『 うさぎの言霊 』 Rabbit's Kotodama 

宇宙の謎、神と悪魔と人とは?

《 序章 》 〈 第十八話 〉 招喚の儀

2019年02月01日 17時03分05秒 | 小説

 


     駒沢オリンピック公園総合運動場  参照



                          
        ( 推奨BGM )

      サンクスギヴィング ( リピート )
      ジョージ・ウィンストン ( ピアノ )



    

 二〇 X X 年十二月十八日(木) 18:30
      カウントダウン ( 84:30 )



  拳三達は、まず剣三郎の所へ向かった。

駒沢公園内の陸上競技場に入り、東側トラック中央付近に行くと、
集まった数百人の中に剣三郎の姿があった。

 いち早く集まった者達の魂は、流石に強く光って見える。

剣三郎の脇には暖を取る為のドラム缶から、バチバチと炎が上っている。

それに拡声器にメガホン、トランシーバー、
大小様々なライトと電池に ・・・

 これは何の為に使うのか、車椅子が十台程と担架? が並べられていた。

場内の前後には発電機から電源を取った、
大きな照明のライトが煌々と光っている。

  剣三郎は拡声器で皆に何やら指示を出している。
  拳三達は、話が終わるまで待たねばならなかった。


「・・・それでは皆さん、
 今お話した事をしっかり念頭に置いて行動して頂きたいと思います。」


   剣三郎の話が終わった。

  自警団のジャケットを着たメンバーは、
  拳三達に笑顔で手を振りながら球場の外へ走っていった。
  その他の人の一部も後に続いた。

   剣三郎は、拳三達に話し掛けた。


「 皆、御苦労だったな。

見ての通りまだこれしか集まってはいない。
ここで二百十二名、母さんの所は百五十、川島君の所は百二十五名だ。

黒須様のお話ではトータル千名集まらないと、
次の指令の内容は明かせないとの事だ。

だから、何としても早急に千名集めなければならない。
それはお前達にも協力してもらう。
道路に出て呼び掛けてきて欲しい。

但し、強引過ぎてもいかんぞ。
純粋な祈りが出来なければ意味がない。分かったな。」


「 分かったよ父さん ・・・

僕は父さんの事を凄く誇りに思ってる。

同じように、補佐役になりたかったけど・・・
でも考えてみれば、すべき事は同じなんだよね。

僕は精一杯、父さんの補佐役に徹すればいいんだ。
父さんの子供で良かった。

ありがとう、父さん。本当にありがとう ・・

・・うあああ~~っ ・・・」


   拳三は剣三郎に抱きついて、大声で泣いた。


「 私もがんばる ・・ 父さんありがとう 、父さん ・ うう ・・」

「 先生、僕も ・・ 全力で ・・・ ううっ。」

叔父様ぁ~~、うわ~~ん ・・・」

「 パパー ・・ うう ・・・」 ミランダには、パパなのですね。


  剣三郎は皆を抱き寄せ、ただ黙って涙した。
  聞こえて来るのは、心に響く愛の言霊です。


( 果たさねば、我等が使命を ・・・ 
  示さねば、光ある道を ・・・
   この子達と、世界の同志の皆様と共に ・・・
    何としても神が望まれる文明の礎を築かねば、必ず、必ず。)


  目をカッと見開き歯を食い縛り涙を流しながら、
  炎の闘志が更に燃え上がっていった。 


「 お前達は ・・・ 私の誇りだ。
 そして世界にも神様にも誇れる。

 母さんも言ってたぞ、
 お前達との生活が幸せで仕方ないと、
 いつも神様と御先祖様に感謝してた。

 マーフィー、君のアメリカの御両親も
 神の光玉に向かっている筈だ。
 連絡が取れなくても心配はないだろう。

 地球の何処にいても、
 我等が使命は変らないのだからな。」


「 はい、ありがとうございます。
 僕は、聖者木戸様のお話を聞いて、
 強い人類愛が無いと、神様には通じないことが
 嫌と言うほど分かりました。
 それにどれ程、主神様を蔑ろにして来たことも ・・・

 だから、僕は与えられた使命を全力で遂行します。
 拳三とみんなと力を合わせて・・・」


「 良く言ったなマーフィー。同感だ。
 君は僕の兄弟だ。永遠にだ。覚悟しろよ!」


  二人ともニヤッと笑うと、抱き合ってまた泣いた。
  するとエミリーが剣三郎に言った。


「 叔父様、私とミランダは
 叔母様の所でお手伝いをしたいんです。
 行ってもいいでしょうか?」


「 勿論だとも。お前達がいれば母さんも喜ぶだろう。

 ミランダ、お前はまだ若いが立派に神の使命を果たせる力がある。
 エミリーと他の皆さんと力を合わせて、
 神の子人にはまだ大きな愛があることを、
 主神様にお見せして救って頂くのだ。」


  剣三郎は片膝を着いて、ミランダを優しく抱きしめた。


「 パパ、私出来るよ。主神様のお役に立ちたい。
 だから ・・・ 辛くてもがんばる。」

「 そうか、お前ならきっと出来る。」


   剣三郎は、ミランダの涙を優しく指で拭った。


「 さあ、みんな。任務だ。
 千名集めるのは特別な理由があるに違いない。
 これは神の試練だ。急がなきゃいけない。」 拳三が言った。


「 拳三、エミリー。
 これを持ってゆけ、周波数は合わせてある。
 人数が揃った時点で連絡するから急いでくれ。頼むぞ、みんな!」


「「「 はい!! 」」」


  剣三郎は、笑顔でトランシーバーを二人に渡した。
  拳三はエミリーに、歩きながら使い方を教えた。
  すれ違いに、祈りに加わる者達が歩いてくる ・・・

 後、五百名余り、どれほど時間が掛かるだろう。
 残った者はお年寄りと病弱な者ばかりだ。

その人達は、一人でも多くの同志が参集出来るよう祈っている。
それとは別にカウンターを持って、
集まった人数を数えている人がいる。

  なるほど抜かりはない。
  しかし、千名集まると伝えられる使命とは何か?


《 知りたいか? 》 チ~イ?

「 えっ、宜しいのですか?」
 
《 構わん。その前にあれを見よ。》


  三十郎様の指差した上空には、
  皇居付近から一直線に伸びる太い光の帯が、  
  上空の光の灯台に繋がっている。

  そして、その光の灯台から南の方角に、
  更に強くなった光の帯が伸びたと思ったら、一瞬で消えた。


《 今の地上の光源は皇居からのものだ。
 そして 光の灯台、聖者黒須 からの光の行き先は、小笠原諸島じゃ。》

「 西の富士上空ではなく、南にですか?」

《 思い出すがよい聖者木戸の話を ・・・
 何らかの理由で「神の光玉」に来られない場合は、
 最期まで諦めずに祈れと。

つまり、その強い祈りを持つ者が南の島々に居るのじゃ。
離島では、ヘリや飛行機でなければ明日の朝までは間に合わん。

 自衛隊の協力が無ければな。が、それは無い。
 政府は島民からの要請を拒否した。

その憐れな者達への救済措置が
「 招喚(しょうかん)の儀 」というものじゃ。》

チュウデス。
   

   招喚 = 招き入れること。  
   召喚 = 役所が人を呼び出すこと。強制的な意味。

 

「 招喚の儀、で御座いますか?
 え~、瞬間移動のようなもので?」


《 まあ、似て非なるものじゃが・・・
                   
つまり、先程の「光の帯」の中は「次元光廊(じげんこうろう)」になっており、「神の光玉」に入るに相応しい者だけが通り抜ける事が出来るのじゃ。
勿論、一瞬にな。

 千人という数が必要なのは、神議りでの決議故の事。

言ってみれば神鍛えなのじゃ。
明日からの本番に備えての予行演習も兼ねている。

 神に祈りが通じる事の実感をしてもらう。
 それが、今の人類には最も大事な事じゃからな。

それに、皇居内は付近の住民で溢れるだろうから、
他に振り分けねばならない。

まず、島にいる者からの強い祈りを受け、
この場内に入る資格者の名前を一人ずつ祈り迎える。
その繰り返しで、明日の六時ギリギリまで続ける。

 全世界でも同様にだ。

又、関東付近の障害その他の問題を抱え、
光玉に来れない者が居るが、そこは人海戦術となる。》


「 それで、車椅子や担架があるのですね。」


《 その通り。

 神から許された者は、聖者から地上の補佐役に
 名前と住所が伝えられえる。

それだけでは不十分だから、
その者から発せられる祈りの光線を、肉眼でも見えるようにする。

 つまり、本人と聖者との間には、
 分かりやすいように赤い光線が道標となり、
 救うべき者の場所へ確実に導く。

その赤い光線は混乱を避ける為、
救出する者だけにしか見えないようにするのだ。

ただ承知の通り、全ての道は放置された車が溢れておるから車は使えん。
歩く他ないから、距離があるほど時間が掛かる。
その時間と体力と人数。車椅子や担架では二人必要じゃな。

 後は何人かで行って、
 背負うのを交代しながら戻るの繰り返ししかないか・・・

余りの遠距離であったり、時間的な問題があれば、
特別に 招喚の儀 による救済が許されるだろうが、
何れにしても祈りの強さの度合いで決まる。》


「 これは、なんという細やかな御配慮であることか、
 私、感動致しました。
 ただ、人を真の意味で救うということは、
 とてつもない神と人との愛の繋がりがないと適わないのですね。」

    チュウダヨ!





      ( 推奨BGM )

 エクトル・べルリオーズ / 幻想交響曲 Op.14

 指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
 ベルリンフィルハーモニー管弦楽団




  二〇 X X 年十二月十八日(木) 18:30
       カウントダウン ( 84:30 )



《 では、ここに居るより
 拳三達の働き振りを見たほうがよかろう。参るぞ。》

  チュウ~~。

「 はい、畏まりました。」


  私達は拳三達の後を追った。

  陸上競技場の入口では、女性の案内係りが一人立っている。
  今、一人入口に入ろうとした人に、
  元気よく声を掛け励ましている。

 見ていて気持ちがいいですね。

ところでェ、一つ忘れていたことがございます。
それは、豆柴、犬四郎のことですが、
彼は祈りの聖域には入れませんので、
駒沢公園の入口付近で待つように拳三に言われていました。

 拳三達が自由通りに出ると、
 犬四郎と合流して主人のお手伝いをすることに ・・・

ただ車の渋滞は相変わらずですが ・・・?
あれっ、もう諦めたのか車の中には人影が無かった。

 皆、歩道を力無く歩いている。
 当然、ぼやく声が聞こえる。


なんてことだ。家まで十数キロはあるのに ・・・
しょうがない、近くの駅わ~っと、都立大学だったか?

 でも、混んでるだろうな。
 しかも、本数も大分減ったし、でも歩いた方が速いかもな・・・

祈るのはどうしよ。
はああ、俺なんて居ないほうがいいに決まってるし、
三日もどうしろってゆうんだ。

 地獄の惑星の転生とか業火は嫌だけど、
 政府やマスコミの言うとおり  
 宇宙人の侵略説も有りかもしんないし、んん~~ ・・・

でも、あの光の灯台とかの光も望遠鏡で見れば、
ちゃんと聖者の姿が見えるって言うし、
まあ、聖者かどうかは分からなくても、
光自体の存在はここからでも見えるし、
あの聖者の言う事は説得力あるしな。

間違いなく政治家なんぞより、
言ってることが遥かにまともだし愛情も感じる ・・・
まあ、まだ時間あるし家帰ってからじっくり考えよ ・・・


 これは、二十代位の男性の思念であるが、
 彼の言う通り大都会での交通機関は乱れに乱れ、
 JR職員も現在では以前の半数以下になってしまっている。

何故なら細菌性、ウイルス性の伝染病は、
交通機関から広がってしまうという宿命があるからだ。

 勿論それ以外の人が大勢集まる公共施設、
 スポーツその他のイベント会場も、大概は運営を自粛していた。
 というより、状況が許さないと言ったほうがいいだろう。


  さて恐ろしい事が起きる前夜です。
  今し方、あり得ない物が見えて来ました。

    血のオーロラです。

  いやあ、お見事ですねェ。
  正しく芸術そのものではありませんか ・・・

  ワインレッドのカーテンが夜空に映えて、街行く人に ・・・
  そりゃあ歓声は上がりません。

 益々恐怖が圧し掛かり、人々の心の悲鳴だけが響いて来ます。

神様の演出は強烈ですね。
戦慄が全身を貫き血の気は失せます。         
ある者は血が滾(たぎ)るかも? 私は両方です。
ははは、血は霊そのものです。

その血が失せたり、滾ったり、凍ったり、
燃えたりするとは実に面白い!

 神々に恐れを、そして賛辞を ・・・
    
この真紅の緞帳(どんちょう)が上がった瞬間、
流星火矢が天空から降り注ぎ、三日間に亘る短くも長い、
全次元を巻き込んだ激闘の舞台が始まります。

 そして三日後、
 幾億万年の「正邪の戦い」に終止符が打たれるのです。

そうだ、陛下の御生誕の日は四日後だ。
いやあ、おめでたいことですねェ。
偶然? 在り得ないでしょ。必然ですよ、神仕組みですから。

 それに月ではない、何か不気味に光る赤い巨星が見えます。

  これが噂の二ビルなのでしょう!
  アヌンナキの巣窟、悪魔の星、邪神の故郷 ・・・

 更には、オリオン座のベテルギウスが大爆発を起こし、
 太陽の如くに輝いております。

  日が落ちるまでは、太陽が三つ存在したと言えるでしょう!

 まあ、この異常な状況ですから、
 何があってもおかしくはありませんが ・・・
 ただし月は新月間近の為、細い三日月での共演です。

  これでは月の赤うさぎがどこにいるのか? 
  あ~~、分っかりません!


《 紅の二ビルと、太陽と化したベテルギウスと血のオーロラか・・・
 もう一人の役者はまだだな。

 信造よ、おぬしも良く見ておくのじゃ。
 この光景が見られるのも今晩だけじゃからのう。

 何せ明日からは地球全体が厚い雲の絨毯で覆われてしまうのでな。》

  チュウチュッ。 

「 はい。」


  だいたい大きな天体の動きは、
  NASAやら世界中の宇宙観測をしている科学者等は、
  かなり性格に把握していた筈です。

 ただ、人類の存続に関わるような恐ろしい事実は、
 各国示し合わせて報じられることはありません。

  メディアには強力な圧力が掛かっているからです。

 恐怖に慄きながら暮らすよりは、最期まで能天気に暮らして、
 真実を知らずに天国に召された方がよっぽど良いと言う訳です。

  それは、止むを得ない措置であるとは思いますが ・・・

 当然、イルミナティーを始めとする世界の重要人物、
 一部の金持ち権力者等は、必死で生き残る方法を模索し、
 地下に潜ってジッ、としていようとか下らない策を巡らし、
 巨大な地下施設を作ったりしている訳です。

  見苦しくも無駄な事ですが ・・・

 正神軍は、そういう邪心邪欲を逆利用して、
 自らの墓穴を掘らせているのですがぁ、 
 本人達には知る由もありません。

  お気の毒ですがお別れです。

    モグラの皆様、永遠に ・・・


  ところで、え~、拳三達はと ・・・ あっ、いたいた。
  拳三がさっきの青年に声を掛けている。
  犬四郎も尻尾をフリフリ愛想を振りまいている。  

「 あの、すみません。家に帰るところですか?
 それでしたら、帰らないで下さい。

 この駒沢公園が「祈りの聖域」になっていますから、
 家に帰って心の準備したいでしょうけど、
 今、千人集める使命が神様から与えられましたので、
 何としても早急に人数が必要なんですよ。」

「・・・ い、いや、でもちょっと家に帰って、
 風呂入って旨い物食べてからにしたいんだけど ・・・
 来ないと不味いのは分かるんですが、
 決心が今一つ付かないというか ・・・」

  暗いし冴えない。以前の私みたいだ。

「 家は遠いんですか?」

「 川崎なんですけど、
 まあ歩いても今日中には着けるんじゃないかと・・・」

  歩くのか?・・・今、19 時を回ったところ ・・・

「 川崎は光玉の外に出てしまいますね。
 ・・・ のんびりしていると、戻れないか?
 もしくは、光玉内に入れないかもしれませんよ。
 この中に居ることが重要だと思うんですが ・・・

あなた見てると、ホント入れなくなるかも?
ああ、悪気は無いんですが、危険ですよ外は ・・・

 あっ、水の準備ですか?
 僕の家、近いので持って来ますから、
 まず競技場に行きましょうよ。

偉大なる神の御計画に参画出来るんですから、
迷わずに行きましょう。ねっ・・・」

  そうだ~。チュウ~。ほほほ~いいぞ~い。

 暗い青年は、しぶしぶ拳三に付き添われて
 競技場に入って行った。

  おっ、他の人もぞくぞく連れて来た。
  みんな必死でがんばっている。

 拳三達は手分けして、何往復もして人を集めてきた。

剣三郎から集合の連絡が来たのは、
22 時を回った頃であった。無理もない。

 あの青年じゃなくても、
 ゆっくり考える時間が欲しいと思うのは誰しも同じ事だ。
 一回帰ると言い張る者がほとんどであった。

  まあ、家族と話す時間も欲しいだろうし ・・・

 ただ時間が在り過ぎると、
 堕落した人間は重い腰が更に重くなる傾向がある。
 だから、半日余りしか時間の猶予が与えられなかったのだ。

  神は全てお見通しということだ。

 しかし、時間は十二分に与えられていたのだ。
 何千年も前から、幾多の預言者や聖者を通して
 警告を発せられてきた事をお忘れなく ・・・

 
自由広場のミツエの様子は、
女性らしい細やかな気遣いと的確な指示に、
皆、喜んで従っているようだ。

 エミリーとミランダは、
 テキパキと満足そうにお手伝いをしている。

他にも、進んで世話役を買って出る者が多数いるので楽しいだろう。

 ミツエは不安で暗い想念になる者達に対して、
 主神様にお使いする喜びを力説し、やる気を出させている。

硬式野球場の川島にしても、
聖者からの指名があるだけに中々の働き振りである。

 この辺は自警団で剣三郎から、
 厳しく鍛えられていただろうことは容易に想像が付く。

  群衆からの不平不満に戸惑うこともあるが、
  他の自警団のメンバーと協力して、
  人々の想いを主神様に向かうように、
  試行錯誤しながら訴え掛けていた。




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