『 うさぎの言霊 』 Rabbit's Kotodama 

宇宙の謎、神と悪魔と人とは?

《 第二章 》 〈 第一話 〉 正邪の進軍 ( 後 編 )

2019年02月02日 17時42分12秒 | 小説


 遂に始まった正邪の最終決戦!

邪神軍は、主神が封印を解いた 「造化の業」 を悪用し、
怪物を産み出しました。

 第一の怪物は、ゴジラの紛い物。
 第二の怪物は、一体何だろう?

  あなたの目でお確かめ下さい!


 《 キャラクター&キャスト 》

    ( 邪神軍団 )

総  帥 サタン ( ルシフェル/クラウド ) アントニオ・バンデラ〇
司令長官 アンドラスタ / ジョージ・クルー〇ー
 将 軍 グリオス   / アンソニー・ホプキン〇   
       将軍 ドルン と NO.2 争いをしている。
       ただし悪趣味は 邪神軍 NO.1!

 アメリカ大統領 ( スタンリー・ミニットマン ) モーガ〇・フリーマン
 日本首相 ( 阿部一郎 ) 笑福〇 鶴瓶


        ( 推奨BGM )

       フランツ・リスト作曲
     『 ハンガリー狂詩曲 』 第二番

       カラヤン&ベルリンフィル

https://www.youtube.com/watch?time_continue=8&v=e6iOzuPHjiE  

    




    あの巨体が果たして何処に行ったのか、探すまでもないでしょう。
    何しろ、表れた瞬間に正神軍は察知するでしょうから ・・・

    我等は瞬間移動で、ここ大阪の中心部、
    大阪城を望む五キロ程離れた場所に居りますが ・・・

      異常事態発生です。


   大阪城の詳細は右記から ・・・「大阪城パークセンター」




    何とその大阪城は見る影も無く潰され、
    代わりに 黄金の卵 が 築 城 ? されているのです。


《 やれやれ、あのグリオスは、
 とんでもない注文を手下共にしたようじゃ。》

「 あっ、それは~お聞きしたいような、したくないような。」

《 あん? まあ、そう言わずに聞きなさい。
 よいか、奴は有りっ丈の貴金属を
 戦利品として献上するよう命令を下したのじゃ。

だから、西日本全ての財宝を取り込んでいるので時間が掛かったのじゃ。

 しかも体内で貴金属を加工し、
 表面を金箔の鱗や宝石で飾り付けているそうだ。
 この際、己の欲望を満たす為なら何でもするということじゃな。》


    モッタイナイデチュウ。 
    品ガナイデスワ、ヤダヤダ。

  叡智晶の拡大映像では、はっきり金の鱗が映っています。
  それにしても、さっきの邪龍より巨大です。

 大阪城で金の卵となれば、
 黄金好きな秀吉を連想させますが ・・・
 どうせ、金ピカの龍でも出るのでしょう。

  大阪の象徴を破壊され、地面をまるで地引網のように、
  様々な宝飾品を抱えて引き摺られる気分は最悪の筈です。

 セレブも商人の皆様も、これ以上の屈辱は無いでしょう。
 あらゆるものを奪われ、怪物の一細胞になってしまうなど
 死ぬより嫌でしょうが、もう取り返しが付きません。

  この世の終わりかもしれない時なのに、
  強欲な人は大事な物を身に付けたりして
  他人から奪われないように守る。

 堕天使グリオスは、恐らく人間のこういった強欲邪欲に付け込み、
 手下の憑依霊に命令し身に付けさせ、
 戦利品として献上させたということでしょう。

  暫くすると、間違いなくアレだろうと思われる
  怪物の形が現れてきました。
  うずくまりながら複数の唸る声が不気味に響いて来ます。

   日本人なら、ゴジラに匹敵する恐怖の怪物と言えばアレです。



         現在時刻、八時三十六分。


         ようやく両翼を広げながら、
     前屈みだった三つ首を、ゆっくり持ち上げ始めました。

         こいつは黄金の三つ首竜 ・・・

     そう 、「 キ ン グ ギ ド ラ 」  で す。


      勿論、派手さで言えば何者にも勝るでしょう。
    黄金の鱗は胴体に、牙、角等には宝石を散りばめています。

           総額、数百兆円?

    体内には、きっと札束製の茶室とか黄金の城があるに違いない。

        太い足、そして腕は、腕 ??? 

          見当たりませんが。

    あ~~腕って無かったでしたっけ? 円谷プロさ~~ん!
       むむぅ ・・ 無い! と断言致します ・・・

         そうだ、確か無かったな。

         ただ、翼は少し違います。

        映画で観るキングギドラの翼は、
       生物には有り得ない形状をしています。

     強いて言えば、折り畳めないコウモリの羽を、
     短くしたようなものですが、
    こいつの場合は、鳥類の羽の形状と同じなのです。

   大鷲の翼を金色にしただけです。

  この羽の部分は、胴体その他の鱗と違い、金色の羽毛のようです。

 体に巻きついていた尻尾が伸びてきました。
 これも長くて、先の部分が三叉に分かれています。

  その長さは、約五百メートル。

 さぞかし秀吉も、草葉の陰から喜んでいるでしょうか、
 それとも嘆いているのか?

  あ~分かりません。

それで今、両翼を目一杯広げて豪華絢爛さを誇示しているようです。
ただ、その両翼の幅は ・・・ 千メートル近くありそうです。
何せ、大阪城公園の幅一杯に届きそうなのですから。

  幾らなんでも大き過ぎるでしょう。それに飛べないでしょう。
  でも、羽があるんだから飛ぶんでしょうねえ?

    はあ ・・・


《 それはどうかなぁ~?
 あんな質量では、歩くのがやっとだと思うが ・・・
 ただ、金属類を捨てれば別じゃ。》 

「 あ、そうで御座いますか。何か安心したような ・・・」


        身長約七百メートル。 

    体重、貴金属を取り込んでいるので、さあ?
    ・・・ 七、八十万トン位でしょうか。

  金銀財宝で覆われた空飛ぶ要塞、新大阪城!? 完成です。

        悪夢ですなこれは・・・

    【 がははは、世界制覇の為、いざ出陣! 】

      とか、不気味な声で言っていそうです。   

        あの、グリオス将軍が・・・

    約百分で築城されてしまうとは、
    一夜城を築いた秀吉はさぞかし悔しがるでしょう。

   それに、こんなド派手で眩しい化け物は、
   世界の何処にも発生しないでしょう。
   呆れるばかりで、これ以上ものが言えません。

  それから、例の鳴き声、


・・・ キリキリリリ、クリリリリ、カリリリカリン ・・・


  とか、妙な音霊を発しています。
  文字だけでは表し難い鳴き声です。

   ところで、この辺りに 「神の光玉」 は ・・・ 無いようです。

    ただ、頭上や地上の至る所に、
    世界中から届いて来る光の帯が見えます。

   世界の、祈りを許されし神の子の皆様には、
   何としても早く 「神の光輪」 出現のお許しを頂けるよう、
   精進されて頂きたいものです。

  ああ、奴が動きました。
  あの巨大な翼を羽ばたかせています。
  周囲のビル群が砕けて、埃のように舞っています。

   ば、芭蕉扇じゃあるまいし、やめてくれ~。

  それに六つの青い目が光って、
  三つの邪口からはそれぞれ何か分からん光線を、
  鞭のようにあちこちの地球の皮膚に打ち付けています。

   体は動かさず、
   首をあらゆる方向に向けて絨毯爆撃しているのです。

  ただ見ていると、炎が上がる度に羽ばたいて消火しています・・・
  火は消えて、建物は地面から剥ぎ取られ、
  段々整地されているようです・・

    一体、何の為なのか?

 もしかすると ・・・ 辺りが炎上すれば灼熱地獄になる。
 そうなれば、邪体に塗りたくった
 黄金のファンデーション が熔けて崩れてみっともない。
 宝石は燃えてなくなる物が多い。単にそれを避ける為なのか?
 まあ、それは派手好き綺麗好きの心理からすればそうかもしれない。

  物好きな強欲親父の趣味 ・・・ 付いて行けません。

   しかしねえ、一瞬にして焼け野原です。

  ほんの数分で大阪の街は破壊されてしまいました。
  これって誰も止めない訳ですね。

何しろ、正神軍は 「主神への祈り」 でしか対抗しませんから ・・・

 人間の邪欲から生み出された都市が、
 これまた邪欲が生んだ邪龍に因って破壊される。

  何とも皮肉な因果応報、相応の理であり、
  負の連鎖の結末であると思います。
  最期には、世界の文明そのものが破壊されるでしょう。

    実に虚しい事であります。

   そういえば、ママゴト政府と自衛隊は、
   皆化け物に取り込まれてしまったのだろうか?


《 いや、奴等は取り込まれてはいない、一人もな ・・・
 政府と官僚、自衛隊関係者の家族、その他の有能な学者、
 技術者達はきっちり残した。世界各国同様にじゃ。》

「 ・・・ しかし、一体何の為で御座いましょう?」

《 その答えは簡単じゃ。
よいか、本来は首相から直ぐ攻撃命令が自衛隊に下されるのじゃが、
アメリカ軍と連携を取る為、動かないだけじゃ。
韓国軍も同様の動きだ。

 何しろ邪神軍としては、
 さっきのように直接正神を攻撃しても歯が立たない。
 故に、遊び相手を残したということじゃ。
 人間なら丁度いい玩具を持っているしな。

それに家族を残さなければ皆、戦意喪失してしまう ・・・

アホらしい事だが、まだまだ裏がある。
それは、まだ言わないでおこう。
まず自分で推理するのじゃ。》 チ~~カ 。


   ああ、あれっ、何をしようというのでしょう?
   あの巨体が浮かび上がる程、羽ばたいています。

  飛び上がろうというのか? 無理だ!
  あの様子じゃ金属類を捨てよう等という気は無いようだ。

 それでも飛ぼうというのか?
 瞬間移動は出来ると思うのだが ・・・

ただ、この悪魔の親父のやることは無茶苦茶です。
全く、じっとしていられないのか?

 で、とうとう飛んだぁ! 
 ちょっと、信じ難いですが確かに飛んでいる。

超低速&超低空飛行で、ふらふらと
鳥人間コンテスト初エントリーをしたクルーじゃあるまいし、
滑走路から数十メートル飛んで、
琵琶湖に ドボン になりそうである。

 言わんこっちゃない!
 自暴自棄なのは分かりますが、やり過ぎなんですよ!

  も、もう駄目だぁ。

金の豚足が地面に着いて蹴って、縺(もつ)れて縺(もつ)れて ・・・

  転びそうだあー!

  ただ、必死だ。 いや、遊んでいるだけかもしれない?

        それで大阪城跡地から、
  西へ数キロ飛んで新淀川河口付近へ ドッボ~~ン! です。

  しかも前のめりで ・・・ 無様です。 なんという絵だ。

       その為、辺りは水浸し ・・・

       三つ首と胴体は川の中。
    足の一部と尻尾は岸に残ったままです。

   この真冬の水温では、五分と持たないだろう ・・・ か?

 ところで、数キロと言えど全然飛んではいません。
 こいつの体、七体分程ですから ・・・
 飛んだと認定されないのでは?
  
   頭痛いです、ホント。

 それで動かなくなった ・・・ 疲れたのか、死んだのか? 
 ピクリ ともしない。

   新淀川の河口で、キングギドラ が溺れて 土佐衛門 になり、
   誰かが突っ込み入れて来るのを待っているのだろうか?
   本気でそう思える。   

 詳細地図はこちら ・・・ 
https://www.mapion.co.jp/m2/34.69393911273391,135.50214916666667,15


《 どうせ狸寝入りじゃろう。
 それで、おぬしの予言は当たるであろう。
 他行こうか? あ、いや、もう玩具の兵隊さんは動いてしまったわい。
 はあ暫く様子を見るかのお。》  


   アラチュウ ・・・ あの宝石の中は、偽物で一杯ですのよ~。
   金の純度も低いし、プッ。

  あは~、メーサー砲も無しで大丈夫でしょうか?
  あれは効き目が無いようですけど、
  ガイガンやメカゴジラのレンタルは無いのかなあ?

 カプセル怪獣をウルトラセブンから借りるとか。
 ただ、あれは弱いしなあ。

そうだガンダム等身大が有った筈ですが、あれは張りぼてか。

 どれにしても小さ過ぎます。
 ああっ、ふざけて失礼しました。不謹慎でした。

   奴が土佐衛門に成り、三十分程経ったでしょうか?
  


       只今、午前九時二十六分。


      まだ動く気配はありません。
      このまま死んでいてほしいです。

    しかし死んだと判断したのか、
    ほんとにオモチャの自衛隊が来てしまいました。

  伊丹の千僧駐屯地から来たであろう陸上自衛隊、
  中部方面体、第三師団は次々押し寄せて来ます ・・・

    詳細はこちらから ・・・ おもちゃの兵隊さん



       総動員なのだろうか?

   それで、新淀川河川敷に隊列を組んで止まりました。

  どうなっているのか、実におかしな動きだ。
  まるで演習のように坦々と・・・

 この怪物を前にして、緊張感は見受けられるが、
 死を前にしているとは、とても思えない。

通常兵器で倒せる相手で無いことは、
誰から見ても一目瞭然である筈。

 故に特攻するかの如くの覚悟があって然るべきなのだが、
 隊員達の表情にはそれが見受けられないのだ。

  それとも、本気で死んだとでも思っているのだろうか?

   それに、攻撃態勢を取る訳でもなく、
   隊員が車両から外へ出て整列をしている。

  ・・・ これは妙だなあ ? それに臭うぞお ・・・

   彼らの思念を読んでみたが、実に謎めいている。


( あいつは味方だ。 落ち着け落ち着け・・・)

( 何としても人類を守らねば、邪神軍に侵略などさせてたまるか・・)

( クラウド様の言う事は信じられる。彼こそイエスの生まれ変わり。
 彼の言う通り、アメリカと協力し合えば理想国家は築ける。
 この作戦が成功した暁には、
 千年王国に英雄として迎えられるのだ ・・・)


  これはおかし過ぎる。邪龍が味方? 等と ・・・ 
  誰だクラウドとは?
  前にもそんな話を十和田湖上空でヘリの操縦士がしていたが・・・


   クラウド = 英語で意味は 「雲」。

  怪しげなクラウドコンピューティングの略。

  ネットで繋がり利用料を払えば
  高額なソフトも自由に使え、データ管理も不要。
  手元にはソフトが要らないというお手軽なシステムです。

 それが企業や個人に広まっている。
 何らかの事故等で利用出来なくなれば、仕事は直ぐストップ。
 ハッカーの狙いの対象にもなっているのです。

  それに、強大な権力を持つ者が、
  電波を使い思うがままに人間を操るれるようになるかも ・・・


 クラウド = 「支配するは我にあり」 とでも言いたげだ。

   それとも、

「 太陽など必要ない。
 全て暗黒の雲で覆われた我が造りし闇に永遠に生きよ。」

   ということだろうか?

 直に、毒入りの雨が地上に降り注ぐだろう・・・危ない危ない。

まあコンピューターとの関係は別にして、人間は完全に騙されているのだが、
イエスの生まれ変わりとしても証拠は何処に?
両手の掌に丸い痣でもあるのか?

 ただ実際、666の痣が頭のどこかにある筈だろうな!

  アンチキリスト、サタン殿!

 何れにしても人間起点の幸福観から逸脱した聖者達の話は、
 受け入れられることはない。

きっと悪魔の化身の偽善者は、
人間が求める理想の飴を与える密約でも交わしたのだろう。
ただ、裏で何を画策しているかは定かではない。

  案の定、予想外の展開で、
  邪神軍の壮大なる地球防衛作戦は開始されるようだ。
  見上げれば面白い物が見えます。


     それは、UFOの大編隊です。

  つまり天空浮船(あめのうきふね)の事であります。
  それが上空にわんさかおります。

その中の先頭の、巨大な母船と思しきUFOが地上付近に降りて来ました。

そのUFOの底から眩いビームが、地上の整列した自衛隊員の前に放たれ、
それと同時に、二十人程の人間がビームと共に降りて来ました。
こりゃあ、どう見ても各国首脳だな!

  当然、地球人のであります。

一列に整列した中央には大国が配置されました。
G20のそれぞれの顔色は、ドヤ顔で最高の色艶であります!

  ふん、全くふざけている!

 その一人は誰もが知る人物です。
 それはアメリカ大統領その人です。

名はスタンリー・ミニットマン。黒人大統領です。
それにロシア大統領、ニコライ・ラスプーチン。

 日本は、首相官邸で丸焦げになり亡くなった狸の親父の後釜 ・・・ 
 誰です副総理は?

   ・・・ 確か、阿部 一郎さん。


     そして、一番中央の男。
     この男がクラウドなのだろうか?

   黒髪の長身そして、いやんなるほどの腐れイケメンですが・・・
   こいつは富士山麓にいたサタンと瓜二つだ。

  先進国と新興国の首脳達は、
  自衛隊の代表数名と握手を交わし、短く挨拶をしています。
  緊急サミットか何かでしょうか?
  それとも予め、この日に備えて各国示し合わせていたのか?

 皆、落ち着いた素振りで、中には笑みを浮かべる者さえいます。
 臭い匂いがプンプンしてきそうだ。
 しかも腐った動物の匂いだ。

何しろ全員の魂はドス黒く汚れ、
悪魔や強力な憑依霊がびっしりと体内にへばり付いているのですから・・・

 ただ、人間の正義を貫こういう自信が漲っているのは確かだ。

  勘違いも甚だしいのだが、邪神の手下に成り下がった奴は
  真実を見失う事には慣れてしまうのだろう。
  否、知っても知らぬ振りが正解だろう。

 権力と金、そして能力が高い者、
 それに従順で文句を言わない納税者が適度に居ればいい!
 これが人間界の理想郷です。

この現状を許さない正神の神々が、
これらの人間を裁いて排除しようというのは、
当然至極のことであります。

  んん? 何やら動きがあるようです。

あのクラウドらしき人物が一人で、あの飛べない金龍に向かっています。
それで水面に覗いた鰐のような、三つ首中央の左目からビームが発せられ、
その光に彼は取り込まれて行きました。

  他の各国首脳は母船に戻りました。 
  そして上空に留まっています。

 うわ、やっぱし溺死してはいなかった金の邪龍は、
 ゆっくり起き上がりました。

それで、自衛隊のいる新淀川を隔てた対岸に、何とか足を片方ずつ乗せて、
翼を使い ドタバシャ と・・・やはり重過ぎるのだ。

 いったい何時までかかるんだろう。
 全く、動く度に地面が揺れて地響きが ・・・ ああ~あ。

自衛隊員は皆車両に戻り、水しぶきを避けています。
それに車両がバウンドしている。

きっと、あのクラウドも悪魔の誰かに憑依されているんでしょうけども、
グリオスと喧嘩しているに違いない。


  ( もっと優雅な動きが出来ないのか? 無様だろうがぁ!)
  ( 黙れ! 後から来て、うだうだ言うんじゃねえ!!)


    等と ・・・考えただけでも阿呆らしい。


《 うさぞうよ、あのクラウドはサタンが憑依しておるのじゃ。
 だから、グリオスはこっ酷く怒られておるじゃろう。
 全く、憐れじゃ。》


      ワタクシ、先程から可笑しくて、ププ。


「 ああっ、そうなので御座いますか。
 どうりで偉そうに見えました。」


  ところで、あの邪龍の中の様子は邪気が邪魔してか、
  私の能力では読み取ることは出来ません。
  邪気そのものが妨害電波になるのかもしれませんが、
  何とも言えません。

 それで五分程掛かりましたが、ようやく怪獣フィギアのような、
 羽を広げたポーズを取って得意気です。

  固唾を飲んで見守っていた自衛隊員達は、
  車両から出て拍手喝采をしています。

   こりゃあ実に滑稽だ。

    で、どうするんだろう? ・・・あれっ、


(((  自衛隊の皆さん、私は ネイサン ・クラウド です。

  この通り、少々派手な龍の化身は我が手中にあり、
意のままに操る事が可能であります。

阿部首相からの依頼は、
古くて邪魔な建物の撤去と、北方領土の返還。
加えてフィリピン、インドネシアなど東南アジア諸国の領土。
そしてその国の財宝と五百万人の労働者 ・・・で御座いますな。

いや~、中々御見事な領土の獲得であります。
それは各国首脳とも合意のことです。

 そう、我等正神の使徒として、これから中心的役割を担い、
 千年王国を築いていく上では妥当な報酬と言えます。

これから私は依頼遂行の為、各国を歴訪して参ります。
我等正神の龍体は世界中に展開し、既に作戦を開始しております。

 あなた方は己の使命を果たして下さい。
                                         
では、後に富士山麓で合流し、
正神の名を騙(かた)る邪神共の陰謀を打ち砕くのです。

 我等正神政権を守護し、
 人間を天国へ導く偉大なるアポフィス様よ永遠なれ!
)))

「「「 アポフィス様 バンザーイ! バンザーイ! バンザーイ! 」」」


   なんだって? 

 流暢(りゅうちょう)な日本語で

スピーカーを備えた車両から声がしました。
 臭い演出だが、人間様には丁度いい目晦ましにはなる。


また天空浮船は、

球では天皇専用で万国巡幸に使用された乗り物であります。


故に過去に於いて、世界中にその事を記した文献や
物証=オーパーツ がある訳です。

 加えて竹内文書、約五百八十万年前の記述に、
 「 天空浮船の造り方を万国に伝える。」 とあります。

ですからインドには 「マハーバーラタ」 や
「ヤントラ・サルヴァスパ」 などの文献に、
「ヴィマナ=天空浮船」 の特徴や性能、操縦方法が記載されています。

 


 下記参照 ・・・ 究極のまとめ. COM

インドに眠る世界を滅亡させる古代UFO「ヴィマーナ」の謎 (kyukyoku-matome.com)

   



  物証はいくらでもあるのですが、学会が認めないだけです。

当然、どこかの地下で膨大な予算を投じて、
人工UFOを建造しては試験飛行している訳です。

 なにしろ、設計図があるんですから、
 その技術を再現する研究をするだけでいい訳です。

  宇宙人などというのも、全ての惑星の内部は空洞で、
  そこに居住可能なのです。

 つまり全宇宙の星の内部には、生命が溢れているのです。
 勿論、太陽にも月にもです!

ほとんどの人間は、政府と低能な学者、マスコミに偽情報を刷り込まれて、
盲信しているから夢と希望を失ってしまうのです!

 そういう理由から、星の表面だけを重視して探求しても、
 生命の存在を発見することは困難な訳です。

  地球は、宇宙共通惑星であり、
  宇宙の友人達の一部が転生して修行をしています。

  多くの人間の魂は、地球での転生を何度も繰り返しているうち、
  自分の出身星を忘れてしまっています。

 ですから、UFOだの宇宙人がどうだの論争することはないのです。
 真実を世界の強大な権力に因り隠蔽されているだけです。

   無知無関心が己と他人を不幸に堕とすのです。

  自分で調べて探求追求して確信を自信に繋げましょうよ!
  それが実力というものでしょう!

 それら上記の事柄は、
 「超図解・竹内文書」 計二巻、
 高坂和導 編著 / 出版社・徳間書店
 に分かりやすく記載されておりますので是非お読み下さい。



 しかし邪神を支持する国。
 さっきの首脳は立候補したのか、それとも邪神の指名か?

  これは、後者が正しいでしょう。

 邪神が使い易く、能力の高い国を選んだ。
 そして協力すれば、邪魔な国民を排除し、
 選ばれなかった国を旨く分配して褒美とする。
 その後は、悪魔の恐怖政治が始まる!

全く、なんて人間的欲望の理想郷であることか。            
そして、その欲望を煽(あお)る邪神。

 勝利の美酒を飲みながら脳裏に浮かぶのは、敗者の無様な姿。
 敗者を笑い、己は自慢で鼻を高くする。
 敗者を作らなければ勝者の快楽や優越感は無いのだ。


  イラク戦争はそうでしたよね。

9.11のテロ事件も、戦争を起こして欲しい人間の祈りを、
邪神が叶えてあげたに過ぎません。

 頑丈なビルがいとも簡単に崩れて、わざとらしい見え見えの演出。
 飛行機が突っ込む場所は決められていたでしょう、
 ダイナマイトを仕掛けた上にってね ・・・

  そして、見事に崩れた。

 テロ組織を利用し企画をしたお馬鹿な連中は、
 ビールやウォッカを呷りながら中継に見入って、
 その出来映えに手を叩いて喜んでいたことでしょう ・・・ あほらし。

  その後戦争に発展致しましたが、信じ難い程の体たらく、
  「 戦争詐欺 」 と言ったら怒られるでしょうか?

  では訂正して
  「 実戦 戦争ゲーム = 新しい武器と戦術を試してみよう!」 とか?

  尚更悪い? 
  ごめんなさい、イルミナちゃん!もう人間をいじめないでね!

 え、虫けらをいじめて何が悪い? 
 こりゃ、話になりませんな! あ~あ ・・・

勝敗が付きもののスポーツ、格闘技、ゲーム、ギャンブル、
選挙に訴訟、企業戦争など等。

敗者に情けを掛け、称える者がどれ程いるでしょう?
その敗者から生じる屈辱と憎悪は、邪神のエネルギーとなります。

 戦争はその最大の発生源であります。
 それが積み重なり今の世が出来上がりました。

その激流に日本も飲まれたのです。
神国日本の誇りや、大和魂は失われつつあります。 
  
但し本来、世界の霊的な牽引役であらねばならない
日本の責任は重大であります。

 今も尚、醜い波動を出し続ける人類。
 その邪念を浄化しようとする聖なる祈り。

善悪・明暗・光影がはっきりして来ました。
現在では、完全に分けられたのです。


     正 か 邪 か?


   後は主神様が裁いておられるのです。
   随時、天使達が成り代わって・・・



          ( 推奨BGM ) 

        ユー・ドント・フール・ミー  

        Queen - You Don't Fool Me 




( 執筆当時の作者時間 ) 二〇〇九年八月二日(日) 午前三時



 その後、セレブとかいう強欲人間を主に取り込んだ
 ゴージャスキングギドラ は瞬間移動を繰り返し、
 神の光玉を避けながら日本の街を邪光の鞭で破壊して周りました。
 奴は、官庁や公共施設等をなるべく避けて攻撃しているのです。

その間、神の光玉の守護神の神々は、
どなたも動かれることはありませんでした。

 そう、この 「神裁きの三日間」 では、
 今まで人間が犯した罪穢をしっかり見つめると同時に、
 その反省とお詫びをしなくてはいけないのだ。

であるから、神様が直接動いて世話を焼かれることはないのでしょう。

 ただ、火の手が光玉に近付かないよう、
 各国、「神の光玉」の守護神の皆様は、神の息吹で消しておられました。

  ですが、光玉の周りを破壊され、火の海にされても必死に祈る姿は
  痛々しくもあり、力強くもあります。

聖者と補佐役の連携は、こういう時にこそ大きく鍛えられているようです。
 怯える群衆を叱咤激励し、迷わず神への想いに集中させるのは、
 中々骨が折れることでしょう。


それで 世界政府専用豪華宇宙船団 も、
三つ首のお化けの後をくっ付いております。

 その化け物の一区画の仕事が終わる度に、
 交信し合って確認を取っているようです。
 阿部さんも御満悦でしょう。

  何とも御丁寧な仕事振りであります。
  悪魔共も人間の味方と思わせるのは随分面倒臭いでしょうに ・・・ 

   いやいや、意外とこの段階が
   一番ワクワクゾクゾクするのかもしれません。 

  ところで、あのアンドラスタの邪龍はというと 韓国 に出現し、
  そこで発生した化け物と合流し北朝鮮を壊滅させました。

 当然軍の反撃はありましたが、
 邪体に傷を付ける度に憎悪が膨らむだけで、
 返って邪気を強くしただけでした。

厄介な核は使う暇もなかったようです。
発射しても命中させるのは不可能でしょうし、自滅してしまうでしょう。

 韓国は北朝鮮を領土にするのが望みでした。
 加えて、マレーシアも領土になるようです。

  残念なのは、
  北朝鮮には一箇所も「神の光玉」は発生しなかったことです。

   韓国には一つですが・・・

  因みに、ロシアの望みはソ連時代の領土の復活。
  更に、ノルウェー、スウェーデン、フィンランドです。

 はあ ・・・ ラスプーチンさんて欲張り!

中国はモンゴルと台湾、
ベトナム、カンボジア、タイ、ラオス、ミャンマーであります。
こちらも相当欲張りです。

 アメリカは、メキシコにカリブ海の島国全部と
 オーストラリア、ニュージーランド。
 それぞれ財宝と奴隷
 (低賃金で働く労働者という名目) 付きであります・・・

   やれやれ ・・・
   馬鹿馬鹿しいのでこの辺にします。


 その後、人間の夢を叶える神の化身達は、
 アジア諸国、ロシア、中東、アフリカ大陸を経て、
 ヨーロッパ諸国と渡りながら、破壊を繰り返しました。

  気になるのは、邪神と運命共同体になった国の軍隊の動きです。
  各国の海軍は日本を目指しています。

 しかも、多分日本の阿部さんには内緒なんでしょうけども、
 アメリカ軍とロシア軍は日本への核攻撃 の準備をしているのです。

照準は十箇所の 「神の光玉」 と、富士上空 「神の光輪」 に合わせています。
つまり十一箇所であります。

 お人好しのアメリカ依存症の日本としては、
 当然至極のように騙されているのです。
 今では同盟など形だけに過ぎません。

  敵は何処に? 味方はどの国? 抑止力って何ですか?

「 殺される前に殺せ、銃でも核でも、打たれる前に打て 」 が、
アメリカの常套手段であります。
銃や核を突きつけ、仲良くしようはないでしょう。
ふざけた理論であります。


 それで各国の軍隊はというと、
 太陽から発生した C M E の電磁波の影響により
 全軍は活動出来てはいません。

それに現在地球上を覆う厚い雲により、
衛星による通信は不通となっております。
確実に通信出来るのは、人工宇宙船からだけのようです。

 各国の首脳は、さぞかし優越感に浸っていることでしょう。

悪魔共に煽てられ、鼻高々で邪魔者が消されてゆく様を高みの見物とは、
どんな快楽にも勝るでしょうな ・・・

  その有頂天に立っていられるのは、後二日余りです。



  現在日本日時、十九日午後九時十五分。


 各国で発生した怪物共は何百になりますが、
 次第に合体融合して七体になっています。

怪獣一体の全長は、優に三千メートルを超えているようです。
どれも形容し難い程、醜くおぞましく、のろまです。

 とは言え、その図体からして動く度に地球には多大なる負担が掛かり、
 地震に火山の噴火が付いて回っております。

したがって、残すべき約束の建物が破壊される事が
しばしばあるので御座います。
当然、奴隷の数も減ってしまいます。
としても、人間の類が正神の名を騙る悪魔に逆らえる筈も御座いません。

  樅手で、

 「 いや~、もう少し何とか旨くピンポイントで攻撃を ・・・
  ああいや、ぜ、贅沢は申しません。大変失礼を ・・・」

  等と言うのが関の山でしょう。

 その七体の邪龍には、
 それぞれ 堕天使 = 七大悪魔 が搭乗しております。

それで、奴等はポルトガルに集合して北米大陸にテレポートしました。

 我等は、奴等の後を追って、ここニューヨークにおります。

  叡智晶ではアジア、アフリカ、中東諸国、ヨーロッパでの、
  いやんなる程の奴等の悪行が映し出されてきました。

  それは特殊な手法を使い、動く魔城内部の悪魔共の会話を傍受し、
  更に映像まで鮮明に捉える事に成功したからに他なりません。

   どのような手法かと言えば、
   あ、あのぉ、三十郎様が、すっ、凄い熱視線で私を ・・・


《 何が熱視線じゃ、戯けめが ・・・ もう良い。
 ここはわしの担当地区のマサチューセッツ州に近いので、
 張り切って説明を致そう。》

   マッサチュウチュウナントカ? ・・・ フ~ン

《 あ、あのな知ってて言う事はないだろ。まあいい ・・・
 な~に、その手法というのは、
 邪龍の内部にスパイを潜入させておるのじゃ。

そのスパイは 「神の光玉」 内で、
流星火矢 を受けて亡くなった者の一部のことじゃ。

本来は邪龍に取り込まれないのだが、スパイ役を引き受ければ、
地獄の星での修行場所を、数段楽な場所にする事を確約したのじゃ。
まあ強制なんだが、皆喜んで応じてくれたわい。

つまりそのスパイを邪龍内部の要所要所に配置させ、
その魂の霊眼を通した映像と音霊そのものを、
我々が見聞きしているという訳じゃ。》

  チュウナノジャアー!

  御神示、真にありがとうございました。


  それでこの続き、凄くアホらしいですが御覧になります?
  ・・・ 見たいですよね。
  では、気乗りしませんがお見せ致しましょう。


  《 正気かおぬし?》 わたくし、もう気分が悪いでチュウ!

    「 止むを得ませんので、ご、御辛抱を ・・・」

    




 さて、人間の邪欲が具現化した場面をお送り致しました。
 無さそうで有りそうでしょう!

馬鹿馬鹿しさ100%! 
そんな雰囲気が充満しているでしょう!

 人間の愚かさは、
 これからも嫌というほど見せ付けられること請け合い ・・・

ほんとに人工UFOも邪龍も異星人も、
あなたの目の前に現れるかもしれませんね!
実際、現れてもビックリ仰天しないでくださいね!

 事実は小説より奇なり! と申しますよ ・・・

淫らな夢と妄想は、具現化しないでくださいね!
金と権力、物欲、食欲、性欲の度が過ぎると、
悪魔のオモチャにされ地獄に必ず堕とされますよ!

えっ、今でも地獄ですって? では更なる地獄が待っているのです!

 だから、邪道ではなく、神の正道に方向転換しましょう!
 勇気と愛を持って ・・・

あ、そうそう ・・・ 堕とし堕とされの恋愛ゲーム!
お互い堕とし合っては、
天国とか幸福なんて夢のまた夢でしょうに ・・・

 まさに恋愛地獄ですね! 
 そこに運悪く子供ができてしまっては、
 負の連鎖が子々孫々まで続くでしょう!
 もう、いい加減止めましょう!

  あ、私もそろそろ説教は止めます。
  恋愛狂の人がお怒りでしょうから ・・・

 純愛って、死語になったのでしょうかねえ ・・・
 実際できるカップルがほとんどいないようですし ・・・
 情けな~い ・・・

  肉食獣みたいな男女の恋愛って淫らですねェ ・・・

   ん? 愚痴みたいになってきました!
   やっぱ、止めます!


次回からの 「 戦争ゲーム 」 というお話は、
更に悪魔と人間の邪欲が具現化していきます。

 その醜悪さは度を越すものです!


   では、大阪愛の一曲を ・・・

  
ウルフルズ 大阪ストラット


私、この曲好きです ・・・ たのしいでしょう ・・・




《 第二章 》 〈 第一話 〉 正邪の進軍 ( 前 編 )

2019年02月02日 16時34分15秒 | 小説



       《 キャラクター&キャスト 》

    ( 天神七代神 )

 初  代  元無極躰主王大御神( 創造主 = 主神 スシン ) 北大路 欣〇

 天神六代  国万造主大神( 大黒天=破壊・再生・生殖の最高神 シバァ )
                      西田  敏〇

 天神七代  天御光太陽貴王日大光日大神

      ( 天照日 アマテルヒ 大神 )
       東京 「神の光玉」 守護神  中村  雅〇 



   直径一キロとしていますが、ちょっと小さいので、
   直径三キロでお願い致します。
   でないと、800万の神々は収まらないと思ったからです。

   

    《 天神七代神専用 浮遊議長席 》

  下書きで未完成です。でも雰囲気は掴めますよね。

この細部を描いて彩色するのは、時間が掛かり過ぎるのでやりません。
どうか、どうか御了承くださいませ。


更に、この「正邪の進軍」のお話は、あまりにも長文なので、
二分割と致しますので御了承ください。


さて、正邪の最終決戦の火蓋は切って落とされました!
常人には予測不能! 理解不能? 驚愕の展開が待っておりますよ!

 神の光玉の群衆達は、裁きの天使から流星火矢を受け、
 生と死に直面し、動揺を隠せません。

翻弄される人間がこの窮地を、どう脱していくのか?

 そして、主神が封印していた霊的な力が解き放たれていきますが、
 その力をどう使うのか?

  愛と憎悪の力が両極端に作用していく様を、
  想像しながら御覧ください!



          《 推奨BGM 》

       アントニン・ドヴォルザーク作曲

   交響曲第九番ホ短調 作品九十五 『 新世界より 』 第一楽章 

       ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 
       ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団   
   


  


( 執筆当時の作者時間 ) 二〇〇九年七月八日(水) 午前二時 


    二〇 X X 年十二月十九日(金)午前7時 ジャスト
          カウントダウン ( 72:00 )



   正神軍司令部の大神様はじめ四大天使の皆様は完全武装され、
   その魂と御目からは轟々と燃える闘気が溢れ出ております。

   場内には、只ならぬ緊張の糸が張り巡らされているようです。

    勿論、幾多の野鳥や昆虫等は羽根を休め、
    息を押し殺しているのでしょうから姿は見えません。

      軍配を右手に持たれ、大黒天様が神々に対し、
      開戦の宣言をなされるようです。



      《 正神軍の皆様、いよいよ時が来ました。 

            この時が!

         狂おしい程の怒りを抑えるのに、
      皆様も御苦労なされた事は良く存じております。

    そして、あの主神様の長くて太くて強い堪忍袋の緒も、
           とうとう切れました。

       この場からでも、その極限のお悲しみ、
      お苦しみが我が胸に突き刺さって来るのです。

  全く許し難い行為を、邪神軍と我が神の子人は積み重ねてきました。

        ・・・ さあ、もう時間です。

    我等は主神様の愛と悲しみが、どんなものであるかを、 
        邪神軍と人間達に誇示すると共に、
     醜く堕落した不逞の輩を拘束断罪するのです!!


    大黒天様は深呼吸をされると、
    軍配を高々と上げられ、一気に振り下ろされました。


 《 陣太鼓を打ち鳴らせぇーい! ラッパを吹き鳴らせぇーい!
   裁きの天使達よ、火矢を番え狙いを定めよおおぉーっ! 》



     ああ、太鼓とラッパの音霊が聞こえます。

    それに見上げると確認出来ます。
   有り得ない光景。不気味な程、
  暗い雲の下に無数の赤い星のような光が ・・・

  私、息が詰まって血が凍り付きながらも、
   目は血走っているような気が致します。

    そして、武者震いが ・・・ これが戦慄というものでしょう。


      叡智晶には深紅の弓に火矢を番えた
      天使の映像が映し出されました。

     その火矢とは赤い光りの束に見えます。
    その紅の火矢を、天使がギリギリと引き絞っています。


  《 とうとう始まる、始まるぞ~! 》 チュウ、チュウ~~!


    駒沢公園の皆様も黙想を解かれて、
   雲下の星に気付き戦慄で体が硬直しているようです。
  どよめく声ばかりが辺りを支配しています。

 クオォ~~~ン ・・・ クウオォ~~~~~ン ・・・

  翼を広げた鳳凰の鳴き声が響いています。 

   恐らく全次元に ・・・

     大黒天様は頭上の鳳凰と大神様方を見つめられた後、
       全身全霊から炎の神気を放出されました。


      《 只今より正神軍は進軍を開始する。
        邪神軍よ思い知るがいい!

       流星火矢を放てぇーーい!!! 》
 



     全世界の神の光玉内の人が、今何をしているのか?・・・
    恐らくそれは、私と同じく上空を見上げていることでしょう。

  流星火矢は一気に降り注ぐと思いきや、
  緩やかに落ちる光のシャワーの如くに、我等が頭上に迫っています。

 裁かれるという真実を知らぬ当人達は、
 皆と一緒にうっとりと天空に描かれる神の絵画に見蕩れています。

  ただ何事か気付いた憑依霊やその他の邪霊達は、
  ジタバタと足掻き始めました。
   無数の悲鳴も聞こえます。

     もう遅い、逃げ隠れする事等は出来ないのに ・・・


《 当然だ。流星火矢は魂に照準を合わせれば、
 自動的に魂を追って貫くのだから、外しようが無いのじゃ。

  故に速度は関係無い。

  人間の兵器で言う、
  レーダー誘導や赤外線誘導ミサイルのようなものじゃ。》

   チュウ!


「 これは、恐るべき兵器で御座いますね。」

《 じゃから、余程の事がない限り使用許可は下りんのじゃ。》


 あああ、とうとう火矢の第一波がぁ~、地上に到達致しましたぁ~。   
 うわっ、既に第二、第三波と次々に絶え間なく放たれている。

  あっ、バタバタと場内の人達が倒れてゆきます。
  逃げ惑う邪霊達も断末魔の悲鳴を上げています。

   この場内は、幾千万に及ぶであろう
   邪霊のもがき苦しむ姿で溢れ、見苦しいのなんの。

  ただ、憐れでなりません。
  こうなることは分かっていた筈なのですが ・・・

 今頃、神に詫びている者もおります。
 がしかし、その祈りも空しく火矢が命中しました。

  解せないことに、目の前には一風変わった光景が広がっています。

 急に倒れた家族や隣人を目の当たりにして、
 現実を理解出来ずにいる者が殆どですが ・・・
 そうでない者も。

  全員に火矢は当たっているのに、
  苦しまずに倒れて心臓の鼓動がしない者と、
  恍惚の表情で歓喜の声を上げる者がいるのですから ・・・

   ああ、分かった。

  そうか、人の醜い魂と憑依霊、
  その他の邪霊に火矢が打ち込まれた訳だから、
  元々魂が綺麗な者は、憑依霊の呪縛から解き放たれ、
  そりゃあ痛快軽快爽快といったところでしょう。


《 気付くのが~、遅~い。》  トロ~イ。

「 も、申し訳ございません。」


   あ、剣三郎が動きました。 ただ、涙を堪えています。


「 皆さん、落ち着いてお聞き下さい。

只今、黒須様から通信がありました。
それによると、光玉内で幾多の人が亡くなっておりますが ・・・
それは神様の御都合でそうなった事でありますから、
あまり嘆かないで下さい。

その方は救いの死を与えられたという事で御座います。
つまりは、魂は抜けてもその場で祈る事が出来る訳です。

どうか ・・・ 心を乱さずに、
これからの祈りに集中して頂きたいと思います。」


  これは、止むを得ない嘘で御座います。
  その場で祈ることができる条件は、
  あくまで魂が規定の範囲内の美しさがなければなりません。

 邪念邪欲に惑わされ、邪道に流され惰性で生きる者が、
 この聖域に留まることはできないのです。
 聖者補佐役の剣三郎が嘘をついたのは方便でしかありません。
 つまりは亡くなった遺族の志気を下げない為のものです。

  あれっ、火矢を受けた霊達が、
  まるで汚れた絨毯が引き摺られるように、
  南西の方角に向かっている。

 しかも、北東側からも絶え間なく、どんどん押し寄せて来ている。

  うわ、こっち見ないでくれ。 気ぃ~持ち悪いですねぇ。
  この火矢を打ち込まれた霊達は、
  神の光玉外に出される訳ですが、その後どうなるのだろう?


《 それはな、三日間激痛を存分に味わう以外は何も出来ない。

それと火矢を受けた魂は、
光玉の中心から放射線状に退場させられるのじゃ。

 さっきの高木や、その仲間の魂も流されて行ったわい。
 この者達は兵力にはならん。
 邪神軍も読んではいただろうが ・・・ ただ、情けないのお。》 

   チュウ。


「 絶望と激痛以外にない道ですか ・・・
 そんな道を歩む者が、無数にいるのですね。
 その姿を、主神様は見続けなければならないとは、
 それも想像出来ない苦しみですね。」


《 おぬしの言う通りじゃな。主神様が一番お辛いのじゃ。
 だが後に引けぬ者は、意地と誇りを掛けて反撃に出る。
 その霊眼でも分からんじゃろうが、
 横浜の港付近に邪気が充満してきておる。
 直に、そのおぞましい姿が物質化するであろう。》


「 横浜ですか、ちょっと邪気が向かう方向位しか分かりません。」


《 そうか、まあ聞きなさい。
 よいか横浜目掛けて北と東日本の邪気が集まる。

動物に転生していた魂と肉身まで加わるのじゃから、
とてつもない数じゃ。
それに加えて光玉内の邪気も加わるのじゃ。

 憑依霊は強制排除されたが、
 魂の輝きと性格や想念が急に聖者並になる訳ではないからな。

ほら、見てみよ。
皆の魂と臍の周りを。あれは既に、人の霊眼でも見えている。》

  チュ~ウ。


「 それは・・・
 ああ、一人一人の頭とお腹から濁微粒子が溢れ出て、
 足元に流れ落ち・・・火矢の洗礼を受けた魂と
 一緒に流れて行くのが見えます。」


《 その通りじゃ。
 それと、今から又一つ封印されていた力が解き放たれる。

 「招喚の儀」の時のように、祈りの光線は勿論の事、
 濁微粒子に加え魂の輝きが見えるようになる。
 おぬしの霊眼の能力と同じになる。

 それがどういうことか分かるかの?》


「 それは、つまり嘘や不平不満であることが、
 口に出さずとも濁微粒子が出ることで、
 誰からもばれてしまいます。

  その度に濁微粒子が、
  邪霊の化け物のエネルギーになるものと思われます。

 また魂の光が見えれば、
 光の強さで人の価値が分かってしまう為、
 平常心ではいられなくなると思います。

 つまり、それら卑しい心根を徹底して
 鍛えるということでしょうか?
 これは、相当厳しい行ですね。」


《 うむ、なかなかの答えであるぞ。

 我等神の望みは、己の魂の光は「神の子」であるという
 「証」に他ならないということの強い認識と、
 己の罪穢の認識である。見えるのは三日間だけじゃがな。

これで、他人を思いやるという利他愛の訓練になる。
醜い言霊や悪想念を出せば濁微粒子が発生し
相手や己の魂を更に曇らせる。

 まずは、こんな世話を神にお掛けしていることの
 反省とお詫びが必要じゃ。
 それらの事柄を聖者が今、剣三郎に伝えているところじゃ。》


  神の心を慮るというのは、
  自分と家族、人間中心でしか物事を判断しない人達には、
  理解するのは余りに難しいことです。

   幾度生まれ変わったか分からない我々人類。

  正善美なるものより、邪悪醜の割合を多くしてしまいました。
  家族間でもその割合は、個人の努力の仕方で変わります。

   今まで包み積んだ悪い癖と曲がった性格に魂の曇り。
   改める最期のチャンスを活かすも殺すも我々人間次第です。



     現在時刻、午前七時十七分。


   まだ、場内は混乱が治まってはおりません。

  剣三郎の話に耳を傾けるも、
  家族や親友、恋人を亡くした者の心が静まるのには、
  まだ時間が掛かるようです。

   ただ、ここでもたついている訳にはいきません。  

《 人の執着心というものは、
 進歩向上を図る時には大きな足枷(あしかせ)となる。

 命懸けで出向いて来たとはいえ、
 強烈な体験に耐えうる精神と肉体を持ち合わせる者は少ない。

  だが、これ以上お通夜に付き合う訳にもいくまい ・・・

 あの剣三郎という男は、なかなか歯応えがあるのう。
 この状況を打破する為に、有志者を招集し対策を練っておるわ。》


   三十郎様が仰せの通り、有志者数百名以上はいるでしょうか?
   暫く協議した後に、それぞれ亡くなった方の元へ赴き、
   励ましているようだ。


「 聖者から指示はないのでしょうか?」


《 いや、剣三郎に一任したようじゃ。
 これが信頼関係というものじゃ。
 任せられない聖域には、助言しているがな。》


   これほどの人数、統率を取るには骨が折れます。

  競技場では約六割の人が残っていますが、
  それでも二万人は下らないでしょうか?

 他の二箇所も然り。中心者がしっかりしていても、
 その意志を正しく伝え導くには、
 手足となって動く人の能力が劣っていては、
 全体の意志統一は望めない。

バラバラの弱い指先であれば、開いた掌のまま付き立てても、
邪神の野望を打ち砕くのは不可能。

 但し、弱くてもしっかり他の指と一体化し、
 拳を握ればある程度のものは打ち砕けるでしょう。

  更にその弱い指先という個人の能力を鍛えねば、
  低辺の底上げも全体の組織力も上がる事は無い。

   拳の威力も上がらない。


さて、通常親しい人が亡くなると、一月は心の整理は付きませんが、
この場では如何にして神の意に乗り合わせるかが重要となります。
その修行も兼ねての三日間なのです。

 今まで錆付かせた刀を鍛錬し磨き上げ、名刀に仕上げる。
 そこまででなくとも、主神様にお使い頂き、
 多少は切れるような刀になる事が必要なのであります。


   現在時刻、七時二十五分

先程から剣三郎の指示を受け、数百人の補佐役が動いているが ・・・
周りの人と協力をして遺体を移動している ・・・

 なるほど、身寄りの無い方も大勢いるようですし、
 一区画全滅の所もある。
 知らない人の遺体に囲まれていては、
 祈りに集中出来ない人が出て来ますね。

  どうやら、身寄りの無い遺体はうまく全体に配置されました。

 剣三郎から、亡くなった方と共に徹底してお詫びの祈りを
 お捧げしましょうと呼び掛けています。

  ここまで、この聖域で祈りを捧げる事を許された人達ですから、
  もう気持ちの切り替えは出来たようです。
  残された遺族も、赤の他人だった人も
  家族同様の想いになってきています。

   しばらく祈りは中断を余儀なくされてきましたが、
   ようやく再開出来るようです。

   剣三郎が全体を見渡し、魂の輝きに濁りが無いか、
   迷いの想念が無いか、じっくり見極めています。


「 皆さん、死別とは辛いものです。
 現時点全世界では、二億近い人が亡くなられたとのことです。
 中には銃を乱射された聖域もあるとの事です。

  しかし、我等が目にしたものは、
  神の雷槍で裁かれた者の死と、救いの死であります。

 裁かれた者は三日後、地獄の惑星への転生か業火へ、
 救いの死を与えられた者は、
 今もこの場で想いを一つに手を合わせておられるでしょう。
 話す事は出来ずとも、常に我等と共に神に祈る事が出来るのです。

その神の大愛に心から感謝し、祈りを再開致します。
御覧下さい。聖者黒須様の真下から伸びる太く美しい光の束を ・・・

 あれは皇居からの祈りの光であります。
 既に十分以上前から光は上がっていました。
 御見事という他ありません!

  我々は、天皇陛下と共に同じ地に座して
  祈る事が許されているのです。
  距離など関係ありません!

   他の聖域、世界中の光玉に於いても同じ事であります。

  さあ、陛下と共に、全身全霊を以って偉大なる創造主に、
  我等神の子の愛はここに有りとお示しするのです!」


「「「 おおおおおおお~~~っ!!! 」」」


  さっきまでのお通夜とは一変し、凄まじい歓声です。

 そして、もう正座でガタガタになった足ではありますが、
 気力で足を折り畳み手を合わせました。

 皆が見ている目線の先には聖者黒須の「光の十字架」があります。
 そこ目掛けて、久しぶりに脳天から祈りの光が放出されていきます。

  暫くして、他の十七箇所の聖域からも光線が上がり始めました。

   それらが、光の束になって「光の十字架」に届く度に、
   十字架の光が眩く輝き光度を増してゆきます。


《 もう充分な光度に達したようだな。直に見られるぞ。》

   チ~カ。

    「 はい。」


   だいたい、おっしゃることは分かります。
   光の十字架から富士上空目掛けて、
   強い光が放出されるということでしょう。

  あ、あああ~~、更に光の玉が膨らんでいる。
  直径百メートルはあろうと思われます。

 すると一瞬強烈な閃光を放った後、
 宇宙戦艦ヤマトの波動砲のような、太い光線が発射されました。
 良く見ると左回転をしているようです。

 その光の幅が凄い。
 恐らく四、五十メートルはあると思われます。

  この光は「招喚の儀」の時より、遥かに強く太いものです。

 その光は瞬間に消えるものではなく、
 揺らぎながらも強さを維持しています。

その光は、一直線に富士上空に届き、そこで熟成されていくのでしょう。

 そして日本と世界中の光玉からの光の帯も、富士に集束してきています。

  東京、光玉内十八箇所の聖域から集束した光は、
  上空 3,000m に静止する聖者黒須を中心に、
  球状の光となり美しい輝きを放っています。


《 のう、おぬし。高を括っておったろう。
 神の御業をなめる~でないぞう。》

  チッチッチ。

「 これは、大変失礼を・・・申し訳ございません。」


《 まあ、よいわ。これから世界中の光玉から光の帯が集束してくる。
 その光は中継無しに富士上空に目掛けて来るのだが、
 どういうことか分かるかの? 》  チー。


「 それは~~地球内部を貫いて、
 一直線に届くということで宜しいでしょうか?」


《 うむ、合格じゃ。
 おぬしは良く百円の地球儀を見ておったから分かるのであろう。
 いい心掛けじゃ。
 その通りで、祈りの光はどんな物質も貫いてしまうからのう ・・・

 むむ、こりゃあ、ちと早いのではないか? 
 ・・・ だが、こんなものか。》

「 は、何のことで御座いましょう?」


《 ほれ、映像を横浜港に移せば ・・・ 
 何と邪気はもう熟成しつつある。実におぞましいわい。》 

   ウエ~。        


  あああーー! 横浜港に 巨大な邪気の繭(まゆ) が出現しました。

 高さ数百メートルはあるでしょうか?
 御丁寧にランドマークタワーの隣に鎮座しています。

 集中すると、憎悪と恨み辛みから発せられる邪気が練り込まれ、
 紡がれているような気がしてなりません。

  ゾ~~ ッ、 と して体に悪寒が走ります。

 まだ八時前、開戦から一時間も経っていないというのに、
 ここまで差があるのか?

  そういえば 「神の光輪」 が熟成されるまでは
  二日近く掛かるとか ・・・


《 これが現実というものじゃ。
 己等が包み積んだ罪穢という怪物と相対すれば、
 如何に馬鹿な事をして来たか身に沁みるであろう。
 わしとて後悔の念で仕方ないわ。》 

    チュ~ウ。


「 私も、あの邪気の塊を造る一端を担ったとは、
 猛省で御座います。」



       ( 推奨BGM ) 

     エドヴァルド・グリーグ作曲
   ピアノ協奏曲 イ短調 作品十六 (第一楽章)

     カラヤン&ベルリンフィル           
    クリスティアン・ツィマ―マン (ピアノ)  

https://www.youtube.com/watch?time_continue=1&v=x6Wdww8ll0w



  


      叡智晶の映像が、その邪念の権化とも言うべき
      ヘドロの繭を拡大してゆきます。

    なんという醜さでしょう!

 ドス黒い血の色をした魂の糸が、
 右回転でその聳(そび)え立つ繭に紡がれてゆきます。
 それは、邪悪な動く魔城になるのでしょうか?

巨大な繭だからモスラのような成虫が出るのか?・・・

 それはないでしょう。
 モスラのイメージは正義の味方ですから・・・

  その証拠に、美しさとは真逆の
  憎悪と恨み辛みを吐き出すかのような
  言霊の合唱が辺りに木霊しています。

   故に姿は蛾か蝶のようであっても、
   神の造型美とは一線を画すものである筈です。

  ああ、周辺の邪神信仰者の方々は当然逃げて行きます。
  でも、今更何処へ・・・?

 何と、止めどなく流れてくる汚物に足を取られ、
 肉体ごと取り込まれてしまいました。

  ビルの上、船上に地下。
  惨劇は場所を選びませんでした。

   皆、描写をしたくなくなるほどの恥辱屈辱を、
   流されながら受けています。

  これが堕ち果てた人間の姿なのか?
  肉食獣のような男女は、お互いの体を貪(むさぼ)り合っています。

 悲鳴とそれを嘲笑う邪霊共の邪声。
 果て無く続く生き地獄。

  それが邪道であります。

   やがて繭のようだった造型が、
   おぼろげながら怪物の姿に変化して来ました。

  頭部、手足と体に巻き付いた尻尾。

 どうせ、お決まりの怪獣スタイルなのだろう。
それとも邪神軍でも悪の芸術の極みを見せるつもりなのか?

いやいや、そんなもの見たくは無い。醜いに決まってる。

 ははは ・・・ さて、邪気を心行くまで取り込み満足したのか、
  少々屈(かが)んでいた邪体を、ゆっくり起こし始めた。

   ああ~、やはり芸が無い。

 こりゃあ、どう見ても ゴジラの真似 ・・・ しかも紛い物です。
ただ、これは日本の恐怖と力の象徴であることは確かです。

 全長五百メーターはあるでしょう。
   ランドマークタワーよりかなり大きい。

   なんというツーショットだ!
                                
皮膚の色と質感は、黒カビをゴツゴツした皮膚に塗(まぶ)したという感じです。
勿論、例の背びれはあり、加えて体のあちこちには
鋭い棘(とげ)が散りばめられています。

 頭頂部には、鎌の先が突き出たような角を一本生やしています。

  決定的に違うのは、その邪悪な 右目 です。


右 ・ 水気 ・ 水の神 ・女神 = アクエリアス、シリウス文明の時代。

    シリウスの五連星は全て、女神が守護神です。

   オリオン座の七連星、プレアデスの七連星も然り!
   オリオン座は既に女神に政権交代していますので、
   名称も代わっています。

     これらの情報は、K さん からのものです。

   これからの時代は、女性性意識が重要になるのです。


奴の 右目 には、大きく縦に深い傷が走り、
その亀裂からは 邪悪な黒い血 が、止めどなく溢れ出ています。

 この血は、恐らく肉体ごと取り込まれた者の
 絞り粕という邪血でしょう。

  つま~り、

・・・ 女神の政権など認めないし見たくもない! 俺達は見ないぜ!

  とでも言いたげだ。

失明した右眼に反して、左眼が爛々と邪光を放っているのが対照的だ。
正神軍への強烈な皮肉を込めたメッセージ!

 呆れるが、これで邪神軍に降伏は有り得ないと捉えていいでしょう。
 果たしてこの意思表示は、サタンかアンドラスタか?

  アポフィスは静観するのか?

 奴の左の邪眼が、関東 「神の光玉」 上空を、
 怨念を込めて睨みつけている。
  更に邪口から漏れ出す醜気が、荒々しく辺りの空間を穢している。

    すると全身の濁肉がワナワナと振るえ、
   その棘だらけの両腕を大きく広げた。

グアアオオォ ー ー ッ、ゴウアアオォ― ― ― ゥン!!
                                      
  その爆音からなる衝撃波は、
   付近のビルとあらゆる建物のガラスを悉(ことごと)く粉砕した。
    勿論、強度の弱い建物は倒壊した。

   これは全身が極限まで共鳴し空振を発しているからだろう。
  とても信じ難い威力です。

 恐らく、この邪龍の咆哮は日本海の先まで響いているだろう。
当然、この聖域にも不快な轟音が通り過ぎていった。

 その見えざる魔獣の存在を群集は感じ取った訳だが、
  まだ私が感じた恐怖までは伝わっていない。

   それで、次は当然歩き出そうと右足を上げた。

  百メートル近く上がった邪足が地面を踏み躙った時、
  地球には悪寒が走っただろう。

   その為、巨大地震が起きた。

 この化け物は邪気ばかりでなく、
 質量を伴う人間と獣の肉を取り込んだ為、
 地球を蝕む汚染物質、或いは癌細胞そのものになったのだ。

  体重は五十万トンを下らないであろう。

その巨体を動かすエネルギー源となる邪気は、
その体内と周囲から絶え間なく供給されているようだ。

ただ、これでは地球を散歩しただけで破壊してしまうだろうが、
当然それだけで済む筈が無い。

  案の定、二歩目の左足が地面に減り込んだ時、
 その邪念の塊が鈍く光り始めた。

数百億の怨念が、激痛を与えた者への憎しみが、
 あらゆる邪な波動を噴出させ怒りの放電となり、
  更に醜く己の邪体を浮かび上がらせていった。

   その負のエネルギーは、
  次第に背鰭を怪しく光らせ蓄積されているようである。 

直に背鰭の邪光は限界域まで達したのか、
溢れ出て魔獣の体を包み込んでゆく。

 その間にも、耐えがたい咆哮や唸り声は
  鋭い牙の間から発せられている。

    騒音地獄だ。地球の鼓膜が破れでもしたらどうするんだ。

    聖域の群衆は、ティッシュを丸めて耳を塞ぎ、
   必死で祈りに集中している。


《 あの駄烏めぇ! 一発目から最大邪霊力を用いて、
 邪魔龍幻死砲を放つつもりか?》

  愚かなことですわ、ふん。


「 しかし、そんな恐ろしい大砲を光玉にですか?
 つまり、試し撃ちでしょうか?」


《 まあそんなところだ。
 天照日大神様の出方を観るつもりじゃ。ふっ、無駄無駄。》


  うっ、奴の体を覆っていた邪光が萎んでゆく。
  いや、全ての邪気を吸収し凝縮でもしているのか?

 ううわあ、お腹の辺りが赤黒い光で満たされてゆきます。
 ああ、また邪腕を広げ、
 邪口からは周辺の邪気と空気を吸い込んでいる。  

  これは邪神の化学実験か?

 あらゆる怨念と、空気中に含まれる 「水の気」 を融合させ
 化学変化を起こさせるつもりか?

  その時、邪眼が不気味に光り静かに口を塞ぐと、
  腹の魔光が ビキキッ! と鈍い音を立てて数倍に膨らんだ。
  
   次に、発射時の反動に備える為か、
   巨躯の腰を落とし両足の鋭い爪を地面に突き立てた。

    そして左の邪眼が ギラリ、と光った!


【 我は邪神軍、司令長官アンドラスタ。

 天照日大神よ、我が軍に敗北と降伏という言霊は無い!

  ただ、永遠の快楽の宴を満喫するが望み。
  その宴で中座させるなど、実に無粋というもの。

   正神の皆様は礼儀を知らぬと見える。

  アポフィス様はとてもお怒りなのだよ。
  さっさと神界に帰り、
  天女達と遊興に明け暮れればいいではないか。

それが嫌なら、この溜まりに溜まった鬱憤と恨みを吐き出すまでだ。
覚悟してもらおう!】


  なんという恐れを知らぬ馬鹿者だ。
  いきなり暴言を吐くとは、
  そんな挑発に天照日様が乗る筈ないのに ・・・

  この愚かな堕天使の声は、人間の耳にも響いているようです。
  ただ、光玉上空の厚い雲からは、怒りの放電が発せられています。


《 ははははは、我は天照日大神である。

 しかし、面白い戯言を言うてくれるなあ、小僧めが!

 その大きなトカゲの愚体を手に入れ、
 気が大きくなり過ぎたようだ ・・・

 では、その溜まったゲップとやらを吐き出してみるがいい!》


   うわあ、まるで相手にされていませんねえ、当然ですが。
   しかし、その御声のなんと大きく頼もしいことか・・・

     ただ、奴は凄く怒っています。

   閉じた邪口の牙を、ギリギリ と上下に擦り合わせ、
   火花を散らせています。

    ・・・ おおお、おい 暴発するぞ!


   【 おのれ~、では、お望み通り受けてもらおう、
      邪 魔 龍 幻 死 砲 を な あ!! 】     

            
 あああ、憤怒の邪龍は長く太い尻尾を鞭のように撓(しな)らせ、  
  高々と振り上げると、憎しみを込めて地球に叩きつけた。

   それと同時に、腹に溜め込んだ邪光が咽まで達し ・・・
    とうとう、その醜い腭(あぎと)が開いた。


ゴオオオオウアアアーーーー!!!


    鳴き声なのか発射音なのか定かではない轟音が辺りに響いた。

  その赤黒い炎塊は長い尾を引き、
 天照主様ではなく、なんと聖者黒須に向かっている。

  だが、直ぐに軌道は変わり、上空の怒りの雲海に飲み込まれた。

   暫く激しい稲妻が放出され、
    広範囲に亘って炎の雲が激しくうねっていましたが、
    やがて邪なる光は失われ、
    煌々と照り輝く聖なる光球が雲下に降臨致しました。

   その光景は地上の聖域の皆様にも見えており、
  拍手喝采の嵐が巻き起こっております。
 
 あらゆる邪念を一瞬に浄化してしまう神気を、
 自在に操られる天照日様の御力のなんと偉大なことか。

  果たしてこの浄化された黄金の光球を、
   どうなさるおつもりなのでしょう?


《 さて、司令長官殿。
 汝の醜いゲップを浄化してお返し致しますが、この儀は如何に ? 》


   奴は唸りながら左目で睨み付けるが ・・ 答えないつもりか?
   ・・・ ゲッ、邪龍の体が透け始めた。


     【 その儀は留保願いたい。
       な~に今のはほんの挨拶代わり。

         何卒御容赦の程を、はははは ・・・・ 】


   すると雲下の光球は、
   凄まじい勢いで邪龍に向かって飛んでゆきます。

  ですが、鼻から相手をする気が無かったと思われる邪龍は、
  寸前で光球をかわし消え去りました。

   その光球は、一瞬で花火のように弾け散ったのです。

  しかし物質物体でありながら霊質を持つのだろうか?
  瞬間移動のような業が出来るとは・・・?


《 それはな、その霊質からなる力を更に増幅させるということが、
 今回特別に主神様が正邪に与えた力の一つなのじゃ。

 それ故、あのような巨躯(きょく)でも瞬間移動は可能になる。
 人間でも本来は同じことだが、霊質の力が衰えただけじゃ ・・・

 ところで、西の方も気になる。

 もう物質化しそうじゃから、直に見るとするか。
 叡智晶だけでは感じ取れんものもあるでの。》  


  チカチカ。

  「 はは、畏まりました。」



 

   次回、自衛隊 VS 邪龍! 乞う御期待!

    ただねえ、ちょっと分が悪すぎでしょうが ・・・
 


《 序章 》 〈 第二十二話 〉 つかの間の休息

2019年02月02日 13時07分57秒 | 小説


  《 キャラクター&キャスト 》

  伝説の神 = ひよこ様 / 谷  〇
ひよこ様の弟 = おちょい / 藤村 俊〇
創造主の末娘 = スミレ  / 石原 さと〇 



氏神 スプリングフィールド (三十郎) / ジャン・レ〇
湖神 ナセル (チカチュウ) / キャサリン・ゼータ・ジョーン〇
うさぞう : 信造 : 作者  / 伊藤  敦〇


 「神の光玉」は、世界中の要所に出現。
 日本には十箇所。
 範囲は基本、3キロ圏。

東京の 「神の光玉」 の範囲は特別で、皇居を中心とした30キロ圏。
東京の 「神の光玉」 「祈りの聖域」 は十八箇所。

 駒沢公園は、「祈りの聖域」 の一つです。



現在、午前六時を過ぎて、お餅タイムとなりました。
伝説の、木に生る餅を頂きます。

 ただ、皆さんの分はございません。
 悪しからず!

あ~~、大福餅か何かで代用してください。
それと緑茶とか ・・・

 ついでにリラックスしてお読み下さい。
 開戦前の休息タイムですので ・・・

   いやっ、でもリラックスできないかも?


      (推奨BGM)

ジョルジュ・ビゼー作曲 /《 カルメン 》組曲 
    カラヤン&ベルリンフィル




六時ジャストのニュースじゃなくて、お餅タイムになりましたが、
 私 ・・・ しょっ食欲が無いので~。

   あ、ああ ~~~ ととと、飛んだぁーー!

   かか、解説を致しますと ・・・
   産まれて間もない鶏の黄色いヒヨコちゃん、

 え~、全長三センチ程でしょうか?

私の肉ポケットから抜け出し、
チカチュウ様の頭に ピョンと飛び乗り、
そ、その小さい体の更に小さな羽根を、
 パタパタと羽ばたかせ ・・ ピヨピヨ鳴きながら ・・・

  うう、三十郎様の左の角に止まり遊ばされましたのでぇ 御座います。

   ハアハア ・・・ ももも、もう限界で御座います。 
   ああ、あふあふ ・・・

《 こここここ、これっ、待たぬか。
 わしを差し置いて気絶は許さぬぞ・・・チカ殿、何故じゃはぁ~っ!》

《 さあ、全然知りませぬ!
 でもね、ほらとってもカワユクて黄色と言うより、
 黄金の羽毛のように輝いて、ああ~、凄く素敵ですわ~。
 だから、あたくしの子供かも。》 ピッピヨ。

《 おお、おぬしが産んだのではないのかあ~!!》

《 あら、わたくし元の姿は女神で、今はネズミ。
 しかも「 ぬいぐるみ 」ですよ。
 どう足掻いても鶏の卵は産めませぬぅ~。》  

     へっ、へぶ ッ ・・・・・

《 おおお、おいっ! しっかりせぬか、うさぞう ・・・
 白目になるなぁ~!
 あああ、そうじゃ、これはきっとスミレ様の仕業じゃあ、
 そうでなければ説明がつかぬわ~い。》 

《 ああん、もうしっかりしなさい。うさちゃんたら、
 ひっくり返っちゃって、私もう、お腹の上に座っちゃおう。
 あらやだ、内のピヨちゃんが、
 うさちゃんの顔にオシッコを掛けたわ。》 ピヨピヨ。


    あああ、うん? ・・・ 雨かな?

「 あ、申し訳ございません。また気絶していたようで ・・・
 今起きますので、え~ ヒヨコ様はやはりいらっしゃいますね。」

   あ、あれっ、気のせいか向こうから鳥が二羽飛んで来る。
   しかも体が発光している!?

    で、でも ・・・?

《 あれは ・・・ んな、何? 隼に、ペリカン?
今は既に、虫や動物は光玉から出払っているから、あれは間違いない。
体を覆う眩いオーラが証拠じゃ! そそそ、そうかそうか。》

    アラマア。   ・・・アバババア、アピ~~ヨ!

   あ、私にも分かりました。
   でも、何でヒヨコ様は焦って・・・?


《 ピンポ~~ン! 正解です。毎度お待ちどう様でした。
 皆さん、わたくしペリカン卓球便の スミレ で御座います。
 頭のティアラ素敵でしょう。ふふん。》

《 私、隼特急便の竜飛丸こと、おちょい です。》

《 いやあ、お待ちしておりました。さっそくで申し訳ございませんが、
 あの、こちらのヒヨコ様をお迎えにいらしたので御座いましょう?》

《 あら、何のことで御座います。 私、気になっておりましたが ・・・
 むふふ、このヒヨコもしかして、スミレさん。》

《 まあ、そうで御座いますね。 
 面白いことになって来ましたわね叔父様、くぷぷっ。》

《 そうですね。 ぷぷぷぷ、あ、これは失礼。
 あの皆さん、我々は何も存じ上げておりませんので、
 どうか面倒を見てあげて下さいね。》

《 そうですよ。失礼があると、
 くちばしで突付かれるかもしれませんからね。お気を付け下さい。》

《 そそそ、そんな、では私の子ではないのですね。
 てっきりスミレ様が御与え下さったものと思い、
 必死にお尻で暖めて産まれて母性を感じておりましたのに、
 はあああああああ、チュウ~~ ・・・》 ピピィ~ッ!

「 ああ、チカチュウ様ぁ~。
 お気を確かに ぃ ・・ く、くう ぅ ・・・」

《 それでは、こちらのヒヨコ様は、
 いいい、一体どちら様なので~ ・・・

 私でも、このヒヨコ様の想念が全く読めない上に、
 魂の存在を感知すら出来ないので御座います。

 これは間違いなく大神以上のレベルの力が
 働いているものと思わざるを得ません!》

《 あら~ん、でも、知~りませんので御座います。
 それから、その信造のポケットの中は、
 小型ブラックホールになっているのですよ。面白いでしょ。》

「 あああああ、あ ~ へ ぇー、コガコガコガッタ、
  ぶらぶら ブラ、ブラ ほほ ほほ ホ~~ル ・・・
   ツ ツ・・ッ ーーーー・・・ 」  ピピヨ!

《 おい、しっかりせんか~!
 まだ若いのに。い、今わしも行くでのぉ。あぐッ・・》

                  ピーヨピヨ!

《 ねえ、みんな何してるの?
 せっかくお餅の差し入れに来たのに、もう ・・・
 そうそう、早く聖域の皆さんにお餅配らなきゃ。》

               ピヨピヨピヨォーーッ!

《 あの、スミレさん。ピヨ様がお餅を食べたいそうですよ。
 ちょっと、あげてみましょう ・・・はい、どうぞ。》


  ピヨッ。ムヨムヨ、ヨムヨム、ンヨム・・・ゴクッ、
   モックリ、ムックリ、マックリチョン、
    ガッチョン、ムッチョン、モッチョンチョン!!!


ガ ~~ チ ョ ~~ ン!!  ぶおフオフオフオ ・・・

 んん~~ なかなか美味であった。

わしは ベニヒワ の ガチョン じゃ。

 漢字はこう書くのじゃ 「 紅鶸 」 ・・・知っとったか?
全長は十二センチ程。

ほれっ、額の赤班と胸の赤い羽毛がイカスであろう。
 鳴き声は 「チッチッ」 とか、「チョチョ」 じゃ。
うんうん、中々気に入ったぞい ・・・

ところで何じゃ、おぬし等の格好は ・・・
 変に飾りたておって、わしのように、
それらしくて控えめで自然な変身が望ましいのじゃ。

 ふん、言いたい事があるなら言うてみよ。》


《 鶏のヒヨコがベニヒワになったのは、地球の流儀に反しますし、
 とても自然とは言えませぬ。ねえ、叔父様。》

《 そうですともガチョウ様。
 それでは余りに唐突な成長というものです。
 どうせならダチョウとか部長とか
 アチョウとかの方が宜しかったのでは?》

《 あら、今日は冴えていますわ。
 叔父様、素敵です。 ピヨチヨピヨチヨ。》


馬鹿を言うでな~~い!!

 何がガチョウだの唐突だの何だのと。
そんなもの面白くも何ともないわい。
 さっさと、餅を配って帰りんしゃい。

わしはこの者達を起こさねばならんので忙しいのじゃ、はあ~~。》


《 は~~い、では参りましょう。叔父様。》

《 そうしましょう。スミレさん。》



《 全く、こっそりと覗きに来てみれば、
 直ぐばれてしまうとは情け無いわい。

ん~? おぬし、年は幾つになったのじゃ。
あ~、聞こえんぞ。

 そうだった神通力を失くしてしまっておったのじゃのう。
 しょうがない、わしがおぬしの年を教えて進ぜよう ・・・

ほうほう、魂の年齢は一万三千五百二十七歳であるぞ。
それに今の一族の先祖であった前世、前々世が見えるぞ。

 つまりおぬしの一族に、善悪を問わず多大な影響を与え更に、
 ここの主神が造りし世を穢す一端を担ったということじゃ。

猛省せんとな、憶えておくが良い。
はあ、まだまだ若いのう。

さて、この者達を起こす前にちょっと細工をしてと ・・
 で~は、起こすぞ。

   そ~れ、そ~れ、突っ突いて、突っ突いて、
     チッチッチッチ、チョッチョチョ~イ!》


《 ああ、いた、いたたたた!》

《 きゃっ、いやぁ~~ん。痛いですわ。》

「 あたたたた ・・・ ああ、あ~れ~?
 三十郎様、つつ、角が止まり木のようになって、小鳥が ・・・
 なな、何で ヒヨコ じゃないんでしょう?」

      チッチッチーーッ。

《 なんじゃとぉー!? ・・・
 あわわ、こりゃあ、ベニヒワじゃあ。
 成長したのか、スミレ様御得意の冗談か?
 あ、あの、お話は出来ないので御座いますか?》 

      チッチッ。

《 駄目かあ~。
 だが、無礼があってはならんぞ、
 きっと、これも試練なのじゃ。
 チカチュウ殿も話は控えた方が宜しいぞ。》 

           ハイチュウ。

「 そそ、そうだ。お餅を頂けば、きっと気持ちもちもも ・・・
 あ、落ち着くのではないかと ・・・」 ぷぷ、チッ。

《 おい、もち着いて話せ~~、ぷっ。》 プチュチュ~。

「 ・・・ はは、はい。」


  え~、そんなこんなで 「鳥」 乱 し 過 ぎた我々で御座いますが、
  気が付くと周りの街路樹の枝に、びっしりと ・・・
  例のお餅が生っているではありませんかぁ。

 何か白い桃が生っているようですし、甘い香りも相俟って、
 まるで桃源郷にいるかのような錯覚を覚えます。 
 ん~、トレビア~ン。

  三十郎様の仰せの通り、たわわに実っていて壮観であります。

 ただ、針葉樹と葉の無い落葉樹、
 又は刈り込まれたサツキやツツジの枝にまで生っているのですから、
 全く有り得ない神様の御愛情に溢れた光景であります。

間も無く、場内の大勢の人達が出てきて、
上着を木の下で広げると、
不思議なことにその上着目掛けて餅が落ちて来るではありませんか。

 大きさは普通の中華まん程ですので、
 きっと食べ応えがあるものと思います。

 皆さんは、それはもう興奮して歓声を上げながら、
 わいわい楽しそうに収穫しておりました。

ただ例の小林の遺体には、真っ先に気付いた人達が上着を掛け、
何とお餅を一つ口元に供えていました。
幽体離脱した彼女の泣き声が聞こえます。

 そして手を合わせる人達に、
 何度も 「ありがとうございます」 と感謝していました。

  供えられたお餅の気を吸い、
  更に後悔の念が膨らみますが、もう遅いのです。

 高木は虫の息ではありましたが、
 数人の自警団員と看護士に応急措置を施されました。
 そして聖域に入るよう、あの結城秀人に説得され、
 後ろめたさを引き摺りながら担架で場内に連れて行かれました。

  暫くして、全てのお餅が無くなり、
  皆様それぞれの場所に戻って行きます。


   我等一行は、陸上競技場内に戻りました。

  その途中、拳三が車椅子を押して、
  下半身不随の少年を連れて帰って来ている姿が見えました。

 心身を鍛錬している拳三とはいえ、
 かなりの距離を歩いているだろう事は、
 その疲れ切った姿を見れば一目瞭然です。

  他のメンバーは、人が多過ぎて見つけられませんでした。


木に生る餅の収穫が終わり、群衆はそれぞれの場所に戻りました。
我等異色のトリオは、陸上競技場におります。

 それで現在時刻は、午前六時十六分。

場内では剣三郎が拡声器のマイクを持って注意事項を話しています。

なるほど ・・・ 亡くなられた方の遺体の上にお供えしてとか ・・・
えっ、普通の餅ではなく、
 果物のように水分が多いので貴重な水は飲まないようにとか?・・・
  歯が無い人でも問題無く食べられるとか、へぇ~ ・・・


「 ・・・それでは皆さん、御用意は宜しいでしょうか?
  主神様に感謝の念を込めて頂きたいと思います。
   では合掌して、頂きます!」

    「「「 頂きます!!! 」」」


  それにしても、こんな御褒美があろうとは、
  思ってもみなかったのでしょう。
  皆さんの喜びようは、その表情から伺えます。

  余程おいしいのか、どよめきと歓声が止みません。
  ただ ・・・ この異常な喜びようはどうしてでしょう?

《 ははは、それはそうじゃろうて ・・・

何故なら、あれを食べると霊力と体力が上がり、
加えて体の疲れや痛みが取れ、
ちょっとした傷や病気等は治ってしまうのじゃからのう。
それは幽体離脱した霊も同じことなのじゃ。

ほれ、さっきの焼け死んでしまった女性は、
餅の「 土の気 」を吸い、
火傷の痛みが和らぎ、涙を流して喜んでおる。
神の大愛が身に沁みたであろう。》

  仙豆(せんず)みたいだな。 あ、仙豆ってドラゴンボールの ・・・

    チュッチュッチュウ~。

《 ん? 餅が食べたいじゃと・・・こりゃあ忘れておったわい!》

「 私達の分もあるので御座いますか?」

《 あるぞ~~。》
                  
  すると、何故か三十郎様の顎鬚の先から、
  何か白い水滴のような物が次第に大きくなり、

  まあるいお餅が四つ生りました。
  え~っ、こんな風に生るんですねえ。

《 ほほほ~、どうじゃ、これはわしの演出じゃ。
 それぞれの大きさに合わせておいたぞ。
 あっ、まずはベニヒワ様に、
 御一つどうぞお召し上がり下さいませ。》

   三十郎様は、一番小さな餅を左の掌に乗せて、
   ベニヒワ様に献上されました。

  すると、ベニヒワ様は一口で啄(つい)ばまれ ・・・
  ムヨムヨゴックン、 と召し上がられました。

 こんなこと言うのも何ですが、
 あまりに可愛らしいので大ファンになってしまいました。

  だって、あ~ほら、今も大変御喜びで ・・・
  チッチッ と頭上を飛び周っておられます。

きっとスミレ様か、おちょい様のペットのような存在なのでしょうね。
あれ? ベニヒワ様は急に上昇されて ・・ 急降下へっ?

     ・・・グサットナって僕の額に、うあっ!

「 いいい、いったぁ~い!」 なんてことだ。違ったんだ。

《 戯け!》 チュ~イ、チュウイ。

「 申し訳ございません。
 ベニヒワ様、御無礼をどうかお許し下さい。」

   ききき、きっと大変な神様なのだ。
   あわわわ、凄く私を睨んでおられる。

  すると、チッチッ、チョチョ と
  さえずりながら、上空に飛んで行かれました。

   あれ~?

「 どうされたのでしょう? 
 おちょい様とスミレ様の所に行かれたのでしょうか?」

               チュウ?

《 さあな、我等が干渉することでもなかろう。
 我等はここに居なければならん。
 何せ、もう直七時になるでの。
 いいか、気を引き締めよ。

 あ、そうじゃ忘れとった。も、餅を食べなさい。
 おい、うさぞう。お主がもぎなさい。》

「 はは、そうで御座いました。では、失礼致します。 」

  私は、三十郎様の顎鬚から餅を三個もぎ取ると、
  三十郎様とチカチュウ様に御渡ししました。

《 おお、ありがとう。では頂こうかな・・・・頂きます。》 チュ~ウ。

「 頂きます。」

   私、この姿になってからは、
   夢でダチョウの丸焼きを食べて以来です。

  あの時は不思議と満腹感がありましたが、この餅はどうでしょう。

   ん~、匂いは甘い感じです。
 
  では、一口サイズの餅を ・・ んごんぐ ・・・
  あれ、中に ずんだ が入ってる。

   それにしても、仄かな甘みとジュシーな食感がたまりません。
   ほんと、柔らかくて不思議と直ぐ溶けて無くなる感じです。

《 おお、おぬしは(ずんだ)か。
 わしは(つぶあん)じゃ、好きだからな。

 むふふふ、おいしいのう。
 チカ殿は(チーズ)じゃな。しかも カマンベール。

 味はそれぞれの好みに合わせてあるのじゃ、有り難いじゃろ。》

  オイチュウ~。

「 ほんと有り難いです。
 小さくても満腹になって気力倍増という感じで御座います。」

《 じゃろう ・・・ あ、あまり呑気にはしておれんぞ。今何時じゃ。》

「 現在時刻は ・・・ 午前六時四十六分で御座います ・・・・
 今頃、正神軍司令部はどのような状況なのでしょうか?」

《 ふ、気になるであろう。だが心配無い。
 叡智晶があれば司令部の生中継の映像が送信されてくるのじゃ。
 良いか、指輪のままでも空中に映像を照射出来るから見ておれ。》

   すると、左手の人差し指を前に突き出されると、
   映画やテレビ等で良く見掛ける映像が、目の前に広がりました。

  言わずもがな、驚愕の神学力であります。
  人間の科学では未熟な段階でしかありませんが、この映像は完璧です。

 その映し出された大霊宮の作戦司令部は、
 恐ろしい程の緊迫感に溢れ、私にまでその気迫が伝わって来ます。

  大黒天様が議長席前の大スクリーンを見ながら、
  世界中の 「神の光玉」、
  その他の重要と思われる箇所の天使や神々に対し、
  様々な指示をされています。

   例の光玉内を監視し裁く、天使達の準備も万端のようです。

  その光玉上空に無数に輝く天使達は皆、美男美女です。
  その他の神々にしてもそうですが、

   汚れのない綺麗な魂の容姿は美しくて当然なのでしょう。

  ただ、宇宙全域の宇宙種族は異種異型であり、
  人型なのは 4 % 位に過ぎないそうです。

   つまり、美的感覚は種族によって違ってくるでしょうが ・・・

  人でも、魂が産まれた時点で醜いなど有り得ません。
  何しろ、四十八神(よとやしん)のどなたかの
  御神魂が入っているのですから ・・・

 現代の殆どの人が、既に何十回、何百回と、
 生まれ変わり死に変わりをしているか分かりません。

その繰り返しで、人類はとてつもない罪穢を積み重ね、
更に地球表層上を汚染し今日に至っています。

大概の人は、地獄の最下層まで堕ちているようです。
全人類は先祖も含め、その責任を今取らねばならないのです。

 


 

(11) Chopin: Nocturne No. 18 In E, Op. 62 No. 2 - YouTube

ピアノ : マウリツィオ・ポリーニ

 

 

 


     只今の時間、六時五十分。

   こちらの競技場では、
   剣三郎が正座をさせ開戦前の心構えを伝えています。


「 この祈りの聖域にお集まりの同志同胞の皆様、
 私は土門剣三郎と申します。

この祈りの聖域の聖者補佐役を頂いた三人の内の一人で御座います。
いよいよ神裁きの三日間が始まろうとしています。

聖者黒須様からのお言葉では、
七時になると夢想だにしない恐ろしい事が起こるそうで御座います。
その後も光玉の周りに、邪念からなる化け物が物質化して出現し、
神の光玉周辺の街を火と血の海にするとの事です。

しかし、この光玉内は偉大なる天照主日大神様が守護されておりますから、
決して心を乱さず、祈りに集中するようお願いしたいとのことで御座います。

その事を胆に銘じ、御先祖様とも心を一つに、断固遂行の想いで
この三日間を乗り越えて行きたいと思いますので、宜しくお願い致します。

では時間まで黙想して精神統一致しましょう ・・・・ 黙想。」


  人々の想念界は様々です。
  恐怖や不安感を、静めよう宥めようと努力しています。

 正神軍司令部の巨大スクリーンには、
 各国の 「神の光玉」 が、何十にも分割されて映し出されています。

  慌てて時間に遅れまいと、
  急いで光玉に向かっている人の姿が見えます。

 東京の聖域にも、ゼエゼエ言いながら入って来ている人が、
 何人も見受けられます。


「祈りの聖域」 に入れなくても光玉内に入れれば、
遅れたことにはならないので、
急いでほしいものですが、とても間に合わない人が余りにも多い。

 都市部に向かわなければならないのは、実際厳しい状況です。

東京で言えば、中心部に近付くに従い道路は塞がり、
途中からは徒歩の群衆が数珠繋がりになっています。

 電車はパニックになった人が押し寄せ、収拾が付かないようです。

焦りと不安が増幅され、冷静ではいられず、
単に助かりたい気持ちが先走る。

 更に群集心理が作用して、
 聖者が言った事を思い返す余裕すらないようです。

案の定、光玉に到着したにも係わらず、
見えない光の壁に阻まれ入ることが出来ない者が多数います。

 泣いて空中を叩く醜い魂の人間を、
 不思議そうに見ながらすんなり入って行く者もいます。

入れた者は、当然心から神に感謝しています。
また、遅くなった事をお詫びしています。

 空を見上げれば日の出の時間を過ぎた今でも、
  厚い雲が太陽光線を遮り、
   深紅のオーロラ、赤い三日月、
    第二の太陽 ベテルギウス、
     暗黒惑星二ビル、
      更に、蒼く輝くクラリオンはもう見えません。


      「 闇 ・ 夜 ・ 影 」 ・・・


   これらに悪いイメージを持たれる方が居られます。

光と相反する物では御座いますが、「悪」 ではありません。
単に光が当たった反対側が、暗い影となるだけです。

強いて言えば 「 黒い光 」です。その闇に包まれると安らぎます。
生命にとって必要不可欠な物であります。  

 更に重要な事に、夜というのは睡眠に繋がります。

人の脳の中には、
松果体 (魂が宿る場所の一つ) から分泌される
メラトニン (夜のホルモン)という物質があります。

このホルモンは精神をリラックスさせ、
体温を下げて眠りを誘う働きがあります。

 睡眠とは、何か不思議な世界を連想させます。

実際、睡眠中にアカシックレコードと繋がり、
夢に現れる場合があるといいます。

 当然、魂の宿る場所の一つであり、
 神霊界、四十八神に霊波線で繋がる部分であります。

また、寝ていても自分に意識が無くても、
自律神経が作用して体内を自動制御します。

 人体は言い換えれば、機械ではない
 「神の完全なる生体ロボット」 ではないでしょうか?

それを操縦する為、魂が宿っているのです。
それで老化して使えなくなれば、
体を抜け出て幽界へ帰るという訳です。

 ただし、地球表層上に存在する幽界は、
 現在縮小し、いずれ消失します。

  移転先が火星と木星の内部世界となる訳です。

 言い換えれば、
 進化が許されない 「猿の惑星」 ではないでしょうか ・・・

物質界あるいは地球の表層上という、
宇宙共通惑星 「地球」 は魂のいい修行の場なのです。

 話がそれましたが、
 光がより強く輝く為には、漆黒の闇が必要なのです。

大芸術家の主神は、己の演出を際立たせる為に、
全次元・全宇宙の隅々まで気配りをなされているのです。

 故に、醜悪な物は存在しません。

加えて、物質の形を認識する為にも黒い闇は必要なのです。

全て真っ白な物質しかない場合では、影が無いと自分の位置すら判別出来ず、
自分自身も真っ白。 他の色も生み出す事が出来ません。

 宇宙全て、「光と影」「白と黒」 が原点であると思います。
 これは色霊に属します。

  そして、それ以前に数霊(かずたま)が存在致します。

 数学者が数の謎、特に素数の謎を解明すれば、
 宇宙の謎が解けると豪語しているのは、
 数霊の力の偉大さを良く理解しているからだと思います。


つまり、「悪」 という存在は 「闇・夜・影」 とは別個の物なのです。

主神が人に与えた欲心から、邪や悪に変化していったという事です。
その邪悪なる欲望に惑わされ、
はたまた生きるのに疲れ果て怠けの罪を積む。

 自暴自棄、惰性に任せて邪道を流されるまま! 
 哀れな人生の先は地獄だ!

  主神の領域に近づきたい!
  もっと向上したい! 更に清楚で美しくなりたい!
  大芸術家、大科学者になりたい!

   そんな正欲、聖欲、大欲をもって神理の道を歩むべきが、
   本来の人生のあり方なのですが、

    皆様は如何でしょう?



 現在、叡智晶による空中のスクリーンには、
 世界のどの光玉の場面を見ても、
 緊張感と恐怖感、不安感、そして期待感に溢れています。

但し光玉外では、今から何が起こるのか理由も知らず、
起きている現象を理解出来ない人が、少なからずいることは悲しい現実です。

 それに知っておきながら諦める者、
 信じない者が余りに多いことも認めたくない現実です。

  しかし、これだけは断言できます。

   我々、神の子は創造主が創造した、
   この大宇宙でしか生きられないのです。

    そのことを肝に銘じてください。

 




 いよいよ開戦の時を迎えました。

世にも恐ろしい正邪の戦いの最終決戦が始まろうとしています。

これから先は今まで以上に、凄まじい正邪の攻防が繰り広げられます。
 おぞましい怪物も、邪神と人間達の邪念より生み出されてしまいます。

  その醜さから目を背けないで下さい。



《 序章 》 〈 第二十一話 〉 正気の狂気 

2019年02月02日 12時00分00秒 | 小説


       ( 推奨BGM )

 ウィアー・ゴナ・グルーヴ / レッド・ツェッペリン



   

           二〇 X X 年十二月十九日(金) 0:35
          カウントダウン 78:25

 


       ここは、東京の何処かの通り ・・・


     分かっているのは、神の光玉内であること ・・・
     どの通りも車の駐車場化しています。

  その車の間を、自転車やバイクがすり抜けていますが、
  それも疎らです・・・

ただ、恐らく暴走族の類と思われる何台かが、
ズ太いエンジンの爆音を響かせ、
時にクラクションを鳴らし時に喚き叫び合い、のろのろ走らせています。

 あの独特の重低音からして、大排気量のハーレーと思われます。

  我等は、こいつ等から離れた後方上空から眺めています。

   暗いので近付かないと車種の判別は出来ません。
   私が分かる範囲は、四台のバイクの先頭は二人乗りをしているので、
   五人の暴走野郎ということだけです。

  このウサギスーツの霊眼は、霊的なものには敏感ですが、
  物質には鈍く人間並み。

    暗がりや遠くは良く分かりません。

   先程から、こいつ等の後を付けているのは、
   スミレ様の指令という事でしょうか?

                             
《 その通り。よいか奴等は刀を背負っている。
 鞘の中の刃には、ベットリと血糊(ちのり)が付いておる。
 つまりは、既に何人もの血を吸っているということじゃ。
 指令はやつ等の監視じゃよ。》 血ハ、メグラスモノデスワヨ。

「 殺人鬼ですね。
 自暴自棄 ・・・ というより、
 千載一遇の殺人ゲームを楽しもうということでしょうか?」

《 まあ、そんなところだろう。
 だが、もう既に日本中で似たような事件が何十件も起きておる。
 中には、レイプに殺人をやらかす連中もいる。

何しろ道路が塞がれ、
少ない警察官や自衛官の中から「神の光玉」に入っている者もいる。

 ということになれば、言わば無法地帯と化した状態じゃ。

純日本人だけなら、こう乱れたりはしないが、
在日外国人や混血の者、意志の弱い日本人などは例外じゃ。
当然、外国の状況は最悪となっておる。

 そいつらをさて置きバイク野郎を監視する理由とは恐らく、
 「 奴 」 が関係しているからじゃろう。》

「 その奴とは、一体何者で御座いますか?」

《 ほれ、バイクの先頭の人間に憑依しておる幾多の邪霊、
 その中の一人。奴はアンドラスタ軍の 「バグソー中将」。

 こいつはかなりの曲者で知恵も働く。
 他の四人の憑依霊も皆バグソーの手下じゃ。
 こいつが更に何かを企んでいるということじゃ。》 

       チュウチュウチュウ♪  コロコロッ、クルクルッ♪


  三十郎様は、タブレット らしき物?
  を御覧になりながら仰せになりました。

  これは、神議り場でミカエル様の議席上にあったものと同じだ。


《 あ、そうそう、その通り。
 これには司令部から様々な最新情報が送信されて来る便利な物で、
 「 叡 智 晶(えいちしょう) 」 という物じゃ。

  邪神軍の組織形態も世界の分布も然り。
  アカシックレコードの情報も閲覧可能じゃ。

 それに、ほれっ小さく形を変えて指輪にする事も可能じゃ ・・・

 それでな、立体地図モードでは、
 奴等は現在、自由通りを北に向かっておる。

  おお、止まるようじゃ ・・・ ここは、世田谷区の奥沢二丁目か。

  駒沢公園にはかなり近いのう。》


   三十郎様は念波で操作されているのか、
   ただ立体画面を見つめておられるだけです。

   しかし凄い映像で御座います。

    奴等がバイクを止めた場所は、三階建てのアパートの前だ。

   バイクは街灯に照らされ ・・・

   うわぁ、これは相当ドレスアップと、
   改造されているハーレーのローライダーだ。

    深紅のタンクにエアーブラシで描かれた、
    天使の胸にナイフが刺さって ・・・ 

    ・・・ 悪趣味だな。

    煌びやかなエンジン周りは、
    殆どクロームメッキが施されている。

    幾らつぎ込んだのだろう? それとも盗品か?

   四台のバイクは皆、個性に溢れている ・・・
   今は、心臓の鼓動は止まり、不気味に息を潜めている。

    一番前方のバイクにタンデム乗りしていたのは女だ。
    夫婦なのか愛人か? 何れもヘルメットは被っていない。

   五人の服装はアウトロー的で、
   人相は悪い上に目が血走っている。
   体全体からは、きな臭い匂いがプンプンして来る。

    血生臭い遊びを満喫してきた後なのだから当然だ。
    五人は一階の一室に、大声で話ながら入っていった。

   私達は裏に周り、窓際の外壁の中から
   目立たないように室内を伺った。


《 いいか、あの一番年長の奴は、高木京次郎、六十一才。

 一応このグループのリーダー格だ。仕事は出来るし金もある。
 柳生新陰流の使い手だが、
 こいつの目的は真剣を振り回すこと、それだけじゃ。

刀の魔力に惑わされ、
剣の極意を極めよう等とは露程も思ってはおらん。

 何時かは、人間で試し斬りをするのが夢だったが、
 その夢が叶いさぞかし満足であろうな。》 

      ヤバンですわ~~。コロコロッ。

「 狂人もいいところですね。」

《 うむ、そうだな。
 え~次は黒い皮の上下の奴だが・・・ 志田正人、四十三才。

こいつも、高木と同じ道場の門下生で、
腕はこいつの方が数段上じゃ。

 ただ、負けず嫌いで、汚い手段を使いのし上がるのが趣味じゃ。
 剣でも仕事でもな。

当然、この二人は道場の鼻つまみ者じゃ。                       
高木と行動を共にするのは、単にいい金蔓(かねづる)だからに他ならない。

 後の三人は志田のバイク仲間で、剣の心得は無い。

こいつ等の刀は、刀剣収集家の家を襲って奪った物で、
みな業物ばかりじゃ、勿体無いわい。

 ふう・・・ 次は太った大柄の男、木下祐二、三十五才。
 隣の赤い革ジャンを着た細身の男は、新井幸夫、三十才。
 女は、小林由利恵、二十八才。

それと、先程アンドラスタ軍のバグソーの話をしたが、
バグソーが憑依しておるのは、この志田じゃ。

 そして、あの女はこいつの遊び相手に過ぎない。
 今から、宴会をやって武勇伝を酒の肴に
 盛り上がろうという趣向じゃろう。
 全く、馬鹿馬鹿しい。》  ヤレヤレデチュウ。コロチュウチュウ。

   志田は影のリーダーということだろう。    
   どうりで他の四人より、胎の中も魂も腐っている。
   しかも、底知れぬ恐怖を感じます。

  奴の目が鈍く光って、笑う度にその目の奥の、
  バグソー らしき ドス黒い霊体から、
  指令が部下達に飛んでいます。
  鞭のような鋭い波動の光が見えるのです。

   五人の守護霊達は、頭の脇でうずくまったままで、
   まるで生気が感じられず、
   金縛りにでも掛かっているようにしか見えません。

  その守護霊をよそに五人共、奥の十畳の和室に入ると、
  その服装からは不似合いなリュックと刀を降ろした。
                              
   皆、興奮しながらリュックの中を開けて、
   酒の類と何かの料理が入ったタッパや、
   ハム丸ごとに果物その他をテーブルの上に無造作に並べた。

  どうせ金持ちの家に押し入り、住人を殺して冷蔵庫の中身を中心に、
  目に付いた食い物をリュックに詰めたという事だろう。

   志田が自分の手下に、
   グラスや皿等の食器を持って来るように指示を出している。


         ( 推奨BGM )

   貴方を愛しつづけて  レッド・ツェッペリン



     直に宴会の準備が出来た。

  先ずはビールで乾杯をし、貪るように食べて飲み始めた。
  志田は無作法な姿勢で、
  動物のようにローストビーフに食らい付き、ワインを流し込む。

 同じ獣でも、死肉を食べる禿鷹やジャッカルやハイエナの方が、
 神の掟の範疇での殺しであり食事である。

  故に立派と言える。
  例えライオンその他の獲物の横取りでも、卑怯では無い。

   ある意味天晴れである。

  が、こいつ等は見た目も心も魂も獣以下の腐った肉の塊である。
  口に物が入ったまま、醜い言葉でしゃべりまくっている。

 もはや、理性も知性も見受けられない。
 良心や人間性は捨て去ったようだ。
                 
 おふざけで、獣人高木は大脇差を居合いで抜刀し、
 テーブルの上のボンレスハムを一刀両断した。

  ただ下の皿まで割った上によろけて転び、
  その弾みで血刀を放り投げた切っ先が、  
  壁に貼られた金髪美女の胸のど真ん中に突き刺さり、
  血糊が僅かに滴り落ちた。

    バグソーの演出だろうか?

   拍手喝采を浴びた高木は上機嫌である。そして ・・・

「 俺は今度、兜割りに挑戦するぜェ。俺ならやれる。」 と豪語した。

  馬鹿騒ぎは一時間以上続き、皆出来上がっていた。
  だが一人だけ青褪めた顔の奴がいる ・・・ 新井だ。
  こいつは酒が弱いという訳ではなさそうだ。

 ただ、ボーッ と 回想している ・・・ 噛み締める様に ・・・


    脳裏を ・・・ 覗いてみよう。


 ・・・ 必死で命乞いをする女性の顔が見える。
 年は三十位だろう ・・・

次はうつ伏せに抑えられたその女性の首に、
刃先が食い込み血しぶきが飛んだ ・・・ 
        
  クズめ。

次のシーンは、志田がこの女性の父親と思しき男と剣を交えている。
顔面蒼白の母親の首には、
高木のバタフライナイフの刃先が食い込んでいる。

 高木の高笑いと母親の悲鳴が重なった瞬間、
 父親の左腕と刀は ボトリと畳に落ちた。

  勝負でもないのに志田は、

「 弱っちい師範だぜぇ!」 と言い放った。

  師範とは ・・・ だから卑怯な手を使ったのだ。

   まだ次がある。
                    
 その師範を、血が滲んだ畳に正座をさせ、
 志田と木下が両腕を押さえている。
   
 新井は、師範の頭を掴んで下を向かせて固定している。
 母親を抑える役は小林に代わっている。

  刀の棟で肩をトントン叩きながら、高木が醜い口を開いた。

「 おい、俺様が介錯してやるんだから感謝しろよな。
 それに、何かと説教垂れたことは水に流してやる。

  これも感謝しな。

 最期に、家族仲良く天国とやらに行かせてやるんだから、
 それも感謝しないとな。

  ええ、有り難いだろう クソじじぃ!
  首の皮一枚で斬ってやるぜぇ!! 」


  と言って振り下ろした刀は、頚椎の骨で ゴッ、 と止まった。

頭に来た高木は右手を棟に添えて グッ と力を込め、首を切り落とした。
頭を押さえていた新井は勢い余って後ろに尻餅を着いた。

そこに、転がった師範の首が開いた足の間で止まり、新井の顔を睨んだ。
そして血が滴る唇を動かし、何かを言っているようだ。

   
・・・ 殺 してやる ・・・ 殺 して ・ ・ や る ・・ ・ ぐう


 
  この時、新井の血は恐怖で凍りついたようだ。

    その感覚が伝わる。

      そして心臓の鼓動が異常に早くなった。


  この男に、師範の搾り出す声は聞こえたのだろうか?
  実際、微かに発音したようだ。
  それに、凄まじい怨念の念波が伝わる。

 憐れ、師範の妻は志田に殺され、家には火を放たれた ・・・

  言葉が出ない、獣以下の狂人である。

 その後も豪邸の何件かに押し入り、
 レイプしては殺し、略奪の後に火を放った。

  その火を眺めながら皆奇声を上げている。
  近所の者が逃げて行くが、それすら楽しげに見ている。

「 お~い、ねえちゃん、こっち来いよ。
    寒いから焚き火に当たってけよ。
       ババアは来んじゃねえぞ~!」
    
   こいつは木下だ。

  いずれにしても殺された人達は、
  祈りの輪に加わるつもりだったのかは定かではありませんが、
  迷わずに想いを一つにして早く聖域に行けば良かったのです。

   チ~カ。なるほどそういう事だったか。

 無表情なこの男の感情、結局どうなのか? ・・・

余りの強烈な体験で、単に放心状態になっているだけのようだ。
ただ、後悔の念も快楽も感じてはいない。

全て惰性であり、極度の不感症なのだろう。


 ・・・ 俺は言われた事をしただけで、自分に責任はない。
  こいつ等が悪い。心中する気はないが、まあ成る様に成れ ・・・


   という思念が伝わって来る。

  つまり自分の意志が弱いが故に、
  狂人にも邪霊にも操られ易いということだ。

「 相応の理 」 「 因果応報 」 「 類は友を呼ぶ 」 「 同じ穴のムジナ」、
 魂の曇りが同じだとこうなる。 
 性格や善徳、そして能力が違うだけである。

  何故、こんなことが起きたのか?・・・

 前世で、全く逆の立場で似たような事件が起こったと、
 考えて差し支えないでしょう。

前世で無残に殺された霊が、
恨んで憑依し復讐の機会を狙っていたのだ。

 更には邪霊の幹部クラスに目を付けられ手下となり、
 果て無く扱き使われ現在に至ったということです。

  人間は過去世の事は否定し考慮しない。
  根本の原因はそこにあるのですが ・・・

 故に裁判では様々な矛盾、冤罪が生まれ、
 そこから更に恨みと悪想念が膨らみ、
 社会全体が混迷混沌の度を増す事になる。

   「 裁きの権限 」 ・・・ それは神の特権なのです。 

  その正確、公平、平等な裁きを支えているのは、
  アカシック・レコードなのです。

 人の死後、走馬灯のように映し出される当人の過去の記録映像は、
 グウの音も出ない罪状を突きつけられます。

その個人の過去世からの正確な記録は、
個人のアカシックレコードへ ・・・

 個人個人の集約した記録と、
 世界の歴史のあらゆる記録は、地球のアカシックレコードへ ・・・

その地球のアカシックレコードは、
地球内部世界、アガルタの中心に位置する、シャンバラにあります。
地球のアカシックレコードは、超巨大クリスタルなのです。

  地球のアカシックレコードの管理者は、大天使ガブリエルです。

 この辺の情報は、御自分で検証してください。

全ては自己責任ですから、何でも鵜呑みにしたり、
依頼と依存が強い方は、人からも神々からも信用されません。

 そこを踏まえて、何事にもあらゆる角度から、
 検証する習慣を付けて頂きたいと思います。


さて、馬鹿どもの狂気染みた宴会は何時まで続くのだろう?

志田の奴が何やら静かだ。これは気になる。
きっと良からぬ指令をバグソーが出しているに違いない。

 ボソボソと独り言を言っていて不気味だ。
 ははあ、そういうことか ・・・ 少々お待ち下さい。

  直に、こいつの口が語るでしょう。
  ほら、奴の目が鈍く光り、不気味な笑みを浮かべてこう言った。

「 あのさぁ、高木さんに、みんな ・・・
 もうそろそろお開きにしようぜ。

 面白い事考え付いたんだよなあ。
 ただ、これはかなりリスクを伴うんだが、
 歯応えの無い連中ばかり襲っても面白くねぇし ・・
 ヒヒ、高木さん ・・・」

  志田は高木の顔をニヤニヤ見つめた。

「 おいおい勿体ぶるなよ。
 どうせろくでもないが~、
 快楽を極めるアイデアが閃いたんだろ、え~。」

「 こりゃあ適いませんねえ高木さん。
 いや~何ね、ちょっと肝試し的な、
 スズメバチの巣を突付く様な、ヒヒヒ・・・

 つまり俺達のような、ならず者には、
 危険な夜遊びをしようかと思いましてねェ。イヒヒ。」

   まだ言わないとは・・・嫌な奴だ。

「 もう、まさと ったら~、言っちゃいなよぉ。
 これ以上危険な遊びでも何でもこの際いいんじゃな~い。
 ねえ、みんなぁ。ふえ~~。」

  生意気に、スコッチのバランタインのボトルを持ちながら言った。

   少しは味わえ ・・・

 この女は、かなり出来上がっている。
 小林のはしたない服装。
 何だそのミニスカは膝上何十センチだ。

   パンツはどうした ・・・?

  それでバカ丸出しの女の股間に手を這わせ、
  ニヤニヤと奴の目が鈍く光った。

「 ・・・ 祈りの聖域を襲うんだ。
 ヒヒ、ここから近いのは駒沢公園だ。

 ククッ、何人殺せるか?
 というゲームをおっぱじめようという訳で~す!
 ほ~う! ウッヒヒッ。」  
 
   ということです。 馬鹿め ・・・
   剣三郎や拳三達がいる限り ・・・ んん?

  いや、拳三達は出払っているかもしれない。
  しかも、元気な人ほど誰かを救いに走り回っている筈だ。

  その虚を突こうというバグソーの作戦か? これは不味いな。

「 そうか、それは確かに面白いゲームだが ・・・
 奴等、金縛りの術が使えるんだろ。
 つまりは、綿密な作戦が必要ってことになるな。」

「 流石は高木さんだ。グヒッ、ウィ~ップ ・・・
 その作戦をこれから考えようじゃないですか。

万が一も考慮に入れて、
いくつも用意しなきゃいけないでしょうねェ ・・・

 それに、おりゃあ思うんだが、
 あいつ等は聖者面して地球を乗っ取ろうとしている悪党だぜ。

これは人間側から見れば真面目に正論だと思う。

 それに俺達みたいな本物の悪党からして見れば、
 侵略者で最大の敵だぜ。

この醜い人間が作った狂気の世界で、
俺達は他人から見れば狂人だが、                 
狂った世界で狂人なのは、むしろ普通で正気と言える ・・・
そおだろ~、だから人間の代表として、
侵略者から地球を守ってやろうぜ。

 そうすりゃあ、狂人で~も英雄だ~、
  殺人の罪も~無罪勝~お訴ぉ~っ♪
 大統領の恩赦も夢じゃな~い♪ 
  取引だぜェ~え、ジャ~ック~♪ クッククックゥ。

そうだ、ほら、アルマゲドンて映画もそうだったろ。
狂人集団が地球を救い英雄となる。
おりゃあ感動したねェ。

 だから、俺達も英雄になってやろうぜ、ヒヒッ。
 狂気の世界を守る為に立ち上がるのだ、我が同志達よ!」   

  右手を挙げて、
  立ち上がって言うほどの事か、くだらん!
  馬鹿共が拍手をするな。

   タコデチュウ! 戯けめ!

「 さっすが志田さんだぜェ。
 俺も重い尻をフリフリ立ち上がるのだ ~~ ビヨ~ン!」

   木下がその場で飛び上がり、
   着地に失敗して後ろの壁に激突した。

その衝撃で壁に突き刺さっていた例の刀が、
紙切れ製の金髪美女の胸から離れて切先(きっさき)が畳にドスッ!

 見事に木下の指と指の間に ・・・

「 動 く な っ!」 志田が叫んだ。

   バグソー中将は絶好調のようである。

    顔面蒼白の木下。

   大きく見開いた目線を、
   右手に見える刀の上から下になぞって行く ・・・

  息を止め刃先に触れないよう指を ・・・ 静かに抜いた。

  その指を眺め回し一言、

「 あっぶねぇ~~っ!」

   と言った木下を尻目に、皆は腹を抱えて笑った。    
   何でも引き攣った顔が最高だとか ・・・

 


  二〇 X X 年十二月十九日(金) 1:45 
         カウントダウン 77:15


  それからというもの、邪神軍アンドラスタ司令直属小隊、
  バグソー隊長による侵略会議は一時間に亘って執り行われ、
  その作戦遂行の為の準備と演習は、更に一時間を要するに至った。

 あ、いや、そんな大袈裟なものでは御座いません。

ただ実際、志田は高木に気を使いながらである事は言うまでも無い。
ついでに、志田は高木に対して尊敬の念の欠片も無いことは言うまでも無い。
とことん利用して、価値が無くなれば捨てようという腹である。

 当然、高木も同じ腹積もりである。

  さて悪党五人臭 ・・・ 変換ミス? 

 いや、こっちの衆だけど別にいいか、お似合いだから。
 狂人のヒーロー気取っているので、何か名前付けてやろうかな。

( 狂人変隊 ゴニンジャー!) なんて ・・・五人とも誤認とか、プッ。


「 どんなもので御座いましょう、三十郎様にチカチュウ様。」

《 くだらん、非っ常にくだらん! おまけで誤十点じゃ。》 

                  へ、誤って?  

       コロコロチュウチュウ♪ コロチュウチュウ♪ 

《 さっきから何がコロコロなのだ、チュウベエ殿。》

  オシエテアゲナイ。
  ・・・ あのお、私のお腹に何かあるのでは?・・・フフ。

《 まあ良いわ、放っておけ。》 フフ~ンダ。

  「 ・・・はは。」

 


   十二月十九日(金) 現在、午前四時四十九分

 ここは、「神の光玉」 内、「祈りの聖域」 十八箇所の内の一つ、
       駒沢公園内、陸上競技場。

 

  この祈りの聖域は既に人で埋め尽くされていた。
  他の駒沢公園、二箇所も同様である。

いずれもグランドの中だけで、二階のスタンドには入れてはいないようだ。                          
同じ神の光玉の中心、皇居上空の聖者の方角に跪いて祈る訳ですし、
同じ座面であることが重要なのだろう。

 人数は現時点で、他の二箇所を含め 十一万二千八百五十二名。

「 憑 依 霊 」   五十八万五千百二十七名。
「 その他の邪霊 」 七百二十六万四千二百九十九名。

    とにかくウジャウジャいます。

その人数は、世界中から正神軍司令部に随時報告がなされております。
その報告内容を、三十郎様は叡智晶で閲覧し確認しているのであります。

  ところで、このウサギの霊眼で見渡せば、
  恐らく七、八割の人は、
  七時の開戦を過ぎても祈り続ける事が出来るだろう。

   残りは嫌々感丸出しの人達である。

  悪霊バグソーの手下は、非常に分かり難いのですが、
  聖域の神気の影響でもがき苦しんでいるようです。

 その憑依した人間の体内で、呻き声を上げながらアガク、
 微かな言霊と動きで存在を確認出来ます。

他の邪霊、大きさはまちまちですが、小さく縮こまっています。
それで、魂が醜い人間の周りが落ち着くらしく、
皆で大勢集まりびっしりへばり付いています。

 ここで明暗ハッキリ分かれました。

  つまり、暗く醜い魂目掛けて 「流星火矢」 を放って下さい、
  と示しているようなものです。

   * 「流星火矢」

   「神の光玉」 内に、相応しくない汚れた魂を持つ者達を、
    光玉外に追放する為の措置。
    裁きの天使が上空から放たれる火矢のこと ・・・


   ところで奴等、ゴニンジャーはどうしたのか?
   もう居ます。 

  すぐそこに ・・・ 新井幸夫が一人で、南西側の端に座っている。
  こいつはさしあたり ・・・ 青ニンジャーでしょうかネェ。

 何故って聖域の神気が相当きついのと、
 極度の緊張で顔が青褪め苦しそうだからです。

  そこから凡そ12、3 メーター離れた場所に志田がいるが、
  やはり苦しくてうつむいている。
  こいつは癖が強く捻くれているので、黄ニンジャーです。
  たぶんカレーも好きでしょう。

   こちらの小隊は黄色が隊長になります。

  北西側には高木と木下がいます。
  二人の距離は10メーター以上あるでしょう。

 高木は血を好むので赤ニンジャー。
 垢でも構いませんが、お好きな方でお呼び下さい。

  木下は順番からいってミドニンジャーです。
  ウシガエルみたいに動きも鈍いので丁度いいです。

 その二箇所は、
 東側中央にいる剣三郎からは一番離れた位置になります。

  つまり、やましい事をする為、
  暗い隅っこに居ないと都合が悪いのです。

 面が割れ、犯人が特定される事を恐れてのことです。
 それさえ気を付ければ金縛りは掛けられないと踏んだのです。

問題なのは小林です。
この女は桃ニンジャーでいいでしょうが、
こいつは競技場にはおりません。

 競技場の東側に面した自由通りの道路脇にいます。
 それで、あの恐ろしい作戦を決行しようというのだ。

狂人が考える事、バグソー中将が裏で仕切っているだけあって、
とんでもないテロ作戦なのである。

 それはともかく、気になるのは狂人四人の周りの人達である。

  殆どの魂は四人ほどではないが、相当醜く汚れている。
  恐らく、憑依霊や周りの邪霊が協力し合って、
  狂人の側にくっ付けたということだろう。

 当然、バグソー中将の指令だ。

  魂の美しい人は守護霊の霊力が強いので、
  不幸には巻き込まれないのである。
  更には、守護神に守護天使からも強力な後押しを頂けるのである。 

 ただし、「 人間の99%の努力に対し、神は1%報いる!」

  この原理は、全ての人間に平等に働きますので、肝に銘じてください。


《 よいか、うさぞう。
 バグソーは決死の覚悟でこの作戦に挑んでいる。

奴等にすれば、無謀この上ないことだからじゃ。
この聖域以外であれば、まだ自由は利くが、
ここには魂が綺麗な者が多い為に守護霊の力も強い。

それに全体の団結力も増した為、邪霊が行動しにくい領域になった。
ただ、邪神軍にしてみれば開戦前に、一兵でも兵力を削いでおきたい。

 その命令を断固遂行する。
 でなければ自分の存在意義が無くなる。
 失敗の後は激痛を伴う罰が待っているだけじゃしな。

 夢も希望も無いのが邪霊界ということじゃ。ああ、空しいのお。》

   アア、ヤダヤダ。 ころころ、くるくる、くるりんりん♪

「 どんな激痛を味わっても、死ねないし逃げ道も無いとすれば、
 邪の道を極めようということしか考えなくなるのでしょうか?」

《 まあ、そういうことじゃ・・・

 おお、こちらの作戦も始動するようじゃ。
 よく見ておきなさい、新井の隣の男性をな・・・》

   「 はい、畏まりました。」

 


        ( 推奨BGM )

    アキレス最期の戦い LED ZEPPELIN


 

  新井の隣・・・この男性、魂は結構綺麗です。

   年は六十位でしょうか?

  角刈りに精悍な顔つき、風格すら漂っています。
  只者でないことは一目瞭然。

  そうか正神軍も下らん邪神軍の抵抗を迎え撃つ準備は
  万端ということなのだ。

   その偽善を見抜く鋭い眼が光った。

「 あの失礼ですが、どこか具合が悪いのですか?
  先程から、苦しそうに見えますが。」

「 ・・・あ、いや、何でもないですよ。気にしないで下さい。」

  そう言いながら、しきりに携帯の時計を気にしている。
  暗がりでは、デジタル表示が丁度いいようです。

   隣の男は続けた。

「 それから、もう一つ気になるのが、酒の臭いなんですよ。
 あれほど聖者様が禁じられた事を、何故破ったりしたんです。
 追放されかねないですよ。」

「 ああいや、俺は酒好きだから。 
 最後ぐらい、いいじゃないかよ。 勘弁してくれよ。」

  イライラして毒付く新井だが、
  周りでは酒を飲んだ奴がいると騒ぎ始めた。

  後ろから中年女性の声がする。

「 あなた、掟を破るような人はここにはいられないんだよ。
 まず酒を飲んだ事をお詫びしなくちゃ駄目よ。
 私達もお詫びしてあげるから。 いいでしょう、みなさん。」
          
   すると、顔を顰(しか)めている者が多い。
   嫌そうな愚痴も聞こえる。

  新井は冷や汗を拭いながら、時を急かしていた。何故なら、

 ( 由利恵の奴、もたつきやがって早くしねえか バカヤロウ。
   もう10分経ってるだろうが、クソッタレ ・・・ )

10分後、それは 変態ニンジャー下劣作戦 決行の時間なのだ。
小林が合図を出さないと始まらないのである。何しろ連絡が取れないのだ。
ただ、もう見え始めている。

   邪神軍反撃開始の狼煙(のろし)が ・・・

   場内でも気付いて騒ぎ始めた。
   間も無く、連続して爆発音が響いた。
           
  テロニンジャーは、予め自由通りの20メートル程の区間に、
  灯油を車に振り掛けた後、
  それぞれの配置に着いたのだ。
  10分あれば充分配置に着けるとの判断からだ。

 着火役が小林という訳である。

奴等の思惑通り、集まった群衆は場外の爆発に気を取られている。
剣三郎は、皆に落ち着くよう指示を出した。

  この時 ・・・ 愚かな作戦は決行されたのである。

爆発寸前の新井の心臓 は、
 震える体を何とかリュックを持って壁際に走らせると、
  急いで地面に置いたリュックの中から、
   ペットボトルとマッチを取り出した。

   慌ててペットボトルのキャップを取ったのはいいが、
  その右手首をある男に絞り上げられ、
 地面にうつ伏せに押し付けられた。

  その男 ・・・ 先程、新井の隣にいた男だ。
   彼は余裕で新井の背中に腰を下ろした。

おい貴様! このペットボトルの中身 ・ ・ ふん、灯油か。

 私の名は結城秀人。お前のような悪党の顔と挙動は、
 何百人と見てきたから直ぐ分かる。

 場内で見掛けた時からお前を付けて隣に座ったということだ。

 尻の財布も命を掛ける気など更々無い事の証拠。
 もう神様からも見放されているだろう。

 暫く、じっとしているんだな!

  恐らくは七時までだ。覚悟しろぉ!


   遅ればせながら申し上げます。
   この人、自警団の団員です。

  だって、あの真っ赤なジャケットを着ているのでぇ・・・
  知っておきながら人が悪いですね、ス~ミマセ~ン。

  しっかしカッコイイわ~。
  しかも、渡哲也さんに姿も声も似ているのであります。

   彼は、新井の背中から腰を持ち上げ右手を離すと、
   左手のペットボトルを静かに地面に置いて合掌した。

「 バッ、馬鹿な事やってんじゃねえぞ~。クソ野郎がぁ!」

   逃げながら捨て台詞を吐いた青色獣人だが、
   直ぐに動きが止まった。

  とは言え、妙な事に壁際まで、ぎこちなく歩き ・・・・
  壁を背にして両足を揃え、両手を真横に広げた ・・
  ああっ、こりゃあ十字架だ!

   は、磔(はりつけ)ってことかぁ! うわっ、

   バリバリバリッダダーーーン !!!

  せっ、閃光と共に凄まじい爆音が響いた。
  く う ぅっ ・・・ 落雷か?

   あ、あまりの轟音に、私を含めた群集は、
   悲鳴を上げ腰を抜かした。
                  
《 こりゃ、しっかりせい。これは「 神の雷槍(らいそう)」じゃ。

 ここの守護神「天照日大神(アマテルヒオオカミ)」様が、
 祈りを聞き届けて落とされたのじゃ。

  聖域の者に対して殺意を抱けばこうなる。
  金縛りなどは生温いからな・・・

 あの新井自身の魂も含め、何体もの憑依したバグソーの手下は、
 無数の「 雷 撃 針(らいげきしん)」を全身の霊・幽細胞に打ち込まれ、
 三日間激痛にのたうつことになり、
 邪神に使われることも無くなるのじゃ。》 

    オキノドクサマ~。コロコロ、コロコロ ・・・
    こここ、こわ~~。

    磔状態の新井の体は微動だにしない。

  勿論、体から煙が上がっている、
  なんだ、何処からか悲鳴が ゲッ 、

  バリバリバリダッガーーーン ! ! !

  また落ちたー!
  反対側ぁーー! あっちは火の手も上がっている。

   犠牲者が出たのか?

《 ちぃっ、三人やられたぞ。気の毒なことじゃ。》

  まあまあ酷いですわ!

 剣三郎が皆に上着を用いて消火するよう指示している。
 それにしても、祈りを捧げるのが間に合わなかったのか。

  我等は直ぐ北西側に向かった。

 


        (推奨BGM)

 フレデリック・ショパン作曲 『 ノクターン 』(夜想曲集)
  Nocturne Nr.13 C-moll Op.48 Nr.1 - Lento
    マウリツィオ・ポリーニ (ピアノ)   




            

 被害状況は、皆落ち着いて消火作業に当たった結果、
 二人の火傷は致命傷には至らなかったが、一人は全身に火傷を負った。

  運悪く灯油を浴びた量が多過ぎたようだ。

 その上、火の手にも阻まれ助けようとする者が暫く近付けなかったのだ。
 裏では邪霊同士で協力し合い、この状況を作り上げたということだ。

  辺りには、奴等の笑い声が木霊している。

   その笑う者を詰(なじ)る守護霊達の言霊も聞こえる。
   さぞかし悔しいだろう。
                               
  倒れた女性には、十才位の女の子が泣いて縋(すが)っている。
  どうやら母子家庭のようだ。もう、母親の肉体の火は消えかかっている。

   最期の力を振り絞り、火傷を免れた左目を娘に向けた。


「 ・・・ ゆ、由美、ごめんね ・・・・ 
 り ・・ 離婚 して 苦しめて  しまって ・・
 全部 ・・ 私の 我がままを ・・・ 通した から なの ・・
 それに、もう ・ ・ い、一緒に居てあげられ ・・ ない ・・
 けれど、死んでも ここで ・・ 祈るから ・・・」

「 お母さん、私はお母さん一人が居てくれるだけでいいの。
 私を一人にしないで、死なないで ・・
 うう、お、お母さん、お母さん ・・・」

   母親は焼け爛れた右手を、側に居た老婆に差し出した。

「 こ、この子を お願い します。 
 うう ・ ・ みなさん、どうか お願 い ・・ ・ グ ・ ・」

   母親の悲痛なる叫びに皆応えた。

「 大丈夫、私達に任せなさい。何も心配はいらないんだよ。
 私があばあちゃんになってあげるからね。」

「 俺が父親になってやるから心配するな。」 彼は、火傷を負った一人だ。

「 うえ、うう ・・・ あ、あたしは姉になるぅ。」

   泣きながら、セーラー服を着た少女が叫んだ。

「 私は母親になるわよ。」

   彼女は火傷したもう一人だ。側に夫と子供が二人いる。

「 ぼく、おとうとになるよ。」 かわいい幼子が名乗り出た。良い子だ。

「 ・・ ・ あ あ 、ありが とう ・ ・ あ り が ・ ・ と ・ 」

   激痛の体内の心は安らぎに満ち、
   静かに魂と幽体は浮かび上がっていった。

  まだその 「肉体」 と 「霊・幽体」 を繋いでいる
  霊波線 という光線は、微かに見えている。

   人は死後二十四時間、霊幽体と肉体は繋がっているということです。

「 お母さん、お母さん ・・・・」

   叫び続ける少女の想いも、絶望感までには至っていない。
   そのことが本人も不思議そうだ。

   自分の周りが暖かい光で包まれる感覚がして、
   流す涙の感情は悲しみから、
   今まで味わったことのない幸福感に変わっていた。

 ( わたしは不幸じゃないんだ。
  お母さんは幽霊になったけど、生きているんだ。

 それに人類は皆家族だって聖者様が言ってた。
 まだ信じられないけど、ここにいる人達は信じられる。
 わたしは生きてゆける。

  みんなと一緒に ・ ・ お母さん、わたしは大丈夫。
  きっと三日間がんばるから、心配しないで一緒に祈ってね。 )

   そんな少女の心に、暖かで柔らかな手の温もりと愛の言霊が、
   幾つも幾つも触れては沁みてゆく ・・・

  全ては神の愛、人類愛に目覚めたからこそ、
  二人の母子が救われたのである。
 
  暫く辺りは悲しみに包まれていましたが、
  次第にその感情が怒りと使命感に変わり轟々と燃えて来た。

   負けてなるものかと、目付きがまるで違っている。

  あまりの気迫と神気に、
  周りにウジャウジャ居た浮遊霊は居たたまれず離れて行った。

 憑依霊にしても、神に開眼した魂に憑いているのが苦しいのだろう。
 苦悶の表情の霊が、
 あちこちで体から抜け出ようと必死でもがいている。

  まるで、光の泉に溺れまいとしているかのようだ。


ところで、気になっておられるでしょうから申し上げますが、
こちらで放火テロを行った者は誰か ・・・

  それは木下です。

奴なら、ほら、壁際の邪魔にならない所で磔処刑され、
さっきまでカエルの串焼きのように炎が上がっておりましたが、
今ようやく消えました。

 もう一つ、私も気になることがございます。
 志田と高木の行方です。

  うっかりしていまして、二人の姿を見失ってしまったのです。

 この二人も、予定では同時に放火テロを行う手筈でした。
 ところが、示し合わせた訳でもないのにやる気は無かった。
 それは何故か?

  とにかく怖いので、
  まずは二人にやらせて様子を見るという腹だったのです。
  何しろ得体の知れない恐ろしい敵が相手なのですから ・・・

   それで、とんでもなく不利なことが分かり、恐れをなし、
   人知れず外に逃げたということでしょうが、

「 あ~、申し訳ございません、三十郎様。
 奴等は恐らく、外で女と合流しているのではないかと思われますので、
 お連れ頂きたいのですが ・・・」

《 あのなぁ、うさぞうよ。
 たかだか四、五箇所の状況を常に把握出来んでどうする。

  視力は人並みとしてもじゃ。

 場所は確認済みなのだから、
 意識と霊眼を集中しておれば分からぬ筈はない。

わしはこの場に居ながらにして、外の事も把握できる。
壁などの物質は霊視の障害にはならんのだからな。

 ほれ、見るが良い。
 こそこそと、志田の奴が場外に出て、
 街路樹に引っ掛けて隠していた刀を身に付けている。
 高木は志田の後を追っている。》

 フフ、チュ~イリョク。 フンフンコロコロ♪ フンコロコロ♪

「 これは意識が足りず、面目次第も御座いません。 
  ・・・ 集中すれば微かに見えます。」

《 だろう。まあ良いわ、では行くとしよう。》

 


        ( 推奨BGM ) 

   幻 惑 されて  レッド・ツェッペリン 

     


 

クズ共に気付かれぬよう競技場の壁の中から辺りを見渡すと、

 奴の姿を視認出来ました。

志田は街路樹に背をもたれ掛けて、
路上の先の何かを冷たく見つめている。

 そこから少し離れた場所 ・・・ 
 炎上する車群を背に、小林の姿が見えた。

  ああ ・・・ 憐れなことに下半身に火傷を負ったようだ。

 爆発時の飛火でも浴びたのだろう。
 火は消えているが、自慢の素足は無残に焼け爛れていた。

激痛に身悶え涙するのは痛みからだけではなく、
勿論二度と戻らぬ美しい肌に対する絶望感からである。

 彼女の濃い化粧が、涙でぐちゃぐちゃになり、
 脳裏には女友達や志田に笑われている姿が見える。

  その思念に割って入って来たのは、
  地面から伝うブーツの靴音である。
                                
   その憎々しい音霊から感じ取れるのは、
   醜く嘲笑うかのような邪念だ。

     その雑音は直に止まった。

    ・・ ガツッ、ザザッ ・・・

「 ざま~ねえな。ケッ、きったなくなっちまってよう。」

   女は醜い言霊に耐えながら、涙で汚れた顔をゆっくり上げた。

  見えたのは腕組みをし、薄ら笑いで冷ややかに見下し、
  炎に揺らめき鈍く光る志田の細い目だ ・・・

   彼女はある事を瞬時に悟った。

「 ・・ ・・・ あ、あたしを殺すのね。」

「 へっ、物分りのいいメス豚ちゃん だねえ。
 ケッ、俺が足フェチなの知ってるだろ。

 それがこの様だ! 

 触りたくも見たくもねえよ、もう ・・・
 お前より具合のいい女体は、いくらでもあるんだぜェ~。

 ヘヘッ、どう斬って欲しい? その願いだけは聞いてやる。」

    ・・・ クズ め。

「 首を ・・・ 一瞬でお願い。」

   絶望 ・・ 果てのない地獄に行くんだという思念。
   底知れぬ恐怖 ・・・ 震えは止まらない。

「 もう遅い、もう遅い、もう遅い ・・・・・」 何度も呟いた。

   そう言いながら上体を起こすと、
   頭を下げ長い髪をどけて ・・・

  奴に首を差し出した。

 知らぬ間に抜刀された妖刀に、
 狂乱の炎と獣人の冷たい目が写し出された。

 その刃文が笑っているかのように見えるのが、
 ・・ あまりに不気味だ。
    
  刀の棟で肩をトントン 叩きながら、志田が醜い口を開いた。

「 さ~て、あのおっさんが失敗した首の皮一枚で斬るってェ見本を、
 見せてやろうじゃあねえかぁ!」

  志田は刃先を、揺らめく炎に映し出された頚椎の影の谷間に当て、

    振り上げて一閃、

「 お~りゃあ~っ!」 と、斬り込み様、直ぐに刀を持ち上げた。

   彼女の首は ・・皮一枚で繋がりながら、
   ゴッと、鈍い音を立てて地面にうつ伏した。

  憐れな小林の意識は、まだ頭部にはある。
  激痛の中、恨めしそうに志田を睨んだが奴は気付かない。

  どういうつもりか、周りのバグソー配下の雑魚共が、
  スタンディングオベーションで喝采を浴びせている。

   ・・・ 馬鹿共め。

「 やったぞ~っ! ・・・ やっぱりすげえや俺。
 あ~でも、公儀介錯人の口 はねえか?
 ヘッ、子連れ でもねえしな。」

   すると、後ろから パチパチパチ と、拍手が聞こえる。

   「 いや~、御見事だよ志田君、動 く な ・・ アゥ? 」

   言い終わらぬうち、
  志田は後ろ向きのまま迷わず己の左後方に走り出し、
 振り向きながら両手を大きく開いて飛び上がった直後、
体を瞬時に丸めた。

面食らった高木は、
 急いで左脇に挟んだ 拳銃 を右手に持ち変え、
  慌てて一発発射したが、凡そ見当違いの空を切った。

   もうその間に魔獣の体と邪刀は、
    地を這う風のように高木の足元に迫り、
     二発目を放とうとする高木の 邪脳 からの 電令 を、
      右腕ごと断ち切った。

   「 つ え あ ー ー っ!!!」     あ ぐぅ ・・ ・」

    二人の対照的な言霊が響いている間に、
   ガッ、ドッ、 と いう音が冷たい地面に落ち、
  直に高木の両膝と左手が続いた。

  ボトボト という音霊は 血の滝壺 に注がれている。

   「 あがっ、ああ ・・・ ぐう ・・」

     激痛が全身を貫き、脳神経は破裂しそうである。

     辛うじて意識を保つ高木の背中に、
    奴は ニヤニヤ しながら邪刀に纏わり付いた
   ドス黒い血 を擦 り拭っている。

「 何だよ、汚い血がなかなか取れねえじゃねえか。
 いい加減にしてくれよなぁ。ケッ、無っ様だねえ。」

「 ・・ ・ あ ぐっ 、うう・・ なあ、志田よぉ ・ ・」

「 ああ、言いたい事は分かるぜェ。
 知っての通り、俺の後ろに目は付いてはいねえ。

ただ、あんたの行動は始めから読んでいたって事だ ・・・・

 ほら、以前 トカレフ を暴力団から手に入れたって時に、
 試し撃ちに皆と夜中、山に行ったっけ。
 あん時は嬉しそうだったねェ。

そんな大事な物は、
俺達に内緒で持ち歩いていても可笑しくはねェ、そうだろ。
こんな時は特にだ。内緒で持って何をするのか?

 それは、いざとなれば邪魔者を消すのに使う。
 俺はあんたの弱みを少なからず持っているしな。

だから、俺に銃口を向けて近付いたのはいいが俺の背後を取り、
余裕が出来たので拍手なんぞをしてしまった。ギヒッ


「 ・・・・・。」

「 なんだ、グウ の音も出ねえか?
ヘッ ・・・ そんでな、都合の良い事に拍手の音が、
あんたとのある程度の位置と距離を教えてくれた。

 意表をつかせて一秒、飛び上がっては体を丸め、
 狙いを付けずらくして二秒ってとこか。

おまけに抜刀する必要も無かった。
それにしても、あんた焦り過ぎだぜ ・・・

 つまりは、邪神の女神が俺に微笑んだってことだよ。
 俺って今日は特に冴えてるぜ。

ただ、如何せん刺激って奴は、直ぐ無くなるのが欠点だよなぁ。
楽しいが幸せって感じでもねえし ・ ・・
なあ、その腕いてえだろ。」


「 ・・ う、聞いてどうする?・・・

 所詮、俺達の行く道は邪道だが、
 先に地獄があるのは分かっている。

そこでは、槍や針で突付かれるか、
聖者が言うような火炙りにされるのか?・・・

 お、お前も見たろ。 新井や木下は公開処刑されたよ。

鼻からやる気は無かったが、やらなくて良かった。
金縛りなんて嘘じゃねえかよ!

 はは、いずれにしても永遠の苦痛が待っている ・・
 この腕の激痛もまだ増しかもしれんぞぉ ・・・

怖いねえホント。 死より怖い事があるとは、ぐぐぅ ・・」

   そう言いながら、地べたで横になった。

「 なあ、おっさんよお。
 こんな時しか本音で話せないっていうのは、
 悲しい事だよなあ。

 はは、こうなったら激痛を快感に変える他ねえな。
 マゾの訓練やってけば良かったけど、おせえかなあ。」

「 ははは、お前らしい発想だが、
 サディストのお前には無理だろう。
 もういいから ・・ うう、さっぱりやってくれ。」

   高木は起き上がり、首の上に トントン と手刀を当てた。

「 ええ? 面倒だなそんなもの。
 また血で汚れちまうじゃねえか。

これでも俺はこの刀、大事にしてるんだぜ。
幸いまだ刃こぼれは無いからいいけどよ。

 それに出血多量で直に死ねるだろ、世話を焼かせんなよ・・・

そうだ、あんたの刀とトカちゃん貰ってくぜ。それと財布よこしな。
こんな時は現金だ。ATMは荒らされて使い物になんねえし ・・・」

「 ・・ ・ なんだよ勝手に持ってけ。
 フン、地獄の閻魔様に賄賂でもやるつもりか?」

「 そんな勿体無い事するかよ ・・・ 
 全く、いやんなるほど同じこと考えていやがったとはな。」

  志田は高木の財布から現金だけ抜き取り、
  刀は自分の刀と揃えて背負って胸で紐を縛り、
  トカレフはジャケットの内ポケットに入れ、
  溜息をつきながら歩き出した。

「 お~い、俺は先に ・・はあ、金髪ねえちゃんをはべらせて ・・・
 地獄の五右衛門風呂に浸かって、待ってるぜェ!」

「 飛びっきりグラマーな姉ちゃんを用意しとけよ~!」

  志田は振り向きもせず、
  止めて置いたバイクのタンクに描かれたエンジェルを愛撫した ・・・

  ・・・ 今日のおまえは痺れるほどイケテルぜ ・・・

  などと脳裏で呟いている。
           
 ニヤリ と笑いシートに跨ると、
 妖気を纏った鋼鉄の美獣の心臓に火を入れた。

ドブルッ、ドブルン、ドブルッ、ドッドッドッドッ ・・・

  奴は内ポケットから、細巻の葉巻を取り出すと、
  ジッポで火を付け一服した。


「 はあ~あ、取りあえずは神の光玉とやらから出るしかねえな。
 しっかし、おっかねえ正神軍に勝てんのかねえ。

ほんと小便ちびるかと思ったぜ ・・・
今は六時前か、俺、邪神軍に入隊でもしてえよ。

 お~い、悪魔か邪神さんよ~お、聞いてるか~い♪
俺が加勢してやるっから~あ、いつで~も言って~えくれよなぁ♪
 俺が入れば百人力~い、いや~あ千人力だぜ~え♪
ラ~ララァーーイ♪  ララッ、ラッ ・・・ は っ は は ・・」

   カツ、ダルン、ズドドドド ロロロ ロロ ーーー


  あいつ、邪神軍入隊済みで、バグソー隊長宿してるんだし、
  既に最前線に送り込まれているんだけど、
  そんなこと知る由もありません。

 そういや小隊は崩壊か?
 これから、バグソーがどう動くのか?

  アンドラスタから罰を受けるのではないかと思います。
  何れにしても、志田は邪道を貫くようです。

「 放って置いて宜しいですか?」

《・・・ん? 構わん、もう用は無い・・・ヤレヤレじゃな。》

   アア~ア・・・マダカナ、マナカナ~フンフン♪

「 結局は、バグソーの作戦は失敗ということでしょうか?」

《 大失敗じゃな。こちらは広い意味で誰も失ってはいない。
 逆に奴等の兵は、あのテロリスト四名の本人と、
 その憑依霊を拘束することが出来た。

そればかりか、この聖域全体の炎の闘志に油を注いだようなものじゃ。
既に体力的な問題で数十人亡くなってはおるが、魂は健在じゃ。

 ふふ、開戦前に気合も闘志も轟々と燃えて来て、
 理想的になっておるわい。

他の光玉も多少の邪神軍の襲撃はあったが、
何とか被害は最小限に抑えられておる・・・

 え~とだな、「 叡智晶 」を見てみようかな。

おっ、今入った情報によると、
日本全体の「神の光玉」内の総数は、
現時点に於いて四千二百五十二万千百十六人。

世界全体では、二十五億八千二百十万三千飛んで十五人じゃ。
これは勿論、人だけの数じゃ。》

「 そそ、それは凄い人数で御座いますね。
 しかし、七時には大分減ってしまうということでしょうが・・」

《 ただな、もう六時になるじゃろ。
 みんなで餅を食べれば元気百倍で信仰心も向上するじゃろうて・・
 ああ、神も苦労するわい。ところで今何時じゃ。》

「 はっ、五時五十九分を回っております。」

《 あ、う、産まれる産まれるぅ。》 コツコツ、コツッ、コツコツ・・・

《 何を言っておるのじゃあ。チカ殿わぁ。》

「 ああ何か、お、お腹が、うう、産まれるって、
 ま、まさか私が何かを産むので御座いますか?
 男なのに、チカチュウ様ぁ!」

・・・ ピヨピヨ、ピヨピヨ ・・・ ぶうぅぅ~~~っ !!!

《 キャッキャ、産まれた~~! わたくしの雛ですわ。》

   ・・・ んなななななあぁぁ~~ 
     気が遠くなってきたぁ ・・・ 気絶したい。

《・・・あ、あのねェ・・・わしも気絶したい。》