パロディ『石泥集』(短歌・エッセイ・対談集)

百人一首や近現代の名歌を本歌どりしながら、パロディ短歌を披露するのが本来のブログ。最近はエッセイと対談が主になっている。

2016年事件簿8 イギリス,EUを見限る

2016-06-25 17:55:33 | パロディ短歌(2016年)
(旗はご存じ、ヨーロッパ連合)

             果たして危機は来るのか

 国民投票の結果、イギリスがEUから抜けることになった。テレビや新聞は「大変だ~!」と煽り立てているが、本当にそうだろうか? 毎日テレビの昼のニュースはひどかった。キャスターの惠とやらが、何も知らないくせに「大変だ~! これから日本はどうなりますかね。株も下がった! 円高になった~!」と大騒ぎ。準レギュラーの弁護士まで「予想していませんでした!」だって。報道機関なら両方のケースを予想するのが義務なんじゃないの? 朝日新聞と同じく、毎日新聞や毎日テレビ・朝日テレビも、的外れ解説が多いから、皆さん注意してほしい。中日新聞や京都新聞も、だよ。

 そもそも、マスコミは世界的に残留派支持が多かった。これはマスコミ界がエスタブリッシュメント(既得権益層)に属することと大いに関係がある。今まであまり表に出てかなかったが、アメリカのトランプ現象―つまりD.トランプ氏が共和党大統領候補になるのを見誤ったころから、実はマスコミの方が世論からずれていることは明瞭であった。話は飛ぶが、今さかんにテレビに出ている池上彰も、最近はおかしい。過去の解説はうまいが、未来の予測になると、既得権益擁護つまり現状維持ばかり説いている。お里が知れた、というべきだろう。

 話が横道にそれた。今回の戦犯第一はキャメロン首相であろう。国民投票をする必要があったのか、というのが初めの疑問である。なにか国民投票や住民投票など、直接選挙がもてはやされるような気風がある。一種の流行だろう。しかし、何のために代議員制度があるのか。国会が何故あるのか。難しい問題は国民に投票して決めてもらおう、というのは政治家としての怠慢ではないのか。キャメロンの罪は大きい。しかも、世論を読み違えた。パナマ文書に名前が出て、不信感を持たれているのに、それも分かっていないようで、鳩山くんクラスの“Loopy”であろう。

 しかし、事ここにいたっては仕方がない。EUとの交渉期間の2年間は、経済もぐずぐずした展開になる。アメリカ大統領にだれが選ばれるかも重要だ。ヒラリーならEU復帰をめざして圧力をかけるかも知れない。トランプならEUの方に圧力をかけるだろう。イギリスは力を弱めるが、ドイツも力をそがれる。案外、イギリスの狙いはドイツの牽制にあるのかもしれない。有能なメルケル首相がうとましいのかも。

 しかしながら、問題の根本にはアラブが関係している。中東が安定しないと、イギリス離脱の要因となった難民問題は解決しないのだ。アラブ諸国に民主主義を輸出する―という欧米の価値観は捨てるべき。ただし、シーア派にせよ、スンニ派にせよ、世俗派が統治するのでなければ意味がない。誰が過激派を一掃するのか。候補としては、アメリカかロシアである。中東の国境線を引き直すくらいの荒療治が必要だと思う。ロシアはクリミアを取ってしまうが、国連統治かなにかで、うやむやになる。中東が安定するきっかけになれば、今回の出来事は歓迎してもいいと思う。経済は3,4年の内に回復するだろう。

イギリス独立派は思ったより多かった
●「去る」という字を千万あまり紙に書きEUをやめて帰り来たれり
(本歌 大という字を百あまり砂に書き死ぬことをやめて帰り来たれり  石川啄木)
(蛇足)最終得票は離脱1741万742票(51.9%)、残留1614万1241票(48.1%)である。大阪都構想のときよりは差が大きい。離脱票は感情的―という評論家もいるが、議論になっていない。感情をくみ取るのが政治である。

日本のマスコミは騒ぎすぎ、もう少し冷静に経過をみてはいかがか
●EUの弱味にしみる夏の夜の票はしづかに読むべかりかり
(本歌 白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりかり  若山牧水)
(蛇足)国境をなくす…という目標はいいが、少し早足すぎる。ドイツの独り勝ちで、格差がひろがりすぎる。この辺がEU内の不満だろう。

これからどういう交渉が始まるのか、誰も知らない
●これやこの去るも留まるもわかれては知るも知らぬも後の政治(まつり)
(本歌 これやこの行くも帰るもわかれては知るも知らぬも逢坂の関  蝉丸)
(蛇足)首相のキャメロンにしてみれば「想定外」。案外、メルケルは想定していて、次の手を打つかも。

庶民の不満を聞き取れなかったキャメロンの詠める
●英国のしのぶ不満のたれ故に乱れそめにしわれなら知らん
(本歌 みちのくのしのぶもみずり たれ故に乱れそめにしわれならなくに  河原左大臣)
(蛇足)何度もいうようだが、キャメロンの罪は大きい。坊ちゃん政治家だね。

メルケルはしんどいだろうな
●イギリスのつれなく見えし別れよりEUばかり憂きものはなし
(本歌 有明のつれなく見えし別れより暁ばかり憂きものはなし  壬生忠岑)
(蛇足)いろんな国で移民・難民反対勢力が増えている。どうなだめるのか。メルケルの腕を見たい。フランスのオランドは追随するだけ。

イギリス最大の問題は経済
●EUを渡るイギリスかぢをたえ行方も知らぬ銭の道かな
(本歌 由良の門を渡る舟人かぢをたえ行方も知らぬ恋の道かな  曾祢好忠)
(蛇足)イギリスから企業が逃げ出す…という予想がある。EUとの間に関税が復活する、と予測すれば、の話。大人の交渉が見られるのかどうか。2年間は高みの見物をしていればいいのさ。
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2016年事件簿7 地下のマグマが動いている

2016-06-15 12:06:03 | パロディ短歌(2016年)
              イギリスEUから離脱か
 
 イギリスがEUから離脱しそうだと外電が伝えている。以前の調査に比べると、離脱派の割合が増えているらしい。問題の中心には中東イスラム諸国の政情不安がある。シーア派とスンニ派の内戦が止まらないため、難民がトルコ経由でヨーロッパへ流れ出している。大きな流れの一つが東欧を経てドイツにたどりつくケースで、そのあおりを受けるように、東欧からドイツ・フランス・イギリスなどへ労働者が移住している。
 通貨がユーロに統一されたとき、ヨーロッパの国々で格差が広がるのではないか、という意見があった。現実はその通りになり、ドイツ経済が独り勝ちし、ギリシャなど弱小国を援助する構図が出来上がってしまった。あとからEUに参加した東欧諸国は自前の工業力なんぞあるはずもなく、労働者が先進国を目指して移動したのは当然といえる。
 ただ、押し掛けられた方はいい迷惑だ。低賃金で働く移住者に職を奪われ失業者となる。イギリスにはアジアやアフリカからも難民がきて、英語を話せない者には、政府が生活を保障した上で語学教育を施す。
 イギリスの福祉制度は優秀である。医療費や教育費はタダ、生活保護も行き届いていて、途上国の難民からは天国扱いされている。一方で英国に住み続け、国を支え続けた人々からすれば、「俺たちの税金をどれだけ吸い上げるつもりだ」という反発もでてくる。最近の世論調査の結果は、その反発がだんだん大きくなってきた表れなのだろう。
 アメリカでスパニッシュがふえて、下層白人から職を奪っているのと構図はよく似ている。今度のEU離脱の動きは、アメリカ大統領選挙におけるトランプ現象と軌を一にしている。つまり「自由と平等」を掲げてきた欧米の歴史に、揺り戻しがきているのである。いま、世界の歴史では地下で大きな変動が始まっているようだ。
 池上彰がテレビ番組で、イギリスの離脱の動きを批判していた。イギリスにとっても、EUにとっても、経済に与える打撃が大きいというのだ。マスコミ全体でみても、この意見が優勢である。ただし、現状維持に利益を見出す、エスタブリッシュメントの代表的な意見であることも付け加えなければ公正とは言えない。
 短期的に見れば、確かに経済は混乱するだろう。しかし、イギリスがEU離脱を決めても2年ほどの交渉期間がある。イギリスは難民の受け入れを自国で制限できるよう求めるだろう。EUは反発するに違いないし、それならウチだって難民受け入れはごめんだ、という国も出てくる。
 勝手な意見がごまんと出て、しかし、最終的には中東の和平がカギを握ると再認識されるに違いない。中東は中東の独自性を認め、統治の形態も政体も欧米型にはこだわらず、自由に決めさせる。その結果は(これまでの経緯を見る限り)独裁政治になる公算が高いが、その方が安定するなら何も不服をいうことはない。
 イギリスのEU離脱には、ドイツが独り勝ちして強大になることへの警戒心もある。イギリスに伝統的な大陸牽制策が表面に出てきた、という面もある。6月23日の国民投票には注目だ。

難民受け入れはもう沢山だ(イギリス離脱派)
あかねさす難民対策の尊くて失業者は生れやまずけり
(本歌 あかねさす昼の光の尊くておたまじゃくしは生れやまずけり  齊藤茂吉)
(蛇足)ドイツは経済が好調で、難民を労働者として雇い入れる余地があり、それによって新たな需要を生み出してもいる。しかし、他の国々は財政的な持ち出しになっている。身軽になろうぜ、というのが離脱派の言い分だ。

難民は経済の低きから高きに流れる。その結果
数多の難民あふれてつひに濁りけり君も失業我も失業
(本歌 胸の清水あふれてつひに濁りけり君も罪の子我も罪の子  与謝野晶子)
(蛇足)イギリスも金融を中心に一時は経済も好調だった。でも、ドイツには敵わない。難民をもう消化しきれない。

イスラム難民には複雑な感情がつきまとう
嵐吹くイスラムの国の難民はEU諸国の重荷なりけり
(本歌 嵐吹く三室の山のもみぢ葉は龍田の川の錦なりけり  能因法師)
(蛇足)一方ではテロの恐怖に怯え、しかしながら搾取してきた過去の歴史も償わなくてはならない。いろいろとツケがきているわけ、ね。

通貨の統一でドイツが独り勝ち
EUと鳴きつる方を眺むればただメルケルに銭ぞ残れる
(本歌 ほととぎす鳴きつる方を眺むればただ有明の月ぞ残れる  後徳大寺左大臣)
(蛇足)ユーロに統一して、ヨーロッパ諸国から金を吸い上げたドイツは妬みを買っている。ドイツ国民にしてみると、勤勉に働いた結果で何が悪い!ということに。

離脱派はこう主張している。EUとしては正念場だ
風そよぐヨーロッパ連合の夕なぎに離脱ぞ生きるしるしなりける
(本歌 風そよぐならの小川の夕なぎにみそぎぞ夏のしるしなりける  従二位家隆)
(蛇足)イギリスの離脱派はEUに利益がない、と主張している。他の国に飛び火すると、とんでもないことになる。
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2016年事件簿6 都知事の公私混同

2016-06-15 12:05:09 | パロディ短歌(2016年)
http://news.biglobe.ne.jp/domestic/0828/1165577480/mai_20140828k0000m040188000c.jpgより

               みみっちくて情けない

 舛添要一都知事の公私混同問題の感想が、上記の言葉である。みみっちくて、1万円から20万円くらいまでの話なので、誰でも金額を実感できる…これがワイドショーなどで、いつまでも取り上げられる理由であろう。金額がたとえば650億円…ということになると、一度はびっくりしても、金額に実感がわかないので、「けしからん!」の大合唱をして、何となくウヤムヤになるものだ。
 ケチ、みみっちい…という実態は、官僚の姿に通じる。舛添くんは留任しようとして、色んな策を弄しているが、すべてマイナスになる。いずれ退任の憂き目にあうだろう。だって、架空出張をしていた兵庫県議の野々村と同じだもの。介護だとか、ゴミ出しだとか、スタンドプレイが好きなのも困った性質だ。
 アメリカで、トランプ大統領が誕生するかもしれない。彼は世界戦略をゼロベースで見直すだろう。我が国も自前の世界戦略を持たなければならないのに、舛添問題なんぞでうつつを抜かしているマスコミの低能ぶりにも呆れたものである。みみっちい議論の挙句、6月15日になってやっと辞職させることができた。流れが決定的に変わったのは、<第三者>であったはずの、弁護士の会見が高飛車で、一挙にマイナス点がついたせいだと筆者は思っている。新聞記者なんぞはハエくらいにしか思っていない様子だった。
 舛添なんぞに歌ってやる義理もないのであるが、このコーナーがパロディ短歌であるゆえ、泣き泣き次の4首をおくる。

公私混同をうまみと感じて
人はいさ心も知らず政治家は公私ぞ同じ香ににほひける
(本歌 人はいさ心も知らずふるさとは花ぞ昔の香ににほひける  紀貫之)
(蛇足)政治資金規正法がザル法なのは、誰でも知っているが、細かい逃れ方を知っているという意味では、この都知事がいちばん。女性問題もあるそうだから、いよいよ、姑息な人柄がばれてくるだろう。

家族旅行を会議に仕立てて
夏の夜はまだ宵ながら明けぬるをホテルのいづこに会議やどるらむ
(本歌 夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを雲のいづこに月やどるらむ  清原深養父)
(蛇足)会議を装った実際の舞台は、新年の家族サービスだったが、夏休みにも同じ趣向で散財していたらしい。誰が聞いても、おかしな話だが、政治の世界ではまかり通ってしまう。

別荘へ公用車でのりつけ(毎週だよ)
湯河原へかよふ都知事の自動車に幾夜寝ざめぬ東京都民
(本歌 淡路島かよふ千鳥のなく声に幾夜寝ざめぬ須磨の関守  源兼昌)
(蛇足)公用車を思う存分乗り回す―これも権力の味である。限度がわからない、というのは何か重大な欠陥を示している。

第三者の隠れ蓑で逃げよう…という算段らしいが
「第三者」鳴きつる方を眺むればただ舛添の「逃げ」ぞ残れる
(本歌 ほととぎす鳴きつる方を眺むればただ有明の月ぞ残れる  後徳大寺左大臣)
(蛇足)元検事の弁護人2人を自費でやとったが、これって「第三者」になるの?
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