皆さん、こんにちは。川崎です。
イラク9日目、空爆で水路が破壊され、今や干上がってしまった、
かつての大湿地帯マーシュランドを走り、ウルクへと向かいます。
広々した快適な道路ですが、他に車の姿は見かけません。
バスは二台立てですので、照沼が乗ったバスが先頭を行っていました。
一時間ほど走ると、そのバスが道端に止まっており、私たちのバスが抜き去りました。
しばらく走り、離れすぎないように、日陰を見つけ待つことにしました。
トイレソトップかなにかのはずですが、しかしいくら待っても現れません。
携帯も無線もないので、少しばかり心配になります。
小一時間たったころ、バスは何事もなかったかのようにやってきました。
照沼が足の入りきらないサンダルに、ブカブカの見慣れないズボン姿で
こちらのバスのお客さんに遅れたお詫びをしています。
照沼とお客様の話を総合すると事件の概要はこうです。
照沼が自分だけのためにトイレストップをしました(水分取りすぎ)。
障害物一つないところを走りつづけていましたので、適当に停まったようです。
舗装道路のすぐ脇は、アフリカの旱魃のニュースでよくでてくるような
表面が乾き、乾いた土がめくれあがるようになっていたそうです。
一歩足を踏み入れたら、ズブズブという感じがしたので、
10メートルくらい先の草むらまで、ポンポンと跳ねて行こうとしたようです。
4、5メートル跳ねたところで、ズボっと足を取られたのが運の尽き。
泥に埋もれた右足を抜こうと左に力を入れれば、左足が沈み、
左を上げようとすれば、右はさらに沈み、底無し沼の泥沼に嵌まったのでした。
もがけばもがくほど、身体は沈んでゆき、
ラグビー部のフォワードだったそうですが、前にも後ろにも全く動きが取れない。
のちに「固まる前のセメントを重くした感じ」と述べています。
お客さんもドライバーも車の中にいて、声も聞こえない。
照沼が用を足すところを窓から見ている物好きな人もいません。
遅かったからでしょうか。幸いにも一人の男性客の目に留まり、
(最初は何が起こっているか、わからなかったそうですが)「たいへんだ!」
ということになりました。
すぐに、数人しかいない男性陣と運転手たちで、タオルなど使ってロープを作ります。
と、一人の男性が「人間が泥沼に沈んでいくところを、
生で目撃できる機会はめったにない」ということで、ロープ作りに参加せず
ビデオカメラを回し始めました。
これに女性陣がカンカン。
一方で緊急事態が発生中に、一方で揉め事が発生。
3人で作ろうが、5人で作ろうが、確かにあまりスピードは変わらないのですが・・
ロープで引っ張っても、腰近くまで沈んでしまっては、全く抜けません。
ベルトを外し、ジッパーを降ろし、ズボン、靴、靴下を泥の中に放棄して、
下着姿で何とか救出されたようです。
ミネラルウォーターで泥を洗い流し、トランクケースはこちらのバスに積んでいたので、
運転手の予備のズボンと同行の考古学者の小さなサンダルを借りてやってきたのでした。
「泥沼に嵌るなんて、まるで自分の人生のようだ。」とか
「言葉の比喩ではなくて、実際に泥沼に嵌った日本人て少ないんじゃないかな。」とか
あとでいろいろと照沼が言っていました。
ビデオを回していたお客さんと、あとで見せてもらう約束をしていたのですが、
次の旅行のとき、見せてもらうのを忘れ、
そういえば、それっきりになってしまっています。
ということで遅れてウルクに到着。
遺跡番の番人小屋でお弁当を食べます。
エアンナ神(イシュタル神)のジグラット
セレウコス朝の神殿跡
ギルガメシュ王の城壁
シュメールの空の神・アヌ神の青色神殿と白色神殿
色彩の粘土円錐で装飾されています。
考古学者が円錐を外して説明していました。
簡単に持ち帰れそうですが・・
同神殿にて、ガイド(左)と考古学者。
ガイドは、アメリカが攻めてきたら戦うと息巻いていました。
アラブ人の場合、威勢だけいい場合があるのでどうなったかわかりませんが、
存命なのでしょうか。
考古学者のフセイン・アリ・ハムザ氏は、
米軍のバグダッド入場後、ドバイへ引っ越したと聞きました。
夜、三たび、バグダッドへと戻ってきました。
夜、照沼は運転手と靴を買いに行きました。
(川崎 大地)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます