ははは ・・・
 そうかお前の意志も確かめずに勝手に判断して悪かったな!
 では、僕等と共に戦うんだな!」

   ワンワン、ワワンワン!!! 

「 そうか、そりゃ頼もしい限りだ!
 ただな、明日の7時を過ぎると
 東京の神の光玉から出て行かなくちゃいけない。

 だから、ずっと一緒にはいられない。
 そんな事情は分からんだろうが ・・・

 みんな、ここは犬四郎の意志を尊重してやろう。
 僕たちの勝手でこれまで狭い家の中に閉じ込めていたんだ。
 これからは彼の自由にさせてよろうよ。」

「 僕は異議無しだよ。彼にもプライドや意地はある筈だからね。」

   マーフィーは答えた。

  女性陣は心配そうだが、犬四郎を置いていく方が残酷だと捉え、
  一緒に連れていくことに同意した。

  犬四郎は、
  その場で飛び上がっては吠えてぐるぐる回って喜びを表現した。

「 ははは、流石は自警団の一員だな。
 ふふふ、いいか犬四郎! 僕達は邪神軍と戦う!

 どんなことをしても勝たなければならない。
 だから身を挺してでも、皆を守らなければならない時もある。
 不意打ちを喰らえば殺されるかもしれないしな ・・・

 その時は、ここに戻る事もない。

下手すれば、明日の七時になるまでに生きていられるか分からないからな。
 なあマーフィー、君はどうする?」

「 愚問だな、決まってるだろ!
 馬鹿共が光玉内から締め出されるのは明日の七時だ。
 それまでは、言ってみれば野放し状態。聖域内を誰が守るのか?

 それは僕と君と、後は自警団のメンバー、
 そして腕に自信がある者達だけだ。まあ、玉砕覚悟だが ・・・ 

 ただ気になるのは、
 暴力を振るえば神の光玉に入る資格を剥奪される ・・・
 という件だが ・・・ ん~、それは不味いなあ。
 本当に金縛りの技なんて使えるのかな~~?」

   さっきから、二人を睨んでいたかすみが口を開いた。

「 何言ってるのよ二人とも。駄目に決まってるじゃない。
 邪魔する人がいた時には、神様に祈れば金縛りになっちゃう筈よ。

 だからぁ、暴力じゃ人を守ったり、
 救ったり出来ないってことを神様はおっしゃりたいのよきっと。
 そんなんじゃ、立派な聖者様や
 皇族のような崇高な存在にはなれないわよ。」

   拳三は顔を顰めて言った。

「 なんだこらあ、かすみぃ、
 どうせ僕は補佐役にもなれなかった役立たずだよ。

 そうだ、金縛りの術を試してみよう。
 信じていない訳じゃないけど、
 いざという時の為の予行演習は必要だしな。」 あのねェ・・・

「 おっ、そうだな、それはいい考えだ。」 マーフィーが乗ってきた。

「 ええ~、ふざけて祈ると怒られるわよ。」 かすみは呆れた。

「 でも、一回位はいいんじゃない。」  うわ ・・・

「 エミリーまでそんなこと言って、知らないわよ。」 拳三が手を合わせた。

「 議論なんぞはいい。
 え~神様、かすみに金縛りを掛けて下さい。お願い致します。」

   いきなりはやめなって。

「 な、なんであたしなのよぉ。酷いよ兄さん。うわ~? あ、何ともない。」

「 えぐ、ごおお ・・・ かあ ・・」 拳三の時が止まった。

   馬鹿だねェ、守護霊の栄来様もビックリです。

「 あああ、ぶええ~~っ、かっ、神様申し訳ございませんでした。
 どどど、どうかお許しを~」

   時が戻り、拳三殿が生還した。お疲れでした。そして皆呆れた。

《 今のは、わしのちょっとした悪戯じゃあ、
 この位は構わんじゃろうて・・・

 神を試すとはいい度胸じゃな。それに暴力は相手を裁く事に繋がる。
 裁く権利は人間には与えておらん。神の特権なのじゃ。

 おまけに人を傷付ける事など言語道断。
 悪いと断定し相手を裁く、
 何がどう悪いのかは神でなければ判断出来ん事なのに、全く・・・
 だから許さんと申しておるに、分からん奴じゃ!》 チ~カ。

「 三十郎様、申し訳ございませんでした。
 止めろと言っても中々頑固で、お恥ずかしい次第で御座います。」 

   栄来様が冷や汗を掻きながら言いました。

《 まあ、気にするな。拳三も懲りたであろう。
 おぬし等も苦労するのう。めげずに精進しなさい。》 チュウ!

「「「 ははあ、胆に銘じます。」」」

一同は、首輪を外された犬四郎を引き連れ、玄関の鍵を掛けて外に出た。
 すると栄来様が私に話しかけてきました。

「 いや~、信造様。
 一緒にテレビを見ていて突然お姿が見えなくなった時は驚きましたぞ~。
 それで、お帰りになられたら二体の神様と御一緒とは、
 しかもそのお姿で・・・」

「 それが、こうして御一緒させて頂いていても、
 いやはや恐縮でして ・・・」

  すると三十郎様は私の両耳を顎(あご)で掻き分け、
  そのまま頭にお乗りになりました。
  鼻の下のお髭(ひげ)と顎髭が、目の前でユラユラ揺れています。

《 まあまあ良いではないか、わしとおぬしの仲ではないか、
 ほれほれ、どうじゃ~・・・》

「 グヒッ、ははは、三十郎様。
 いっ、何時の間に両手を生やされたので ・・・ うぐっ、ぶひひ。」

《 ははは、愚か者めが。
 今までは円座に成り切る為、嵩張(かさば)るから出さなんだだけじゃ。
 ほれっ、くすぐったいかぁ?
 しかし、この体勢はなかなかいいのう。ほれ、お前達も容赦はせぬぞ。》 
                     
   三十郎様は、髭を伸ばして守護霊の皆様の脇腹をくすぐられた。
   皆さん悲鳴を上げて逃げ回っております。

   ただ、チカチュウ様が妙に大人しいですね。
   どうなされたのでしょう?

《 チュウチュウタコカイナ。ナンチュウカ、ホンチュウカ。
 ヤギュウチュウベエ~~。も~、わたくしも、お話ししたいですぞ!》

「 チカチュウ様、不味くないですか?」

《 あきまへん、減点ですぞ。三日ぐらい我慢なされよ。
 そのような姿でも、神の威厳が無くてどうされるので、ナセル殿?》

《 チュウ~~! この格好では威厳も何も無いですぞよ!! 》 

   あっ今、小さなほっぺがプクッて膨れた ・・・ かーわいい。

《 なんじゃあ~不満か? わしを睨んでも何も出んぞ~い!
 こおらっ、髭を掴むな。》

《 チュッチュ、ゴメンチュ~ッ・・・フンだ!》

《 ぬぬぬ・・・まあ分かれば宜しい・・・全く女って奴わ~・・・》 

   はは ・・・
   すると栄来様が、二体の神様の間に割って入って来られました。
   ・・・ くうう、いいタイミングです。
 
「 ああ、ところで皆様。

 天皇陛下が皇居の門を全門開放なされて、
 近隣住民を無制限に中に入れて、皆と一緒に祈りたいということと、
 なるべく聖者の言う事に協力するよう、
 政府に要請されたとの報道が御座いましたが、

 御存知でいらっしゃいましたか? ・・・

 それで公園や競技場、球場等が止む無く開放されたのです。
 政府も、そうすることでパニックを
 最小限に食い止められると踏んだようです。

 ただ、侵略者が攻撃を仕掛けて来るならば、
 武力を以ってこれを制圧する等と、
 愚かなことを申しておりましたが。」

   おお~凄い、流石は陛下です。

《 おお、それは予定通りじゃ。
 天皇は聖者とは別格じゃから神示も違う内容なのじゃ。

そうすれば、世界と日本国民との距離も縮まり親近感が増し、
その上、本来世界を統べるみ役が天皇であることの
潜在意識も蘇るきっかけになるじゃろう。

 しかし、人間というのは愚かだ。

モーセと対峙したラメセス2世のように、どんな奇跡を見ても、
如何ともし難い事態に陥るまで神に従おうとしないとはな。

 ほんに、あの男ときたら頑固なハゲ親父だったわい。
 あの時はナセル殿も困ってなあ。

ファラオか何か知らんが、人間の分際で威張り腐りおって・・・
これでは知的レベルの高い生物とは認められん!
下等生物は実に扱いにくい。

 まあ政府に圧力を掛けたのも、
 うまく邪神軍の裏を掻いた正神軍の力じゃがな。

  全く苦労を掛けてくれるのう・・・
  しかし、地上は臭くて堪らんなあ。

    豚人間か、鳥人間しかおらんのかな。》

      ブブウ、フゴッ、チュン、コココーコーコケッ!

        いやあ~、なるほど納得で御座います。
         しかし益々ワクワクしてきました。フゴッ!