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妖しい魅力の男たち

2014年03月08日 | セレネ美術館

奇想天外な絵といえば歌川国芳(くによし)

画面いっぱいの武者絵、おどろおどろしくもユーモアのある妖怪絵、

人間の集合でできた顔、猫好きにはたまらない猫の絵など、その活躍はまさに八面六臂。

きっとみなさんもどこかで見たことがあるはずです。

 

今日ご紹介するのは、そんな国芳の

頼光三天王囲碁図 文久元年(1861年)

よりみつさんてんのういごず

 (・・・残念ながら検索しても画像がありませんでしたので、ぜひに本物をご覧ください)

すきまなく画面いっぱいに描かれるのは巨大な3人の男(はっきりいってむさい

中央に置かれた碁盤に身を乗り出し、密集しているからよけいに暑苦しい。

右は酒田公時(坂田金時 さかたのきんとき まさかりかついだ金太郎の大人になった姿です) 

中央は碓井貞光(うすいさだみつ 特に個人エピソードなし)

左が源次渡(渡辺綱 わたなべのつな 鬼の腕を切り落としたことで有名)。

金時と綱が囲碁で対戦。貞光はそれを見学しているようです。

(念のため書きますが、源頼光(よりみつ。らいこう、とも)は、藤原道長に仕えた平安時代の武将。

物語の世界では、頼光四天王といわれる配下と行った、大江山の酒呑童子や土蜘蛛の退治で有名です)

さて、改めて絵を見ますと・・・3人のうち、金時はぎょろ目をむいたおっさんなので置いておくとして、

ほか2名が少女漫画にでてきそうな色男なのですね。

まあ、実際の少女漫画にはこんなごつい男は出ないでしょうが、ひげもあるし、腕毛も・・・でも結構色男です。

まず、目が大きい。大抵の浮世絵の人物は目がほそーいのに、この絵ではぱっちりしています。

そして、つり気味の目に色気があるなあとよく見ると・・・なんと、下まつ毛がある!

しかも結構長い! なんだかすごい発見をした気分です。

なるほど、下まつ毛には妖しい魅力があるなあ。

今の少女漫画でも下まつ毛のやつはちょっとあやしいキャラが多いし・・・と、まつ毛で終わりそうになりましたが

いやいや、この絵にはさらなる登場人物が。それは妖怪!

金時は、なんというか妖怪「お茶出し小僧」とでもいうようなヤツの口に、無造作に左手をつっこんで強引にひっぱっており、(かわいそう)

綱は、にゅっと伸びた妖怪「ろくろ首」をまったく気にせず、むしろその頭を、手を置くための台にしています。

貞光の後ろには、「ひとつ目」の妖怪がなにやらしようとしています(両手で変なポーズをとっています)が、

妖怪たちに全く勝ち目がなさそうです。

画題は「もののふ囲碁に集中しすぎて、妖怪を全く気にせずの図」でしょうか。

なんというかお守りとして使えそうな迫力です。



幕末明治の浮世絵展概要&他の作品紹介へ

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幕末明治の浮世絵・探訪展

~幕末の歴史絵から明治の開化絵まで~

期  間 平成26年 3月1日(土)~3月30日(日)

時  間 9時~17時30分(入館は17時まで)

休館日 毎週火曜日と、3月14日(金)~18日(火)の5日間

入館料 一般800円 高校・大学生700円 中学生以下無料

会  場 黒部市宇奈月国際会館・セレネ美術館 3階展示ホール

富山県黒部市宇奈月温泉6-3 TEL 0765-62-2000

セレネ美術館HP




喜多川歌麿(うたまろ)の絵

2014年03月08日 | セレネ美術館

最近、歌麿の浮世絵「深川の雪」が見つかったと、新聞やテレビで紹介されました。

たて約2メートル、よこ約4メートルの巨大な掛け軸で、版画ではなく肉筆の作品です。

NHKの番組を見ましたが、鮮やかな色彩に、大勢の人物たちの多彩なポーズ、

複雑な画面構成と、すばらしい作品でした。

その番組中でも紹介されていましたが、

歌麿が幕府から刑を受けるきっかけになった作品

太閤五妻洛東遊観之図  (文化元年 1804年)

たいこうごさいらくとうゆうかんのず

が、「幕末明治の浮世絵探訪展」に展示されています。

題名通り、太閤秀吉とその妻たち(北の政所や淀殿など)が、京都醍醐寺の三宝院で

お花見をしているシーンを描いた作品です。

なぜこの作品で刑を受けることになったかというと、幕府の法で「天正以降の武者絵に、

人物名や紋所などを書いてはならない」とされていたからです。

で、本作にはばっちり太閤の名や、石田三成などの名前が記されています。

また、「太閤記」そのものの出版も禁じられていたといいますから、つかまらないほうが不思議というものです。

歌麿は3日間の入牢、手鎖50日の刑を受け、その2年後に、53歳(推定。この方は生年不明なのです)で

失意のうちに死去します。

・・・じゃあ、なんでこの絵を描いたのか、そして出版したのか? となるのですが、これは諸説あって分かりません。

絵師のプライド説をとると、寛政の改革により、浮世絵などへの制約が強くなったことに反抗して、とも解釈できます。

そういえば、先に述べた「深川の雪」では、徳川家の葵の紋所をつけた女性が宴会をしているシーンがあり、

これも幕府への批判をこめたのでは、と言われていました。

本展では、浮世絵の美人画の時代が終わり、幕末にかけて武者絵、歴史絵へとシフトしていく

象徴的な作品として紹介しています。

(武者絵も単に人を描いているわけではなく、幕府への批判などが込められていました)

まあ、それは置いておき、純粋に絵をみますと・・・これが楽しそうじゃないのですね。

色彩が限られている(幕府の禁制です)のもありますが、お花見の華やかなシーン、

しかも天下人とその妻たちが大勢そろうシーンというのに、

秀吉はじめ誰も楽しそうではないのです。

不思議ですね・・・

やっぱり何か意味が込められているのかな?

そして、太閤秀吉はこの花見の約5か月後にこの世を去ることになります。

話は飛びますが「太閤五妻・・・」で受けた刑の後も、歌麿の人気は衰えず、

注文が殺到したため、その死因は過労死(!?)ではとの説も。

 

浮世絵の世界は予想以上に深いのでした。

 

幕末明治の浮世絵展概要&他の作品紹介へ

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幕末明治の浮世絵・探訪展

~幕末の歴史絵から明治の開化絵まで~

期  間 平成26年 3月1日(土)~3月30日(日)

時  間 9時~17時30分(入館は17時まで)

休館日 毎週火曜日と、3月14日(金)~18日(火)の5日間

入館料 一般800円 高校・大学生700円 中学生以下無料

会  場 黒部市宇奈月国際会館・セレネ美術館 3階展示ホール

富山県黒部市宇奈月温泉6-3 TEL 0765-62-2000

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