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原発コストと再稼動

2012年03月10日 | 原発問題

前回、BLOGOS議論を例に再稼動容認派は「現状誤認識」が多いのではないか?と疑問の記事を、主に「日本における原発の導入経緯」を取り上げて書いた。

(容認派の)中には、「そんな事知ってるよ」「今更誰でも知ってる様な事を偉そうに改めて言わなくても」などと思う人も居るだろう。

 

しかし、「知っているなら」容認派の意見は辻褄が合わない。

なので今回は、「誤認識」ではないか?と見られる部分で、 「経済第一主義者」の最も好きであろう「コスト」の部分を主に再検証してみよう。

ていうか、既にここでも明記してあるが、 「この事実」 を知らないのか認めようとしないのか、
あまりにもこの事実に触れる人が少ないし、まだ原発が安いなどと言ってる人があまりにも多いので再投稿という意味合いだが・・・。

 

前回も示したが、容認派の主な主張は次の通りだ。

〇 電力不足による企業の衰退、または海外移転。

〇 燃料費高騰での電気料金値上げによる企業(または一般家庭)の逼迫。

〇 主に上記2理由によって、日本経済全体が疲弊し立ち行かなくなるという意見。

まず電力不足については、このブログでも取り上げてきているので、過去記事を参考にしてもらいここでは省かせて頂くが、以前の記事は「昨夏の時点での話で、再稼動が無い場合の今夏の電力事情は昨年の比じゃないだろう!」とか言ってくるだろうから、それはまた別の機会に述べる事にする。

ではコストの問題に移るが、私がいちいち書かなくても、上記にも示した「事実資料」をキチンと見てくれさえすれば良いのだが、どうも容認派や推進派は自分に都合の悪い資料には目を背けがちだからこうして書くのだ。

 

その前に一言言っておきたい。

今回、原発事故が起きてからの対応の遅さ・悪さ等は「民主党」に責任があるが、原発を主力電源にしようと推進してきたのは長年の「自民党」政権である。だから私は、利権や私利私欲に満ちた団塊集団「自民党」が大嫌いなのだ。(民主党は特大に嫌いだが)


 

では、

〇 原発が最も安い発電方法だとまだ勘違いしている方々へ

まず、コストとは我々が支払う電気料金だけだと思っているのでしょうか?

コストとは大きく分ければ、直接発電に必要な費用と、建設費から廃炉費用までと、更に一般会計・エネルギー特会から出る国家の資金=いわゆる「税金」をすべて足したのがコストです。

で、それを発電方式毎に計算し、さらにその発電方式1kWhでの単価を算出したのが以下の結果である。

原子力10.68円  火力9.9円  一般水力3.98円  揚水53.14円

これだけでも火力・水力より割高という結果が出ているが、実際問題「揚水発電」も原発の為に存在している発電方式なので原発が無ければ揚水発電は存在しないので、原発とひっくるめた単価に計算するのが実態に則していると言える。
【注:揚水発電とは、出力調整が出来ない(厳密には出来るが度々事故を起こしてきたのでやらないようにしている)原発の為、需要電力の少ない夜間の余剰発電の電力を、この為だけに作ったダムに水をくみ上げる電気に使う。溜めた水を需要のピークや点検時にあわせて水力発電として使う発電方式】

その結果が 原子力・揚水 12.23円である。

しかも、この単価には「事故での除染費用や補償」などは一切含まれていないのだ。

経産省のエネルギー白書2010年版では、原子力は5~6円という発表で、揚水を水力に計上し水力を8~13円としている嘘の上塗りであり、そしてそれらのデータを元に試算したエネルギー政策などは何の役にも立たない全くのデタラメである!

被爆労働者を黙認し続け、海温を上昇させ、保管場所さえ決まらず何万年も管理が必要な放射性廃棄物を生み続け、ひとたび事故が起きればこの狭い日本の中で住めない地域を生み、そして一番高コストで、何のメリットも無い原発を使ってまで発電しなければならないのか、そして何故そんなに擁護するのか不思議でならない。

 

〇 高コストなのは知ったが、原発を止めてもランニングコストが劇的に下がる訳では
   ないので、 実際問題火力発電の稼動率を高め電力供給を保っている以上、
   燃料費負担のコスト増は間違いなく、値上げの懸念は拭えないという方々へ

これは中々的を得た意見だが、順序立てて考え方を整理する必要がある。


前回記事でも紹介したように、原子力発電は電力会社が提案し独自に開発・建設したものではありませんね?

国が国策として推進してきたものです(虚偽のプロガバンダをしてまでね)

原子力保安院や原子力安全委員会なども勿論国の機関であり、安全を確保しなければいけないのは電力会社は勿論、国の機関が主導の下確保されなければなりません。

石油・石炭の火力発電は電力会社が事故のリスクを保険で担保しています。

しかし、原発は保険に入っていません。
(厳密には入れません。そんな恐ろしい保証をする保険会社が存在しないからです)

なのに、これまで原発主導のエネルギー政策をとったのは「国」です。

そう考えた時、本来、原発事故に関する補償は誰がするべきでしょうか?


勿論、「国」です!


まず、原発事故の補償という観点では「国がすべき」というのがあるべき姿だと思います。

しかし、国が補償するという事は、結局は我々の税金なのです。
(電気料金値上げの根底には事故の補償分も目論んでいるからあえて記しているのだ)

 
では、石油・ガス燃料のコスト増は何故起こったのでしょうか?
そしてそれらのツケを電気料金での国民負担にさせようとしているその原因は何ですか?

勿論原発事故による各地の原発点検後の再稼動が出来ない事が起因ですが、そんな事を言ってるのではありません。

改めて上の大島教授による「本当のコスト」と経産省のエネルギー白書とを比較して見て下さい。

単(揚水を含めない)原発でも5~6円の開き(倍ですけど 笑)があり、その部分は国の財政支出で、すなわち「税金」です。

「国策」として多額の税金を注ぎ込み、安く見せかけた「虚偽の原発安価」を作り上げている訳ですね。

最悪の事故が起こってしまいましたが、事故が起ころうと起こらまいと、本来「原発は高コスト」なのです。

「高コストの原発」を嘘の上塗りを何重にもして、多額の税金で(原発ムラ利権の為に)「原発安価」に見せかける事が長年出来るなら、その原発事故起因による一時的なコスト増の補填などは簡単に出来る筈です。ましてや17%値上げなどと、大きな企業負担や一般家庭が本当に困惑するような値上げは、これも「国」が防止すべきです。

結果、

化石燃料のコスト増も、本来は「国」が負担すべきです。

しかし、そんな事を国がしなくても良い「総括原価方式」という電力会社特有の料金制度があるので、電力会社は安易に値上げを訴えるし、だからこそ国はそこを見直す必要があるのです。

枝野大臣や猪瀬副知事が東電に値上げの根拠資料の開示を求めていますが(それも上の考え方からすると本末転倒なのだが)、まずは各電力会社は黒塗りなしの収支報告書を出さなくては話になりません。そうした上で、それを外部機関が精査し、更に企業努力で削減できる経費を徹底的に省く。それでも値上げが必要という結果が出れば、値上げしなくてもいいところまで国が財政補填するしかありません。

まとめると、

事故時の保険もなく、高コストを税金投入で安く見せかけてきた原発を主力電源として推進してきたのは「国」であり、本来、事故の補償も、需要者に値上げの負担をさせないような補填も「国」が行うべきである。

あれから1年、本来のそういった考え方に則って、法整備をしていれば出来た筈だ!

それを「原発ありき・再稼動ありき」で何の手立ても打ってこなかったのが最たる「原因」という事である。

ついでに言うと、ここでも述べているように、東電に限らず各電力会社(関電などは絶対にやらないとおかしい)は、早期にコンバイトサイクル発電を建設していれば、燃料費負担は早期の段階で軽減出来るのにやらないのも「再稼動ありき」で、無策に1年を無駄に過ごしたからだ。

本来、国が負担すべき事をやらずに、無策に1年を無駄にしたのだから、やっぱり国が負担するべきだ。(笑)

 

じゃあそれらの財源はどうするって話だが、それは消費税しかない。

社会保障は一旦置いておいて、早急に進めなければならない「復興」と、この「脱原発に向けた電力改革」に何年か重点を置くなら(どうせ消費税が上がるなら)国民世論を味方に出来ると私は思う。

 

そうした手立てを打つのが国の政策であり、

事故による放射能災害地域への補償はじめ、電気料金値上げの断固阻止は、

国の仕事だ!

よって、電気料金の企業負担や国民負担など絶対にあってはならない!

 

 

ちなみにH23年10月発表の経産省エネルギー白書2011では、最後にこう締めくくっている。 

【これまでのエネルギー政策を反省し、聖域なく見直す。エネルギー基本計画もゼロベースで見直す必要。 原子力発電については、中長期的に依存度を可能な限り引き下げていくという方向性を目指すとともに、省エネルギーの徹底的な推進、再生可能エネルギーの開発・普及の強力な推進が重要。】

 

ごもっともな台詞だが、

本当にエネルギー政策を反省した上で見直し、

本当にゼロベースで見直し、

可能な限り依存度を下げるのでなく、再稼動禁止にし、

再生可能エネルギーを本当に「強力」に推進するだけの予算を注ぎ込んで欲しいものだ。

 

 


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