紫苑の部屋      

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芸の真髄、舞踊の粋

2009-04-29 15:19:10 | 観劇
藤間紫さんの芸風をあらわす
  心で舞い想いを踊る
その舞踊の真髄、
玉三郎の隅田川、を見終わって、
やはり紫さんだったら、どのような班女の前になったのだろう、
と思わずにはいられませんでした。

玉三郎の隅田川、
玉三郎の舞踊は近ごろいつもそうですが能風にしようとする、
紅葉狩、船弁慶、がそうでした。
梅若丸は12,3歳ですから、老いた母ではないのですから、
玉さまの品の良い中年の奥方風、でいいのすが、
物狂いのように見えない、
狂女ではなく、班女の前という名ですし、
紫さんの解釈もそのようだったのでしょうが、
あまりに淡々としていたように思います。
歌舞伎のほうの藤十郎の隅田川は、あはれでぐっーと胸に迫るものがありました。
あくまで清元の踊りですから、踊りで泣ける、ということはあまりないのかもしれません。
むしろこの日の清元がこころに響きました。
清元の美寿太夫(よしじゅだゆう)、細棹三味線(清元美治郎)の音色、
がうつくしかった!!前後の脈絡はよくわからなくても、
  名にし負はば いざ言問はん都鳥
  我が思ふ人は ありやなしやと
のうたがここちよい。最後の、
  南無阿弥陀仏
の繰り返しのなかで、清元の高い声=梅若丸の幻に、
さまよう母のあはれをあらわす演出は効果的でした。

第2部義太夫「万歳」で衣裄の着物に紫さんの魂が降りてくるという演出。
とはいえ、せっかくの演出も、歌舞伎役者の素踊りが舞踊家の域に達しないなー、と思ってしまうので、どうかなー。
義太夫のほうは、鶴澤清治の三味線なんですけどね、呂瀬大夫もいましたが、
なんだろう、いまいちでした。

第3部もうひとりの舞踏家、花柳壽輔の長唄「黒塚」が見応えありました。
隅田川の舟長もよかったですが、壽輔さんの踊りは見事でした!
壽輔さんと紫さんは芸歴が似ているのかもしれません。
古い日舞の世界に、創作舞踊など新風を吹き込もうとしていた方が
花柳流の家元を高齢で継いだのでした。
山伏に若手のホープ基さんも出ていました。
強力の輔太郎もうまかった。
一景が能、二景が歌舞伎舞踊、三景が歌舞伎の手法だそうですが、
一景は、歌舞伎界からの応援でシテは梅玉、この品の良さと貫禄が大いに支えていたのでしょう、
出(板付)から老女岩手の壽輔は、存在感があります。
待ってました、の大向こうとともに始まる二景の踊り、
シテの僧に心の救いの光明を与えられて踊る、軽快な壽輔さんの踊り、絶品でした。
そして、三景の隈取りの鬼、いやー役者顔負けです。

3年前の三響会の能と歌舞伎(亀治郎)の「安達原」を思い出していたのですが、
舞踊の黒塚が、これだけの迫力とドラマチックさがでるとは、驚きでした。

2009/04/28 国立大劇場


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