『 うさぎの言霊 』 Rabbit's Kotodama 

宇宙の謎、神と悪魔と人とは?

《 最終章 》 〈 第五話 〉 騎士と武士( 前 編 )

2019年02月06日 21時52分21秒 | 小説

 

    遂に始まった正邪の最終決戦!
   その決戦も三日目に突入致しました。

 神の光輪は熟成しましたが、その内部に入る資格を得ていない者が二人。
それは、土門拳三とマーフィー・ラッセルであります。

彼等は、人類と己の魂に染み付いた邪念を払拭し、
適正な体の大きさにならなければ、
 神の光輪に入る資格を得られないのです。

 適正な体の大きさとは、身長約五十メートル。
拳三は、現在、二百五十メートルですので、目標には程遠いものです。

二人は月で修行中でありましたが、マーフィーは改造人間?
いや、悪魔将軍 ドルン により、
地球に強制送還されてしまいました。

 現在、月面特設リングにおいて、
  超ナルシスト、アンドラスタ司令長官と拳三は対峙しています。

    死合(しあい)開始の前の二人の心情は如何に?




     《 キャラクター&キャスト 》

(神の光輪の聖者) 大黒天様の命により現在、月で修行中。
 日本代表 / 土門 拳三 ( 二十五才 ) 妻夫木 〇

 
        
           『 悪魔の貴公子 』

    司令長官 アンドラスタ / ジョージ ・ クルーニ〇
                 ( 二十代の設定です!) 

      「 アンドラスタ機 最終バージョン 」
     左の足元には? スッパイ? ツリーでゴザイマス!

     


   ここで、殺人剣ではなく、活人剣を宗とした、
  《 剣聖 : 上泉信綱 》 を御紹介致します。

 その情報はこちらから ・・・

 上泉 信綱 



  新陰流の基本である「無形の位」という代表的な構え。 


上泉信綱は、私が最も好きな剣豪です。 

前田慶次もいいですが、何かと脚色された部分が多いようですね。

上泉信綱は、戦国の世に非情無慈悲な殺人剣法より、
 慈悲の愛を持った人を活かす剣法を提唱するとは、
  きっと神から愛されたことと思います。

   勿論、神から特命を与えられ、
   その時代に転生された魂であると思うのです。

   この活人剣の極意は、
  現代に最も必要な心得であると言えるのではないでしょうか!

 群馬の前橋市上泉町の自治会館は、
私の自宅からさほど遠くはありませんので、
一度行ってみたいのですが、いつでも行ける感覚でおりまして、
 未だ叶わずであります。

   そんなこんなで、本編をお楽しみください。


ただ、こちらのお話は二分割と致します。悪しからず。


           ( 推奨BGM )

      Beethoven Piano Sonata No.23 in F minor, op,57            "Appassionata"  「 熱情 」  マウリツィオ・ポリーニ    

 





        ( やあやあ拳三君、僕はアンドラスタ。

            邪神軍の司令長官だ。

       だからといって、あまり緊張する必要は無いんだ。

          ははは、そう怖い顔をするなよ。
         何、取って喰おうなんて気は無いんだ。

        見ての通り、君と正々堂々の試合をしたくて、
          こんな月まで馳せ参じた訳だよ。

      この長官様が直々に出向く等、普通は有り得ない事だ。

         だから敬意を表す事、いいかね拳三君。) 


             ああ、そうですか。


          ( 僕は関口新心流、土門拳三。

      僕は大黒天様から与えられた修行の為に此処に居る。

           あんたとの試合は予定外だ。

          それに、おしゃべりな奴は嫌いだ。
           分かったら黙って帰ってくれ。

           それと相棒を此処に戻すんだ。
              拉致は重罪だ。) 


            いや~、いいね拳三君。


          ( なあ、分かっているだろう。
         この試合は強制だ。拒否権などは無い。

       正神も同じだろ。君も強制でここに連れて来られた。
        強大な権力を行使するのは悪魔も神も同じ事。

            その権力には逆らえない。

         ああ、分かってるよ。気が乗らない理由。
    それは僕の体が人間の魂と肉体を使っていると勘違いしているから。

            違うか?それなら心配無い。

       この体は僕と部下の霊力だけで造型したものだ。
         人間や動物の肉は一切使ってはいない。

   いいか、そんな心配は、僕の体を傷付けられるということが前提だ。

        そうだ、君はおしゃべりな奴は嫌いと言ったな。

           ならば、剣士は剣で語るのみ。

         騎士道が勝るのか、武士道が勝るのか。
             僕は手加減はしない。

           いつでも来るがいい、拳三!)


          なんか騎士道指南役のつもりか?


       ( そこまで言われたら、やるしかないな。
          あんたの言った事は信用しよう。 

          ただ、正直勝てる気はしないな。
           せめて十本中一本は取る。

      ん? ああ、悪いがちょっと待ってくれないか。) 


               え、何?


  ( おい、小用かね。そんな事は免除されているんじゃあないのか?)


              そりゃそうだ。


        ( いや、ちょっと刀の確認をしたいんだ。 
          実はまだ、この刀抜いて見てないんだ。

       何しろ今までは刀を抜こうとしても抜けなくてね。

          つまり、封印されていた訳だ。) へ?


       ( 何だと? はあ~、有りそうな事だな。 
        じゃあ抜いてみればいい。待ってやろう。)


             拳三は恐る恐る、
      左の親指で刀の鯉口 こいくち を切り (刀を抜く準備動作)、
       静かに右手で抜刀した ・・・ あらぁ ・・・


           ( ああ、抜けたぞ ・・・ 

       ただこれは 、ド、同 田 貫 (ぶ厚い戦国刀) だ。
            どうりで重い訳だ。)



             同田貫(どうたぬき) とは ・・・ 

             ウィキペディア 
         
https://ja.wikipedia.org/wiki/同田貫 

             肥後同田貫宗廣





      ( やれやれ、そりゃ大層な業物で御座いますなぁ。
       その重量級の刀で、この僕と戦うというのかね?
    
       ははは、見栄を張るからそういうことになる。
         君の望みが叶って墓穴を掘るとはな。

              愚かな話だ。

            まあ僕には関係ない。
    仮に戦国時代に僕と出くわしたとしても、君は死合を断らない。

        そうだろう勇猛なる武士の末裔よ!!



          ( ・・・ その通り。

    僕は己の愚かさと命の重みを噛み締めるまでだ。ははは ・・・ 

       もう剣で語るのみだな、司令長官殿 ぉ!



          ( 良く言った拳三。
     だが君の太刀を全てかわし千の傷を付けてやる。

    もし僕から一本でも取ったなら剣聖の称号を授けよう。

       さあ、全力で来るのだ拳三!!!


          ( おおぅ!!!)



         地獄が ・・・ 始まるようだ。



           ( 推奨BGM )

         エドヴァルド・グリーグ作曲
     ピアノ協奏曲  イ短調 作品十六 「 第三楽章 」

         カラヤン&ベルリンフィル  
       クリスティアン・ツィマ―マン (ピアノ)

https://www.youtube.com/watch?time_continue=3&v=EMN9kEOSUaU





アンドラスタは両足を揃えて腕組みをし、
拳三に対して体の右側面を向けている。

その右手の指を軽く顎に当てて、ニヤニヤ 笑っている。

  目線は正面を向いて ・・・ 何故だ?

こりゃあ手加減などしないというのは、嘘か?
それともこの体勢から瞬時に攻撃に移れる自信があるというのか?

  ・・・ あるのだろう、この様子では ・・・

奴は相手を見ることなく単に突っ立っているだけだが、
私の目から見てもまるで隙が見つからないのだ。

  しかし、こちらの青年は ・・・ 駄目だ。

フェンシングの居合いなど聞いた事はないが、
この男ならやれそうである。

 勿論この状態からである。

  とすれば、もう拳三は彼の間合いに入っているかもしれない。

  中段に構えた拳三は、間合いが未だに掴めていないのだ。
  摺り足で探るも、迷いと不安が彼を追い込んでいく ・・・


( ・・・ こんなの初めてだ。

 殺気が無いのに一分の隙も無く、
 どう打ち込んだらいいのか見当も付かないなんて ・・・

 あれっ、今何か亡霊が光っ? ・・・ う あ が っあう ぅ ・ )


           何てことだ!!

      拳三の両腕が ・・・ 刀と共に月面に音も無く落ちた。

   ただ、血は落ちていない。  

  アンドラスタは既に同じ体勢であるが、一つ違いがある。
  それは、抜いた剣を目の前に垂直に立てていることである。

    まるで何事もなかったかのように ・・・

  そして、諸刃の刃に写り込んだ己の瞳を見てから角度を変え、
  地面に膝を落とした拳三の姿を確認した。

  そこに軽くキスをしてほくそえみ御満悦な様子 ・・・ 

    やれやれだ。

  揃えた足元の先には、一つの足跡がくっきり残っている。
  拳三に向けた右足の跡が、たったの一つだけ。

    無駄が無いとはこのことだ!

  一方で拳三は、激痛を噛み締めていた。

程なく落ちた両手首と、腕の傷口が光って引き寄せ、
次第に合わさり再生されてゆく ・・・

そして痛みも無くなっていった。

  有り得ない光景に拳三は、ただただ感謝の思いで一杯だった。

    しかし、今の攻撃に因る戦慄は、
     永遠に魂に刻まれるだろうと思った。

    それに、これはまだ序の口に過ぎない事もである。


( やれやれ、今の攻撃に反応出来んとは、
  フッ、無理もないか。

   僕が強過ぎて最近誰も相手をしてくれない位だから、
   人間風情に相手が務まる筈もない。

  それから、今君が見た亡霊は
「 幻影のシルク 」 とか、「 オーロラの魔神 」
 或いは 「 光扇の剣 」 等と部下達に言わしめているものだよ。

 つまりは僕の疾風の剣が光の尾を引き、
  まるで怪しく輝くシルクやオーロラ、
   又は扇が宙を舞うかのように見えるのだそうだ。

  そのオーロラには僕の顔の残像が重なる。

 故に亡霊が光ったようにも見える ・・・

 ははは、僕の動きは芸術そのものだよ。
 光栄だろう。 

  フッ 、十本までは研修期間としよう ・・・

    そろそろ二本目を始めてもいいかな研修生君、さあ!



 剣を揺らし、ジェスチャーを交えながら短い講義を終えると、
 剣をまた鞘に納めた。

   全く、こりゃ恐れ入った!

  この異空間は、
  差し詰め 「武人の聖域」 とでも言うべきだろう。

悪魔でも最期の剣の試合に、邪気を持ち込むことはしないようだ。
単に楽しむ為か否か? 遊びと言っていたし ・・・

その真意は何れ分かるでしょう。今は見守るだけです。

  あれっ? 
  何故かアンドラスタは拳三から、かなりの距離を取った。

     凡そ身長の五倍。
     拳三も解せない顔だ。

    未だ戦慄からの震えが治まらない拳三だが、
    ゆっくり刀を拾うと立ち上がり、中段に構えた。


( 今から、僕にとっては爽快な技を見せてやろう。

  ただ、君にとっては地獄になるがな ・・・

  この技は暫く使ってはいなかったが、
  もう見せる機会が無くなる故、特別に披露して差し上げよう。

    行くぞ、我が至高の剣 「 薔薇の妖精 」。 

         はあああああ ・・・ )


   うう、彼の全身から凄まじい気が膨れ上がっている。

 彼は ニヤリ と笑い、右手の人差し指を立てると、
静かに剣を抜き、
その右腕を首に巻き付ける様な体勢を取った。

上半身は左に向き、左腕は水平後方に伸ばし、
 足は大股に開き右足の爪先は拳三へ向けている。

 ただ、腰はまだ落としてはいない。

眼光は拳三という標的を捕らえ、既に攻撃をしている。

普通は、片手に持った剣先を相手に向けるスタイルであるが、
 この場合は違う。

  右手の剣は、ほぼ背中に背負っている状態だ。

 拳三はこの時、闘神と対峙するような錯覚に陥っていた。
それに戦慄で全身が痺れ、武者震いが起きている事を恥じていた。

アンドラスタの全身は仄かに赤く発光してきている。
しかも放電のような光も見える。

 その尋常ではない形相の目が更に赤く発光した。
  すると徐々に剣先付近に赤いオーラが集束してきた。

     そして剣の師範と化した彼が、ニヤッ、 と白い歯を魅せた。



    ( 待たせた拳三。

         我が生涯最高の贈り物、受け取れえぇ、

             つえああぁぁーっ!!!



       その時、何が起こったのか? 

    一瞬、ほんの一秒足らず ・・・
   拳三の両手と腹から下は吹き飛んだ。

  拳三は成す術無く月面に上半身を落とした。

  そして激痛が記憶を飛ばしそうになるのを気合で押さえ付け、
   今の瞬間の剣技を魂に刻み込んだ。


( ああ ・・・ 有り得ない。 
 ぐっ、うぅ ・・・ 薔薇の妖精が見えた。 はは ・・・ )


   一瞬ではありましたが、
    幸い私は叡智晶という映像装置で、
     肉眼では捉え切れない部分を補う事が出来ます。

      とは言っても信じ難いもので御座います。


  では、御説明させて頂きます。

アンドラスタが気合を発した瞬間、一気に腰を落とし、
 右斜め上から振り下ろされた剣が拳三に向くと、
  慣性の勢いを殺さず、
   その位置から手首を8の字を描くように剣を回転させ、
    深紅の衝撃波を拳三に浴びせ掛けたのです。

     しかもその僅か一秒足らずの間に、
     十三回剣を回転させていました。

    その剣のしなりは、
   あたかも薔薇の花弁を描くような妖艶なオーラの軌跡となり、
  拳三に贈呈されていったのです。



       ・・・ 待つ事暫し。


      拳三の体は再生完了しましたが、
    それを見たアンドラスタは異変に気付きました。


   ( おい、妙だな。
   始めから比較すると随分体が縮小したようだ。

 僕の体が大き過ぎるではないか ・・・

 先程のドルンの陰湿なイジメを受けた後も、体は縮んでいたが、
  それに人間臭さも希薄になり、より神臭さが出てきたか ・・・

   実に神気臭いぞ!

 ははは、そうかそういうことか、大神は全てお見通し!

 『 全てを善へ導く神仕組み 』 か ・・・

  はは、何故ここまで、何故だ! ・・・

 主(ス)よ、私はあなたの下僕 でありたかった。
 常に御側でお使い頂きたかった。

   ううぅ ・・・

  ただ、私は常に一番でありたいという我(ガ)を
 押さえる事が出来ませんでした。

 それでルシフェル様と共に天界で反乱を起こし、
 ミカエルの軍団に返り討ちに合い、
  プレアデス星系から追放された直後、我等は地球に向かいました。

   そして、その不満を人間共にぶつけました。

  その人間が堕落しきれば、
 私達にまた目を向けて下さると思ってのことですが、
 そんな幼稚な行いが通用する筈はないのに、

  哀れだ、哀れだぁ ・・・

   主よ、お許し下さい! 

  お詫びの証として、この拳三を鍛え上げ名刀と致します故、
 その上でのお裁きを、どうか主よ!!

  どうかあぁ、ああ ううぅ ・・・ )







  彼は地にひれ伏し、遥か彼方の太陽を仰ぎ、咽び泣いた。
  握った拳は震えている。

   拳三も泣いていた。

     そして私も。 わしもじゃ。 チュウ~。


( ああ~ん、ああんあん、え~んえぐっ、アンドラスタ様ぁ~、
  あたくし天使だった頃のアンドラスタ様を
   思い出しちゃったぁ、ああ~~ん ・・・)


( お~い司令。 らしくねえこと言いやがって ・・・ 
  今更、お詫びってこともねえだろが ・・・

   ああ、俺様は泣いちゃいねえぜ。
    なにしろ、そんな機能は付いて無いんでな。

     総帥だって何も言わねえだろうぜ。
      あんたは奴を徹底的に痛め付けているだけだしな。
       まあ、気の済むまで遊んでやりゃあいいさ。)


( ああ、御賛同を頂き恐縮だよ。
  彼が地獄を見るのはこれからさ。はははは。) あらら ・・・


  すると、アンドラスタの口から、何か妙な白いモヤが出て?

  これがあのエクトプラズマというものだろう。
  その白く重い煙は邪龍に戻って行った。

  つまりアンドラスタの体を、拳三に合わせて縮めたということです。


( お~いどうかね。これで同じ条件だ。剣の腕以外はね。)

( ああ、気を使わせて恐縮ですよ。師匠殿。)


( おいおい師匠呼ばわりかね。
  まだ弟子とは認めていないんだがねえ ・・・

   ちょっとは僕の攻撃をかわすとか、
   剣を止めるとかが無いと認めない。

  それに、もう既に神前試合となっている。
 そういう気構えで来てもらいたいものだよ、見学者君!


( け、見学者?・・・分かりました。仰せに従います。)


( フン、素直なのはいいが、もっと神経を研ぎ澄まし、
  神気を自在に操れなければ僕の剣は捕えられない。

それに目で見るのではなく、その霊眼で相手の魂を捕えつつ、
その周辺の霊界のエネルギーを感じ取り瞬時に対応する。

 つまり一点に集中すると共に、
  その周辺も同時に集中するという訓練が必要だ。

  肉体が有ると思うから、
 相手の行動と思念想念が読めなくなるのだ。

 まずは心と肉体の垣根を取り払い、
  魂のみで僕の魂と相対するのだ!

   ははは、くどい講義はここまでだ。 さあ、来い拳三!


        ( おおぅ!! ) 


    あああ、理屈は分かった拳三ですが、
   如何せん実力に差が有り過ぎます。

 何しろ、アンドラスタは何万年か
それ以上の剣法の積み重ねがありますので、
例え拳三が超人的霊力を得ていても敵う筈が御座いません。

故に、気合だけは彼に迫るも、
 一瞬で刀を弾かれ、腕を切り刻まれ、
  はたまた足を斬られ、電磁シールドまで弾き飛ばされたりと、
    成す術がありませんでした。

    アンドラスタは、明らかに手加減している。
   彼は時間を惜しんでいたからです。

 一本でも多く拳三と立ち会い、己の剣技を魂に刻ませたいのです。
それと、重傷を負わせれば再生に時間が掛かる為です。

しかし、どれほどの奥儀の引き出しがあるのか、呆れる程です。
 彼は何十本かのうち一本は、その奥儀を披露していました。


    一つ御紹介致しましょう。

  「 龍 魔 槍 」 という技です。

    では、御覧下さい。


   アンドラスタの構え。 これまた妙だ ・・・

  もうフェンシングの構えではありません。
 何しろ剣すら抜かずに、まるで槍を持った構えをしています。

下半身は腰を落とし、仮想の槍先は拳三に向けています。
果たしてこの後、どんな攻撃を繰り出そうというのか ・・・

彼が気を込めると、
 ある筈の無い深紅の槍が鋭く発光して、その形を露にしました。

  その時、爆発する神気を纏った拳三が、
   中段から捨て身の突きを、
   アンドラスタの左肘に打ち込もうとしましたが、
   師範の槍は龍の如く、その突いて来る刀を擦り抜け、
  拳三の両腕と腹のど真ん中を吹き飛ばしました。

まるで爆発したかのように ・・・

  そして拳三の上半身は、下半身と離れました。

      全く見ちゃいられません。


  拳三が動けたのは、
 アンドラスタが攻撃を仕掛ける切っ掛けを与えたからに過ぎません。

アンドラスタの変幻自在の剣は、
最早神の領域を超えているかのようです。

彼は、いくら倒れても闘志が更に漲り増幅されていく拳三を見る度に、
 何故か顔の曇りの度合いが増していきます。


( 拳三、君を僕の部下にしたいくらいだが、
  それが叶わぬとはなぁ ・・・

   これも自業自得というものだ。
   せめて僕の生きた証を君に刻み付けたい。
  勿論、醜悪な部分は除いてのことだよ。

 かつては僕にも神の大いなる愛が満ち、
その溢れた愛を万人に与える事が嬉しくてならなかった。

ははは、それも今は記憶を辿るのも困難になる始末。
だが、君なら神の使徒として立派にみ役を遂行出来るだろう。

 問題は、これからのミロクの世となる三千年間にある。

  アガルタへアセンションを果たした者の修行の多くは、
  二ビル星のアヌンナキ対策の為のものになるのだ。

  今回の地球と太陽系のアセンション計画では、
  二ビル対策は後回しとなるが、
 ミロクの世が終了した三千年後、
本格的な戦いが始まるらしい ・・・

何しろ、二ビル星には、
 我等悪魔と方を並べる邪気を持つ者が、五万といる。

  正確には、およそ1287億人だ。 
   神々も手こずるのもうなずけるだろう。

   まあ、中には泥沼に咲く蓮の花のような、
   美しい魂を持つ者が僅かにいるがな ・・・

  いいかね、君はそれらを踏まえた修行をこれから行うのだ。

何でも、この正邪の戦いが終わった後には、
 アガルタで大天使の誰かの弟子になれるそうだな。

  それは豪気なことだが、
  君は多くの人々の指針と成らねばならない、
 無為(むい)にして化すのだ拳三!


( はい、畏まりました先生!)


( うむ。ところで、もう一本で百本目になる。
  これで最期にしよう。随分時間も経過してきた。
   僕はもう充分君と剣で語り合ったと思うが、君はどうかな?)


( はい、私も先生の御指導を十二分に魂に刻み込みました。
  ただ、一つお見せしたいものが御座います。

   これは、技ではありません。

   我が父、剣三郎が編み出した
  「 活 人 剣(かつじんけん)の構え 」 と呼んでいるものです。

  これは戦国時代、上泉信綱 が提唱した 「 活人剣 」 に父が傾倒し、
 「 戦わずして相手から戦意を奪う 」
 極意として辿り着いた構えであります。

  どうか、御覧頂きたいのですが、如何で御座いましょう。)





  さてさて、拳三がアンドラスタに見てもらいたい
 「 活人剣の構え 」 とは如何に?

 またまた、区切りたくない所でおしまいで御座います。
 悪しからずで御座います。

   次回をお楽しみに ・・・


ところで皆さん、自転車をお持ちであれば、
シャリシャリ、カラカラ、ガシャガシャ、悲鳴のような音をださないよう、
しっかりメンテナンスをしてあげてくさいね。可哀想です。

メンテナンスの仕方は、「ママチャリを掃除してみた」
その他の動画を参考にしてください。
https://www.youtube.com/watch?v=r2P8KyyZ-Y8

チェーンに自転車専用オイルを塗っただけでも軽快な走りを体感できますよ。
愛情を込めたメンテナンスをすれば、長持ちするし壊れにくくなります。

機械といえど、人間の愛情がこもった物には命が吹き込まれると私は思います。

自転車や車に限らず、物は大切に扱いましょう。


 今日の宇宙画像 / アンドロメダ大銀河   
    


  神も宇宙も偉大ですよねェ ・・・

  神性を持つ人間も偉大です。
 己の神性に気付きましょう!

でなきゃ、宇宙共通惑星である地球での修行の意味ないでしょう!




《 最終章 》 〈 第四話 〉 静かなる地獄

2019年02月06日 12時35分49秒 | 小説



   土門拳三とマーフィー・ラッセルの二人は、
   月で修行中であります。

 彼等は、人類と己の魂に染み付いた邪念を払拭し、
 適正な体の大きさにならなければ、
 神の光輪に入る資格を得られないのです。

適正な体の大きさとは、身長約五十メートル。
現在は三百メートルですので、目標には程遠いものです。

 しかも自力で地球に帰らねばなりません。
 制限時間は十五時間!

  その修行は、既に五時間になろうとしています。

    そこに意外な訪問者が現れるのですが、さて ・・・



 《 キャラクター&キャスト 》

謎の少女 / 誰かさっぱり分かりません! 

将軍 ドルン  / ウェズリー ・ スナイプ〇
少尉 レンチ  / アンディ ・ ガルシ〇
曹長 ハンマー / ニコラス・ケイ〇


(神の光輪の聖者) 大黒天様の命により現在、月で修行中。

 日  本 / 土門 拳三 ( 二十五才 ) 妻夫木 〇

 アメリカ / マーフィー・ラッセル ( 二十五才 )
        ヘイデン ・クリステンセ〇





                 ( 推奨BGM )  

             ペーター・ チャイコフスキー :
            バレエ組曲 「くるみ割り人形」 作品71a

          ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
         ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

        1.小さな序曲 行進曲(第1幕):
       2.こんぺい糖の踊り(第2幕) :
      3.トレパック(第2幕)    :
     4.アラブの踊り(第2幕)   :
    5.中国の踊り(第2幕)    :
   6.あし笛の踊り(第2幕)   :
  7.花のワルツ(第2幕)    : 

   





        現在日時、十二月二十一日 (日 ) 

      午後零時三十分 ・・・ ここは月面。


  拳三とマーフィーは依然として瞑想の修行中である。

彼等は、地球の雲のじゅうたん越しに大陸の海岸線を認識出来るまでに、
霊眼の感度を上げていました。

更に太陽系の星の位置すら動かずして把握出来ています。
いわゆる、リモート・ビューイング という霊能力であります。

加えて、様々な粒子を融合させ変化させる神業も研究していました。

つまり、これも造化の霊力の一つであります。
その霊力を使い、様々な試みをしているようです。

  ただ、その力に囚われ瞑想の趣旨がずれて来てはいないだろうか?
  まだ、あれから五時間は経っていないというのに、危ない危ない。

    むっ、二人は何かの異変を察知したようだ。

    その異変は二人の頭上から舞い降りてきました。



( 何だあれ? )  拳三が首を傾げた。

( どう見ても ・・・ 少女だな。)  マーフィーは不審そうだ。

( どうせ、化かそうって魂胆だろう。奴等の仕業だよ。)


    彼等は思念で会話している。 ここは真空、無音空間。
    そして永遠・無限・愛と生命エネルギーの充満界なのです。

    ところで ・・・ この少女。

    魂を瞬間移動させたのでしょう。 
   一体何者なのか?

  小さな人間の普通サイズであるから、巨人と比較するとあまりに小さい。
 その少女は、お決まりの御嬢様スタイルである。

ひらひらフリル付きピンクのワンピース、靴は赤のローヒール。
そしてクルクル金髪巻き毛に、赤いリボンが ・・・

 でも控えめです。

   まるで、草原で散歩でもしているかの如く、
     スキップをしながら彼等の頭上を回っている。


( おいっ、何時まで回るつもりだ。
  僕は土門拳三だ。

  悪魔の誰だか知らないが、
 僕達の修行の邪魔はしないでくれないかな。)


( 僕はマーフィー・ラッセル。
  どうせ何か企んでいるんだろ。
 早く済ませて欲しいんだよ。お嬢さん。)


( るんるんる~ん ♪ 私は妖精なの。
  らんらんら~ん ♪ それに天使様から、
   お使いを頼まれて来たんだから、
    そんなに嫌わなくてもいいんじゃないかしら。
     ふう~~んだ。)


       妙に甲高い言霊だ。


( おいっ、おまえ、もしかして化け猫の使いじゃないだろうな。
 何か話し方が似ているような気がするんだよな。)


( 拳三ちゃん、化け猫って言い方あんまりだわね。
 良い子なら誤りなさい。)

    はあ?

( 何だ? 図星か。おまえフレッタとかいう悪魔だな。
 きっと素顔は醜いお婆ちゃんだろうな。)

    ばれるの早過ぎないか?

( はっははは、それは言い過ぎだろ。
 三段腹のおばちゃん位にしておいてやれよ。)


( あんた達、バーーカ!
  そんなチビのくせにいばっちゃって、
   あたくしは邪神軍では一番のキュートで美しい悪魔なのよ。

   だから、ババアでも三段腹でもないわ!!!

  ったく、ガキはこれだから相手にしたくないのよ。
 バーカ、バーカ!!

    あれ、もう切れた。

( それにしても随分幼稚な物言いで御座いますねぇ。
 僕達は付いて行けないよねぇ、拳三君。)

( あたくしも付いて行けないですわよぉ。
 かわいいおばちゃん。)

    マーフィー馬鹿受け。


( あんたあんた、ばかばかバカ馬鹿 ・・・
 うううう、訴えてやるぅ!!!

    壊れたぁ ・・・

( あのさあ、用がないんなら帰ってくれよ。迷惑なんだって。)

    拳三が呆れた。

うるっさぁ~~い!

  用はあんのよ、ちゃんと ・・・

  こっちには人質がいるんだから、殺しちゃうわよ~だ。
 覚悟しなさい、ば~~か ・・・これ見なさい、これを ・・・)


    すると巨大なスクリーンが現れ、
    そこに一人の拘束された女性の姿が映し出された。


( なあ、ありゃどう見ても かすみちゃん だな。
 誰が化けたか知らないけど、元気良さそうなので安心したよ。
 髪型がちょっと違うのが残念だけど、どうかな拳三君。)

( 全くだ。あの邪龍や大軍でも突破出来なかった神の光玉に、
 どうやって潜入したか知らないけど苦肉の策もいいとこだ。
 それで、父さんや母さんの化け猫は何処かな?)


   ( ・・・・・・。)


     かわいい少女に化けたフレッタの顔は、
     一気に老化したように歪み、両手を頬に当てて、


   ( イヤァーーッ!)  ・・・・・。


( あ、あのさ ・・・ まさかもう引き出し無くなったのか?
 これで終わりなの。 レベル低過ぎだろ ・・・・・)

    マーフィー君は閉口した。 わたくしもで御座います。

( 全くひどいな。

 ねえ、お嬢ちゃんさあ、
 早く地球に帰って大人しく反省しながら、
 断罪されるまで静かに待った方がいいんじゃないのかな。

 僕はそう思うが、どうですかな?)  拳三君の提案です。


    皮膚をピチピチに戻したお嬢ちゃんが答えた。


( へん、さっきから言いたい事をベラベラと ・・・馬鹿じゃない。
  これで終わったと思ったら大間違いよ。

   そりゃあ、ばれないと思った人質作戦は失敗よ。
    ふん、それがなによ。

   そんな事は想定内よ。人質は幾らでもいるわ。
  まだ殺してないアメリカ人が、ごまんとね。
 ほ~ら見てよ。)


    すると、画面一杯の老若男女の人質が映し出された。


( おい、どうせ殺すんだろうけど、止めてくれないか?
 可哀そうだろ。もう、裁かれるまで静かにしておいてくれよ。)

( 拳三の言う通りだ。
 なあ、頼むから彼等を自由にしてあげてくれ。)


( はあ? 馬鹿馬鹿しい。
  こういう時は、力づくで助けるものよ。
   それが昔からの正義の味方の常套手段でしょ。

    いい、決戦の舞台はアメリカのロッキー山脈。
   私達の邪龍はそこに集合しているの。

 これから三分後に現地集合ってことで、どう? )


  ( あ?・・・・) 拳三君絶句。
  ( い?・・・・) マーフィー君唖然。 

     二人は顔を見合わせた。

( 何なの?
  暴力反対とかいう思想に完全賛成なの?

   そんなのナンセンスよ。
    正神の言いなりなんて・・・

    ねえ、いい大人なんだから自分で判断して行動しなきゃ。
   あの可哀想なお馬鹿さん達は、
  あなた達に見捨てられ死んじゃうんだから、助けてあげなさいよ!)


( あ、いや、僕は基本暴力反対だし、彼等はもうどうにもならないよ。
 それに戦うにしても、邪龍の体は人間や動物が原料だ。
 そこには攻撃出来ないよ!)  

    そうそう。

( そうだそうだマーフィー。
  こんな奴の口車に乗ったら駄目だよ。

  いいか、僕達は化け物と戦う為に存在しているんじゃない。
  人類を救う為だ!

  まず人類が積み重ねた罪穢をお詫びしなきゃいけないんだよ。
 もう帰れ。こっちは忙しいんだ! ) 

    お、いいぞ。

( もういいわ。馬鹿だわ。十秒後には百人殺すわ。
 手始めに ・・・ 火炙りよ。フフ。)

( おいおい駄目だよ駄目! ) 拳三は必死だ。 

( じゃ、今すぐテレポートするのよ。ロッキーに・・・) あらら ・・・

( はは、だからさ ・・・ 無理なの。 なあ拳三。) まあねえ ・・・

( ああ、行けないんだよ!
 て、テレポート出来ないから、く うう ・・・) あ~あ・・・

( 何言ってるの? 出来ないって・・・

  ここにはどうやって?
  あっ、まさか、ここに左遷されて来たとか。はっ、はは、

  ・・・ おい若造、月で修行して来い ・・・とかって訳。)


    つ、月に左遷?


( あのなあ、下手なものまねするんじゃないよ。
  悔しいが君の勘は当たってる。

  僕達は自力で地球に戻らなきゃならないんだよ。
  そういう試練という訳。
 分かったら帰ってくれ、はあぁ。)

    拳三はお疲れ気味である。

( そうだあ、帰れ帰れ。まったくぅ ・・・)

( ねえ、みんな聞いたぁ~ ・・・
  まあ、とりあえず事情は分かったわ。
   私帰る。じゃあね。)

    


          ( 推奨 BGM ) 

       恐怖の頭脳改革 より トッカータ
        エマーソン,レイク&パーマー 

    




       へえぇ~あ、お嬢ちゃんが消えた。

      き、君たち油断しないほうがいいぞ。
     これで終わる筈がない!


( おい、大人しく帰ったぞ。信じられないけど ・・・)  

    拳三君です。

( ただ油断出来ないぞ。ロッキー山脈監視しておかなきゃ。
  あの邪気は分かりやすいから見てみよう。
   ななな、なんだあれ?)  


      へ? あああ、あれは ・・・






ブヒュヒュヒュヒュゥ~~ッ、ブイン! ( ここ地球です。) 


  あああ、ちょっといきなりですかぁ?

    ・・・ あ、ここは無音世界だった。 ( ここ月です。)

  あ、あの亀の戦艦がぁ~月面にぃ~着陸です。


( おおお、おいっ、あのメカガメラが来ちゃったぞ! )

    拳三びっくり、メカガメラぁ?

( あああ、砲身が僕達に向いて来てるぞ。ま、まずっ、鏡は出ないか?
  あああ、ウルトラバリアーとか ・・・ おい、撃つなよ~。


         マーフィー焦り過ぎ。

     えっ、奴が司令室でファイヤーって ・・・

   やめろぉ~~!

 うわうわ、すんごい数の爆炎から砲弾が雨あられぇ、
しかも重力があまり作用しない為、
放物線を描かず真っ直ぐ二人に向かって行きます。

それに発射音無し。

 だって宇宙空間ですから、スターウォーズみたいな音はしないのです。

  うわっ、これじゃあ回避不能か? 

    いや主砲の弾は避けている。
      そうだ全弾避けちゃえ。 


    しかし、凄い爆発からの砂煙が ・・・

  あああ、何だあれ? まさか?
  小さい無数のレーザーかビーム砲か何かの砲身が発光している。

    ちょちょちょっ、危なぶな!?


(( まずいぞ、逃げろ~!! ))


    そうだ逃げるが勝ちだ~。
    動きは速いから逃げまくれ~。


 「 ちっ、逃げやがったか ・・・

 おいハンマー曹長、
今の砲撃で砂塵混じりの邪気は奴等の皮膚に張り付いた筈だ。

追尾可能か確認が取れ次第、
 邪気追尾ミサイル 『 阿婆擦れ女の憂鬱の発散 』
  有りっ丈お見舞いしてやれ!」


    あ、あばずれ? って、なんちゅうネーミングだ!


「 は、了解しました将軍!」

「 レンチ少尉。奴等は岩陰に逃げ込んだようだな。

  その後方、三十キロに座標を設定。
   ミサイル発射後間髪を入れずにテレポート。

    その直後に砲撃開始。

   それと同時に敵十キロ周辺を 『 悪魔の蜘蛛の巣 』 で包囲。
  その間に天空浮船 『 宇宙戦艦オオスズメバチの女王 』
 全投入し敵周囲に展開。

ぶはぁ~、それまでに、例の
『 取って置きの悪魔からの御歳暮&クリスマスプレゼント兼お年玉 』 
 を用意しておくのだ。

   グフフフ、失敗は許さんぞ。

   我々に与えられた時間は十五分しかない。
  その後、十五分ごとに邪龍は投入される。

それまでに奴等を拘束し、東京湾での汚名を返上するのだぁ!!!


    波状攻撃とはこりゃまずい ・・・ しっかしねェ。


「 はは、了解しましたドルン将軍!」

「 後、十四分十秒か。ふん、手柄を独り占めしてやる。」   


     最期の野心って事ですか?

  前方のスクリーン下部には、
 デカデカとカウントダウンのデジタルカウンターが表示されている。

それにしても拳三曰く、
このメカガメラは東京湾での川神ハリ様との戦闘において、
結論として頭部から肩にかけての部分を自爆で吹き飛んでしまいましたが?

 良く見れば、成る程分かりました。

  この亀の手足が無くなっています。
   その手足の肉を、頭部から肩にかけての修復に使ったのでしょう。

  まあ、テレポートで移動するのであれば、手足は必要ないですから。
 それよりも頭と首が無いと格好が付きません。

   ただ、これではまるで ツチノコ だ。 うわ~。


「 グフフ、やったぜ ・・・ 将軍、邪気追尾可能です。
 目標に ロックオン!

 邪気追尾ミサイル
『 阿婆擦れ女の憂鬱の発散 』 全三十基、発射あ!


  ハンマー曹長の太い言霊が響いた。 うわあ、でかいミサイルがぁ ・・・
  間髪をいれずレンチ少尉の出番です。


「 将軍、テレポートします。 5 ・ 4 ・ 3 ・ 2 ・1 ・ GO!

   ブヒュヒュヒュヒュゥ~~ッ、ブイン !


     少しは手加減? しないよねぇ。

     うわ、ミサイルに二人は気付いて逃げようと動きましたが、
     追尾してくる事にも気付き焦っています。

    ただ、このミサイルの全長、大き過ぎます。
   二十メーターはあるんじゃないだろうか?

 ICBM 並か? まさか核弾頭搭載だったりしないだろうか?
  それにアメリカ軍からの盗品かも?

     としても大丈夫だ。  多分 ・・・・?


《 え~、ミニットマンⅢが二十基。 ピースキーパーが十基じゃよ。
 それを 悪魔の錬金術師、ドクター・ヘルメット が改造したのであ~る。》


  アメリカ軍からの献上品ですのよ。 
   愚かですこと、チュウ~~!

     ななななあぁ~~。 賄賂かぁ、なんてこった


( おいっ、うまく回り込んで叩き折るんだ。マーフィー!!!

( 分かった。あ、うあ駄目だ。 ぐあっ ・・・ )


  おいおい爆発したぁ!! 次々とぉ ・・・

   爆発からの砂塵が舞って肉眼ではどうなったのか確認出来ません。

   ただ、凄い衝撃波が連続して辺りの地形を削っていきます。
   まるで小型の太陽が三十個月面に出現したようだ。

  それらの太陽は殆ど重なって、歪んで巨大化しています。

 だが大丈夫だ。  きっと ・・・

それに追い討ちを掛ける様に艦砲射撃が二人を襲います。

 な、何だあれ? 

  遥か頭上に何かが爆発して、赤い光の糸 ?・・・
  これが 『悪魔の蜘蛛の巣』 ってことか。

  読んで字の如く、赤い蜘蛛の巣が彼等の頭上を覆っていきます。
  つまり逃げ場を奪われ、拘束されたということです。

   ただ御安心下さい。 彼等は無事です。

     衝撃で気を失っていますが傷は ・・・ 最小限です。


「 はははは ・・・ 
  お前等の様な半端な聖者に手こずる訳にはいかんのだよ。

   しかし随分丈夫な体だ。
   拳三は下半身。マーフィーは右腕と下半身全部か?

   もう再生が始まっているな。
   ふん、流石に火傷は無いか。

   まあ、あのような恐ろしい太陽の霊界内での行に耐え得る体だ。

  ケッ、過保護もいいとこだぜ! 

 おい、レンチ少尉、奴等に拘束具 『 蜘 蛛 の 繭 』 を装着させろ!
それと総帥に回線を繋げ。」


「 は、了解しました! 回線繋ぎます。」


(( はははは、流石はドルン将軍だ!

   タイムリミットまで十分以上残っている。
    実に見事だ!
     良くぞ私の期待に応えてくれた。褒めて遣わそう!! ))


「 はっ、恐れ入ります。総帥!」


(( うむ。では拳三を残して、たっぷり痛ぶってやるのだ。
   特に精神を崩壊させろ。
    アンドラスタ、フレッタと共にな。

    神の光輪は二人が揃わなければ完成しない。
   正神軍が強硬手段に打って出るまで徹底的に抵抗するのだ!

 悲しい事だが、それ位しか我々の存在意義は見い出せない。
  フッ、私としたことが弱気な発言だった。

    ただなあ、最期まで楽しもうではないか。
    そして最期は我と共に戦おう。先がどうなろうとだ。

   では、暫しの別れだ。

 また会おう、我が愛するドルン将軍、そしてエリート軍人諸君!!! ))


   この映像は艦内の至る所で放映されていますが、
    サタン曰くエリート軍人達は号泣し抱き合っています。

   それでこのポンコツ将軍も例外無く、

「 おおおおおおおおおお~~~~!!!」


  っと、激しく感動しております。 
   まあ、虚しい話なのですが ・・・

    ところで、正義の超人を分断させる作戦は頂けません。
    ただ、当然やりそうなことではあります。

   二人はまだ気付いてはいない。
  ただ、うなされている。

その傷は直、再生完了のようだが相当痛い筈です。

 彼等の周りを取り囲んだ、え~何て言ったか? 
  ちょっと上にスクロールしてと ・・・

   あっ、これは時間を遡る業? であります。 
   作者だって忘れることが ・・・

  あ~そうそう、天空浮船 『 宇宙戦艦オオスズメバチの女王 』
 とやらに動きがあります。

ただこの戦艦は、まんま蜂の形をしています。




     全長は100 メートル程 ・・・

  六本の足はゆるく折りたたまれ、羽は高速で上下に動いています。

あのオオスズメバチの独特なオレンジとブラックのツートンカラーは、
 大抵の動物を恐怖に落とし入れます。

   あ~~、蜂大好きな私は魅力を感じますが ・・・

 一匹だけ近所の神社拝殿脇で死んでいたものを大事に持ち帰り、
榛名神社境内の巨大杉の根元で死んでいた六匹のニホンミツバチと共に、
 テレビの前にディスプレイしています。 ムフフ ・・・

  その後に捕獲し標本にしているのは、スズメバチだけで6匹です。

    スズメバチの寿命は約 2ヶ月です。 

   虫って、メ カ っぽくて カッコイイですよね! 
  この辺は、カマキリ先生には同感していただけると思います。

    あれれ、関係無い!


それが全二十機。

 その船体が発光しているので、不気味な殺人蜂の大群に見えます。

 その発光する宇宙船二機が、マーフィーの両脇に移動すると、
蜂の触覚の部分から、幅広のビームがマーフィーに照射されました。

 暫くマーフィーの体全体は、その光で発光していましたが、
  間も無く二機の蜂戦艦と共に、
  マーフィーは何処かに転送されたようです。

 その行き先は直ぐに判明致しました。
地球のロッキー山脈です。

 つまりそこで、マーフィーに対して
  陰湿なイジメと暴行をするということでしょう。

 彼等は赤い拘束具 『 蜘蛛の繭 』 で体は覆われています。

  この繭、動きは封じ込められるでしょうが、
   神気からの霊力まで封じる事が出来るのだろうか?

   きっと、霊力を旨く制御出来るようになれば、
  この繭から抜け出す方法を見出せる筈です。


《 彼等なら、きっとこの窮地を乗り越えられる筈だ。
 わしはそう信じる。》


    チュウ。


  「 私も信じております。」


    


           ( 推奨 BGM ) 

   『 恐怖の頭脳改革 』 より 「 悪の祭典 #9 」
    a) 第一印象、 b) 第二印象、 c) 第三印象 

        エマーソン,レイク&パーマー

  
    


    
  

     日本時間、午後零時四十七分 ・・・ここは赤い月の表面。

  もう既にアンドラスタ機とプレッタちゃんはテレポート済みです。

捕われた拳三の下半身は完全に再生しました。
良かったですが、これからどうなるのか心配です。

むむ、例の 『 宇宙戦艦オオスズメバチの女王 』 という宇宙船から、
ビームが地上に照射され、何十人かの兵士が降り立ちました。

 そこにはドルンと、その部下、工具兵が勢揃いです。

  ドルンだけはゴージャスなオープンカーに乗り御満悦です。
   当然、宇宙服無しです。

   月面用バイク、ハーレー仕様にはドリル大佐が ・・・
  スパナ軍曹も後に続きます。

その他は宇宙服を着てジープで続きます。

彼等は、地面に横になったガリバー状態の拳三から、
五百メートル程離れた地点にいます。

  拘束具は拳三の首まで厚く覆われている。

     ガラクタ親父は にやっ、と笑い右手を挙げ、
       宇宙戦艦に合図を送りました。


( お~いハンマー! やったれや、ビビビィーッ! とな。 ) 


    何言ってるんだ。この親父はぁ!

  すると蜂の触覚から、
  強烈な稲妻の放電が拳三に浴びせられました。 

    ぶ ~~~っ!

  当然拳三は悲鳴を上げ、もがき苦しんでいます。
  その電撃は五秒ほど続いたでしょうか。

    激痛で目を覚ました拳三は、今の状況が分からず焦っています。


マーフィー、マーフィー !・・・ どこだ! どこに居る ・・・??

  周りは邪気だらけだな。何て事だ。
  あれ、足の痛みが無いし両足の感覚があるぞ。

 しかし捕まったか、体が動かない。不味いなこりゃ。)


( お~い、俺様は将軍ドルンだ。
  てめえのダチは地球に強制送還だぜぇ~い。

  ケケケッ、今頃はなぶり殺しってとこだろう。いい気味だぜ ・・・
 青臭いガキ相手に向きになって悪かったな。

 ただ俺達悪魔にも意地がある。当然の事をしたまでだ。
  だから当然の如くお前も、此処で地獄を見てもらう。

  はははは、その前に、
 俺様からの心ばかりの贈り物を受け取れ。これは強制だ!


( 何だと、ふざけんなよ。そんな物いるかぁ!!)


   えっ、思い出したけど、贈り物の名前わぁ~何でしたっけ?

  ともかく、ろくでもない物だろうが ・・・

 何だぁ?

  車体の上半分ガラス張りの大型バスが何十台も、
   こちらに向かって来ている。

    そのバスを数名の部下が誘導橙で整列させている。

   その先頭の一台が拳三の頭の前で止まると、
  バスの真上に巨大なスクリーンが現れ、
 そこに映し出されたのはバスの中の様子だ。

   人間が五十人ほどいるだろうか?
    皆、怯えきって震えている。


( お~い拳三君。こいつ等はアメリカの善良な国民だ。
  神は見放したがお前はどうだろうな。

  きっと慈悲深い筈だがぁ、
 ククク、どうか彼等の命乞いを聞いてはくれまいかぁ? )


( 何てことするんだ。直ぐに放してやるんだ。いい加減にしろ!)


( おお、そりゃあ実に慈悲深いお言葉だ。 ククク ・・・

   おい君達、いいか良く聞くんだ。
   あの無様に拘束された巨人は、実は正義の味方だ。

   どうだね、彼に懇願してみては、
   もしかしたら彼が本気を出して繭を引きちぎり、
   君達を助けてくれるかもしれない。

   さあ、皆の声は彼に届くように
   セッティングしてあるから何時でもいいんだ。)


    すると、スクリーンに子供や老人のアップが映り、
    必死で叫んで拳三に助けを求めた。


( ああ済みません。
 皆さん僕はこの通り動けないんだ。許して下さ ・・・?

 おい、僕の思念波はあのバス内に響かないじゃないか。
 邪気が邪魔して通じないぞ。

 お前は、僕をただ単に苦しめる為にやっているんだろ。 

 許さんぞ絶対に!!!


( 何だってぇ、それのどこが悪い。
  やれやれ、ではせめてもっと近くで死なせてやろう。

   それが俺様の慈悲の表現だぜ。

 謹んで受け取ってくれ、

『 取って置きの悪魔からの御歳暮 & クリスマスプレゼント 兼 お年玉 』
 

 をなぁ ・・・  はははは、一号車 レッツ・ゴーだ!


  そのバスは拳三の頭に近付き、
  ぶつかったと思ったら大爆発を起こした。

   何てこった。 これじゃあ自爆テロだ!

  その時、拳三は感じた。
  彼等の痛みを自分の痛みのように、そして声が聞こえた。

   魂の叫びが ・・・彼は泣いた。

  自分にも激痛はあったが、頭部の損傷は不思議と無かった。

  爆発したバスの残骸と肉片に混じり、
  彼等の魂が激痛にもがき宙を舞っている。

   拳三はその姿を目に焼き付けた。


( 許して下さい。許して下さい ・・・)  何度も呟いた。


( おいおい、湿っぽいねぇ。この程度で泣くとは ・・・

  勇ましい大和民族の血が泣くぜ。
 それじゃどんどん行くぜぇ。精々哀れんでやりな。)


  ( ・・・・・・・。)  


   拳三は答えなかった。 それでいい、構う事はないんだ。

  その後も次々と拳三の目の前で、多くの人間が爆死していった。
 中には恨み辛みを拳三にぶつけてくる者もいた。

その度に、拳三はお詫びをした。

それしか出来ないからだが、自分が不甲斐なかった。
 この場から逃げたいとも思った。

  これは修行だと思っても目の前で
   死んでいく人を見なければならない辛さが、
    競技場での辛さの何倍も辛いと感じていた。

     ただ、あの富士山麓と東京湾での経験から、
     神様が人を裁く時はもっとお辛いんだということを、
     しみじみ思い出していた。

    そして涙が止めどなく溢れ、声を出して泣いた。


( ・・・ ああああーー、うあああぁぁーーー ・・・・)



その悲痛な波動が宇宙空間に広がっていく ・・・

 いや、浸透していくという表現の方が合っているかもしれない。


  む? 彼の体から邪気の粒子のようなものが、蒸発していく。

   すると、心なしか拳三の体が縮んだように見えるが?

    ・・・実際縮んでいる。

     邪気の拘束具に隙間が出来ているのだ。
     それを本人も気付いたようだ。

     ただ、その隙間は直ぐ埋められた。 

    繭は自動制御のようである。


( なんだ? 縮みやがったか、ちっ、おいおい拳三!
  お前は全く歯応えがねえな。

   何だ不感症か? この俺様が憎くねえのかってんだ!!

  泣いてばかりじゃ正義の味方が聞いて呆れるぜ。
 面白くも何ともねえんだよ!

  はあ~しかし石頭だな。
   あれ程の爆発に耐え得るとは、本体はそこにあるのか? )


( お~い、ドルン将軍! 君は十分楽しんだろう。

 いい加減その楽しみを僕にも分けて欲しいんだが、
 そうは思わんかね。

 ああ、これは御願いではない。命令だ! 代わるんだ。 )


   来たか。 サタンの次に厄介な相手が ・・・


( わ、分かったよ司令。もう好きにしてくれ。)

( よし、では拘束具を外してやれ。僕が直々に遊んでやる。)

( ああ、了解だぜ ・・・
 お~いレンチ、司令からの命令だ。 『 蜘蛛の繭 』 解除だ。)


   何をしようというのか? 拳三の拘束が解かれたのだが ・・・
   捕らわれの身であることには変りはない。


( ドルン将軍、もう一つ頼みがある。
  今から僕の分身を造るんだが ・・・

  その体の質量が適性に動ける重力場を作って欲しいのだよ。

  できれば調節可能にしてほしい。
 君の優秀なドクターなら可能だろう。どうかね?)


( ああ、それならある程度は可能ですぜ。
  恐らく直径三キロ圏内になると思いますが、
   それで構わないでしょうか? 司令殿。)


( それで結構。直ぐ取り掛かってくれ給え。)


( 了解 ・・・ 聞いたなドクター、直ぐ取り掛かるんだ。

  それとな、司令の崇高なる趣味に敬意を表して、
   周囲に電磁シールドを張り巡らすんだ。)


    何やらつまらない遊びをするようだが、
    拳三は戸惑いながらも事の次第を見守っている。

   焦っても始まらない事を知っているようだ。

  それに、先程の自爆テロの犠牲者に対しての哀悼の想いが勝り、
 逃げ出そうと必死になるのは見苦しいと感じていた。

またこの窮地にあって頭に血が昇れば、
許されない失敗を犯すことになると思ったからだ。

拳三がその冷静な霊眼で見守る中、
 悪魔の手下は周囲に重力発生装置と電磁シールドという障壁を、
  見事な連携で設置していった。

  悪魔の娯楽施設は約十分ほどで完成したのだが、
 拳三一人を残し、ドルン始め部下共々その領域から全て捌けて行った。
   



      『 悪魔の貴公子 』 

司令長官 アンドラスタ / ジョージ ・ クルーニ〇 
( 20代の設定です!) 

下記のイラストは写真を加工し、
フリーのペイントソフトで手を加えたものです。

素人レベルですが、私のイメージとしてはまずまずです。

これを作るのに悪戦苦闘して四時間位掛かりました。

全く、ソフトをもっと研究しないとスピードが上がりません。
でもその時間が惜しいのでイラストはもう作りません。     

悪魔の駆る邪龍の全長は、各機とも凡そ三千メートルです。
下のイラストに、スカイツリーを入れると御覧の通りになります。

右目から血を流しているのは戦闘によるものではありません。
悪魔の儀式、『 血流眼の儀 』 によって意図的に作られたものです。

流れている血は、日本人が生贄となって搾り取られたものなのです。

詳細は、『 堕天使ルシファー 』まで、お待ちください。

                  

  将軍 フレッタ / アン ・ ハサウェ〇
    アンドラスタに恋する乙女。
    その三人の側近もアンドラスタ派である。           

                          
    


( ねえねえ、アンドラスタ司令。
  私の出番はしばらく無いのかしら、
   さっきから暇で暇でしょうがないのよぉ。)  出たか ・・・


( それは済まないハニー。

  では出番を待つ間、
   取って置きの会席料理とデザートを届けさせよう。
    君の側近の分も合わせてだよ。

   それと僕の戦い振りを、じっくり見守っていておくれ。

  何時の時代も男とは、
 美しい女性に熱い視線を送られていると思うだけで、
  闘志が増すものなのだよ。

   その後で、たっぷり濃厚なキスをしてあげる。
    分かってくれたかなハニー。)


   ・・・・ 聞いてられませんな。


( あは~~ん、良く分かりましたわ。愛しのアンドラスタ様。
  わたくしは、大人しく武人の戦い振りを
   熱く見つめてお待ちしております。

  どうか奴を徹底的に痛め付けて下さい。
 あの拳三ちゃんは、わたくしのことを散々馬鹿にしたのですよ。

  それから、愛しの司令のお体に万が一でも傷が付きませんよう、
   邪神様に祈っております。)


   ・・・・ 聞いてられませんな。


  ただ戦うっていっても、直径三キロ圏内では邪龍は収まらない、あ?
  ・・・ 奴は分身造るとか言っていたし、
  それにその分身が適性に動ける重力場を作ってどうするのか?


《 チャンバラじゃ、チャンバラ。》 チャチャチャ~~~ンバラ。

「 チャンバラぁで御座いますか? はあああ???」

《 だから、やりたいんじゃろうて、
  拳三殿、僕と勝負してくれぇたまあえ~、とか言ってじゃ。
   得意の剣さばきを見せたいんじゃろうて ・・・》

     自慢じゃ自慢じゃ。 天狗じゃ天狗じゃ。


     あっ、そう言えばアンドラスタは
    フェンシングの名手だったんだ。

  ただ、勝負といってもねェ ・・・??? 
 あ、邪龍の尻尾の辺りに動きが ・・・

あの長い尻尾の先がぶ、分裂してゆくぅ ・・・
トカゲか? あれ、ちぎれちゃった。

 そのちぎれた尻尾が、立ち上がった???
  あああああ、ミルミルみるみる形がぁ~変化してェ ・・・

   へ??・・あらら、人型に変形して??? 
   はあああ、きききっ金髪だあ。

   もうお分かりですね。 巨大金髪王子の誕生です。
  身長二百五十メートル。 拳三にサイズを合わせた模様です。 

 ついでに中世ヨーロッパの騎士の出で立ちでぇ、
         赤を基調とし金糸の刺繍が派手です。
 ついでに帽子には、白い羽がぁ ・・・
 ついでに胸には、白い薔薇がぁ ・・・
 ついでに手袋は、真っ白ぉ ・・・
 ついでに腰には、剣がぁ ・・・
 ついでに月面です。ここはぁ ・・・
 これまたついでにフレッタと側近女性の黄色い声が、

 ((( キャ~~~~ッ!!! ))) ぶぅ ~~~! 


      拳三が呆れて見ている。

  しかしですよ、フェンシングと武士の剣法って、
  圧倒的に武士の剣法の方が不利なんですよねえ。

  真剣勝負だと勝てる見込みは皆無に等しいでしょう。
  普通は ・・・


《 おぬしの言う通り、まあ無理じゃろうな。

元々その剣法と、それぞれの剣の性質からして、違いが有り過ぎる。
フェンシングの剣は、世界の剣の中でも特殊で、
 薄く幅も狭い上に軽く、そして何より柔軟性がある。

 そのしなりを生かせば、
 中段に構えた侍の手首を簡単に切りつける事が出来る。
 剣でありながら鞭の要素も含む、恐るべき剣法なのじゃ。

それに、あの長官殿から一本取った悪魔は、
過去五百年以上いないのだ。

 それが故に拳三が百本中一本も取れんじゃろうな。》


  ・・・ 男って野蛮ですわ。 ホホホ。


「 ああつまり、遊ぶとは一方的に攻め立てて、
  武士と聖者としての面目を潰すという
   意味があるので御座いましょうか?」


《 まあそんなところだろう。

 奴は本気で拳三なら
 自分の相手が出来るかもしれないと感じたのか。
 それとも騎士道の方が勝ることを証明しようというのかな?

  ただ、奴の闘志に邪気は無い。
   いずれにしても、とことんやるつもりじゃ。
    まあ、最期まで見届けよう。》


「 はい。畏まりました。」


  ・・・ 女には理解出来ませんわ。 ほほほ。


   あなたは、この戦いをどう御覧になるのか?

 過去に武士と騎士の決闘があったのかは、何とも言えません。
間違い無いのは、月面で悪魔のダルタニアン (三銃士の一人) と、
人間代表のヒーローとの対決が、
後にも先にもこれ一回きりということです。

 まあ、そう言ってしまえば、
  この三日間の出来事は皆そういう類のものですが、
   この場は拳三を応援して下さい。

     多分やられっぱなしになると思いますので ・・・


     さて、何が始まるのか見当が付いた拳三は、
     立ち上がり腕組みをして待ち構えます。

    ただ、重力が地球並になった時は驚いていました。

   そこにキザなアンドラスタがリングインしました。


( おい、素晴らしい舞台じゃないか、礼を言うよドルン将軍。
  それに、この装置は電磁シールドだろう。

   ははは、おあつらえ向きなことだ。
    ではそのシールドの電圧を最大にしてくれ給え。)


( ああ、了解だぜ。ゆっくり楽しんでくれ ・・・

   おいドクター、電磁シールドの電圧最大だあ。
    これで奴の脳みそは電磁波でパアになるぜ。
     いやあ? 駄目かな?)


      何だ、そんな罠か?

    拳三は肉身をウルトラスーツで覆われているし、
   アンドラスタは単に霊力に因る物質化ですので、
  影響は無いでしょう。




    第四話、終了です!

  さあ、舞台は整いました。

月面での死合が、どのように展開していくのか?
アンドラスタの妙技が冴え渡るのは間違いないでしょう!

 ただ拳三がどう対応できるかが問題です。

  次回、壮絶な死闘の模様をお見逃し無く!!!

 
 今日の宇宙画像 「 干潟星雲 M8と三裂星雲 M20 」