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出家を断行する女三の宮-源氏物語絵巻 柏木

2007-08-21 00:04:37 | 源氏物語
源氏物語絵巻 柏木1
柏木の巻のこの絵巻は特異な構図をしています。
右上方から左下方に畳の縁(繧繝縁うんげんべり、高麗縁)の強い線が幾重も走り、
御帳台、几帳、御簾、障子がその線の方向に沿い、あるいは交差し、
それぞれに人物が配されています。
一段高い御座所に、出家を懇願する宮、
宮の身を案じる朱雀院、
必死で引きとめようとして見える源氏は、畳の線をさえぎっている。
極度な緊張を強いている場面を一瞥に鋭く表している。


復元模写  ↑写真の出処です

画面左上 御帳台に敷かれた畳は、最高級の繧繝縁(うんげんべり)
二枚重ね畳の階下は浜床という。
三の宮のいる御座所も二枚重ね畳&繧繝縁
この段を越え身を乗り出しているのは朱雀院、
画面中上 御帳台に置かれた朽木型模様の帳(とばり)に、
野筋とよばれる長く垂らした紐が飾る、

朽木模様

宮の近くに、短寸の几帳、
4つの長い几帳、
宮以外の人物たちの座る畳は1ランク下の高麗縁、

「描かれた源氏物語」(三田村雅子著)には、
細部の描写に注目し、意味が付されています。
ただならぬ緊張感が走っている、と、三田村氏の読み解きは鋭く指摘する!
御簾の境界、畳の境界を越えて、宮の身を案じる朱雀院、
几帳のラインに引き裂かれ、身動きのとれない源氏、

さらに、読みは深められる、
画面右上の女房、
障子を開けて部屋の内から外(宮の居る)へと半身を出している、
これは不自然な振る舞い、
密通事件の手引者では…!、
事のなりゆきを固唾をのんでみつめる(そう見えます!)
中央下の女房、
こちらは聞き耳をたてて几帳にぴたりと身を寄せる(確かに!!)
なにかしら事件の関係者とみるべき、乳母では…!
秩序だった畳というものを使って、
秩序から踏み出すこの構図がこれだけ生かされているとは…!
研究者のこのすばらしい劇的な分析、魅力的です。

さて、物語のほうに戻りましょう。
出家を思い立ち断行する宮は
これまでにない強い意思を表示します。
戸惑うのは、源氏だけではない、
読者にとっても唐突なのです。
とりつく物の怪、のせいにします。
そのため御息所の霊力(なぜここでも御息所がでてくるのかは、別項)
と学者は解釈します。
たとえ物の怪のせいでも、その教えが出家せよということならば、
かなえてやらねばとの、親心になるのは朱雀院、
(こういう朱雀院の人柄ってよく出ていて好感度あがります)

源氏の隙を狙って、
院によって、三宮は形見を残して出家します。
その薫君のハイハイする様、
柏木の形見とみなして、愛(かな)し、あはれ、と思うのは
源氏自身なのです。

薫を抱く源氏 源氏物語絵巻 柏木3 写真の出処


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