すもーる・すたっふ
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シナリオ・プランニング「戦略的思考と意思決定」を読了。「シナリオ・プランニング」手法の説明に加え、シナリオの活用方法(戦略立案プロセス)やシナリオ・プランニングの組織への定着(組織学習の制度化)を説明している。これは単なる環境認識としての「シナリオ・プランニング」の本というよりは、(原著タイトル「Scenarios: The Art of Strategic Conversation」にもあるように)シナリオによる戦略的対話の本と捉えるべきだと思う。良書。




覚えておきたい点がたくさんあった。たとえば、

・シナリオ・プランニングの第1の効果は、意思決定の質の向上。第2の効果は、未来についてより良く考えるようになること。
・シナリオ文化の優れた特徴は、組織が持っている仮説や価値観、そしてメンタルモデルに影響を与えること。
・有機的なシステムが生き残っていくためには、環境の複雑さと同程度の複雑さを持っていなければならない。(最小有効多様性の法則)
・成長を目指すのは、組織にポジティブ・フィードバック・ループが存在している。ポジティブ・フィードバック・ループを組織の「ビジネス・モデル」と呼ぶ。本書で言う「ビジネスモデル」を記述するための「影響ダイアグラム」が役に立ちそうだ。しっかり自分で使えるようになりたい。
・「明確なコンピタンス」の捉え方にも重要な指摘がある。競合優位と独自性(独自技術でなく独自性のある能力)。
・変化の激しい環境では、戦略コンセプト全体を再考する「ダブル・ループ学習」が必要。ただ単に基本的な前提条件を維持する(シングル・ループ学習)のでなく、その条件や価値観などを根本的に見直し、環境に適応するように修正する。
・知識を、事象、トレンドとパターン、構造の3つのカテゴリーに分けて分析する。(アイスバーグ分析)
・起こりつつある重要な事象を指摘する
・事象のトレンドを見つけだす
・パターンを推論する
・因果関係を考え、全体を結び付ける構造を築き上げる(因果関係のパターンはさまざまに解釈できるため、複数の構造が考えられる
・その構造を使って未来を描きだす(複数の構造が考えられる場合は、複数のシナリオができる)

・予測は「確率論的評価に基づく専門家の意見」。シナリオは「体系的な因果関係に基づいて未来を概念的に描いたもの」
予測は意思決定者ではなく、専門家が行う。したがって、意思決定者は、予測から導きだされた結果を受け入れるだけで、その予測のプロセスや検討された不確定要素について何も知らない。この断絶は危険である。意思決定者が予測結果を使おうと決めても、どのようなリスクを想定すべきかがわからないからだ。また、予測とは別のことが起こる可能性も見えなくなってしまう。つまり意思決定者は、自分の責任を、最終的な責任を問われない専門家に譲り渡してしまったということになる。不確実性は忘れ去られ、計算上当然と思われる結果だけが残り、ほとんどの場合、そこで思考停止してしまう。意思決定のプロセスは基本的な情報を欠き、意思決定の本質は偶然に左右されてしまうという結果を招く。

・外部のビジネス環境を理解する「シナリオ」と内部の組織を理解する「ビジネスモデル」により、未来のビジネス環境に適合できるか検証する。
→適合しない場合、ビジネスモデル、明確なコンピタンスの開発
→適合する場合、事業ポートフォリオの開発
・問題は「はっきりした兆候」というものは存在しないこと。「はっきり」しているかどうかは、組織が認識力を発揮して、そう解釈するかどうかによる。
シナリオに照らしてビジネス・モデルを考える
企業の将来の成功は、将来の強みに基づくものである。しかし、将来の強みは、現在持っている独自性からしか生まれない。特に「明確なコンピタンス」は、お金では買えないだけに、それを強化し、開発するには内側からの革新以外に方法はない。

戦略的な方向性は、2種類の視点を4つのステージに分けて考える
内部の視点:組織は今後直面するかもしれない未来環境のすべてにおいて、生き残り、繁栄できるように準備を整えているか(組織の適応能力)
外部の視点:自社の組織や今後直面する環境を考えたとき、ビジネスを正しい方向に進めていると言えるか(事業ポートフォリオ)

・事業ポートフォリオの見直し
・組織能力の見直し
・戦略オプションの創出
・戦略オプションのテスト

変化マネジメントの5つの成功条件
・リーダーシップを発揮し、「変化」を常に課題として取り上げること
・人々こそが変化を生み出す源であると認識すること
・ビジネスには変化が必要であると認識すること
・戦略について語るときは、オペレーションに即した、行動に移しやすい言葉で語ること
・すべてのマネジャーが一貫した行動をとること

評価する側と評価される側の関係
システム理論によれば、経営トップがやるべきことは、従業員の行動にある程度制約を加え、方向を示してやることである。こうすることで、組織全体としての望ましい「創発的な」行動が生まれてくる。その制約はシナジー効果に繋がる。



本書の内容は凄く興味深いのだが、同じような内容が何度も出てくる印象があり、特に後半は少しイライラする構成になっていると感じた。何度か読み返さないと、しっかり理解はできそうにない。

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