太 極 拳 最 高 

健 康 を デ ザ イ ン す る

太極拳術十要 9

2007-03-31 08:52:36 | 太極拳
五、沈肩墜肘 (ちんけんついちゅう)
 文字通りに解釈しますと、肩を沈め肘を落とすということですが、単にそれだけでは正解とはいえません。なぜそうしなければならないのかを考えてみましょう。肩を沈めるといいますのは、肩の力を抜くことに外なりません。スポーツでもよく、肩の力を抜けと言われますように、肩に力が入っていますと、いい仕事ができないわけです。
 中国では、肩に力が入っている状態を、寒い時に肩をすぼめるようにする 「寒肩・かんけん」といい、日本では 「聳肩・しょうけん」 といって、太極拳では一番してはいけない姿勢としています。

沈肩は    沈肩者
肩を沈めるというのは

肩を鬆開 (しょうかい) し垂れ下げるなり    肩鬆開下垂也
肩を緩めて広げ、垂れ下げることである

若し鬆垂 (しょうすい) 能わざれば    若不能鬆垂
仮に緩めて垂れ下げることができなければ

両肩は端起 (たんき) し 両肩端起
両肩が持ち上がる聳肩になる

即ち気も亦、その上がるのに随いて    則気亦随之而上
気は力の入ったところに集まるから、肩に力が入ればそこに集まる

全身皆力を得ざるや    全身皆不得力矣
肩に気を取られて、気が全身に行き届かない。
 太極拳は力を使うものではなく、勁という、気のエネルギーを使うものですから、全身、どこに力が入っていてもいけないわけです。ただし、立っているのに必要な力だけを使います。

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太極拳術十要 8

2007-03-30 06:08:28 | 太極拳
虚実を分けるにあたうは    虚実能分
虚実を発揮すれば

而して後転動軽霊す    而后転動軽霊
その後は体のキレも軽快になる
転動 : 体を巡らす、方向を変える
軽 : 軽快である、すばやい、たやすい、かろんずる
霊 : 効き目がある、鋭敏な心の働き、動作が速い

毫 (ごう) も力を費やさず    毫不費力
少しも力を使うことなく
毫 : 中国の数の単位 毫=10絲、僅か、細く長い毛

分けるにあたわざるが如きは    如不能分
虚実が明確に分けられないとすれば

即ち邁歩渋滞す    則邁歩渋滞
進める足が滞ることになる

自立、穏にあらず    自立不穏
穏やかに自分で立つことができなくなる

而して人牽動するところ易なり    而易為人所牽動
だから人を引いて動かすことが容易になる
牽 : 引く、つらなる、ひきつけられる

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太極拳術十要 7

2007-03-29 05:34:02 | 太極拳
四、分虚実 虚実を分ける

太極拳の術は    太極拳術
術というのはノウハウのことで、技は目に見えますが、術は目には見えない重要な情報。コンピューターでいえば、技はハードで、術はソフト。

虚実を分けるを以て第一の要義とす    以分虚実分第一義
 虚と実を明確にすること
虚 : 力を抜くこと、陰
実 : 力を込めること、陽
 太極拳のバイブルといわれています太極拳経に、「双重なれば即ち滞る」 両方に体重がかかっている状態では動作は鈍る、とあります。

全身皆右腿に力を坐するが如し   如全身皆坐在右腿
全身の体重を片方に乗せるようにする
体重を全部乗せきるというのではなく、七三 (弓歩のとき) とか、九対一 (虚歩のとき) のようにします。

即ち右腿は実にして    則右腿為実
右ももに体重がかかる実にして

左腿を虚にす    左腿為虚
左ももは虚にする

全身左腿に坐あれば    全身坐在左腿
体重が左ももにかかっていれば
坐 : 位置する、すわる、いながらに

即ち左腿は実にして    則左腿為実
左ももが実になり

右腿は虚なり    右腿為虚
右ももは虚になる


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太極拳術十要 6

2007-03-28 21:02:55 | 太極拳
三、鬆 腰 (しょうよう)
 腰を緩めることである。緩めるとはいっても、単に緩めればいいというものではありません。腰といいますのは、ベルトの辺りから下にある腰椎と、それに続く仙椎を前に出して、S字状になっている背骨を、孤・曲線に変えることです。こうすることによって気の通りが良くなるわけです。太極拳はすべて気の通りを良くするために考えられています。
 

腰は一身の主宰にして    腰為一身之主宰
腰が全身の主導権を握っているから

鬆腰にあたう    能鬆腰
腰を緩めることである

然る後、両足に力を有つ    然后両足有力
その後で両足に必要なだけの力を入れる

下、盤に穏固して    下盤穏固
下を盤石に安定させれば
盤 : 平らに広がる、大きな岩、物を載せる台
穏固 : いんこ・険しくて堅固なこと

虚実の変化は    虚実変化
虚と実を変化させるには

皆腰を転動するによる    皆由腰転動
すべて腰の方向変換による

故に曰く、命、意の源は実に腰隙 (ようげき) にあり
故曰命意源実在腰隙
だから生命と意思の大本は腰にあると知るべきである

力を得るにあらず    有不得力
力を発揮させるのとは違う

必ず腰腿は之を求むる也    必于腰腿求之也
腰と太ももはきっとこれを求めているに違いない

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太極拳術十要 5

2007-03-27 17:35:22 | 太極拳
 昨日の続きです。もう一行打ち込んでおけばよかったのですが、変なところで切ってしまいました。

脚根は浮起しやすし    脚根易于浮起
昨日の最後のところの、上が重く下が軽いと、重心が確かではなくなるから、すぐにバランスを崩すことになります。
脚 : 膝から下、踝から上の部分

抜背 (ばっぱい) は    抜背者
背骨を上下に伸ばし、後頭部の百会のツボを天に突き上げるようにする

気を背に張り付けるなり    気貼于背也
気を背中に張り付けるというよりは、背骨の中に気を通すイメージで行います

含胸にあたうは即ち自然抜背にあたう    能含胸則自然能抜背
含胸というのも抜背というのも、同じ目的を持つ姿勢をいう

抜背にあたうは即ち力を脊 (せき) より発するによる   能抜背則力由脊発
脊髄に蓄積されているとされる気を、脊髄から発するということ

向かうところ無なり    所向无也
姿勢についていろいろな注文を付けられるが、要は、考えて行動するのではなく、反射的に行動できるほどの、鍛練がいるということで、それを无と表現している。

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太極拳術十要 4

2007-03-26 14:55:09 | 太極拳
二、含胸抜背 (がんきょうばっぱい)

 胸をやわらかく包み込むようにして、背中を上下に引き延ばすようにします。見方を変えますと、背中を左右に開いて、肩の先を少し前に出し、背骨と背骨の間を引き延ばすように上下に伸ばします。この時、もう少し高度な考え方をしますと、 「螺旋」 に引き延ばすということになります。この含胸抜背は、上半身に力を入れないための極意ともいえる言葉です。この姿勢が完全にできたら、もう太極拳をする必要はないといえるくらいの姿勢です。それでは本文に入ります。

含胸は    含胸者
 含胸というのは

胸を略し内涵 (ないかん) す    胸略内涵
 胸を治め内包する
略 : 治める、営む、めぐる、法則
涵 : 概念、内包する、含む

気を丹田に沈め使 (させ) るなり    使気沈于丹田也
 気といいますのは、生命を構成する要素です。人間の体は29種類の元素で成り立っていますが、元素だけでは生命は備わりません。気があればこそ生命が宿るのです。生命の大本といってよろしいでしょう。その気を丹田に集中します。これを「蓄勁・ちくけい」 といいます。

胸の挺出 (ていしゅつ) を忌む   胸忌挺出
 胸を突き出すことを嫌う。スポーツのように出っ尻にして胸を突き出すことを 「挺胸・ていきょう」 といい、太極拳では一番避けなければならない姿勢です。
挺 : 突き出す、真っ直ぐに伸ばす
忌 : 断つ、控える、嫌う

挺出は即ち胸際に気が涌 (わ) き    挺出則気涌胸際
 胸を突き出せば胸に気が集まって、
 どこかに力が入りますと、力の入ったところに気が集まりますから、どこにも力を入れてはいけないということです。ただし、立つのに必要なだけの力は入れておく必要があります。

上が重く下が軽くなる    上重下軽
 太極拳は本来、上が軽く下が重い、上虚下実 (じょうきょかじつ) でなければならないのです。


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太極拳術十要 3

2007-03-25 11:36:39 | 太極拳
力を用うるは不可なり    不可用力
 力を使ってはならない。力が入ると、力の入ったところに気が集まり、気が集まったところに血も集まりますから、その場所が滞ることになります。例えば肩に力が入りますと、肩に気が集まって重心もそれに従って上がりますから、バランスがとりにくくなるわけです。

力を用うれば即ち頂が強く   用力則頂強
 力が入りますと、本当は虚にしておかなければならない頂が強・実となって 「気血不能通流」 気と血のれ流れが滞ることになります。司令塔である頭に気と血が通わなければ、全ての機能が停止してしまいます。

須らく虚霊自然の意あり    須有虚霊自然之意
 虚霊というのは自然の行為であって、

虚霊頂勁に有らず    非有虚霊頂勁
 虚霊頂勁の像 (かたち) を敢えて行うものではない。

即ち精神を提起するにあたわずなり    則精神不能提起也
 つまり、頭で考えて意識的に行うものではなく、体が自然に動いてしまうようになるのが望ましいということです。

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太極拳術十要 2

2007-03-19 08:35:49 | 太極拳
一、虚霊頂勁
 虚霊 : 霊は頭のことで、ここを虚にします。虚といいますのは
      無にするということで、静・入静、心が静まりかえった
      状態とでもいいましょうか。
 頂 : 後頭部の一番高いところ、正確には耳の先端から反対側の
    耳の先端までの線と、体の正中線の交わったところ。ここ
    にある百会のツボを天に向かって突き上げるようにします。
 勁 : 目には見えない電気のような生命力エネルギーをいいます。

頂勁は   頂勁者
頂勁というのは

頭の容 (かたち) を正直 (せいちょく) にして   頭容正直
司令塔である頭の位置を正直にして、その位置を変移させないこと。
容 : かたち、表情、容姿、容貌。

神を貫くは頂なり   神貫于頂也
前の句の外見に対して、内面のことをいったものです。
神 : 人間が持つ思惟、意識活動のことですが、本当はもう少し
   深い意味を持っておりまして、行動は頭で考えてするもの
   ではなく、頭の中枢、視床下部のあたりにある「泥丸」を
   反射的に活用することです。
   本来は思考、分析、帰納、判断、処理などの精神活動を
   いい、大脳皮質を中心とする高次神経系の機能に相当し、
   全ての精神活動を司る生命活動の根源を指します。

太極拳術十要 1

2007-03-18 19:44:32 | 太極拳
 今日は朝早くから墓参りに出かけてしまい、今戻ってきました。お待たせしました。
 この太極拳術十要は、太極拳を学ぶ上で、とても大切なものを十項目挙げてくれています。これらのことを心に置かれて精進されれば、太極拳習得の早道となるでしょう。

 これは、楊派の楊澄甫 (ようちょうほ・1883~1936) が口述したものを、陳微明 (ちんびめい) が記録したものです。楊澄甫は楊露禅 (ようろぜん) の孫で、楊健侯 (ようけんこう) の子として楊派の正統を継ぎ、多くの門下を排出しています。
 陳微明は形意拳の孫禄堂 (そんろくどう・楊露禅-武禹譲-季亦畭の系統で、孫派を興した人) 門下で、太極拳を楊澄甫に師事しました。

 明日からの予告編です。
一、虚霊頂勁
二、含胸抜脊
三、鬆腰
四、分虚実
五、沈肩墜肘
六、用意不用力
七、上下相随
八、内外相合
九、相連不断
十、動中求静

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これで陰陽を終わりにします

2007-03-17 05:50:59 | 太極拳
 陰陽のもう一つの側面を見てみましょう。緊張と弛緩です。もちろん緊張が陽、弛緩が陰ですが、ここで問題になるのが、緊張することは悪いことなのかという問題です。
 筋肉は緊張することによって力を発揮しますから、緊張は悪だといわれると、力の出しようがなくなります。また日常生活でも多少の緊張を伴いますから、全く緊張の伴わない生活をしていたら、それこそ腑抜け同様になってしまいます。
 陰陽といいますのは、バランスを大切にする学説ですから、緊張だけでもダメ、弛緩だけでもダメということになります。
 ただし、太極拳の場合は原則は弛緩です。力は筋肉を緊張させて出しますが、太極拳は力を使いません。勁という、気のエネルギーを使うわけですから、筋肉を緊張させていては、勁を発揮できないことになります。
 これまで太極拳の背景にある陰陽思想をみてまいりましたが、まだ十分ではない気がいたします。ご容赦ください。ご愛読感謝申し上げます。

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太極拳の背景にある思想 陰陽思想 15

2007-03-16 16:49:27 | 太極拳
 太極拳での陰と陽は、虚と実に振り分けられます。虚は力を抜いた状態で陰に、実は力が込められた状態の陽に当ります。
 楊澄甫 (ようちょうほ1883~1936年) は太極拳術十要の中で、「分虚実第一要義」 虚と実を分けることが第一の要義であるといっております。例えば上体を虚にして下半身を実にする 「上虚下実」 はその典型として挙げられるでしょう。 太極拳では、両足に等分に力のかかる 「双重・そうちょう」 を嫌います。虚と実とがはっきりしていないからですが、この状態では動きが鈍くなり、どうしても相手の方が有利になってしまうからです。ここのところを太極拳経では 「双重則滞・そうちょうすなわちたい」 そうちようなれば即ち滞るといっています。
 力の入っている実については、どなたも簡単にできるのですが、力を入れない虚につきましては、たいていの人が苦手としています。太極拳には、さまざまな格言がありますが、そのほとんどが、如何にしたら力を抜くことができるかということに、心を砕いています。
 私たち太極拳の愛好家としても、虚と実を実行に移して、太極拳の奥義をつかみたいものです。

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陰陽は面白くありませんか ?

2007-03-15 17:13:29 | 太極拳
 太極拳の根本にある陰陽思想は、太極拳を志す上でそれを知らずに通り過ぎることのできないものです。
 例えば太極拳を習う時に、肩の力を抜いてといわれると思うのですが、肩の力を抜くそのことが 「陰」 なのです。太極拳ではこの陰を 「虚」 といい表わしています。反対の実は陽ということになります。
 陰陽というのはバランス学説ですから、陰と陽がお互いにお互いの邪魔をしないように、それぞれがそれぞれの立場を尊重することから始まっています。陰は陽の立場を尊重し、陽は陰の立場を尊重する、これを相対的二元論といいます。