MIYAGI VILLAGE

夏は雷、冬はからっ風、人は義理人情を重んじる・・・。

知日派の講義

2005-10-28 23:20:51 | 政治・経済
今日の6限の「総合演習」は学習院大学の王瑞来先生をゲストに迎えての授業でした。

王先生は東洋史を専門にされており、東アジアの共通歴史教科書を作る活動を行われています。中国黒龍江省出身、日本に来てから15年になるそうで、本人曰く「私は知日派です。」とのことでした。親日・反日ではなくて、あくまで冷静な目を通して先生は日中関係を見ていると言っていました。

王先生の話は非常に興味深かったです。というのもマスコミが報道する中国人は反日の人々ばかりで、なかなか親日派の人の話は取り上げられないからです。このへんはマスコミの功罪が見え隠れしてますね。

王先生はまず日中の教育レベルの差を取り上げました。王先生は日本人は非常に礼儀正しく、マナーもすばらしいと述べられました。中国と日本では教育が違うのだそうです。

補足しますと、俺の知識から鑑みるに両者の教育の性質は正反対なんですよね。実は、勉強量から言えば中国人は日本人よりはるかに勉強しています。中国の都市部の受験戦争は日本の比ではありません。中国は完全な学歴社会ですからね。しかし、彼らはあくまで詰め込み勉強で、質ではなく量を求めているようです。対して、日本は量より質にこだわっています。例えば、教科書の内容が保守的であるというだけで日本中が大騒ぎになりましたが、中国は国家がメディアをコントロールしているのでそういった騒動は起きていません。つまり、現状では教育の内容への批評はほとんど行われていないということです。このことが中国の教育レベルの停滞を招いている原因なのではないか、と俺は思います。

また、王先生はナショナリズムの問題についても鋭い分析を加えました。先生は「ナショナリズムは世界の敵」であり、時代遅れだと述べました。世界がボーダレスの社会へと移って行く中で、国益ばかりを重視するのはよくない、例えば、中国の教科書に関しては、事実に関してはちゃんと書かれている、しかし、表現が悪い、事実と表現の間に距離があり、事実がきちんと伝わっていないとのこと。

他にも、中国と日本の宗教観の違いについても述べられて、日本では死んだ人に関しては、「死んだらその後はない」という考えですが、中国では「死んでもその後がある。悪人は死んでも悪人であって、彼らは地獄にいる人々だ」と考えられているんだそうです。王先生は日本の宗教観を何度か中国人に紹介したことがあるそうですが、ほとんど受け入れてもらえなかったそうです。もしかしたら、この隔たりが靖国問題の根源なのかもしれません。

また、文化の面について。先生の論調は日本の文化ががなかったら今の中国の文化は成立し得ないというものでした。俺的には、この話が一番興味深かったです。実は今の中国で使われている語句の半数近くは日本から逆輸入した語句なのだそうです。例えば、「科学」、「歴史」、「自由」、「民主」、「文化」、「電話」などです。これらの言葉は近代以前の中国にはなかった言葉です。中国は漢字しか文字がないので、新しい言葉を作るときにも漢字をあてはめて新しく作るのですが、英語の音訳で言葉を作ると、語数がやたら長くなってしまったり、意味が通らなかったりと不評でした。そこで日本からの逆輸入することにしたわけです。例えば「テレホン」は音訳だと「徳津風」で漢字を見ただけでは何のことだか分かりません。「電話」なら意味も通って分かりやすいですよね。中国の文化は日本なしには成立し得なかった、このことを先生はとても強調されていました。

最後に、先生は日中は「二つの川」だと例えられていました。そしてその間を結ぶ「運河」がたくさん通っている。文化の面を見れば分かるように古代から現代まで両国は切っても切れない関係にあった。そして、周恩来の「二千年友好、五十年対立」という言葉を取り上げ、50年対立してしまったけれど、2千年の友好に比べればそんなのは小さいことじゃないか、これから先、日中はもっともっと友好的関係を続けていかなければならない、と述べられ、講義は終了となりました。


う~ん、この授業は、本当にすばらしい授業でした。最近、極端な親日の本が出ていたりしますが、先生は冷静な分析に基づいた話をしてくださり、中国の悪いところだけではなく日本の悪いところも述べられて、例えば、反日とか中華思想という言い方はよくないということ、また、マスコミには大きな責任があるということ、マスコミは同じ部分ばかり報道して、少しずらした視点での報道ができていないということ、つまり、マスコミの報道に偏りがあるということですね。日本人も反省するところは反省しなければいけません。また、ネット上には反中、反韓的な書き込みが目立っているように思います。それらの書き込みを真に受けてしまう人だっているわけですよね。俺は、日本人は日中問題をバランスも持って考えるようにしなければならないと思います。バランスをもってはじめて中国を非難する資格があるわけですから。


俺もバランスに気をつけて日中問題を勉強していこうと思います。

最新の画像もっと見る