イスラム過激派について
もう一ヶ月以上前の話になるが、11月13日(くしくも金曜日である)夜、パリの劇場などがイスラム過激派に襲われ、130人もの犠牲者を出した。犯人は射殺されたり、逮捕されたりしたが、欧米各国には衝撃を与えた。
今年の世界の重大ニュースにはパリのテロ事件、日本の重大ニュースにはイスラム国に拘束された日本人二人が処刑された事件も入っている。中東情勢はややこしいので、これまで触れてこなかったが、この際、イスラム過激派を大ざっぱに整理をしておく。
2015年の時点で話題になっているのは、すべてスンニ派の過激派である。IS(イスラム国)もそうだし、各地に蕃居しているアルカイダもそうだ。皆が知っていることだが、イスラム教には大きな派として、スンニ派とシーア派がある。簡単にいうと、スンニ派は開祖モハンマドの血筋を大事にし、シーア派はモハンマドの高弟も後を継ぐことができると考えている。
大した違いにも思えないが、そこは一神教。かつてキリスト教のカトリックとプリテスタントが血で血を洗う争いを繰り広げたが、イスラム教も似た側面をもつ。もともと、イスラム教は他の宗教には寛容である。しかし、身内の争いは激しい。スンニ派の代表はサウジアラビアで、シーア派の大国はイランだ。いま、これだけ石油の値段が下がっているのに、供給量をめぐってこの二国が合意できないのは、互いに含むところがあるからだといわれている。
かつて過激派というとシーア派のイメージがあった。それは1979年のイラン革命で、当時のパーレビ皇帝が追い出され、ホメイニ師の革命派がアメリカ大使館を1年以上占拠するなど、過激な反米の旗を掲げたからだ。しかし、この見方はもう古い。
その時、辛酸をなめさせられたアメリカは、今年になってイランと仲直りをし、イスラム国潰しの先兵としての期待をかけている。そう、イランはシーア派でイスラム国はスンニ派だ。
シリアではイスラムのスンニ派が優勢だが、権力者アサドの属するアラウィー派、そこに東方教会系のキリスト教などが混じってややこしい。少数民族のクルド人が独立を望んでいることも話をややこしくしているうえ、ロシアとアメリカの思惑がからんで、一体どうなっているんじゃ? 一番悪いのは長年放っておいたこと。
何が魅力なのだろうか?
●ISへ渡る若者跡を絶え行方もしらぬ自爆のみちかな
(本歌 由良の門を渡る舟人かぢを絶え行方もしらぬ恋のみちかな 曾根好忠)
(蛇足)ISは8世紀から10世紀ごろまでのイスラム帝国を再興しようという目的を掲げている。中東のみならずアフリカやスペイン・ポルトガルまで、地中海の周囲は全部いただこうという運動だ。統治の中身も中世らしい。
信じる…ということは、あれこれ考えないこと
●劇場をいたみ店うつ弾のおのれのみくだけてものを思はざるかな
(本歌 風をいたみ岩うつ波のおのれのみくだけてものを思ふころかな 源重行)
(蛇足)憎しみがここまでエスカレートすることは想像しにくい。憎しみといっても、もう抽象的な次元だ。愉快犯ばかりではないだろうし。
現在の世界はすべて気に入らない
●イスラム国衛士のたく火の夜は燃え昼も燃えつつものをこそ壊せ
(本歌 みかきもり衛士のたく火の夜は燃え昼は消えつつものをこそ思へ 太中臣能宣)
(蛇足)過激派だとはいうが、実は専制軍国主義で、北朝鮮が呼び込みを開始したような状況だろうか。
植民地にされた恨みが、いま…
●思ひわびさても領土はあるものを憂きにたへぬは英仏なりけり
(本歌 思ひわびさても命はあるものを憂きにたへぬは涙なりけり 道因法師)
(蛇足)第2次世界大戦で、アラブの民は独立を夢見て、イギリスやフランスに協力した。しかし、戦争が終わると、英仏は勝手に領土を分け、おまけにイギリスはユダヤ人にイスラエル建国まで約束して、二重三重にアラブを裏切った。
「道連れ」ということはやめてもらいたい
●アッラーといふ声を百あまり空へ叫び死ぬことを道連れに帰り来たらず
(本歌 大といふ字を百あまり砂に書き死ぬことをやめて帰り来れり 石川啄木)
(蛇足)仏教を下地にもっているアジアでは「許す」ことが多いような気がする。その文化を壊しているのは、一神教の系譜をひく共産主義の国だ。どこかは分かるね。
蓼喰う虫もさまざま…とはいうが
●あかねさすイスラム国の尊くて自爆テロは生れやまずけり
(本歌 あかねさす昼の光の尊くておたまじゃくしは生れやまずけり 斎藤茂吉)
(蛇足)何か高揚させるものがあるらしい。歴史をひっくり返す快感?
もう一ヶ月以上前の話になるが、11月13日(くしくも金曜日である)夜、パリの劇場などがイスラム過激派に襲われ、130人もの犠牲者を出した。犯人は射殺されたり、逮捕されたりしたが、欧米各国には衝撃を与えた。
今年の世界の重大ニュースにはパリのテロ事件、日本の重大ニュースにはイスラム国に拘束された日本人二人が処刑された事件も入っている。中東情勢はややこしいので、これまで触れてこなかったが、この際、イスラム過激派を大ざっぱに整理をしておく。
2015年の時点で話題になっているのは、すべてスンニ派の過激派である。IS(イスラム国)もそうだし、各地に蕃居しているアルカイダもそうだ。皆が知っていることだが、イスラム教には大きな派として、スンニ派とシーア派がある。簡単にいうと、スンニ派は開祖モハンマドの血筋を大事にし、シーア派はモハンマドの高弟も後を継ぐことができると考えている。
大した違いにも思えないが、そこは一神教。かつてキリスト教のカトリックとプリテスタントが血で血を洗う争いを繰り広げたが、イスラム教も似た側面をもつ。もともと、イスラム教は他の宗教には寛容である。しかし、身内の争いは激しい。スンニ派の代表はサウジアラビアで、シーア派の大国はイランだ。いま、これだけ石油の値段が下がっているのに、供給量をめぐってこの二国が合意できないのは、互いに含むところがあるからだといわれている。
かつて過激派というとシーア派のイメージがあった。それは1979年のイラン革命で、当時のパーレビ皇帝が追い出され、ホメイニ師の革命派がアメリカ大使館を1年以上占拠するなど、過激な反米の旗を掲げたからだ。しかし、この見方はもう古い。
その時、辛酸をなめさせられたアメリカは、今年になってイランと仲直りをし、イスラム国潰しの先兵としての期待をかけている。そう、イランはシーア派でイスラム国はスンニ派だ。
シリアではイスラムのスンニ派が優勢だが、権力者アサドの属するアラウィー派、そこに東方教会系のキリスト教などが混じってややこしい。少数民族のクルド人が独立を望んでいることも話をややこしくしているうえ、ロシアとアメリカの思惑がからんで、一体どうなっているんじゃ? 一番悪いのは長年放っておいたこと。
何が魅力なのだろうか?
●ISへ渡る若者跡を絶え行方もしらぬ自爆のみちかな
(本歌 由良の門を渡る舟人かぢを絶え行方もしらぬ恋のみちかな 曾根好忠)
(蛇足)ISは8世紀から10世紀ごろまでのイスラム帝国を再興しようという目的を掲げている。中東のみならずアフリカやスペイン・ポルトガルまで、地中海の周囲は全部いただこうという運動だ。統治の中身も中世らしい。
信じる…ということは、あれこれ考えないこと
●劇場をいたみ店うつ弾のおのれのみくだけてものを思はざるかな
(本歌 風をいたみ岩うつ波のおのれのみくだけてものを思ふころかな 源重行)
(蛇足)憎しみがここまでエスカレートすることは想像しにくい。憎しみといっても、もう抽象的な次元だ。愉快犯ばかりではないだろうし。
現在の世界はすべて気に入らない
●イスラム国衛士のたく火の夜は燃え昼も燃えつつものをこそ壊せ
(本歌 みかきもり衛士のたく火の夜は燃え昼は消えつつものをこそ思へ 太中臣能宣)
(蛇足)過激派だとはいうが、実は専制軍国主義で、北朝鮮が呼び込みを開始したような状況だろうか。
植民地にされた恨みが、いま…
●思ひわびさても領土はあるものを憂きにたへぬは英仏なりけり
(本歌 思ひわびさても命はあるものを憂きにたへぬは涙なりけり 道因法師)
(蛇足)第2次世界大戦で、アラブの民は独立を夢見て、イギリスやフランスに協力した。しかし、戦争が終わると、英仏は勝手に領土を分け、おまけにイギリスはユダヤ人にイスラエル建国まで約束して、二重三重にアラブを裏切った。
「道連れ」ということはやめてもらいたい
●アッラーといふ声を百あまり空へ叫び死ぬことを道連れに帰り来たらず
(本歌 大といふ字を百あまり砂に書き死ぬことをやめて帰り来れり 石川啄木)
(蛇足)仏教を下地にもっているアジアでは「許す」ことが多いような気がする。その文化を壊しているのは、一神教の系譜をひく共産主義の国だ。どこかは分かるね。
蓼喰う虫もさまざま…とはいうが
●あかねさすイスラム国の尊くて自爆テロは生れやまずけり
(本歌 あかねさす昼の光の尊くておたまじゃくしは生れやまずけり 斎藤茂吉)
(蛇足)何か高揚させるものがあるらしい。歴史をひっくり返す快感?