『 うさぎの言霊 』 Rabbit's Kotodama 

宇宙の謎、神と悪魔と人とは?

《 序章 》 〈 第十七話 〉 神の光玉

2019年02月01日 16時03分48秒 | 小説



  二〇 X X 年十二月十八日(木) 18:00
       カウントダウン ( 85:00 )

( 作者執筆当時の時間 ) 二〇〇九年四月二十五日 午後五時十分



 ところで我々は真っ暗になった外に出ましたが、
 皆、LEDのライトを手に持ちリュックを背負って歩いています。

  駒沢公園は近いのでしょうね。
   ビル明かりも疎らな大都会の現在。
    私には天の川が辛うじて見えています。

    無粋な車のクラクションや、その他の騒音は聞かぬ振りをして、
    あの音だけに集中して下さい。



        ( 推奨BGM )

       ジャン・シベリウス作曲
    「 樅(もみ)の木 」作品七十五―五 (リピート)

       (演奏者) 志鷹美沙

 これ以上、私のイメージに合った演奏が探せませんでした。

        


          

      何処からか、ほら、聞こえて来るでしょう ・・・

     私とあなただけに聞こえる儚げなピアノの音色 ・・・

   ただ、聞き耳を立てているのは我々だけではありません。
  守護霊に街路樹や風の精霊達。

そして、隙あらば人間を不幸に落とし入れんとする邪念の持ち主 ・・・
邪神の操り人形である憑依霊・浮遊霊、自縛霊等。

ですが、気にする必要はありません。
邪念邪心邪欲を持たずに、
ひたすら神の御為と人類愛で祈り行じれば、
邪霊悪霊の類は邪魔出来ないのです。

それは、守護霊が邪魔出来ないよう守護して下さるからです。
天使や神も後押しをして下さいます。

 そして大愛なる神は邪霊をも救おうとされます。

  何故なら、皆、我が子だから・・・


   愛する人を守る。

  誰もが望む事ですが、
 人間一人の力が及ぶ範囲は余りに狭いものです。

守りたい救いたいと願う範囲が、自分だけか?
恋人だけか? 身内だけか?・・・それでは範囲が狭すぎます。

その狭い視野には、全人類と神の姿は入ってはいないでしょう。
であれば神に祈りは通じません。

神を信じていると言って、僅かな賽銭を無礼にも放り投げ、
自分や家族のことしか祈らない。

 神に礼を尽くさず、侮辱した振る舞いに加え、
 普段は信仰心の欠片も無いのに、
 その時だけの俄(にわ)か信心からなる祈り。

 人間でも、その卑しき心は見抜けます。
 加えて、たいした努力もしない人間を
 守護してあげよう等という神は、何処にも存在致しません。

狐狸(こり)の類に化かされ面白がられるのが関の山です。

遂には守りたいと思った人は、目の前で不幸に落ちてゆく。

もはや、御利益信仰が罷(まか)り通る時代ではないのです ・・・
時代遅れだと神に呆れられます。

我々の魂の寿命は永遠です。そう考えれば百年足らずの人生は一瞬。

ですが、我等人類に残された時間は後僅かです。

その貴重な時間の中で、与えられた型示しから、
 神の御意志を少しでも掴ませて頂きたい切なる想いを常に持ち、
  聖使命に邁進させて頂きたいと思うのであります。

   くどいようですが、その道しかないのです。 

    ほら、まだ聞こえているでしょう・・・光の音霊が・・・


   ピアノは美しきアルペジオから、緩やかに鍵盤を指が滑りゆき、
  清流の水面に煌くような音色を奏でる ・・・ 

一音一音、一滴一滴。

広がる波紋が幾重にもなり、儚く消えゆく神の紋様 ・・・

その華麗なる旋律は時に激しく、時に優しく響く光と音の芸術。
それは音霊と数霊の妙技であり、宙を舞う見えない光の幻想。

 一瞬の芸術。

  その悲哀に満ちた調べは、
  人類の醜い文明の黄昏に失望した神々の
  溢れる涙の雨音のように、私の胸に落ちて参ります。

  この憤りと哀しみに涙する心は、あなたにもある筈です。

  何故なら、あなたは赤い神の血が流れる神の子であり、
 私の家族の一員なのですから ・・・


ピアノが奏でる愛の波動。

作曲者シベリウスが見上げた樅の木は、
北欧の寒空の下で枝葉が揺れていたのだろうか?

そんな情景を音霊で奏でるピアニストの愛、
そしてその音色に乗せた神と私の愛。

 その愛は、きっとあなたの心の奥底にある、
   魂まで響いていることでしょう ・・・



   ふと、拳三が立ち止まった。上空を指差している。

  一同は一緒にその方向を見上げると、
 強い決意と燃える思いが更に増してきました。

おお~、そうかあれが関東圏の「光の十字架」「光の灯台」なのだ。
聖者木戸の光にも匹敵する強烈且つ美しい光だ。

希望の光の主は、確か黒須光明。 クロス は 十字 なのだ ・・・


聖者や救世主の魂は、
天上界から天降る為に魂が綺麗な夫婦の女性に宿す必要がある。  

 いつ、どのタイミングで宿すべきなのか ・・・?


 ・・・ この夫婦は産児制限をして暫く子を作る気はないようだな。

   守護霊は、指導霊は何をしておる、
  愚か者め、産めないようにしてくれようか ・・・

 しかし、今でなければ間に合わん。誰か他はいないのか?
もう、何ヶ月も待っておるというに、候補者の名簿を見せよ ・・・

止むを得ん、強行策を取る。
少々曇り深い一族だが、この夫婦に汝を託す事にしよう。

この夫婦の曇りに釣り合わせる為、
汝には産まれて直ぐ障害を与えねばならん ・・・

 す、すまぬが耐えるのじゃ。苦しみも喜びとせよ。
  行け~い、愛する我が子よぉ!・・・ 

    「 ははぁ!! 」


このように 『 産霊(ムスビ)の神様 』 の
御苦労なされる御姿が脳裏に浮かんで参ります。

 上記の描写は勿論、私の推測でしかありませんが ・・・


落ちぶれ果てた我等が人類。
恥ずかしくはないのか? 余りに情けない、無様だ!

 もう、人間ですらない・・・

残念ながら今の現代人は、
殆ど地獄界、あるいは火星から転生してきているのが実情です。

辛い地獄の修行に明け暮れ、サトレずに更に堕ちる者もいるでしょう。

そんな中、物質界で人間の男女がSEXをしたとすれば、
妊娠後その男女の曇り(悪徳)と
釣り合いが取れる魂が胎児に宿されます。

 善徳や能力は別になります。

どういうSEXかはともかく、曇りを積む一方で、
神と己の為に向上しようという努力が無ければ、
ほぼ間違い無く地獄から魂が招喚されます。

 そして、妊娠から十月十日前後に誕生する訳です。

当然、SEX は夫婦の営みでなければならないと私は思いますが ・・・
現代人にはその常識が通用しないですね!

 完璧に狂っているのです!

ここは、よくよくお考え頂き、
淫らな性欲を抑制して頂きたいと思います。




  ところで、彼等の服装。

エミリーは洒落たスーツ、ミランダは学校の制服。
二人ともコートを羽織っている。

拳三、かすみにマーフィーは藍色の道着の上に、
自警団専用と思しき 深紅のジャケットを着ている。
そしてオレンジ色の手袋、足にはスニーカー。

 彼等もスーツは持っているでしょうに
 気合が入る方を選択したのでしょう。

そのジャケットの胸と背中には、
オレンジ色と黄色い炎のような 「暁」 という
筆文字のマークが貼り付けてあります。

 その文字と前腕の外側 ・・・ん? この部分は妙にゴツイ。

これ ・・・ 恐らくは急所を防御する為、
ナイフ等の刃を通さない素材と、
光を反射する素材とが使われているようだ。

 街灯や懐中電灯に強く反射して光っている。

確か光玉内の気温は世界中どこでも二十度に保たれるとのことですが、
それは当然、明日の七時になってからでしょう。

今はかなり寒いですから、厚着をしていないと風邪を引いてしまいますね。
私のウサギスーツは寒さは感じませんが ・・・

彼等は途中、示し合わせていたのか御近所の皆さんと合流しながら、
駒沢公園に向かっている。ただ、どうにもならない車の渋滞です。

 バイクや自転車、徒歩の者しか進めないようです。

そして聞こえるのは、車の乗員の罵声とクラクションです。
これは、戦で小競り合いをしているようなものです。
車で何処に行くのか?

 それぞれの祈りの場所への移動手段なのか?
 単なる夕方の渋滞なのか?

何れにしても、交通の大混乱は避けられないとは思いましたが
収拾はつかないでしょう。

 当然ながら、汚い言霊を使って罵声を上げる者の魂は真っ黒です。

何しろ汚い言霊を使った時は、まず己の魂と心を曇らせ、
言霊から音霊が融合し、
最後に言葉に変化し周りの人の心と魂を曇らせます。

言葉に加えて顔が醜い表情になると、相手に与える影響は増します。
すると他人を苦しめた罪が、
又、己に戻って来て汚れるという悪循環が生まれます。

 その汚れは肉体、特に血液に大きく影響していきます。

   血は霊そのものなのです。

 普段から不平不満の想いを募らせ、
 汚い乱暴な言霊と言葉を使う人は常に魂が汚れ、
 邪霊・憑依霊に操られ易くなりますから要注意です。

  言霊の力は人を生かし、殺す事も出来るのです。

 こうして醜い魂から溢れ出た濁微粒子が、
 まるで汚泥が流れ落ちるかの如く地面に溜まっていきます。

 その影響は連鎖反応をして周りに広がって行きます。

  邪神の思う壺です。

   こういう人達が明日、流星火矢で亡くなるのでしょう ・・・


拳三達は、この状況に呆れながらも時たま、
車を降りて駒沢公園に向かうよう勧めています。

 たいがいは罵声が返ってきていますが、
 守護霊の皆様も五人に一生懸命働き掛けています。

歩道を歩いて公園に向かっている人の魂は、比較的綺麗に見えます。
勿論それは、命懸けでこの人類の一大危機に立ち向かおうという
覚悟がある人だからこそでしょう。

 ただ、皆一様に表情は硬く青褪め、
 心は不安と恐怖に満ちています。

無理もありません。
しかし人類はこの難局を何としても乗り越えなければ、
未来は無いのです。


  距離にして約三百メートル。
  信号のある十字路に差し掛かった。

 左手は駒沢公園だ。随分近かった。
 右手には東京医療センターという病院がある。

そこから、ぞくぞくと入院患者と思しき人達が、
家族に付き添われ歩いている。

 車椅子の人や、ある者は一人でよろよろ歩いている。

拳三達は手分けして、歩くのが辛そうな人や車椅子の人に
手を貸し励ましながら付き添って歩いた。

当然と言えるが、彼等の心情は死を覚悟して悲愴感が漂う者と、
生きがい死にがいを見付け、
目が爛々と輝き気迫に満ちた者とに分かれた。

 恐らく、信じない、やる気のない者は病院から
 出よう等とは思わないだろう。

体力が無い者は、三日間水だけでは身が持たないのは明らかだ。

いずれにしても魂の曇りはともかく、
何処までやる気があるか否かが問われることになるでしょう。


 駒沢公園内に入ると、
 拳三達は五人集まって両親どちらに付くか相談している。

 ただ、もう腹は決まっているようだが、離れ難いようだ。

彼等もいい大人だ。
この状況では、好きに場所を移動出来ないこと位分かっている。

どうやら三十郎様のおっしゃる通り、拳三・かすみ・マーフィーは剣三郎に、
エミリー・ミランダはミツエに付くことになった。

 彼等の話によると、剣三郎は陸上競技場に、ミツエは自由広場に、
 自警団員の川島は硬式野球場にいるらしい。


  風が強くなってきた。

 闇の中で、街路樹が大きな枝葉を揺らしている。

 風の音や樹木の枝と葉が擦れ合う音も、
 落ち葉が地面と擦れ合う音も実に悲しげだ。

今、世界中で我等が家族同志同胞の皆様の心情は幾許だろうか?

この瞬間にも、天災人災あらゆる災厄で、
苦しみ抜いて亡くなる方が何千何万とおられるでしょう。

 どれほど無念なことか、そして残された御遺族の悲しみは・・・?

そして、その姿を常に見続けなければならない主神様のお苦しみ、
お悲しみは計り知れません。

  それを想うと、胸が張り裂けそうになる。

 ただ、主神様の天意に目覚め奮起して、
 希望と救いの灯台を目指している人は大勢いるに違いない。

  そんなことを、ふと想いました・・・


  その時、大きな樅の木が怪しく光りだした。

  そこから現れたのは木龍神様だ。
  穏やかな眼差しでこちらを見ておられる。


《 お役目ご苦労。全ては主神様のみ心のままだ。
 心して掛かるのじゃ、手筈通りにな。》

  チュウ。

《 心得ております。》

 木龍神様は会釈をされ、静かに樅の木と同化してゆきました。

  木龍神としての修行は、いつまで続くのだろう。
  百年か? 二百年か? 木が朽ち果てるまでか?

そうだ、水龍神の御修行は楽しいのでしょうか?
チカチュウ様、如何ですか?

 タノチュウヨ!

そうで御座いますか、
湖の守護神で在らせられるのですから、やり甲斐がありますね。

 私もがんばらねば! ガンバッテネ!フフ。


 拳三達は、まず剣三郎の所へ向かった。

陸上競技場の中に入り、東側トラック中央付近に行くと、
集まった数百人の中に剣三郎の姿があった。

 いち早く集まった者達の魂は、流石に強く光って見える。

剣三郎の脇には暖を取る為のドラム缶から、バチバチと炎が上っている。

それに拡声器にメガホン、トランシーバー、大小様々なライトと電池に・・・
これは何の為に使うのか、車椅子が十台程と担架? が並べられていた。

場内の前後には発電機から電源を取った、
大きな照明のライトが煌々と光っている。

 剣三郎は拡声器で皆に何やら指示を出している。

 拳三達は、話が終わるまで待たねばならなかった。




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