すもーる・すたっふ
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今年5月に経済産業省が『新産業創造戦略』を発表した。

本戦略は、産業構造の将来展望を踏まえ、セミマクロの好循環の形成、加速化を目指した産業政策の確立を目指したもので、(1)燃料電池、(2)情報家電、(3)ロボット、(4)コンテンツ、(5)健康・福祉・機器・サービス、(6)環境・エネルギー・機器・サービス、(7)ビジネス支援サービスの7分野ごとに、市場規模、目標年次を明示した政策のアクションプラン等を明示し、産・官・学・地域等の幅広い関係者による「摺り合わせ」の促進を行う等としております。


本戦略を分析したレポート(「攻め」に転じた日本の産業政策-新産業創造戦略は日本産業再生につながるか-)があった。本戦略の概要とレポートのポイントを書き留めておく。
戦略の概要については、『新産業創造戦略について』(経済産業研究所で講演)で簡単に紹介されている。

IT、産学連携にみられるような大学の活用、また女性、高齢者が考えられます。これらをキーワードとして、自律的成長メカニズムをつくっていきたいということが基本姿勢です。


(1)先端的新産業群
今回「新産業創造戦略」で取りあげた産業群は7つあります。その中で、グローバル競争を勝ち抜いてほしい先端的な産業分野は、燃料電池情報家電ロボットコンテンツの4つです。なぜこの4つかというと、日本のものづくりの構造は、自動車、家電という山の頂が2つあって、その裾野に分厚い技術集積がある、という感じですので、その産業集積の強みを活かしながら、日本を引っぱっていけるようなものだからです。

自動車産業では環境問題との関連で、これからインパクトが強いのが燃料電池です。もし燃料電池で出遅れて自動車産業が不調になると、裾野の産業まで広く影響が及びます。この開発には、本体、材料、部品などさまざまな段階でやるべきことがたくさんあります。グローバル競争も激しいので、短期間で開発するためには、技術のロードマップを各段階で共有し、政府もそれに応じた規制改革を行うなどの工夫が必要かと思います。

情報家電に関しては、現在のシェアは、最終商品はわずか27%、部品は50%、製造装置は55%ぐらい、材料は65%です。利益率をみると、サムソンなどに比べて日本のメーカーは非常に低い。パソコンと情報家電という流れの中で考えたとき、垂直連携の強みをもっと活かせるのではないかと思います。

ロボットに関しては今のところ市場はほとんどありませんが、家庭用ロボットは潜在的な可能性があります。ロボットのメーカーも、家電のソニー、自動車のホンダとトヨタです。つまり家電、自動車の2つの山の間で、高度な部材産業をうまく活かした3つめの山になる可能性があるわけです。しかし介護のロボットの場合、たとえば入浴介護中に止まったらどうするかなど、産業用ロボットでは問題にならなかったような課題があります。

コンテンツに関しては、たとえば、日本のアニメは海外での評価が非常に高いのですが、日本のディストリビューション・システムは旧態依然なので国際進出がなかなか進みません。国際市場にいかに売っていくかが課題です。


(2)ニーズ対応新産業群
今回取り上げた産業群7つのうち、3つは市場ニーズの拡がりに対応する新産業分野で、健康福祉、環境、ビジネス支援というサービス業です。

健康福祉関連産業は、保険制度や規制に依存していて、なかなか伸びがありません。民需主導のサービスがどんどん出てきてほしいです。我々ができることは制度改革、ビジネスモデルの提示などだと思います。

環境・エネルギー機器は、リサイクルを含めるととても拡がりのある産業です。やるべきことは、技術開発、初期市場をどうつくるか、そして国際展開です。

ビジネス支援サービスは、すでに立ち上がっていますが、あとできることは、ビジネスのスキル表示、人材育成でしょうか


3)地域再生の産業群
地域再生事業の成功の秘訣が3つあります。
1つは、顔の見える信頼ネットワークです。濃密なコミュニケーションの中で熱い思いを抱いている人が担い手となって、地域おこしをしています。2つめに、その地域の特色ある産業構造や文化をどう活かすかという視点があることです。3つめに、それを新しい商品やサービスに結びつけて、地域ブランドをつくっている、ということです。


「新産業創造戦略」に取り上げた7分野は、試算で2010年の総生産300兆円になります。2025年における少子高齢化の産業構造の試算では、世代ごとの支出を分析してから、各市場の規模を逆算しています。その中で製造業は一定規模保持できるという結果になりました。そしてエネルギー多消費型の産業は相対的に伸びず、環境調和型の産業が伸びるということです。ただし、これは見通しというより、目標だと思ってください。


#関連資料
平成15年度ものづくり白書(製造基盤白書)

同白書では、『攻めに転ずる我が国製造業の新たな挑戦と製造基盤の強化』と題し、(1)グローバル展開と国内基盤の強化に取り組む我が国製造業、(2)明日のものづくりを支える人材の育成、(3)「ものづくりの基盤を支える研究開発・学習の振興」の概要、の3部構成となっている。



以上が「新産業創造戦略」の概要。いつもと変わり映えしない戦略(戦略xx分野とか重点施策とか・・・)だと思っていたが、以下のレポートではある程度評価している。

「攻め」に転じた日本の産業政策-新産業創造戦略は日本産業再生につながるか-』(東レ経営研究所)より。

評価すべき5つのポイント
①「攻め」に転じた産業政策
②イノベーション促進に照準(日本版ヤングレポートをモデル)
③将来日本を牽引する新産業・新技術の具体的イメージを提示(燃料電池、情報家電、ロボットなど)
#戦略7分野に対して、2010年頃の具体的な市場規模の展望と、実現するための重点施策が示されている。
④日本のものづくりの真骨頂の明示(高度部材産業集積、擦り合わせの連鎖)
⑤キャッチーなキーワードの使用(秘伝のたれ)


弱点
①サービス業と地域再生の戦略は迫力不足
②人づくり戦略の弱さ
#藤本先生や大見先生が協力して人材育成プログラムをつくるとのこと。





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