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スーパー歌舞伎Ⅱ オグリ

2019-10-27 12:43:51 | 観劇
小栗判官と照手姫の物語を
現代に蘇らせるこのスーパー歌舞伎は
よく出来てる、物語性だけでなく、
和製ミュージカルのような達者な踊りに、立回りの乱舞、見ているだけで楽しくなります。
猿之助の前半の動と後半の静が鮮やかで、
彼の哲学的なメッセージ、が伝わってきます。

もともとの小栗判官の伝説は、
古くは旅の僧の門付け芸である「説教節」として物語性を得て、
古浄瑠璃として受け継がれて、
先代の猿之助が歌舞伎として復活させたものです。

貴族の御曹司の貴種流離譚、美女を見初め(彼のほうが惚れる)
東国武士の掟(文を破ることの罪ということらしいが)を破った破壊者として、
小栗と照手は罰を受ける、一方は地獄に堕ち、姫は川に流される、
と、大筋は同じなのですが、
そこはスーパー歌舞伎の卓越した演出が、梅原猛の哲学が
現代に甦らせるのですね。

小栗の家来を小栗党という、社会のはぐれ者の仲間として描き、
照手は自我に目覚め、未来を照らす天照のような女性に、
そして、地獄から蘇生した小栗を熊野へ導いていくのが、
照手ひとりではなく、
さまざまな市井の人々の手によること、
最後はわが身ひとつで這って熊野にたどり着くこと、
そうした新たな演出が、今に生きるわたしたちのこととして、
伝わってくるのです。

スーパー歌舞伎Ⅱの一貫したメッセージである、
仲間との絆、自分ひとりだけでなくみんなが輝かなければ真の幸せにならない、
それがオグリのテーマなのでした。

また、猿之助演出のいいところは、
鏡やCGなど今どきの装置を駆使しても、古典を大事にしていることです。
能楽を適切なところで入れているし、
万葉集のうたも恋唄にしていて、
私などのような古典大好き人間を
喜ばせてくれます。

2019/10/25観劇 配役↓
梅原 猛 原作
横内謙介 脚本
市川猿之助 演出
杉原邦生 演出
市川猿翁 スーパーバイザー
スーパー歌舞伎Ⅱ 新版オグリ
藤原正清後に小栗判官 市川 猿之助
遊行上人 中村 隼人
照手姫  坂東 新悟
小栗一郎 市村 竹松
小栗二郎 市川 男寅
小栗三郎/山賊 市川 笑也
小栗四郎 中村 福之助
小栗五郎/山賊 市川 猿弥
小栗六郎 中村 玉太郎
鬼次/銀鬼少将/商人 市川 弘太郎
カメ婆  市川 寿猿
金坊   市川 右近
大納言の妻/閻魔夫人 市川 笑三郎
横山修理太夫/長殿 市川 男女蔵
鷹乃/薬師如来 市川 門之助
翁    石橋 正次
フグ婆/女郎屋女将 下村 青
鬼王/赤鬼大将/女郎千早 髙橋 洋
横山家継/鬼頭長官 石黒 英雄
高倉久麿/黒姫/女郎蒲公英 嘉島 典俊
閻魔大王 浅野 和之

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