『 うさぎの言霊 』 Rabbit's Kotodama 

宇宙の謎、神と悪魔と人とは?

《 最終章 》 〈 第七話 〉 激 突

2019年02月07日 16時48分25秒 | 小説



  遂に始まった正邪の最終決戦!
 その決戦も三日目に突入致しました。

ここで邪神軍は沈黙してしまいます。
あらゆる攻撃が正神軍に通じず行き詰まってしまったのです。

彼等は会議を開き、今後の方向性を審議しましたが、
なんと邪神軍全面降伏する決議になりました。

そこで次に取った行動は、
 あの伝説の邪龍、「ヤマタノオロチ」 を復活させてしまったのです。

  その巨大な怪物は、
   霊峰富士を望む駿河湾へテレポートしました。

   そのヤマタノオロチがテレポートする前に、
   炎の獅子に跨った女神がマーフィー奪還の為、
   ロッキー山脈に出現していました。

 しかし、その時既に異常事態が地球を襲おうとしていました。

それは拳三が地球に向かい加速を続けていましたが、
地球に接近した今でも、その加速を止めようとしないのです。

つまり拳三は地球を破壊しかねない
巨大隕石そのものとなってしまったのです。

それに気付いたマーフィーは、かすみ、犬四郎と共に、
 拳三の軌道を変える為に、体当たりを敢行しようとしていましたが、

  果たしてどうなるものか ・・・


《 キャラクター&キャスト 》

土門  拳三 ーーーーー 妻夫木 〇
   かすみ ーーーーー 成瀬 璃〇
マーフィー・ラッセル ー ヘイデン・クリステ〇セン
( 豆芝 )犬四郎 ーーー 加藤 清〇郎  


「 悪魔軍団 」

総  帥 サタン (ルシフェル/クラウド) アントニオ・バンデラ〇
  
  少将 フェリウス / オーランド・ブルー〇
  大佐 レイカス  / ラッセル・クロ〇


( 七大悪魔 ) 

司令長官 アンドラスタ / ジョージ・クルー〇―
 将 軍 グリオス   / アンソニー・ホプキン〇
 将 軍 オルゴラン  / トミー・リー・ジョーン〇
 将 軍 バクスト   / ウイル・スミ〇
 将 軍 ドルン    / ウェズリー・スナイプ〇
 将 軍 シアニード  / アンジョリーナ・ジョリ〇
 将 軍 フレッタ   / アン・ハサウ〇イ


  (推奨BGM) 

ロベルト・アレクサンダー・シューマン 作曲
ピアノ協奏曲イ短調 op.54

クリスティアン・ツィマーマン(ピアノ)

ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

シューマン - ピアノ協奏曲 イ短調 Op.54 ツィマーマン(ピアノ)

 


     

( おおおおおおおお~~~~~~~!!! )

  
( きゃあああああ~~~!!! )

    
( オオオ~~~ン!!! )



   マーフィー達の熱き波動が、宇宙空間を満たす光の海、
    そして主神様の天意の充満界に拡がっていきます ・・・

     むむ、駿河湾にテレポートしたばかりのヤマタノオロチが、
      こちらの異変に気付いたようです。


「 総帥、忘れておりましたが、拳三に仕掛けたシアニードの罠。
  私は放ってはおけません。
   どうか我等もマーフィーと拳三の衝突に合わせての、
    邪魔龍幻死砲 発射の許可を御願い致します!」


「 いいだろうアンドラスタ。皆も聞いたな。
  これも主神様に対するお詫びの証になるだろう。
   それに元はと言えば我等が撒いた種だ。

    この宇宙共通惑星である地球に傷一つ付けてはならない!

    いいか、只今より、 
   ヤマタノオロチによる
  最大邪霊力を以っての邪魔龍幻死砲を発射する。

フェリウス少将、邪霊力エンジン全開!


はは、邪霊力エンジン全開致します!

  邪龍各機、上空二万メートルの
   今から示す座標にレーザー焦点願います。」


     レーザーって、各邪龍の両目から出てきた。

    うわわわわわ ・・・


グオッ、ゴアッ、ゴンガンギイッ、ギャッ、
  グアッ、
ギャアアアァァァァァ~~~!!!


  「 間に合ってくれよ。我等にとっては最期の見せ場だ。」


     これは凄いことになってきた。 ヒイエエ~~~


《 ぬ ? ・・・ は、はは、畏まりました。

  直ちに遂行致します ・・・

   大黒天様の御神勅じゃ。
    チカチュウ殿にうさぞうよ、いざ行かん!》 チュウ!


  「 は、何処へで御座いましょう?」


《 ふふふ、ヤマタノオロチの内部、サタンの元へじゃ!》 イザ!


「 うお、畏まりました。」 

    こりゃあ凄いことになった ・・・ ムフフ。
     という訳で、瞬間移動で御座います。


 総帥! 大変です!

  このサタン機頭上の邪気障壁の一部が消失しました。

   何者かが機内にテレポートしてくるものと思われます。
    如何いたしましょう!」


「 それは正神軍からの使者であろう。丁重にお迎えするのだ。」

 
  ここはヤマタノオロチ最後尾サタン機内、
   司令室そして巨大円形雛壇の頂上。

    魔王サタンの目の前に推参で御座います。

    ですが、流石にサタンは冷静であります。
   彼の大きく見開いた漆黒の目が我等を凝視しています。


《 サタンよ、朗報を持ってきた。心して聞くのだ。》


  「 ははぁ! 」


    彼は瞬時に椅子から降り、床に額ずいた。 側近も同様である。


《 面を上げよ。これは大黒天様よりの御言葉である ・・・

 『 汝等の全面降伏の意思を確認した。その謙虚な想いは認めよう。
  その報いとして邪龍に「 月光 」「 火の気 」を与えよう。』 

                     ・・・以上だ。》


    するとドーム型スクリーンには、雲海に大穴が広がり、
   邪龍全体に月光と火の気が降り注ぐ様が映し出されました。

  あっ、却って邪神軍の皆様は苦しそうですが、止むを得ません。

   ただ彼は感動に打ち震えている。
    そして司令室の兵士全員も同様に感嘆の声を上げた。


「 これは有り難き幸せ。
 わたくし邪神軍を代表し、心から御礼申し上げます。
 この御恩に報いる為にも、最期の作戦を断固遂行致しまする!!


《 うむ、汝等の想い、しかと大黒天様にお伝えしよう。
  では、さらばだ!》
 

   苦しいのに感激するとはこれ如何に?

  悪の美学の粋を、神々と神の子人に見せ付けたいということか?
 彼はそのようなことを言っていた。

大黒天様はその意に応えられたということでしょう。

 月明かりに浮かび上がる巨躯は、
  史上最も凶悪なる邪龍ヤマタノオロチとして、
   神の子ヒトの魂に刻み込まれ、永遠に語り継がれていくことでしょう。


     吾等は瞬間移動をし、マーフィーの元へ戻りました。

     そんなことになっているとは知る由もないマーフィー達は、
    宇宙の大海原を突き進んでいた。


( 二人とも、いいか。拳三の姿が近付いて来たのを感じるだろう。

  今から気を高め、拳三に激突する寸前に気を爆発させるんだ。
   失敗は許されないぞ!

    チャンスは一度切りだ!

     行くぞ、拳三おおおお~~~~~!!!


      ( にいさ~~~~~ん!!!)

      
 ( オオオオオオオ~~~ン!!!)


    す、凄いスピードです。

  だが、拳三のスピードのほうが何倍もあるでしょう。
 これが弾丸同士なら当たらないでしょうが?

け、拳三がこちらのマーフィーに気付いたようだ。
何かまずくないだろうか?

それに、ヤマタノオロチからのレーザー照準が、
拳三の額に当たっているのだが、本人は気付いてはいない。

 これも幻覚の影響かもしれない。


  そのヤマタノオロチは、例えるなら邪龍山脈か悪魔連峰か ・・・

 その醜く波打つ山脈は、大黒天様の粋な御配慮に因り、
柔らかな月の光を浴びている。

それとは別に強烈な火の気は、更に邪神軍を苦しめ、
その山肌全体からは焼け焦げたような異臭と共に、
 どす黒い煙が立ち昇っている。

   地球を覆う特殊な雲の存在は、
    火の気をある程度封じるという意味合いがあるのだ。

    創造主は邪神軍にも配慮されていたのです。

  その邪神軍最大最強最終兵器体内では、
 邪霊力を増幅させる為の電流が最大電圧となり、
邪肉の持ち主達の悲鳴が絶叫となっております。

体外の邪気は不気味に発光し、
その八体の邪龍と蠍の魔獣との融合体は、
三角錐の邪魔龍幻死砲の砲台と化しています。

 黒煙と放電を伴う砲台の先は、雲海の位置より遥か上にあり、
  それはあたかも、

  『 邪悪な電飾のクリスマスツリー 』 に見えなくもありません。


  この模様は、「神の光輪」 から 「神の光網」 を通じ、
 各 「神の光玉」 の一人一人の魂に配信されています。

世界の同志は、神に祈りつつ固唾を飲んで見守っております。

 あああ、ヤマタノオロチの体内が赤く発光し、
  その邪光弾が八機の邪龍の咽を通って、
    邪口まで到達致しました。


総帥、エネルギー充填完了!
  マーフィーと拳三の衝突地点に合わせての発射時間は、
   三十二秒後で御座います!!」


「 よし、間に合ったか!
  これも主神様のお導きだ!

  では、カウントダウンを始める。
  いいか、こちらのタイミングと同調させるんだ!

 いくぞ諸君!・・・・5・4・3・2・1・発射あぁーー!! 」  


「 拳三、受け取れぇ! 」  アンドラスタです。 いいねェ ・・

  「 発射だぁ、死ねえぇ! 」  グリオスです。 おいおい ・・

   「 発射ぁ! 」 オルゴランです。 ノーマルです ・・・

    「 くたばれぇ! 」  バクストです。 ちょっと ・・・

   「 ぶちかませぇー、ファイアー! 」  ドルンです。 あのねェ ・・

  「 やっちまいなぁ! 」  シアニードです。 だからさあ ・・・

「 行っちゃてぇ! 」  フレッタです。気合が足りない ・・・


ギリギリギリギリ、ググググゥ~~~~ゴアッ!!!



     
   

  ううわあ、雲海を突き抜けた八体の龍の口から放たれた邪龍波が、
 一箇所に集束し巨大な邪光が凄まじい閃光を放つと、
放電に包まれた邪光弾が発射されました。

そして宇宙空間の拳三目掛けて炎の尾を引き、
 凄まじい勢いで向かっていきます。

  その邪光弾の直径は約二千メートル。
   拳三は地球から迫り来る異変に気づいたようだ。


( な、何だあれはデカイぞ、黒く燃えてる。また彗星か?
  何で地球から来るんだ。

  だが距離はまだある。それにもう一つ彗星が ・・・
  ただ何か妙な感じだ。邪気が接近するのを感じる。何でだぁ ・・・

 ああ、ぶつかるぅ ・・ うああああ~~~ は? マーフィー ・・・)


     はああ~~、ぶつかったぁ! 両方同時にです。

  良かった、こともないのですが、凄い爆発の閃光が音も無く拡がり、
 拳三とマーフィーは弾き飛ばされました。

ただ、お察しの通り二人の体は激突の衝撃でバラバラです。

拳三は北の方角に弾き飛ばされました。
 マーフィー達は西に弾かれました。

  ある意味、映画 「 アルマゲドン 」 です。

   この映画のヒーローはならず者ですが、
   今の奇跡を起こしたのは、正統派ヒーローと悪魔です。

 我等はマーフィーの近くに行きました。
彼の意識はありません。

その体は上半身を残して、下半身はどこかに行ってしまいましたが、
赤い霊波線がちぎれた下半身を集めて引き寄せています。

 その信じ難い光景を、
  肉体の無いかすみと犬四郎は唖然として見つめていました。
   しかし、ハッとしたかすみと犬四郎がマーフィーに縋ります。


( マーフィーさん、マーフィーさんしっかりして ・・・
  ああっ、凄く縮んできてるわ。

   ねえ、犬四郎。
   マーフィーさんは私に任せて、
  あなたは兄さんを神の光輪へ連れて行ってくれる。
 急いで御願い。頼んだわよ!)


( はい、分かりました。 必ず連れて行きます! 

  ウオオオオ~~~ ・・・ )


    犬四郎は右の前足を挙げて敬礼の真似をし、
     雄叫びと共に飛び去りました。




          (推奨BGM)  

       クロード ・ アシル ・ ドビュッシー作曲
        『 アラベスク 』 第一番 (ピアノ)CANACANA 







          日本時間、午後十時五十分。
         カウントダウン ( 八時間十分 )


  かすみは、再生が完了したマーフィーの側で必死に呼び掛けています。


   ( マーフィーさん、マーフィーさん起きて、起きて ・・・ )


  かすみはマーフィーの魂に、
 強く響くよう祈りながら言霊の波動を送っている。

マーフィーの体は、
恐らく「 神の光輪 」に入れる適性な大きさになっているようだ。

後は自力で「 神の光輪 」まで辿り着かなければならない。

 ただ、このままで行けば激突時の衝撃により、
  地球から離されるばかりである。

   かすみの霊力では、
   肉体を持つマーフィーを止めることは出来ないのだ。


( ねえねえ、マーフィーさん、マーフィーさん、あっ、目を覚ました。)


( あっ、いけない気絶して ・・・ 
  かすみちゃん、拳三と犬四郎はどうした。)


( 大丈夫。兄さんは地球には衝突しなかったわ。
  犬四郎には、兄さんを探して
   神の光輪に連れて行くよう頼んであるのよ。
    早く行かないと間に合わなくなっちゃうわ。)


( いろいろ済まない。ちょっと待ってくれ、拳三を探してみる。

  あっ、あんな所まで飛ばされたか ・・・ グリーンランド辺りだ。
   ただ犬四郎はもう直ぐ着くな ・・・拳三、拳三、起きろ! 起きろ! 

   む、通じるぞ!!

   おい拳三! ・・・ よし起きた。

  いいか君は犬四郎と合流して神の光輪に向かうんだ。
  時間が無いぞ。急ぐんだ。こっちもギリギリかもしれない。

  あ、それから出来るだけ宇宙空間を飛ぶんだ。
   大気中では空気抵抗が邪魔になる。)


 ( ああ分かった。
  け、犬四郎の意味は分からないけど、とにかく急いで向かうよ。

 それから君が僕を止めてくれたんだな。
 僕には地球がもっと先に見えていたんだ。
 ありがとう、恩に着るよ。じゃあ、まただ ・・・

 ふう、犬四郎って??? 何か来る。まさかアレか?

  距離はあるけど ・・・炎のライオン?
   舌を出して ・・・ しっぽ振ってるぞ!

     お~~いおい、お前、犬四郎なのかぁ~~?


( はい、そうなんで~す。そんなことより急ぎましょう。)


( うわあ、近い! や、やっぱり距離感が変だ ・・・
  しかも犬四郎がしゃべった! それに随分ぼやけて見える?

   ああいや、それどころじゃない!

   ううわ、十一時まで五分しか無いぞ。
   もう行く。犬四郎ありがとう。

  あいや、僕は距離感が正常じゃなかったんだ。

 ん? 何だ犬四郎 ・・・)


( 僕、拳三さんの目に付いているゴミみたいな物が見えるよ。
  なめれば取れると思うんだけど、いいですか?)


  あ、言われてみれば拳三の目の周りに、
   薄っすらと汚れた膜が付着している。


( 何? そうなの ・・・ じゃあ舐めてくれ。)

( はい。)


  すると、少々細めのオレンジの目玉を、
   炎の舌でペロペロジュージュー舐め始めた。
    その邪気の汚れは直ぐに取れたようだ。


( おおっほう、なんか熱かったけど、どうやら正常に戻ったぞぉ。
  よ~しよし良くやった。ああ~あ、スカスカだな。
   撫でられないよ。

    ははは、よし、お前も一緒に来てくれ。
     僕の背中に乗るんだ。

      よし ・・・ 目標補足!

      近道で北極点を通って行こうって雲で見えないけど。
     じゃあ行くぞ。

   土門拳三と犬四郎、ケンケンコンビ。 

  気合だ ~! 行っけぇ ~!!!

( オオオウウウゥ~~~!!!)


    拳三は犬四郎と共に炎の気合で飛び始めました。
   この速さでは時間に間に合うでしょう。

マーフィーは ・・・飛ぶスピードはいまいちだが、何とかなるでしょう。

   かすみは、のろのろ飛んで後を追いかけている。


( あ、そうだ。一緒に連れて行ってもらえば良かったかなぁ。
 全然進まない感じだわ。瞬間移動なんて見当もつかないし、どうしよ?
 も~う、えいえ~い・・・? あれれ??? )


《 お~~い! そんな速さでは明日になっても着かんぞ~い。
  ついでだから、わし等と一緒に来なさい。》


   チュウチュウ。
     あへ?




( はああ??? ああ、あのど、どちらさまで、
  あ、いや、私目がおかしくなったわ。)


《 おかしくは無いわい。わし等はこのとおり通りすがりの神じゃ。
  たまにはこんな者もおる。気にするな。それから挨拶は後じゃ。

  かすみよ、おぬしは体が大き過ぎるから、体を縮めるのじゃ。
 やれば出来るであろう。》


    チチチ。
  通りすがりの神ぃ?


( はい、畏まりました。) 素直ですね。


   かすみは、私と同じくらいの大きさになった。

  そう言えば、私にしてもウサギスーツのせいか、
  体の大きさを変えることなど出来ませんので、
   恐らくは三十郎様とチカチュウ様も同じなのです。

    いや、私に合わせて下さっているだけかも?


( この位で宜しいでしょうか?)

《 うむ、結構じゃ。ではそのウサギの左隣に座りなさい。》

( はい、し、失礼致します。)
( はい、どうぞ~~。) 


  私は ニコッ、と笑ってお尻をずらした。

   チュチュウ! 

   チカチュウ様も、とってもかわいらしい笑みで迎えられました。

   あらら、それでかすみは申し訳無さそうと言うより、
   凄く興味深々で私の隣に正座した。

  目が何かキラキラ熱視線である。


きゃきゃっ、きゃわいいい~~ん! 夢だわきっと ・・・

  はっ、あの失礼を致しました。
   ついうっかり、思念が筒抜けなの忘れておりまして・・)

   チチ。

( だいじょうぶだよ。気にしなくていいから。
  これはウサギスーツで、中身は51才の中年男なんだけどね。

  まあ、魂は永遠の青年といったところだね!
 如何でしょう! 三十郎様にチカチュウ様!)


はははは! おぬしの言う通り、わしは三十九万年生きとるが、
  永遠の青年である!》


《 わたくしも二十七万才ですが、永遠の美少女ですわ! ほほほ ・・・》


( わあ、素敵ですね! 私の魂の年齢は何才か分かりませんが、
  少女の心を忘れずに精進致します!)


    かすみは笑顔で答えた。

 ただ、ぬいぐるみのチカチュウ様が凄くかわいらしいのは分かるが、
 私の姿も随分かわいいのだろう。

  何しろ大黒天様の御趣味でありますから ・・・
   私は、未だに自分の顔を見たことが無いのだが ・・・


《 鏡など出さんぞ~、面倒だ。では参る、いざ神の光輪へ! 》

  チュウ~~~!

  ( はは。)

   ( はあ・・・?) 

    かすみちゃんびっくり、もう着いちゃいましたとさ ・・・


  あわわ、こちらは富士山麓 ・・・

そこへ堕天使八人、その側近達と無数の兵士達が勢揃いして、
富士の裾野の一角を埋め尽くし地面に正座しておりますがぁ ・・・

 実に神妙な面持ちであります。
  ただ殆どの者は富士周辺の神気の影響で苦しがっています。


 そしてヤマタノオロチが駿河湾に見えます。
有り得ませんこの巨体。

 八機の邪龍の頭は正面から見ると縦長の楕円形に整列して、
  雲海の下におぞましい姿の全容を晒しています。

    勿論、富士上空には雄々しい火之夜芸速男神様が ・・・
     その上には「 神の光輪 」が燦然と輝いております。  


《 よいか、邪神軍の連中は大黒天様より御沙汰が有るまで、
  その場での待機を命ぜられておる。

   まさか、執行猶予期間内に全面降伏するとは思わなんだが、
   これも主神様の大愛なるお導きがあってのことだ。
  それに神の子人の祈る強さが増した証拠でもある。

 実に見事じゃ!

  直に拳三とマーフィーも到着する。
   そして「神の光輪」は完成する。

   我等は祈りつつ、その神々の愛の奇跡を魂に焼き付けるのじゃ。
   未来永劫、例え神に昇華したとしてもじゃ。

  二人とも分かったかな。》

   チュウチュ。


   「「 はい、分かりました!!」」



( 執筆当時の作者時間 二〇〇九年十一月十八日 (水)午前零時 )





 あ ~~、 さてェ ・・・

   この後の展開はどうなるんでしょ?

      分かりません!


          次回をお楽しみに ・・・ 



   
  おまけの宇宙画像です。


《 最終章 》 〈 第六話 〉 史上最凶最悪の邪龍

2019年02月07日 11時17分00秒 | 小説



  《 キャラクター&キャスト 》

総  帥 サタン (ルシフェル/クラウド) アントニオ・バンデラ〇
  大将 ハガード  / ブルー〇・ウィリス
  少将 フェリウス / オーランド・ブルー〇
  大佐 レイカス  / ラッセル・クロ〇

( 七大悪魔 ) 

司令長官 アンドラスタ / ジョージ・クルー〇―
将 軍 グリオス    / アンソニー・ホプキン〇
将 軍 オルゴラン   / トミー・リー・ジョーン〇
将 軍 バクスト    / ウイル・スミ〇
将 軍 ドルン     / ウェズリー・スナイプ〇
将 軍 シアニード   / アンジョリーナ・ジョリ〇

将 軍 フレッタ    / アン・ハサウ〇イ

     「 プリティ ・デビルス 」

       側近 A / キャメロン・ディア〇
       側近 B / ルーシー・リュ〇
       側近 C / ドリュー・バリモ〇


マーフィー・ラッセル (二十五才) ヘイデン・クリステ〇セン
土門 かすみ (二十一才)ーーー  成瀬 璃〇
( 豆芝 ) 犬四郎 ーーーーーー  加藤 清〇郎


さて、将軍ドルンにより月から強制送還されたマーフィーですが、
拘束されつつも、全く怯ひるまず悪魔共と戦っています。

彼の武器は、神への愛と情熱、不屈の精神、冷静な洞察力!
それに対抗する悪魔共の武器は、

神と彼に通用するのでしょうか?

       その結末や如何に ・・・?



            ( 推奨 BGM ) 

        ヨハン ・ セバスチャン ・ バッハ 作曲
       ハープシコード協奏曲第1番 ニ短調 BWV1052  

 



 
( 執筆当時の作者時間 二〇〇九年十一月五日 (木)午前二時 )


     現在日時、十二月二十一日(日) 18:20
             カウントダウン 12:40





            ここは地球。


      北米大陸を縦断するロッキー山脈、その一角。







   この地で今繰り広げられていることを解説する前に、
  月で拳三とマーフィーが離れ離れになった、
 その後から現在に至るまでの過程を、

録画された叡智晶の動画を元に、
掻い摘んでご説明致しましょう。

地球に強制送還されたマーフィーは、
 ロッキーに集結したサタン機、グリオス機、
  オルゴラン機、バクスト機、シアニード機に囲まれました。


「 サタン機 」 


 真っ白のイメージでお願い致します。クチバシはレモン色です。  

          


    

 この時点では、マーフィーは気を失ったままです。

そこで拘束具「 蜘蛛の繭 」を解かれ、

代わりに十字架に磔にされました。

蜘蛛の糸で十字架に頭以外を縛られ、
その上で両掌、両足首に金属の杭を打ち付けられたのです。

 悪魔共に情けという感情は御座いません。

   激痛で目が覚めたマーフィーは失望しましたが、
     直ぐ我に返り不敵にこう言いました。


「 おい、無駄な努力だな。
 月での攻撃をまともに受けても、僕はこうして無傷で生還した。

 だからお前等は僕を殺すことが出来ない。
 幾らでも痛め付ければいい。

正直怖いが、 これも鍛えと思えば君達に感謝出来るようになるさ、

きっとね。

 君達の邪龍は地球の生ゴミ同然だよ。
  もう腐ってきてるんじゃないか? フン。」


    言いますねぇ。


「 おいおい、黙って聞いていれば良く謳う木偶の坊だな。

   私は悪魔王サタンだ。

   お望み通り強烈なリンチはしてあげるさ。
  色々趣向を凝らしてね。
 君もきっと気に入ってくれるだろう。

  さて、世界一周旅行と洒落込もうではないか。
   その後は、神の光輪に入る事無く、
   南極点にでも十字架ごと突き刺して差し上げよう。

  では、皆の者参ろうではないか。」


    磔状態のマーフィーは、
    邪気の球体の中に閉じ込められたまま、宙に浮いている。

   間も無く、五機の邪龍と共にテレポートしました。

 まず、アメリカの神の光玉を巡り、
その守護神と神の子達に向かって、

「 もう神の光輪は完成せず、正邪の戦いは邪の勝利が確定した。」 

等と謳い、
マーフィーの体をサタン機以外の邪龍に攻撃させ、

晒し者にしました。
 悪魔共は攻撃しながら罵声を浴びせ続けたのです。

  そのマーフィーの姿を目の当たりにした光玉内の群衆は、
  涙を流しながら必死でマーフィーの為に祈りました。

ここでも聖者から、

悪魔への憎悪の想いを持ってはいけないことを、
補佐役から末端の人々に徹底させていました。

マーフィーの家族がいる光玉では、
サタンがそこの弱みを突いて祈りを混乱させようとしましたが、
  マーフィーの家族も他の者達も動じませんでした。

   サタンを始めとして、
   他の悪魔共も顔色が優れなくなってきています。

   それもその筈、手応えが無い上に、
   却って志気を高め光玉の光度が増すので、
  その光を浴びて苦しくて仕方がないのです。

そして当然マーフィーの体は徐々に縮小していきます。

 マーフィーは体が縮む度に邪気が抜けて、
 神気が増してきていることを実感していました。
彼の魂は静かに轟々と燃え、信念は揺ぎ無いものになっています。

 悪魔共は、それでも意固地になり、
次に向かった先は中東のアフガニスタンとイラクでした。

  これには理由があります。

  何故なら、マーフィーの叔父はイラク戦争で戦死しており、
  また彼の友人はアフガニスタンでの掃討作戦中、
 タリバン武装勢力との交戦中に銃撃され死亡しているのです。

それに因りマーフィーは、
 イスラーム教とアメリカ政府と軍に対する
  不信感が少なからず有るからです。

 タリバンもアルカイダも、
元はと言えばアメリカが育てたようなものです。

マーフィーは、それを熟知しているが為に
払拭しきれない悪想念がまだある、
とのサタンの部下の調査に因り、
 そこを突こうというサタンの思惑は、
   果たして功を奏するのでしょうか?

サタンは、

イラクの光玉付近上空に浮遊させたマーフィーにこう言います。

「 マーフィーよ、お前の叔父を殺したイラク兵の家族は、
  あの中にいる。この映像を見るのだ。」


    するとマーフィーの目の前に、
    光玉内の模様を写したスクリーンが現れた。


「 あの中にいるのであれば、魂が美しい選ばれた神の子だ。
 その資格があるということだ。恨みなどもう無い。

僕の大好きな叔父は、今は邪龍に取り込まれていると思う。
それも僕ががんばれば、

もしかしたら救って頂けるかもしれない。

 ただ、今は一人のことより、
  全人類の家族を救うことに集中しなくてはいけないんだ。

   もうこのままでいいから、月に連れて行ってくれ。
   拳三と一緒に修行がしたいんだ。

  以前はあなたも偉大な天使だったのでしょう。
 御願いします。月へ戻して下さい! 」


馬鹿言うな! てめえの言う事なんぞ聞く耳持たねえよ。
  全くさっきから歯応えは無いやら暗いやら ・・・

   日本へ行って侍の修行したんだろが、
   だったら少しは気合入れて抵抗してみやがれってんだ。

    畜生ぉ~~!!


    バクストが苛立っている。

  ??? 何だろう、オルゴランの邪龍から光る物体が二つ、
  マーフィーの元へ近付いて来ました。

   驚いたのはマーフィーだ。

   それとは別に ・・・ むっ、この只ならぬ神気は??

   ああっ! 眩い光が上空から地上を照らしている。

  あっ、あれは光玉から伸びた
「 神の光輪 」 に繋がる 「 神の光網 」 の一部が、
強烈な光を放っているのだ。

その光の根源が、光網から離れマーフィーの元へ近付いて来た。
それは、紛れも無いガブリエル様の御姿だ。

何とも神々しい輝く神気に包まれ、純白の翼が優雅に羽ばたき、
光の風を辺りに振り撒いている。

 悪魔共は油断していたので邪龍内はパニックになりました。    

  ガブリエル様がマーフィーに語り掛けます。


《 マーフィーよ、よくぞ今まで神の鍛えに応えてくれた。
 直に適性な体に成れるであろう。

 今までの労をねぎらい、
 大黒天様からご褒美を頂いたので受け取るが良い。

ははは、それは汝のイラクで戦死した叔父エリック・ラッセルと、

アフガニスタンで戦死した友人チャーリー・マクレガンだ。

二人は取り込まれた邪龍から、

特別に「神の光玉」に入ることを許された。

良いか、マーフィー、エリックにチャーリーよ、

主神様にお詫びと感謝を、そしてその証をお立てするのだ。
如何なる時と場合に於いても永遠にだ。良いな! 》


   「「「 ・ ははあぁ ・ あう ぅ ・ ああ あ ・・ 」」」


   三人共、泣きじゃくり殆ど言葉にならない様子だ。
  無理もない。このような奇跡はそうそう無いのだから。



         《 サタンと四人の悪魔よ。

        もしお詫びをしたいのであれば、
      神の光輪の元へ集い、ひれ伏して懺悔せよ。

        最期位は礼を正しては如何かな。 》



       「 ガブリエルよ、久しぶりだな。

      とは言え、積もる話をする気にはなれん。
       もう帰ってくれ。私は今機嫌が悪い。」


  「 そうだ。帰れ帰れ。お前等のやることは一々癇に障るぜ!」


    バクストも苛立っているが、苦し紛れの感は否めない。


         《 そうか、ならば帰ろう。
        その前に君達に礼を言っておこう。

        マーフィーと拳三が世話になった。
       それに世界の神の光玉の皆も鍛えられた。

         君達の御蔭だ。 ありがとう。

          功績と罪穢は別だからね。

     では、マーフィーと拳三を引き続き宜しく頼むよ。

            さようなら。》


        ああ、これぞ神の愛そのものだ。

      ガブリエル様はマーフィー達に微笑むと、
 光玉内の群衆にも微笑み手を振りながら去ってゆかれました。


   この模様を見た世界の同志の皆様は感涙に咽び、
       興奮の坩堝と化しています。

       その後、救われた二人の魂は栄光の
       「神の光玉」 に入って行きました。



「 ちっく しょう、ふざけんな。 
  礼なんかいらねえよ ・・・ バカヤロウ。」


    やけくそだ。


「 バクスト、もういい。 ロッキーへ帰るぞ。」   


    サタンは戦意喪失のようです。
    他の悪魔も冴えない顔だ。明暗の差は増すばかりです。


「 バクスト、総帥がそう言うんだ。言う通りにしようぜ。」


「 分かったよ。 なあ、オルゴラン ・・・ 

俺、さっきから震えが止まらないんだ。  
涙も勝手に出やがって、みっともねえよ。

こんなの最低だぜ ・・・ ううぅ ・・ 俺は最低だ ・・ 」


「 そう言うな。俺も同じだ。悪魔の最期はこんなものだ。
 堕天した報いだよ。そして俺達の地獄は果て無く続くだろうよ。

 もう取り返しが付かない。 二度とな ・・ ぅぅ ・・ 」


「 おいおい、いい大人がメソメソだらしないねえ。
 ふん、あたしは最期まで泣いたりはしないよ。

 絶対、絶対だ! 怖くも無い!

 火に焼かれても泣かないよ。叫び声も上げない!
 あたしは最期までサタン様のお側でお使いするんだ ・・・ 

 最期まで ・・ぁぁ・・ 」


   シアニードは振るえを押さえながら、精一杯強がった。
    青く強張った顔で ・・・

    もう一人おります ・・・ 堕天使グリオス。
   彼は ・・・ 無言で宙を見つめています。

 ただ、見つめているのは遠い記憶かもしれない。
 彼は現実逃避をしているようだ。 

 目が何か楽しそうだ。


   遥かなる記憶かぁ ・・・ いつの事だろう?

      あなたは ・・・ どう思われます。













              ここに来て、邪神軍沈黙 ・・・

              総帥サタンの思考停止 ・・・


            静寂に包まれたロッキー山脈 ・・・

          彼等の命運や如何に ・・・
















 間も無く全機テレポートをし、ロッキー山脈へ戻った。

月の別働隊は既に戻っていた。
そして悪魔の邪龍八機が揃った。

 この時のマーフィーの身長は百メートルを割っていた。

   次に始まるのは、
    恐らく最期の悪魔の祭典、最期の儀式 ・・・









  









                    ( 推奨BGM )  

                フレデリック・ショパン作曲  

           十二の練習曲 作品二十五 第七番 嬰ホ短調 

              マウリツィオ・ポリーニ (ピアノ)



   





















  この地には、深い悲しみと絶望の波動が渦巻いていた。


 この何とも言えない虚脱感は、

全機の邪龍の体全体から滲み出ている。

 それぞれの堕天使も同様である。


    皆、目が虚ろで誰一人黙して語らなかった。




















          どれ程の時間が経過したのだろう ・・・


         静かだ   余りにも ・・・



      雪山も   息を潜めている


   灰色の雲を   ただ見つめる


 気が付くと粉雪が音も無く降りてきた ・・・ 風は無い  


まるで彼等の心情を表すかのようだ   


   
サタンは その粉雪が舞う様を死んだ目で追っている

まるで生きる屍 先程から瞬き一つしない ・・・


? 唇が動き始めた 何か歌っているのか・・・ 聞こえない




 彼は暫くすると側近にスコッチを頼んだ 

そして皆も飲めとも言った

 部下達はすすり泣いている


  サタンは ショットグラスの琥珀の揺らぎを見つめながら

    何を想うのか?


      彼の大きな漆黒の瞳から一筋の涙が零れた


      頬を伝い落ちた涙の雫が ゆるり琥珀と混ざる

 



    グラスを上に挙げ ただ ジッ と見つめた



「 ・・・ 寒いな  それに  ただ   むなしぃ ・・・ 」




     頬杖をついて また黙った 


      それから 体の振るえは止まらなくなった



















日本時刻、午後七時十分
カウントダウン ( 十一時間五十分 )







  邪神軍が沈黙して ・・・ 彼等の時は未だ動かず。

   総帥の思考が復活するまでは、誰も動けないのだろう。


  それでも全次元の時が止まる事は無い。

 容赦無く時は進み断罪の瞬間は近付く!


時を刻む音霊は無いだろうが、邪神軍の兵士達には、

一秒一秒を刻む 「 秒針 」 が胸 に突き刺さっているに違いない。

 更に 「 分針 」 は腹をえぐり、「 時針 」 は首 を刈るのだ!

  そのような妄想に駆られ、正気ではいられないだろう。


      哀れだ ・・・ 憐れだ。



  人生を諦め断罪を待つ他無い邪神軍の面々の顔色は最悪です。

    この先どうなるのか? 

    あなたも想像空想美想してみて下さい。
   妄想など無粋ですよ。

神の子人を含めた正邪の神々の黙示録。

 あなたの描くクライマックス。
  自由な発想で魂という小宇宙に描いてみて下さい。

  音楽、風景、心の葛藤、そして極限の愛、等など ・・・







                      ( 推奨BGM )

                ポール・デ・セネヴィル 作曲
                 「 マリアージュダモール 」

              ジョージ・ダビッドソン(ピアノ)
               
                 注:ショパンではありません。




 



       さて、邪神軍の皆様は、え~~まだ駄目ですか?

         まるで邪龍が動く気配無し。


         思考回路がショートした模様。



      一体彼等は何をしているのか ・・・ ?




( サタン )      

あれっ、いない! 何処?
側近と共に完全防寒でクラウド山(実在)の頂上に
その姿が ・・・ 自分探しか?


( アンドラスタ )

シャワーを浴び、着替えて鏡の前でポーズ。
溜息を一つ吐くと、ソファに座りバーボンを飲みながら

物思いに耽る。  な? 誰か来た。


( グリオス )

色情狂だけに、やることは一つ。 狂っているのです。


( ドルン )

オーストラリアにテレポートし、山を標的に大砲を撃っては、
エアーズロックに当たったとか、

外れたとかに一喜一憂しています。

実弾シューティングゲームですか? まあ楽しそうです。


( オルゴラン )

あらら、バクストと共に側近を交え、バレーボールの試合を? 
楽しそうだ。 先の事など考えたくないのでしょう。


( バクスト )

部下達は宴会を開き、どんちゃん騒ぎをしている。


( シアニード )

シャワーを浴び、着替えて鏡の前でポーズ。 か、完全防寒!
それで側近三人を引き連れサタンの元へ ・・・
アポ取らなくて大丈夫ですかね、お姉さん?


( フレッタ )

シャワーを浴び、着替えて鏡の前でポーズした後、
側近、自称 「プリティ ・デビルス」 達は、
ティーを飲みケーキを食べながら愚痴をこぼす。

側近 A 「 ねえねえ、フレッタ様ったら、
     お一人だけアンドラスタ様の所へ行かれてしまうなんて
     ズルイですわ!」

側近 B 「 何時もあの方は自分勝手で付いて行けませんわ。

     ぷんぷん。」

側近 C 「 あたしは生まれつきそうなのっておっしゃって

     酷いですのよ。」

側近 A 「 あっ、そうそう。
      アンドラスタ様の軍のリッグ中佐って

     素敵だと思わない?」

側近 B 「 あら、あたくしは断然バグソー中将ですわ。

     オホホホ ・・・」

側近 C 「 えっ、まあ、それはぁ~良い御趣味ですこと、

     おほほ ・・・」


        がが、ガールズトーク? はあ ・・・


       でも、この後どうするのでしょう?

  あっ、叡智晶に記録がありました。 恐れ入ります三十郎様。

          なになに ・・・


    『 日本時間、午後十時半まで自由行動。
    各将軍は同時刻サタン機に集合。遅刻厳禁。』



     こんな通達が邪龍各機に出ておりました。












          日本時間、午後十時三十分。



     ここはサタン機内の一室 ・・・ 遅刻者は無し。
   大きな円卓にそれぞれ座っている。


円卓の奥、左側には、等身大と思われる邪神アポフィスの立像が、
向かって右手にはイングリッドの立像が鎮座している。


左右の邪神夫婦中央奥の壁には、
 赤地に白い円の中に、
  赤青二体の8の字に絡み合っているような龍が描かれ、
   その中央に、黒いサソリが見る者を睨んでいる。

   しかも蠍のハサミは二体の龍を挟み込み、
  更に、龍の交差部分にサソリの尾の毒針が突き刺さっている。
 言葉だけでは表現し難いものですが、
何とも皮肉めいた絵柄だ。


  霊の元つ国の、日章旗の真逆な色合い。

   そして赤龍は火の神 を、青龍は水の神 を表し、
   それらすらサソリの邪神軍は凌駕するという、
   正神軍を侮辱した絵柄であります。

最も無礼なのは恐れ多くも、二体の龍の交差部分は主神を表し、
そこに毒針を突き刺しているということなのです。

  これが邪神軍の旗印なのだろう。

   「 弱い犬ほど良く吼える 」 でしょうねェ。

     堕天使達は、当然、皆神妙な面持ちです。
     それに口が利けなくなったようだ。

    暫くの沈黙の後、サタンが重い口を開いた。



「 皆、聞いてくれ。今まで私に良く着いてきてくれた。
 礼を言う。 ありがとう ・・・ そして申し訳ない。

 どんなに詫びても許されるものでもないが、
 ここまで堕ちてしまっては主神様が我々を許すことはない。

 私の責任だ。皆を火の海に道連れにしてしまうとは ・・・ 
 本当に申し訳ない。
 ただ、皆に許してくれとは言わない。

皆には、悪魔王サタンではなく、かつて大天使長ルシフェルだった誇りを最期まで見届けて欲しいのだ。

 それでなくては皆を堕天させた責任は果たせないと思っている。
 どうかな、皆の意見を聞かせてくれ。」


流石です総帥!! ただ謝る必要など微塵もございません。

 我等は一蓮托生。始めからその想いでおりました。
 私は今でもその想いは変りません。

 最期の最期までルシフェル様の背中を追い続けます!!!


   シアニードが擁護した。


「 彼女の言う通りですよ。我等は十分楽しんだし満足している。
 ただ、その報いを受けるだけですよ。

 間違っていることをお座なりにして来たのは、皆同じだ。
 だから、今更誰も異論などありませんよ。

 一つ言えるのは、あなたが我等の総帥であることで、
 罪の重さが格段に違うということです。

 それは、我等が総帥に詫びなければならない事であると、
 私は想いますよ。

 俺達なんて気楽なもんだったよなあ、バクスト。」


「 オルゴランの言う通りだぜ総帥。

 俺は偉大な大天使長ルシフェル様に憧れ、
 ここまで着いて来れたことを誇りに思ってるんですよ。

 例え堕天した今でも尊敬の念は変りはしません。
 ただ、この先は御一緒出来ないことが残念でなりませんがね。」


「 総帥、私は月で己に誓いを立てた通り、
 主神にお詫びの証をお立てしたいのです。

 それしか、今の我等に出来ることは御座いません。

 アポフィス様とは連絡が取れませんし、
 我等だけでも揃ってお詫びを致しましょう。

 御願いです。総帥!


「 わたくしはアンドラスタ様の意見に賛同致します。

 どうか総帥。」

「 フレッタが言うんなら俺は構わないぜ。

 他に妙案は無いしなぁ。」


「 へえ~、グリオスが折れるとはなぁ。

 ははは、最期に頭を下げるとは思ってもみなかったが、
 無様に最期まで抵抗すること自体、恥の上塗りになるだけか?

 俺様は東京湾と月で思い知らされたからなぁ。
 まあ、潔く降参するのが得策と言う訳だ。

 邪道の先には分厚い障壁が立ちはだかる。
 その障壁を造ったのは正神だ!

 そこで止むなく正道に振り向く ・・・
 その先には主神の光が見い出せるんでしょうかねぇ、総帥。」


ははは、思い出せ! 天使だった頃の記憶を ・・・

 『 全てを善へ導く神仕組み 』 ・・・ 

 神に向かえば愛と光は降り注がれる!

今まで、下ばかり見ていたから

神の無限の愛と光は見えなかった。

 まあ、強がって主神に背を向け、
 二度と振り向かないと己に誓ったから当然だがな。

 とはいえ、背中には光が当たっている ・・・ 
 神の愛とはそういうものだ!

 それ故、アンドラスタの言う通り、今はお詫びしかない!

最期にくだらんプライドを捨てるということだ。
捨てればスッキリするだろんだろうなぁ。 ははは ・・・

 では、行こうか富士へ ・・・

ただその前に、この邪龍形態をまとめておこう。
それぞれの単体では見苦しい。」


「 つまり、予定通り アレ を復活させるとおっしゃるので?」 


    何です?


「 その通りだドルンよ。 皆もそれを楽しみにしていた。
 アレ すら正神軍は問題なく屈服させるということを、
 神の子の魂に植え付ける。

 その方が主神は御経綸を進め易いであろう。
 主は偉大なり! そういうことだ。 よいかな諸君!!」  


     ちょっと、何なんです?


     「「「 おおぅ!!! 」」」




            ( 推奨BGM ) 

      ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
     交響曲 第九番 ニ短調 作品百二十五 (第一楽章)

          カラヤン&ベルリンフィル




  


   サタン以外の悪魔達は、それぞれの邪龍に戻っていった。

 間も無く、八機の邪龍は不気味に光始めた。

すると、サタン機以外の邪龍が、

普通の龍体に変化していきました。


通常の形態に戻したということか?

 それぞれ一体の全長、八キロは有りそうです。
  ただ手足は有りません。 色は赤黒。


   何をしようというのだろう。


 サタン機 は ・・・ 龍体のようだが? 違います。

確かに龍体ではありますが、
なな、何とその途中からの形態が違うのです。
それは ・・・ 蠍の尻尾に繋がっているのです。

 龍の頭は遥か上空に有りますが、
  その尾はサソリの尻尾の途中から繋がっています。

    サタン機は、龍とサソリが一体化した邪龍なのです。

     色はサソリの部分はどす黒く、龍体の部分は赤黒です。
     見るだけで血が凍り付きそうだ。

    しかもこの化け物の全長は二十キロほど有ります。

  こんな光景信じられません!




         「 さて諸君、準備は整った!

           只今より 悪魔の祭典、

     最終章 『 ヤマタノオロチ復活の儀 』 を執り行う!

     七機の邪龍の将軍、全兵士そして可愛い蛆虫共よぉ、 
       我と同化融合し、神々と神の子人に、

      悪の権化の醜さを嫌と言うほど見せ付けるのだ!

           さ~あ来い!!!


「「「 うおおおおおおおお~~~~!!!」」」 

      

      う、うわっ。


グオッ、ガウッ、ゴオッ、ギイッ、ギャッ、グアッ、
    ギャアアアアアアァ~~~~ッ !!!



  凄まじい絶叫の不協和音が辺りに木霊します。 
  エンジン全開という訳です。

  その七機の邪龍がサソリの背に、尾から合体してゆきます。


まず、アンドラスタ機がサソリの頭の上に ・・・

   次に、その右肩付近にグリオス機が ・・・
     その後ろにドルン機が ・・・
      その後ろにシアニード機が ・・・

       左肩付近にはオルゴラン機が ・・・
      その後ろにバクスト機が ・・・
     その後ろにフレッタ機が ・・・

  そして、サソリの尾から繋がった龍が、
最後尾上空から七機の邪龍を見下ろしているのです。


  な、何というおぞましい怪物なのだ。
   これがヤマタノオロチなのか?

     今までの人間のイメージとは随分違うようです。






竹内文書では約百七十億年前、

上古二十二代天皇の治世期の記述に、ヤマタノオロチとは、

「 天皇に敵対する山賊の集団で、山田の大蛇賊の事 」

 とあります。

勿論、その山賊集団を退治したのは 素戔嗚尊 様であります。
それが後世、大蛇を退治するという神話になったようです。

   真実とは面白いですね。


     ・・・ む、あれは何だ?


「 総帥、右舷後方から敵出現!
 マーフィーを奪還する模様です。如何致しましょう。」


「 何? そうか、マーフィーは忘れていたな。
 彼にはもう用が無い。拘束具を外して放っておくのだ。」


「 はは、畏まりました。」


「 しかし、何だあれは?
  炎の獅子に跨った女神か? ふ、面白いな。

   それより駿河湾にテレポートする。
    レイカス大佐、全回線を開け。」


「 はっ、全回線開きます。」


    前方のスクリーンには七人の悪魔が映し出された。


「 いいか諸君! これより駿河湾へ向かう。
  覚悟はもう決まっている筈だ。

   残念ながらアポフィス様との連絡は取れず終いだが、
    我等 邪神軍は全面降伏をする!

      主神様の御前で無様な失態は許されん。
       そのことを胆に銘ぜよ! ゆくぞぉ!!


   
 「「「 おおぅ!!! 」」」


「 フェリウス少将、駿河湾へテレポートだ!」

「 は、駿河湾へテレポート致します 

  ・・・5・4・3・2・1・GO!


フィフィフィフィ、フュフュフュフュゥ~~~

   グイン ! 


      あらららぁ、行っちゃった。




            ( 推奨 BGM )

      ラフマニノフ:ヴォカリーズ作品34の14

     André Previn/London Symphony Orchestra








    ところで炎の獅子と女神 ・・・正体は何者なのか?


  女神の姿は、天女の様な衣装プラス羽衣を纏っています。

その上、燦然と輝くオーラに包まれた絶世の美女で、
何処と無く誰かに似ています。

・・・ お分かりですよね、勿論。

 いきなり開放されたマーフィーは面食らっている。

   それに、目の前には女神と獅子が ・・・ 
     大きさはマーフィーの三分の一ほどだろう。


「 あの、助けて頂きましてありがとうございました。
 宜しければお名前をお伺いしたいのですが・・・」


「 わ、わたしはかすみです。分からないの?
 それにこの獅子は犬四郎なの。

   それから私達が助けた訳じゃないのよ。」


「 何だって? き、君はまさか死んでしまったのか? 

 肉体を感じないぞ。」


「 そうなの。犬四郎もね・・ねえ、あなた元の姿に戻ったら?」


   ウオン、オン!  


  あ、あらら、炎の獅子は豆芝の姿に戻りました。


「 ほらね。私達死んじゃったけど、
  こんなに元気で神様にお使い頂いているのよ。

  それよりあなたが無事で良かった。

  不死身なのは分かっていたけど、あんな酷い目に遭って、
 わ、わたし辛くて見ていられなかった ・・・ うう ・・ 」


「 あああ、そそ、そうか、ただ積もる話は後だ。
  今、不味い事になっているんだ。」


「 どうしたの? 兄さんの事?」


「 そうなんだ。今地球に向かっているんだよ。

  それで飛ぶ速度は加速を増して制限時間までは
   間に合いそうなんだけど・・・・

   何か胸騒ぎがするんだ。

  飛ぶ速さの加減が出来ないのかどうか?
 このまま加速を続ければ、地球に激突してしまうかも ・・・」


「 そ、そんな・・・ねえ、思念波で交信出来るんじゃないの?」


「 それが ・・・存在や位置は確認出来るんだが、
  思念波は伝わらないんだ。

   何故なのか? ・・・

   何か拳三に邪気が纏わり付いている感じがする ・・・

 うう、もうそろそろスピードを落さないと不味い。僕は行く。
 早く拳三を止めないと、
巨大隕石が落ちてくるのと同じ衝撃が地球に与えられてしまう。」


「 私も行きます。
  犬四郎と私は、あなたと兄さんを助けるようにと、
   ミカエル様から仰せ使っているの。
    犬四郎は飛ぶのは結構速いわ、だから。」


   「 分かった。じゃあ、着いて来てくれ。」


    犬四郎はまた炎の獅子に変身した。
   かすみは犬四郎に跨りマーフィーの後を追った。

 なるほど、拳三が邪気の影響を受けて
スピードの制御が効かないということは、
やはりあのシアニードの彗星が発した
蜘蛛の糸を被ったことが原因でしょうが ・・・

その糸の成分が視力に影響し、
 恐らくは距離感が掴めないのだろう。

  ということは、そんな罠を仕掛けた張本人達は、
   すっかり忘れ去り駿河湾へ ・・・

   しかし、この地球に向かう拳三の進入角度は垂直に近くて、
   余りに危険です。

  早く気付いてブレーキを掛けなければ太平洋に激突です。


 拳三は重症を負っても再生出来ますが、
 地球はそうならないでしょう。


《 よいか、拳三の目に影響している邪気の糸は、
  シアニードに因って幻覚を見せるようプログラムされている。

   拳三が今見ている地球は、
   まだ遥か彼方にあると錯覚しておるのじゃ。

  だから加速を止めないという訳だ。
 このまま進めば小笠原諸島付近に激突してしまう。

 危険過ぎるが我等は手を出せん。今は祈るしかないのじゃ。
  がんばってくれ拳三、マーフィー、かすみに犬四郎。
   試練なのじゃ。》

   チュウウウ、チュウ。


   いやあ、またまた冷や汗ものの展開になっておりますが、
   きっとあの四人ならこの窮地を乗り越えられる筈です。
  ただ、もう拳三は間近に迫って来ています。

 彼は大気圏に突入しても燃え尽きない小惑星ですから、
その質量を保ったままで一瞬に海面から海底に激突するでしょう。

その破壊力は、想像を絶するものと思われます。







   我等はマーフィーの後を追いました。

  マーフィー達は宇宙に飛び出し、
  拳三が到達するであろう地点から相当離れた場所におります。

  マーフィーは強い霊眼の力で拳三の位置を確認しています。
   そして会話はテレパシーを使っています。


( 拳三の軌道を変える為のエネルギーは、相当な物に違いない。

しかも地球から遠く離れた地点で変えないと、
衝突は避けられないだろう。

いいか、かすみちゃん。

 僕はここから拳三目掛けて斜めから体当たりをする。
  僕の全霊力を高めてだけど、それで足りるかは分からない。

   だから、君と犬四郎の力も必要だ。
    僕と一体となってくれるか、かすみちゃん、犬四郎!)

   ( 勿論だわ! )

    ( はい! )

    ( えへえ~、犬四郎が喋った。 はは、これは ・・・

     そうだ、テレパシーは宇宙共通語だったな、
     不思議がることじゃないか。

    じゃあ、かすみちゃんは右腕に、
   犬四郎は左腕につかまってくれるか。)


      かすみと犬四郎はマーフィーの言う通り、
     それぞれ彼の腕につかまった。


( よし、じゃあ行くけど・・・

僕達は迎撃ミサイルのような物だ。
  速度が上がれば上がるほど命中の確立は格段に下がる。
   だが、何としても命中させなきゃいけない!

   いいか、拳三の魂を捕らえて放さないよう集中することと、
   主神様に祈るんだ。

  そうすれば、主神様の愛が僕達を導いて下さる筈だ。
 それに、多くの神々と光玉のみんなが祈っていてくれる。

  かすみちゃん、犬四郎。 行こう 拳三の元へ!



  ( はい!)

  ( りょうかい!)







  さてさて、意外過ぎる展開ではあります。
  悪魔が改心するとは?

 実際、本当に改心し、正道に戻る悪魔は僅かにいるでしょう。
 果たして、これからどうなるものか?

そして、意志を持った超破壊彗星と化した拳三と

地球の命運や如何に?


次回、急展開を見せます。

 乞う御期待!!!


ところで、サタンが自分探しに訪れたクラウド山は実在します。

 WEB ブリタニカ国際大百科事典より ・・・

アメリカ合衆国,ワイオミング州北部にある山。標高 4016m。

ロッキー山系の支脈,ビッグホーン山脈の最高峰で,大氷河がある。

西側はビッグホーン盆地,

北北東に向ってグレートプレーンズが開ける。



 「 クラウド 」とは、
 私が描いたサタンの仮の姿をした人間の名前ですが、
 物語の進行上、ロッキー山脈の何処かに、
 クラウドという山があれば好都合と思い、
 世界地図を見れば、実在していました。

  偶然なのか必然なのかは不明ですが、
  ロッキー山脈もクラウド山も悪の巣窟としたのは、
  私の演出上でのことですので御了承ください。


そして今日の宇宙画像です。




《 最終章 》 〈 第五話 〉 騎士と武士( 後 編 )

2019年02月07日 08時46分39秒 | 小説




     遂に始まった正邪の最終決戦!
    その決戦も三日目に突入致しました。

  今まで月面特設リングにおいて、アンドラスタ司令長官と拳三は、
 百本の剣の死闘を繰り広げていました。

拳三と相対する中で、悪魔の騎士は神の愛に大きく心が揺さぶられ、
何と改心してしまいます。

 改心したアンドラスタは、徹底的に拳三を鍛え上げ名刀とすることで、
  神へのお詫びの証としたい思いなのです。

   そして今、百本目になろうとしていましたが、
    ここで拳三から提案がありました。

    それは、父、剣三郎直伝の 「活人剣の構え」
    なるものを披露したいというものでした。

  その構えとは如何に ・・・






月の裏側 





          ( 推奨 BGM ) 

       フレデリック・ショパン 作曲

   00:00 - Nocturne in F major, Op.15 No.1 (1967)
   03:41 - Nocturne in D-flat Major, Op. 27 No. 2 (1972)
   09:41 - Nocturne in C minor, Op. 48, No. 1 (1978)
   14:54 - Nocturne in E-Flat Major, Op. 55 No. 2 (1965)   

       マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)

https://www.youtube.com/watch?v=q6vq5YarPe8&index=18&list=RDAYCaAU5N0Sg     


 


( うむ。ところで、もう一本で百本目になる。
  これで最期にしよう。随分時間も経過してきた。

   僕はもう充分 君と剣で語り合ったと思うが、君はどうかな?)


( はい、私も先生の御指導を十二分に魂に刻み込みました。
  ただ、一つお見せしたいものが御座います。

   これは、技ではありません。

   我が父、剣三郎が編み出した
  「 活 人 剣(かつじんけん)の構え 」 と呼んでいるものです。

  これは戦国時代、上泉信綱 が提唱した 「 活人剣 」 に父が傾倒し、
 「 戦わずして相手から戦意を奪う 」
 極意として辿り着いた構えであります。

  どうか、御覧頂きたいのですが、如何で御座いましょう。)


( いいだろう。
 まあ、その 「活人剣の構え」 から君の父の想いを感じ取り、
 この胸に刻み付けよう。さあ、見せてくれ給え。)


    そう言いながらも、理解出来ない顔だ。


( あ、有り難き幸せに存知ます。

 では参りますが、私は先生を倒す気は御座いません。
 ただ、先生は普通に構えて頂ければ結構です。)


    拳三はうれしそうな顔から、直ぐに穏やかな顔になった。


( それは構わんが、わざわざ言う事か?)


  彼は言われた通り通常の構えで相対した。

   拳三が、ニ コ ッ、 と笑った。

    ただ静かだ ・・・
    殺気は無い ・・・   なんで???
    気合も無い ・・・

   拳三は右手を、えっ? 妙だ ・・・
  刀の刃先を上にしてゆっくり抜いた。

アンドラスタも驚いている。

それで、抜いた刀の柄を左手で軽く添え、そのまま中段に構えた。

 つまり上向きの刃先を相手は見下ろす訳です。
 見るだけなら怖いですが、峰打ちの構えでしょうか?

  あ、まだあるようです。

 次に、その刀を持った腕を前方に軽く伸ばし、
切っ先をアンドラスタのへその辺りに向け、
そのまま腰を落としつつ、
 右足を後方に大股で一歩ほど伸ばしました。

  体重は、ほとんど左足に掛かっていますが ・・・

   へっ? 何のポーズ??

  あまりに奇妙な前傾姿勢の構えです。

これでは、如何なる攻撃を仕掛けることも不可能です。
しかも刃っ先の向きは上下逆。

  あなた、どう思います?

  漫画 「 るろうに剣心 」 の逆刃刀とは訳が違います。

    この構え、やってみて下さい。

  腕を伸ばしていると攻撃の動作に移る時、
  腕を引いて力を溜めてからでないと、
  突くなり斬るなりが出来ません。

そりゃ勿論、腕を引いてから攻撃すればいいのですが、
その僅かな時間に、相手の攻撃は当たってしまいます。

 ましてやフェンシングの剣士が相手なのですから ・・・

つまり、この構えは攻撃を放棄しているとしか思えません。
致命傷を与える等とても?

 あ、いや、拳三君は相手を倒す気はないと言っていました。

すると、相手に刃先を見せ付け怯ませておいて、
隙を見て腕か足にちょっと突きを放つ。でしょうか?

 それで、

「 今日はこの辺で勘弁しておこう。もちっと腕を磨かねばならんぞ。」

 とか言って、めでたしめでたし ・・・ という結末?

  実に平和的解決法であります。
  しかし、真の目的は何でしょう?

    ただアンドラスタは、
    この構えの意味を掴もうとしていますが怪訝な表情は変らない。


( いや、確かに攻撃はしづらい。
 ただ、僕が攻撃を仕掛ければ君の腕は落ちるぞ。)


( はい、おっしゃる通りです。
  先生が相手の場合には通用しません。

   ですが、レベルを グッ、と落とせば話は別です。

   失礼ですが、
  人間並みのスピードで攻撃を仕掛けて頂けますでしょうか。)


( それは構わんがねえ ・・・?) 私も ・・・? です。


  彼の言う通り、アンドラスタは攻撃に転じる為、
  一瞬右腕を上げた。

 その刹那、拳三の刀の切っ先が、
その右腕に向かって少々間合いを詰めた。

するとアンドラスタは攻撃を止めた。
出端を挫かれたからだ。

 そのまま少しでも前に体重移動していれば、
  彼の腕は拳三の上向きの刃先に触れて傷を付けられてしまう。

    拳三が ニヤッ、と笑った。


( おいおい、これでは人間の一流剣士でも、そう攻撃は出来んぞ。

  では左右に回り込もうとしたら、
   君は左足を軸に回転して対応するのだろう。どうかな?)


( 仰せの通りで御座います。

  私は単に相手の腕、
   又は踏み込んで来る足の動きに刃先を合わせるのみで、
    こちらから仕掛ける事はしません。

    それに、間合いに入られ危ないと思ったら、
    剣を引きつつ後方に下がります。

  それだと、
 相手の剣に私の小手や腕を狙われても容易にかわせます。)


    拳三は実際に動いて示した。


( 理屈は分かった。
  防御面に特化した構えということになるが、
   あ~~相手を倒す気が無いとか始めに言って、

    「 戦わずして相手から戦意を奪う 」 構えか?

   自分も戦意無し、
  相手からも戦意を奪い、戦う意味無し ・・・ 何だと?

 では実力が上の相手等に対抗する為の構えということか?
  それに 「 無益な殺生すべからず 」 かな? 

   それじゃあ、まるで坊主ではないか?
    はっ、坊主武士だ! 君の父は正気かね?) あ~なるほど。


( は、はい、そういった意味も含まれます。

    父曰く、

 「 命のやり取りなどつまらない。 
  勝敗を気にするより仲良く剣技を磨こう。」


              だそうで御座います。) 


      こりゃいい!!!


( 何だと? それが現代武士の心得か?

  つまらんつまらんというよりはっ、
   おかしくて、ははは、はぁ~はっはっは ・・・
    おい ・・・ わ、笑わせるなよ。)


    彼は腹を抱えている。


( 先生。正直私も以前は理解出来ませんでしたが、
  今やっと理解出来ました。) 何だ?


( 今頃かね。親不孝者だな、全く ・・・ 
  お、御蔭で プッ、力が入らんぞ。)


( せ、先生。)  ニコニコ 楽しそうだ。

( ん? ぷ っく く、何だ。)  苦しそうだ。

( 先生は完全に戦意喪失なされました。
  こ、これって一本取った事になりませんでしょうか? 
   ぷぷっ ・・・ )  戯けだ。


な、何だとお~~!!
  ん~それはある意味一本取られた感はあるが ・・・

  もしや、この僕から剣聖の称号が欲しいのか?
 全く現代武士はなっとらんなぁ。

  分かった、しょうがない。
  約束だから剣聖の称号を授けよう。

 ただし君の父、剣三郎にだ。当然だろう。

  悔しかったら、父上君に認められるまで精進することだな。)


    父は偉大なり!


ええ~~ッ、それはないですよ! 
  そこを何とかならないでしょうか?)


( ならんなぁ。騎士に二言は無い!

  それにタイムリミットだ。
   総帥がお呼びなのだよ。もう行かねばならない。

    楽しい一時だったよ拳三。

   最期に君を弟子と認めよう。
  君には僕の全ての奥儀を見せたといっても過言ではないからね。)


( あ、ありがとうございます。 師匠ぉ、うう ・・・ )


( 泣くな。 我々には、まだ別の戦いが待っている。

  僕は総帥と共に、地球で最期の戦いに挑まねばならない。
  相手は正神軍。つまり君も含まれるのだ。

  ただし、君が自力で地球に戻れたらの話だ。

 それに君の体の大きさは、まだ適性ではないだろう。
これからは一人。
だが、寂しさなど今の君なら微塵も無い筈。

良いか、光の粒子の左回転を意識し中心を貫くのだ。
さすれば一瞬で地球だが、甘くは無いぞ。
 まずは飛ぶスピードを上げることだ。

  大黒天様は時間に厳しいお方だから遅刻などしたら、
   メンバーから外されかねないだろう。)


( 師匠、お約束致します。
 必ず時間内に地球の神の光輪へ戻り、邪神軍を向かえ打ちます。

 ただ、師匠は邪神軍を抜けては頂けないのでしょうか?)


おい、戯言を言うな! 

  いいかぁ、僕が生きる目的は既に切り替わっている。
  この瞬間に於いて、主神の為に成すべき事。

 それは、堕天した天使の無様に断罪される姿を、
  神の子人の魂に刻み付ける事だ。

  邪道魔道に堕ちた者の末路、
 それがどんなに醜く愚かなものかをなぁ!

 その神の演出は、
  世にも恐ろしい姿でこの物質界に顕現されるであろう。
  この僕でも血が凍る程の恐怖を感じる。

 だが、もう逃げられない。
  僕は魂で全てを受け止め永遠に懺悔するのみ!

 君もその姿を見届けるのだ。 急げよ、拳三!! )


    そう言うと、
    アンドラスタの姿は名残惜しそうに静かに消えて行った。


 ( 師匠ぉ~、ありがとうございました。 
   時間内に必ず地球へ帰還します ・・・

   え、あれっ、お、おあっ ・・・ 

  じゅ、重力が戻った。軽いなぁ。それと誰もいない ・・・ 
 何時の間に消えたんだろう。 一人かぁ ・・・ )


   そうなんです。
   アンドラスタが去る前に、三機の邪龍は地球に戻ったのです。

   それで、電磁シールドも悪魔の蜘蛛の巣も、
   地球へ転送されたようです。


       一人残った拳三 ・・・

    月から地球までの距離、344,400キロメートル。

 光 = 電磁波 ( 秒速30万キロ ) のスピードで換算すれば、
一秒余りで到着ですが ・・・

 瞬間移動の技は容易に身に付かないようです。



            ( 推奨 BGM ) 

       ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン 作曲
    ピアノソナタ 14番 嬰ハ短調  作品27ー2 「月光」 

         マウリツィオ・ポリーニ( ピアノ ) 
 
 
https://www.youtube.com/watch?time_continue=3&v=oj75TeQmSHA


 



    光 ・・・ この全宇宙全次元は神の光と愛の充満界。


     故に物質界も然り。


  つまり瞬間移動、テレポートとは、
 己の全身全霊が光その物だと認識出来た時に、
初めて可能になる技ではないだろうか?

その他の霊力にしても、
根幹にその自覚が無いと発揮出来にくいと思います。

全てが光。一点も光の一粒子。
全次元はその光の充満界。

 故に汚れた醜く重い魂、汚れた心と体のままでは、
  神の子の力、霊力が復活しないのであります。

   更に人の体は、
   本人の意識無くして太陽やその他の光が当たっているから、  
  その反射に因り、他人から自分の体が認識されるのです。

 そこには色霊のみ働きがあるのです。

加えて、自らの魂を光らせ真の光の放射体となる。
これが最も人を光らせ、
 他人にも神にも讃えられる要素になるのです。 

  月やその他の星にしても、
  太陽(恒星)の光を浴びないと地球からは見えません。
 それと同じことです。

加えて己の体、
特に顔や背中という部分は鏡を使わないと見られません。
とは言え、反射した姿ですので逆向きです。

 きっと神様は、「人の本体は違う次元に有るのだ。」 と、
  おっしゃりたいのではないでしょうか?

  そう考えると面白いでしょう。

 人の魂も体内も、自分では見る事は出来ません。
自分の心でさえ良く分かっていない者多しで御座います。

逆に他人の方が良く理解している場合があります。

 したがって人というものは、
  利他の為、神の為に存在している証拠とも言えるものであります。
   是非、意識されて下さい。

  更に、魂が強く光らないと、
 神様から救いの手を差し伸べられることはありません。
地獄の人間界は、既に真っ暗な泥沼の中にあります。

そこで魂が輝いていなければ、
 救いたいと思われた神様でも見つけることはできません。

  逆に言えば、泥沼の中にいるのに脱出しようと努力しない人間は、
  もう救わないということです。

 だからこそ、心と魂の浄化の行が最も大事な要素になるのです。

   私の座右の銘の一つは 

    「 汚れが取れずば磨けまい! 磨けずば輝けまい!」

     であります。

    それは、心と魂の浄化を意識してのことなのです。

  人の魂といえる主要な八つのチャクラは、
 頭頂部から背骨沿いに点在しています。

そのチャクラが光輝くと、光の柱、或いは 火柱 となり、
我の神性なる魂は此処にありと、神々に示すことができるのです。

 そうは思いませんか?
  私はそう思います!!!


      宇宙根源の『 生命の樹 』の謎 参照


        神を表す単位は、「 柱 」 です。

       宇宙根源の 「生命の樹」=「創造主」 
      から分けられた魂が幾多の神々でありますから、
      「柱」 と称される訳が理解出来るでしょう!

       「木」「主」と書いて、「柱」ですね。

    みなさん、心と魂の汚れを取り、磨いて光輝かせましょう!

      そして自分の中心軸を光の柱とするのです!!


    ここで、何度もお伝えしている情報を再度記載致します。


         《 アセンションの3ヶ条 》

   1、心と魂の浄化が、100%中81%まで到達している。
   2、DNA12条が完全解除している。
   3、光のネットワークに繋がり、地球意識に到達している。




さてさて、拳三君が飛ぶにしてもどれ程のスピードが出るのか?

 先程からの戦いで見る限り、
  戦闘機の機動力よりはあるように見えました。

   現在時刻、何と日本時間、午後六時を回っています。

  つまり、剣の神前試合百本に要した時間は凡そ五時間です。
 拳三は百回死んだようなものです。

そして、実際は一本どころか傷一つも付けられず、
 剣聖の称号はおあずけ ・・・

  大黒天様とのお約束の制限時間は、午前八時から午後十一時。


    残り五時間弱。


( ああ、とにかく行こう。
  瞬間移動のイメージはまだ掴めないから飛ぶしかない。

   地球は見えるんだけど、後五時間しか無いぞ。
   もう行こう ・・・ では、月の女神様、行って参ります。
   あちこち散らかして申し訳ございませんでした。

  よ~し待ってろ地球 ・・・ ? 
 ああ、あれは何だ?)


    あれって、あれは ・・・ ななな? 
    スゴスゴすご~~~!!!

                    
《 あたたたた、あのお方は 月讀命(つくよみのみこと)様
  素戔嗚尊(すさのおのみこと)様 ではないかぁ!

    あわわわ、何という神気じゃあ!!
     太陽のオーラを纏ったかの如き御姿!


      おい、うさぞう、控えよ控えよ頭が高いぞ! 》

      チュチュチュチュ ちゅうううう ~~~~~!

     「 ははは、はい~~~~っ! 」 





はっはっはっは、わしらは女神ではないぞ!
  残念じゃったな!

  わしは月の守護神、素戔嗚尊である!
 こちらは兄上の月讀命殿じゃ!》 


《 ほほほ、紹介ありがとう。
  拳三よ、なかなか見応えのある試合であったぞ。
   大義であったな。褒めて遣わすぞよ。ほほほほ。》 


( あああ、何と偉大な神様にお会いできるとは光栄至極に存じます。)  


《 まあまあ、そう畏まらんでもよいぞ。

  しかし、隕石でも落ちたかのような散らかりようじゃな。
  その衝撃は、月の内部世界まで響いておったわい。

 よくぞ悪魔共の攻撃に耐えたものだ。見事であったぞ!》 


    素戔嗚尊様が仰せです。


( はは、有り難き幸せに存じます。)


《 拳三よ、我等と同様に汝を見守っていた同志達がおりますから、
  引き合わせて差し上げましょう。

   さあ、月の住人を代表とする神々よ。
    そして宇宙連合の皆よ姿を見せなさい!》


     すすっす、すると、
    あああ、満天の星々が一斉に動き出しました!

   それらの動く星は、なんと宇宙船だったのです。
  なんという壮大な光景でしょう!

   そして輝くオーラを纏った神々が、拳三の頭上にお出ましです。


《 拳三よ、汝は一人ではありませんね!

  それに月以外の全宇宙の恒星、惑星の同志達も祈っているのです。
  そのことを決して忘れてはいけませんよ。

 では、我々が暫くこの場で見送ります。

そして、私と素戔嗚尊は地球で待っていますよ。
何しろ我等二人は、地球の守護神、「丑寅の金神」 なのですからね。

つまりは月と地球の守護を兼務しているということです。

 ただし、地球に於いては、
  国之常立神(くにのとこたちのかみ)様の補佐的役割 を仰せつかっています。
  三位一体の神が守護することで、「丑寅の金神」 と呼ばれるのです。

 もう地球の表層上は汚染と破壊が限界域まで達しています。

我等、「丑寅の金神」 は、
地球表層上全体を大浄化する苦渋の決断をしました。

その地球の大浄化を最期まで見届けるのです!

 さあ、全身全霊をもって地球の魂、
 「丑寅の金神」 を意識しながら飛ぶのです!!



《 拳三! わしも地球で待っているぞ!! 

  さあ、ゆけ~~い! 

   己の神性に自信と誇りを持って、
   燃える魂を爆発させて飛ぶのだ!! 


  それに振り向く必要はないぞ。
 何しろ時間が無いでな! はっはっは ・・・》


( ははあ、有り難きお言葉を肝に銘じ、
  全力で地球に向かいます!!)


  そう言うと、拳三は地に額づいた後、
   ゆっくり立ち上がり、飛び立ちました。

    彼の魂には燃え上がる闘志が漲っています。

     思いがけない神々と宇宙連合の皆様の激励は、
     よほど彼の魂に響いたようです。

     それからは振り向くことなく、
    厚い雲で覆われた地球を目指したのです。






ところで、残り五時間でどれ程の平均時速が必要か、計算してみて下さい。
 月から地球までの距離、344,400キロメートル。 

  簡単でしょ。

最低、平均時速、約8,000キロは出さないと余裕で到着出来ません。

 ただし、地球に到着前にすることがあります。
  それは減速です。

    ブレーキを掛けなければ地球に衝突となります ・・・

    とはいえ、
   そんな計算をするコンピュータは持ち合わせていないでしょうから、
  勘ピュータを使う他ございません。

あ~~こりゃ厄介だ!!!

 大気圏突入時の摩擦熱は、何等問題無しですから、
  後は速度を上げることと、
   もう一つ ・・・ 体の大きさを適性にする事です。

   さて、我等も後を着いていますが何でしょう、速いのか遅いのか?
  周りの景色が変らないので、実感が湧きません。

    拳三もピンときていません。


《 では、現在の速度を教えて進ぜよう。
  時速二千飛んで二十キロじゃ。
   音速の二倍すら出ていないとは話にならんわい! 》

   チュチュウ。


  その時、上から巨大な白い物体が迫って来ています ・・・ 
 邪龍じゃない何か?

いや、邪気を少し感じるが ・・・ 
ただ、あれは恐らく彗星だ。長い尾を引いている。

直径数キロはあるでしょう。
彗星は一瞬で通り過ぎました。

 拳三はそのガス状の尾を避けようとしましたが、
  避け切れませんでした。

   ガス状の塵を被ってしまったのですが、
    何か顔に纏わり付いているようです。

    粘り付く何か分かりませんが、特別支障は無いようです ・・・
   彼は、また飛び始めました。


《 いや、支障はあるぞ。これを見よ。》 チチ~


   叡智晶で先程の彗星を拡大して見ていますが ・・・


「 こ、これは何でしょう? 奇妙な形ですね。」


《 いいか、これはシアニードの邪龍が
  縮こまって彗星に化けていたのじゃ。

   あの塵の成分は恐らく蜘蛛の糸だ。
    何か仕掛けがあるに違いない。
     これは気を付けて見ておらねばならんな。》 

     チュウ~!


「 はは、気を付けます。」


   何と、ただ塵を着ける為だけにわざわざ彗星に化けるとは、
    当然この先に待ち受けるものは地獄でしょう。


《 しかしなぁ、マーフィーの様子も気になる。
  もう地球で待つことにしよう。では、ゆくぞ。》

   チチッ!

   「 ははっ!」

    《 戯け、ふざけるな!》 タワケ。

     「 いやその、偶然でして・・・」 あは~~ 




 さて、月の住人達から見送られ、
意気揚々と地球を目指して飛びった拳三ですが、
幾多の試練が待ち受けています。

 果たして、無事に地球に到達できるのでしょうか?

  皆さんも祈ってくださいね!