地球浪漫紀行☆世界紀行スタッフの旅のお話し

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ハシェクとプラハ

2008年11月17日 18時50分25秒 | チェコ
ヤロスラフ・ハシェクはプラハ生れのチェコの作家です。
もともと新聞記者だったハシェクの代表作と言えば、風刺小説「兵士シュバイクの冒険」。
第一次世界大戦を舞台に、チェコ兵士ヨゼフ・シュバイク(写真)が様々な事件と出会う喜劇です。
第一次大戦中のオーストリア=ハンガリー帝国を皮肉った長編で、登場人物の多くは大戦中に彼が出会った人々に基づいているそうです。
物語は第一次世界大戦が始まった頃、プラハで犬を商っていたシュバイクが、ひょんなことから国家警察の密偵に捉えられるところから始まります。
やがて彼はある連隊の中尉の従卒として、大戦に参加することになってしまうのですが、その軍人達の行状はびっくりするほどの間抜けぶり。
そして、それをさらに倍増させてくれるシュバイクの八方破れの「活躍」ぶりが描かれています。
この作品には、二重帝国時代のオーストリア支配下での、チェコの人々のしたたかな生き様が描かれています。
内容としてはオーストリアをおちょくったものなのですが、とぼけたキャラクターのシュバイクはなんとも憎めません。
ハシェク自身、実際に第一次大戦に従軍し、自ら進んでロシア軍の捕虜となったのだそうです。
彼は1897年には学生としてプラハでの反ドイツ暴動に参加し、1906年にはアナーキスト運動に加わりました。
またプロレタリア階級の労働者グループに定期的な講義をし、1907年にはアナーキストの新聞「コムナ」の編集者になりました。
ちなみにチェコ出身者ではカフカ、カレル・チャペックなどの作家が有名ですが、チェコでは出版業も進んでいました。
著名なアナーキストとして、彼の運動は警察によって注意深く監視されていました。
彼は定期的に逮捕され、投獄されてしまいます。
罪状の多くは破壊行為で、また少なくとも一件の警察官襲撃で、彼は一ヶ月を監獄で過ごしたのだそうです。
ハシェクの風刺の対象は、権力者やお金をひけらかす人たち、具体的には政治家・役人・軍人・事業家などで、王侯貴族・聖職者・学者や教師などもあげられていました。
しかし、個人攻撃というよりは、その個人が属する階級全体を浮かび上がらせています。
一見すると過激なハシェクの人生ですが、彼の作品には多くのメッセージが含まれていて、人間的な強さと優しさを教えてくれる作品でもあると思います。
その点がソ連的な社会主義文学とは全く異なります。
チェコ人にとっては夏目漱石の『吾輩は猫である』的作品だそうです。
「兵士シュバイク」が後の世でも末永く愛されたことから明らかなように、彼がチェコの人々を元気付けたことは事実です。
第一次世界大戦はオーストリア=ハンガリー二重帝国の終焉そのものでした。
そしてこの後のチェコは、チェコ・スロバキア共和国となり、ハシェクが亡くなった後は、ドイツの保護領、そして第二次世界大戦、共産党独裁、社会主義、プラハの春、ビロード革命、スロバキアとの分離と激動の歴史をたどっていきます。

来年4月に予定しております「春のプラハ滞在の旅」では、この様な激動の現代史を超えてきたにもかかわらず、なおも美しく形を残す中世の建物が混在するプラハの街をゆっくりと散策します。
イースターマーケットのシーズンですので、旧市街もいつも以上に華やかです。
連泊が多いので存分に楽しんでいただけるのではないでしょうか。
百塔の街プラハは、華麗さのなかに、王様や貴族たち、ハシェクのような作家や音楽家や学生たち、その他にも数えきない一般の人々の歴史があります。
そんな歴史と、現在のチェコの人々の生活を自分なりに散策し、古い建物の一角に本屋さんを見つけたら、ハシェクやチャペックの作品を探してみるのも楽しいかもしれません。
またプラハ滞在の旅では、当時よくハシェクがチェコビールを飲みに通い、作品も書いていたというビアレストラン「ウ・カリハ」にご案内します。
かわいらしい兵士シュバイクの人形が、入り口で出迎えてくれ、兵士シュバイクなどのキャラクターにふんしたスタッフが登場し、アコーディオンの演奏や、歌を歌ってくれます。
もちろん、リクエストにも応えてくれます。店内は地元の人や観光客でいつもにぎわっています。
チェコは世界一ビールの消費量が多い国でもあります。
街のあちこちにビアホールがあります。ぶらぶら歩きでお気に入りの、ビアホールを探してみるのも楽しいです。
(西川 太陽)

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蛇足:田母神論文でメディアは騒がしいですが、マスコミではその多くが、戦前の朝鮮半島や台湾を「日本の植民地」と表現して、ネット上ではその多くが「日本国朝鮮地方」や「台湾地方」であり欧米列強と同じ植民地ではないとしています。
上の20世紀はじめのハプスブルク家支配化のチェコや、またはクロアチアに似ているところがありますね。あるいはハンガリーでしょうか(チェコとハンガリーでは少し立場が異なりますが)。これらの民族の地位を表現する歴史学用語(ローマで言えば「属州」のような)があってもいいかもしれません。ウェーバーなら何と呼んだでしょうか。(照沼)


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