太 極 拳 最 高 

健 康 を デ ザ イ ン す る

太極拳をレベルアップする 10

2007-11-30 06:00:53 | 太極拳
 普通の呼吸法では、腹部はほとんど動くことがありませんから、脂肪が溜まりやすくなっています。脂肪の溜まっている腹は、かっこ悪いだけではなく、脂肪が溜まることによって静脈が圧迫され、静脈血の流れが悪くなって、細胞に溜まっている二酸化炭素が排出されませんので、細胞の元気がなくなります。
 腹式呼吸をしますと、腹の筋肉が動くことによって脂肪代謝がよくなり、メタボリック症候群の解消に役立ちます。そればかりではありません。血液の循環がよくなれば、しわも少なくなりますから、美容の点でも申し分ないといえますでしょう。
(1)順呼吸法 (腹式)
 吸気のときに腹部がふくらんで横隔膜が下がり (収縮)、大量の空気が腹に送り込まれ、腹筋が弛緩し、気が脊柱に張り付き、肛門を圧迫するのを実感します。
 呼気のときには反対に、腹が凹んで横隔膜が上がる、横隔膜の上下動の大きい健康的な呼吸法です。この呼吸法での一分間の呼吸回数は、6~8回となり、脳波は周波数8~13ヘルツのアルファ波になって、精神的に落ち着きを見せます。
(2)逆呼吸法
 上記の反対に、息を吸うときに腹を凹ませ、息を吐くときに腹をふくらませる、順式より高度な呼吸法といえます。上級者には 「含胸抜背」 の姿勢がとりやすいのでお薦めです。


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太極拳をレベルアップする 9

2007-11-29 09:11:07 | 太極拳
 いよいよ太極拳の呼吸法です。
4.腹式呼吸法
 太極拳における呼吸法の基本は、「深」 「長」 「細」 「均」  の腹式呼吸法です。
 「深」 は文字通り深いということで、腹の底まで空気を吸い込むことです。実際問題
     として、空気が腹に入るはずもありませんが、横隔膜の運動量の大きさで、
     腹の底にまで入ったようなイメージが湧きます。
 「長」 は太極拳の動作に合わせて、長く行います。吸う息では交感神経が刺激され
     て緊張が増し、吐く息で副交感神経が刺激されて弛緩が促されます。この
     自律神経のバランスを取ることが太極拳の目的といえますでしょう。
 「細」 は、呼吸の音が自分に聞こえないくらいに、細く静かに行うことです。
 「均」 は均一の意味で、呼吸を速くしたり、ユックリしたり、深くしたり、浅く
     したりせずに一定に保つことです。
 このほかに 「漫」 長くのびのびとを入れる人もいます。
 空気を深く吸い込みますと、お腹の中の圧力・腹圧が増し、内臓が圧迫されて腹腔の血液が押し出され、頭や手足に巡ることになります。その息を吐きますと自然に腹圧が低くなって、血液が腹腔に戻ってきます。このように腹式呼吸には、全身の血液の流れを促す効果があります。
 腹式呼吸を行ったときのエックス線の観察では、横隔膜の上下動の幅が、胸式呼吸の4~5倍になっていることが確かめられています。これによって吸気時の胸膜腔の陰圧が高められ、心肺の循環機能を改善することができます。つまり横隔膜のの上下動によって、心臓や肺、下腹部の内臓などが刺激されマッサージ効果が上がり、内臓がリフレッシュされるわけです。


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太極拳をレベルアップする 8

2007-11-28 09:02:58 | 太極拳
太極拳をレベルアップするための調息法の実際に入りましょう。太極拳のときに行う呼吸法は腹式呼吸法ですが、その前に、私たちが日常生活で行っている呼吸法に目を向けてみましょう。
1.自然呼吸法
 私たちが無意識で行っている生まれながらの呼吸法で、自然呼吸法あるいは生理呼吸法といわれる、意識に左右されない呼吸法です。むらのない細く柔らかい呼吸法ですが、短く詰まっているという欠点があります。呼吸回数は一分間に15~18回で、立式鍛錬に適しています。この時の脳波は13~30ヘルツのβ (ベータ) 波です。
2.深呼吸法
 自然呼吸法を基礎に、呼吸を深く長くする方法です。酸素の供給量は多くなりますが、意識的に行わなければならないところから、長続きしません。
3.胸式呼吸法
 胸腔部を拡張させたり、縮小させたりする呼吸法をいい、吸気のときに胸をふくらませ、下腹部をわずかに縮小させます。吸気のとき、自然呼吸よりも胸腔周囲が大きくなります。


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太極拳をレベルアップする 7

2007-11-27 05:26:04 | 太極拳
 太極拳は 「呼吸法」 と 「運気法」 が重要視されています。運気法の気は、四次元のものですから、三次元の体に直接取り込むことはできません。そこで翻訳が必要になります。この翻訳を呼吸が担当します。酸素ではない気を吸気によって取り込むためには、イメージの訓練が必要です。
 いろいろにイメージして、気を取り込みます。
「酸素の分子に気がくっついて入って来た」
「花の香りと一緒に気が入って来た」
「見えないエネルギーの粒が花粉のように大気中に充満し、吸気によって体に入った」
などとイメージします。要すれば、イメージと集中力によって、空気中の気を体の中に取り込むわけです。つまり意思の力で気を取り込んで丹田に収めると、意識とオーラ体がコンタクトし蓄勁 (ちくけい・気を溜める) が完成します。


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太極拳をレベルアップする 6

2007-11-26 09:05:41 | 太極拳
 日本の呼吸法のルーツをたどっていきますと、天台宗の開祖、天台大師に行きつきます。天台小止観 (てんだいしょうしかん) から坐禅の呼吸法について、重要なポイントを引用してみましょう。
 「気を吐くの法は、口を開いて気を放ち、気を恣 (ほしいまま) にして出だし、身分の中の百脈を通ぜざるところをことごとく放ち、気に従って出づと想え。出だし尽さば口を閉じ、鼻中より清気を内れよ」。からだの中に滞っている邪気を、口を開いてハーッと出しなさい。邪気が出ていくというイメージを強くすると、邪気が出ていきます。それを吐き切ったら、口を閉じて鼻から清気を入れなさい。といっています。
 また 「調和」 の章には、
 「息を調うるに、およそ四相あり。一に風 (ふう)、二に喘 (ぜん)、三に気、四に息 (そく) なり。
 「風相」 とは、空気の出入りの音が、風のように聞こえる呼吸のこと。
 「喘相」 とは、喘 (あえ) ぐような呼吸で、音は出ていないものの苦しさが伴う、心
      が落ち着かず、とらわれの心を生ずる呼吸。
 「気相」 とは、リズムがなく、細やかでない呼吸のこと。
 「息相」 とは、声あらず結せず、粗ならず、出入り綿々として存するが如く、亡きが
      如く、身をたすけて安穏に、情に悦予 (えつよ) を抱く。これ息の相となす。
と、あります。


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太極拳をレベルアップする 5

2007-11-25 06:33:26 | 太極拳
 私たちが日常生活の中で行っている自然呼吸は、一分間でおおよそ14~18回くらいで、このときの脳波はβ波です。その呼吸に注意を向けて深い呼吸にしますと、一分間で6~8回となり、脳波はα波になって、精神的に落ち着くことができるようになります。
 白隠禅師が著した夜船閑話 (やせんかんな) に、 「呼は心肺より出で、吸は腎肝に入る。一呼に脈の行くこと三寸、一吸に脈の行くこと三寸、昼夜に一万三千五百回の気息あり。脈一身を巡行すること五十次。火は軽浮にしてつねに騰昇 (とうしょう) を好み、水は沈重 (ちんちょう) にしてつねに下流に務む」 とあります。
 静脈血が含んだ炭酸ガスは、吐く息によって心臓から肺へ、そして肺から体外へ排出されます。吸気によって酸素を取り込んだ動脈血は、腎臓と肝臓に入ります。一回の呼気と吸気で血液は三寸づつ流れると表現していますが、この三寸は必ずしも三寸を意味するものではなく、流れの良さを表現した言葉です。一昼夜の呼吸回数は13,500回、血液の循環は全身を巡ること50回。火に例えられる心臓から拍出する血液は上がりやすく、水に例えられる静脈血は重力に反して上がりにくいから、からだ全体に気血を行きわたらせる呼吸法が大切であるということです。
 太極拳に限らず、ヨガ、気功、禅などでも呼吸は大切にされてきています。武術や音楽にしても基本は呼吸法です。


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太極拳をレベルアップする 4

2007-11-24 05:32:50 | 太極拳
 呼吸のメカニズムは、吸気のときには横隔膜の他に、胸鎖乳突筋、斜角筋、外肋間筋、外腹斜筋、肋軟骨間筋が働いて、呼気のときには、内肋間筋、内腹斜筋、腹横筋、腹直筋などの助けが必要です。息を吸うときには横隔膜が下がり、肋間筋などの働きによって胸郭が押し広げられ、肺胞の一つ一つが膨らんで空気が入ってきます。呼気は逆になります。
 これらの一連の動作は、大脳の指示によって呼吸筋運動を支配する、脊髄神経根と延髄 (えんずい) の細胞によって行われています。息を吐くと横隔膜が上がって弛緩し、副交感神経が刺激されて働きが旺盛になり、交感神経が抑制される結果リラックスできることになります。
 呼吸を普通に考えますと、生命活動に必要な酸素を取り入れることと思えるのですが、事実は逆なのです。それは生命活動に支障のある二酸化炭素を、体の外に排出することができれば、酸素は自然に入ってきますから、調息の基本は 「吐く息」 にあるということができます。息を吐き切ってしまえば、空気は自然に入ってきます。


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太極拳をレベルアップする 3

2007-11-23 06:37:15 | 太極拳
 人間の細胞60兆個が元気になるためには、栄養素とともに酸素が必要です。特に脳は大きさの割に使うエネルギーが並大抵ではなく、一日500KCalを必要とする大喰らいの臓器ですから、それをエネルギー化する酸素もそれ相応に必要ということです。
 私たちの命は、両親から受け継いだ先天の原気と、食物などによって補われる後天の気によって成り立っています。命を維持するためには、食物などの後天的エネルギーを補充する必要があり、そのエネルギーをエネルギーとして生かすためには、食物を分解、消化、吸収して、それを燃焼させなければなりません。燃焼する時に、呼吸で取り込んだ酸素が必要なわけです。
 呼吸の本来の目的は、有機体としての身体と外界との気体交換です。肺が酸素を取り込んで、血液によって各細胞に運び、代わりに二酸化炭素を吸収して体外へ排出します。肺には3~5億個の肺胞があり、1マイクロメートル (千分の1mm) の細胞膜で覆われていて、その膜を介して空気と血液が接触し、血液が通過するわずか1秒の間に、素早くガス交換が行われます。


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太極拳をレベルアップする 2

2007-11-22 09:05:48 | 太極拳
 調息は、三調の第二段階をいいますが、三調の内のどれが一番大切なのかは、鼎 (かなえ) の軽重を問うという言葉の通り、三本脚の一本を取り外したら、必ず倒れてしまいますので、結論を出すのは難しいです。ただし、三調の第一段階の調身が出来ていませんと、第二段階の呼吸を調えること、第三段階の心を調えることに進むのは、まずできませんでしょう。
 それではここで、呼吸について少し予備知識を得ておきましょう。人間の呼吸回数は、一日に約2万回、一生を通じては1億回以上も、ひとときも休むことなく続けられています。1分間の平均吸気量は、安静時7.6㍑、起床時15.2㍑、ジョギング時52.0㍑です。
 この酸素を吸収するための呼吸は、肺が勝手に行っているとお思いかもしれませんが、「呼吸」 に注意を向けずに呼吸していますと、呼吸は弱く、浅く、力のこもらないものになってしまい、自分では気がつかない内に気力が萎えて、精神的なたくましさがなくなり、考え方もネガティブになって、悲観的になりやすくなっていきます。
 呼吸と人間の能力には、因果関係がありまして、落ち着きのない人や集中力の乏しい人は、決まって呼吸の浅い人です。呼吸が浅いとイライラしたり、キョロキョロと落ち着きをなくしたりします。


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太極拳をレベルアップする 1

2007-11-21 05:23:01 | 太極拳
 太極拳の姿勢が出来上がったら、つぎは呼吸法です。太極拳の型に合わせて呼吸をします。太極拳では呼吸法のことを 「調息法・ちょうそくほう」 といい、姿勢を調える 「調身法・ちょうしんほう」、心を調える 「調心法・ちょうしんほう」 と合わせ 「三調・さんちょう」 といいます。
 太極拳の型を架子 (かし) といいますが、架子を身に付けて呼吸を同調させる第二段階を調息と呼んでいます。
 動物を英語で animal といいますが、これはラテン語の anima 「呼吸」 「生命」 という言葉からきています。また精神、心、霊魂を spiritといいますが、ブランデーなどの強い酒をスピリットといいます。スピリットの語源はスピラーレで、息の意味です。西洋でも息が魂であり、生きる力であったわけです。
 ついでにインスピレーションという言葉も、インとスピリットの組み合わせで出来上がっています。 「入る」 と 「息」 です。元気もひらめきも、息から生まれたものであることを、昔の人は言葉として残しておいてくれました。
 「いきる」 とは 「息る」 であり、「いきもの」 は 「息もの」 であり、「いのち」 とは 「息の内」 であるといわれています。生きるとは、まさに息ること、でした。


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実践的太極拳 11

2007-11-20 15:28:48 | 太極拳
 今日は朝寝坊をしてしまい、起きたのが六時半。大徳川展を見に行くことにしていたので、朝食後すぐに出かけてしまい、今戻りました。実践的太極拳も最終稿です。

 虚と実をハッキリとさせることが大切です。これを虚実分明・きょじつぶんめい」 といいます。虚が 「陰」、実が 「陽」 の関係にあります。
 太極拳は健康法とはいいましても、もともとは拳法ですから、相手の攻撃に対して自在に変化できることが要求されます。従いまして虚と実を明確にしておく必要があります。仮に体重が両足に均等にかかっている 「双重・そうちょう」 の状態ですと、体の変換速度も足の移行速度も鈍くなって、相手に乗ずる隙を与えてしまうことになります。
 このことを王宗岳は太極拳経の中で、「双重則滞・そうちょうなればすなわちとどこおる」 といっています。両脚に体重がかかって重い実の状態ですと、虚とのバランスを崩してメリハリをなくし、動きが鈍って即応できなくなります。
 「虚」 と 「実」 は、太極拳の所作の中で、相反しながら相補うもので、相互に変転を繰り返す虚と実は、虚は陰、実は陽の、陰陽の存在を確認し合うものです。
 虚と実は単なる区分のことではなく、軽・浮・沈・重の要素も内在しています。 「軽」 とは、動作が軽やかできびきびしていながら、安定していることをいいます。 「浮」 は、かかとが浮き上がって不安定な状態、つまり虚であり過ぎる浮ついた状態のことをいいます。 「沈」 は、どっしりと安定しながら素早く変化できる機敏性を備えていることです。 「重」 は、中身が詰まりすぎてボテッと重く、動作が緩慢なことをいいます。
 太極拳の格言に「上虚下実・じょうきょかじつ」 という言葉がありますが、上体を虚にして自在にし、下半身を実にして上体の動きを支えるというものです。40代からは腎の気 (持って生まれた先天の気) が弱くなって、生活環境の面から、どうしても上半身に気が上がりやすくなりますので、気を丹田に沈めて気を下半身に下し、からだ全体の安定を図ることが、いつまでも若さを保つ秘訣です。


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実践的太極拳 10

2007-11-19 05:22:17 | 太極拳
 抜背の本来の目的は、脊椎を緩めて尾骨と一直線にすることにあります。抜背の 「抜」 には抜きとる、選び出す、高める、抜きんでるなどの意味がありますが、ここは高める意味にとります。そこで抜背を、脊椎を上に伸ばすことであるということは容易に解釈できるのですが、それを、脊椎を左回りに周る螺旋をイメージして、背を伸ばすことであるという奥義的なこととなりますと、現実とはかけ離れているだけに、理解するのは容易ではありません。
 この姿勢をとりますと、横隔膜の下降が促されて腹式呼吸が容易になり、肺活量が増して循環機能が改善されます。横隔膜の伸縮が大きくなるに従って内臓が刺激され、消化機能が高まって新陳代謝が促され、細胞が活性化します。
 また、横隔膜の伸縮が大きくなりますと、鳩尾の奥、背中から三分の一のところにある、太陽神経叢が刺激され、神経に繋がる内蔵が活性化します。
 脊中の筋肉を緩めることにはもう一つ理由があります。気は緊張するところに滞りますから、緊張させて気を滞らせないようにするということです。背筋の両脇に左右二本づつ走る膀胱経の経絡にある兪穴 (ゆけつ) は、気を溜め (蓄勁) たり、気を発し (発勁) たりする重要なツボですから、そこを緊張させて滞らせてはならないのです。
 その経絡を開発しますと、気の流れが一層強くなり、「力は背より発す」 という言葉の通り、勁 (瞬発力) として発することができるようになります。太極拳の勁は螺旋を描いて、足の底→脚→大腿→腰→背→肩→手へと伝えていきます。
 含胸抜背と同じような意味の言葉に 「涵胸抜背・かんきょうばっぱい」 「空胸実腹・くうきょうじっぷく」 「開胸張肘・かいきょうちょうちゅう」 などがあります。


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実践的太極拳 9

2007-11-18 06:47:49 | 太極拳
 胸は張り出すことなく、背中を伸びやかにします。これを太極拳用語で 「含胸抜背・がんきょうばっぱい」 といいます。
 胸を広辞苑で引きますと、「体の前面、首と腹の間」 とありますが、太極拳でいういう胸はもう少し狭い範囲です。 「心以上為胸」とありますように、心臓から上の部分を指しています。
 武術には、胸を張りだす 「挺胸・ていきょう」、胸を凹ませる 「凹胸・おうきょう」、胸を包み込むようにする 「含胸・がんきょう」 の三つの胸部姿勢がありす。太極拳は腹式呼吸をしなければなりませんので、含胸が一番適しています。
 「含胸」 は肩の力を抜いて胸を樂にし、肩甲骨を横に開いて背中の面積を広げるようにします。さらに両方の肩を、わずかに前に寄せるようにしますと完成します。この含胸のねらいは、胸の緊張を解いて、胸の外形 (胸郭) を変えずに、胸の内腔・ないこうをイメージで開いて、胸腔を空にすることです。こうすることによって、気の流れがよくなり、気を丹田に溜めやすくなります。
 「抜背」 は背中の筋肉を緩めて下に沈め、脊椎を上に伸ばすようにすると、背中が伸びやかに広がります。背中には正中線に 「督脈・とくみゃく」 という、全ての経絡を統合する大切な経絡が走っており、更にその両側に 「膀胱経・ぼうこうけい」 の経絡が四本走っていますから、背中を緩めることによって、この経絡の働きが増すわけです。
 これを楊式太極拳の楊澄甫 (ようちょうほ) は、「気を背に貼するなり、抜背を能 (よ) くすればすなわち、力を背より発するを能くし、向かうところ敵なきなり」 と、太極拳術十要の中でいっています。


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実践的太極拳 8

2007-11-17 05:17:33 | 太極拳
 首筋を伸びやかにしましょう。人間の頭は、脳みそがいっぱい詰まっていますから、おおよそ5kgあります。その重たい頭を首が支えているわけですから、首の負担は相当なものになります。
 太極拳では、その首の扱いを 「虚領頂勁・きよれいちょうけい」 といっています。領は首の後ろ、うなじのことですが、その他にも率いるとか、才能などの意味もあります。頂は頭の後頭部にある 「百会・ひゃくえ」 を指しておりまして、ここから天の気が入ってきます。
 勁は、太極拳特有の考え方で、力のことを指しますが、一般に言われている力とは異なります。人間が発揮する力は、筋肉と骨格とで、関節を支点としたテコの応用で出しますが、太極拳の場合は、その力に相当するものを勁といっています。
 「勁・けい」 を一言でいえば、気のエネルギーとでもいいましょうか。太極拳では勁を丹田に溜め、溜めた勁を技と共に発揮します。勁を溜めることを蓄勁といい、勁を発揮することを発勁といいます。太極拳が単なる健康法ではなく、気を扱う武術であることが、これでお分かりいただけるのではないでしょうか。
 うなじを虚にすれば、百会から入ってきた天の気が体中にあふれることになります。ただし、体のどこかに力が入っているところがあると、この勁が滞ってしまい、発揮することができなくなります。太極拳が体の力を抜くという意味がここにあります。
 虚領頂勁には次のような作用があります。
 ① 中枢神経の働きを促し、人体のバランスをとる作用を高めます。
 ② 体にかかる頭部の重さを軽減し、動作を敏活にします。
 ③ 気持ちをハツラツとさせ、意識を明敏にします。
 ④ この姿勢によって柔軟性が保たれ、勁を発揮するに適した姿勢をとることが
   できます。
 虚領頂勁と同じような意味を持つ言葉に 「正身懸頂」 「吊頂」 「頭頂懸」 「正頭起頂」 などがあります。


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実践的太極拳 7

2007-11-16 05:30:26 | 太極拳
 脊中の線を真っ直ぐにしましょう。コマが勢いよく回っているときのように、一か所にジッと立っている、澄んだ状態をイメージします。これを太極拳の武派を興した武禹襄は、太極拳論の中で 「周身節々貫串」 体の関節を周 (あまね) く串を通すように、と表現しています。
 背筋を一本、垂直に通しそのまま移動します。
 脊椎動物は、脊椎を中軸として体躯を維持していますから、左右対称になっています。特に人間は立って動作しますので、左右だけではなく前後のバランスもとる必要があります。
 太極拳では、このように上体を垂直に保つことを 「尾閭中正・びろちゅうせい」 といっています。上体を垂直に保つには、尻を前に出して腰を緩める、鬆腰の姿勢をとり、背骨を上下に引伸ばすようにし、後頭部の百会・ひゃくえを上から吊り下げられるようにイメージしますと完成です。
 この時、肛門を〆る 「提肛・ていこう」 をしますと、一層効果が上がります。提肛をしますと、尾骨が巻きあがって、尾骨の先端にある 「尾閭・長強・ちょうきょうのツボ」 が百会と垂直を作ります。
 昔から健康の第一歩は、姿勢を正しくすることであるといわれてきました。 「万病は背骨から」 という言葉もあるくらいです。
 ここでチョッと提肛の効用を見ておきましょう。
 ① 体の中の精気が外に漏れなくなるので、活力が増す。
 ② 脊中の正中線にある督脈の気の流れが促され、全身の十二の正経と八の奇経
   の各経絡を刺激し、活性化させる。
 ③ 会陰・えいんのツボを刺激して、元気を出させる。
 ④ 陽の腎気が上昇して泥丸 (でいがん・視床下部のあたり) を刺激して、前   頭葉前野が活性化して、記憶力の増大につながり、ボケにくくなります。
 この尾閭中正と同じような意味の熟語に、「立身中正」 「身宜中正」 「頂頭懸」 などがあります。


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