
レティエのオーナーは兵庫から豊富に家族で移住して来た。酪農をやり、チーズを作りたかったそうだ。
酪農の組合に、まずどうしたらいいかを聞きにいった。すると、こう言われたという。
「牛飼いになりたきゃ、まずは牛を買って来い!」
言われたとおり、牧場から牛を譲ってもらった。数千円の雄牛だった。
熊笹やら何やら、原野のような土地に、杭に繋いだ一頭の雄牛。しばらくすると、荒れ野が野原に変わったと言う。ムシャムシャと牛が食べ、あっという間に牧場のようになったそうだ。
次に、酪農家から雌牛を譲ってもらった。四つのおっぱいのうち、一つでも出なくなると効率が悪い。乳牛の落ちこぼれを、これまた安く譲ってもらった。
一頭しかいない乳牛を大事に伸び伸びと飼っていたら、牛のストレスが解消されたようだ。出なかったおっぱいからも乳がでるようになったという。
解体される家を丸ごと貰って来て、息子と二人で、自分たちで組み立てたそうだ。基礎は電柱を切ったものやら、車のホイルやら。
オーナーはチーズとジェラートのお店レティエをやり、息子は現在大規模な牧場を営んでいる。
これは、レティエに行くたびに少しずつ聞き出した話。
レティエのオーナーが大好きだ。誰よりも優しく、誰よりも強い。そんな人だ。
やり方なんて知らないが、やりたいという意志だけを持って、チャレンジを始めた人の話。
一つずつ学び一つずつ進み、自分の力で自分の道を切り拓いてきた人の話。
「やってみると、意外となんでもできちゃうんですよ」
ニコニコ笑いながら話すオーナー。
運が良ければ居るが、運がなければ居ない。
今日は会えなかった。
残念だけど・・・仕方ない。また来よう。山の中のジェラート屋レティエは、そんなお店だ。