草莽の記     杉田謙一

教育・防衛・慰霊・エネルギー・歴史についての意見

奇跡は遂に起きなかったが

2008-03-22 23:32:37 | Weblog
台湾の民進党勝利をのがす

奇跡はついに起こらなかった。世界最大の政党国民党が遂に政権を奪取したのである。

「日本の影響力低下へ」 拓殖大学海外事情研究所 澁谷司准教授のコメントは以下の通り。

 クリーンなイメージの民進党も陳水扁総統の家族や側近らの汚職問題噴出で支持者は失望、民意を失った。謝長廷氏は陳氏との違いを打ち出したが党への不信感を覆すには至らなかった。一方で馬英九氏は甘いマスクで人気も高く、台北市長時代の特別費の使い込み疑惑は2審も無罪。致命傷を免れた。
 馬氏は総統就任後、対日関係よりも対中関係を重視し、台湾における日本の影響力は低下するだろう。
 馬政権で安価な中国製品が大量流入すれば台湾産業の空洞化がさらに進み、国民党の公約に対する大方の期待に反し、台湾経済が逆に悪化する恐れもある。米国は親米派の馬氏を御しやすいとみているかもしれないが、馬氏は必ずしも国民党内でイニシアチブをとれる力があるとはいえず、外交面でも波乱含みだ。(談)

 日本にとって厳しい結果となった。しかし民意が決した以上それなりの付き合い方をしなければならない。
 がしかし、国民党も変化しなければ国際的な台湾の沈没は免れないであろう。

 台湾国民がまさか中国に併呑される事を望むとは思えないが、中国の影響を相当受け入れた政局運営となる。台湾の国連復帰に強い期待を抱いてきた小生にとってはやや残念な結果ではある。今後、中国と人的交流や経済協力が大手をふってなされることになろう。
 台湾意識醸成にはまだまだ時間がかかることは仕方ないことであろう。中正記念館の改編も日が浅く、蒋介石へのノスタルジーを消し去るにまで至らなかった。前政権のスキャンダルの払拭に成功しなかったことも敗因であろう。しかしたとえ、政権が国民党にうつろうとも、台湾からの対日旅行者は年を追って増加し、日本との友好関係は損なわれるものではない。

 直前の、そして現在進行中のチベット虐殺に中国政府への不信感はさらに増大することは間違いなく、馬氏も北京とは一線を画さざるを得まい。民主的システムを李登輝氏が導入してからは、228虐殺事件などの事件を起こしようもないわけであるから。
 歴史は逆行できはしない。

 いまは民間での交流を通じて忍耐強く台湾の覚醒を待つときであろう。李登輝友の会など確実に育つ日台友好の動詞的つながりを、より太くしていくしかあるまい。台湾の真の独立のために。

台湾の今後

2008-03-22 15:17:41 | Weblog
台湾の今後
 まもなく台湾での総裁選挙の結果が判明する。情況ががまだわかってないので心配であるが、台湾国民はきっと懸命な選択をしてくれると信じたい。 

 一昨年、台湾にて李登輝元総統にお会いした時お話いただいた講演内容を振り返っておきたい。以下総統の講演の要旨。(口述

 台湾の近代歴史は三つの時代に分けられる。第一期一八九五年から一九四五年まで。二つ目が一九四五年から一九九〇年まで。三つ目が一九九〇年以降。

 第一の時代は近代社会建設にまい進する時代。全身全霊で取り組んだ。鉄道敷設。嘉南大洲、大農業地帯を作り上げてきた。台湾製糖等の産業育成。司法制度の確立。総督府国防学校、大学建設など。文学美術音楽などにおいて華僑の文化束縛から抜け出した時代である。
 八田与一技師は石川県では六聖人として尊敬されている方。台湾では国民の尊崇を集め毎年今でもお祭りしています。華僑文化から離れ台湾人に台湾意識が芽生えた。運命共同体であると。理念が力となっていく時代でした。この時代を見直そうと後藤新平の見直しが近年なされているのです。

 第二の時代、これは中国人の観点から、立場から、国民を支配しようとした時代です。日本語の取り締まり、反日政策、日本を知らなくする政策が徹底してとられた。勤勉責任感などの価値観が崩され、日本を語らない時代となった。数万人の犠牲者を出した二二八事件やその後の白色テロ。政治に口を突っ込む勇気を奪い去ったのです。堂々と意見をいえない。何時政府関係者に聞かれているかわからない。そんな国民党のワンマン独裁政治が徹底してなされた。戒厳令が三十八年間も敷かれた。こんな例は世界中に何処にもない。司馬遼太郎先生との出会いの中で「台湾人に生まれた悲哀」としてあらわされた世界でした。

 第三の時代は万年国会から人民による総統直接選挙がなされ、民主的な一つの主権国家が築き上げられた。台湾支庁はないのです.憲法が変わった。大陸を台湾の領土として国民に教えるのは現実的ではない。しかし大陸の一省としての存在ではない。終身国会議員などは不適切。正名運動を通して台湾人として自らを意識する国民が六十パーセントを超えるところまできましたがまだまだ。

 これを八十.九十パーセントに引き上げねばならない。

 台湾人としてのアイデンティを作り上げなくてはならない。わざわざ独立を言う必要もなく、中国とは国と国との関係になっている。名前は台湾か台湾共和国か呼び名は別にして、実態は主権ある国家として存在している。「屈してもなおやまず」の台湾精神を持って台湾の時代を変えていかねばならない。安定した国家を築かねばならない。

 日本文化の特徴は武士道や大和魂を基にした高い精神性にある。公に忠誠をつくす。危機にあってはおのれの身を捧げることをいとわない高貴な精神である。「板垣死すとも自由は死せず。」あの時、後藤新平はすぐに駆けつけたのです。医者であったから。正しきことの実現には生死すら問わない。この精神性の高さこそ日本文化です。
 さらに一つは自然の中ではぐくまれた情緒の豊かさでしょう。全てに人としての道を見出す。口であげつろうのではなく。生活にそのまま反映させる。華道も茶道も日々の立ち居振る舞いを芸術の世界にまで高めているでしょう。旅にせよ、感動を和歌に読みつづり行く。芭蕉の奥の細道の世界は情緒豊かな芸術の世界です。

 アジアはそんな日本が指導権を握らねばならない。二〇〇七年以降は世界情勢は大いに動くであろう。そのときこそ新しいリーダーシップを発揮するリーダーが必要である。日本の存在がいよいよ重要になるときであります。
                               以上。

 その予言が大きく実現し始めた。韓国は新大統領が誕生。日韓新時代を迎えつつある。果たして今日の選挙結果はどうなるのであろう。世界最大の政治資金を持つ国民党が政権を奪取し、親中政権を樹立するのか、民進党が台湾同胞意識を築きあげるのか。たとえ前者であろうと、北京オリンピックへのボイコット検討をせざるを得ない発言など、出さざるを得ないほど、台湾ナショナリズムは大きなうねりを生み出しているのは紛れもなき事実。スピードが違うだけであろう。チベット問題が自国問題となっている以上、大逆転は起こりうる。

 しかしそのスピードが問題。上海万博までに国民意識が醸成できるか。国家防衛にはアイデンティの創出が必須。いい選択である事を祈るのみである。

財界はいまこそチベット声明を

2008-03-22 09:09:51 | Weblog
 中国は国民国家になろうと必死になってきたはず。言語もあれだけ多い言葉を北京語に統一しようと躍起であると言う。国内矛盾を解決するにはと反日キャンペーンを徹底的になして国内統一をしてきたが、もはや時代の必然として統制が利かなくなってきている。 

 今回のチベット蜂起は単にチベットの自治問題にとどまらず、国内矛盾の露呈、国家崩壊ののほったんとなりうる。北京政府が躍起になるのも充分納得がいく。
 いままでのような国民弾圧が秘密裏になしえなかったのは情報開示政策の結果でもある。北京オリンピック開催に向け、海外メディアへの門戸開放が大きく作用している。封殺できなくなったのだ。海外マスコミの報道規制を再開したようだが、世界は機敏に反応したのだ。台湾も国民党すらオリンピックボイコットを言うようになった。

 さらに市民への携帯の普及が政府の意図を裏切り瞬時に情報を把握できるようになった。経済成長のためには外国資本の導入が不可欠で、今や共産党員以上の人数が外国企業に従事し、給料を働きに応じてもらえるようになった。価値観が変わってきたのである。役人のごまかしによって給料がもらえなくなる事態がなくなれば、媚びへつらう必要なく、結果考えられぬは政府暴動が起きている。

 いまだ報道の少ない反体制の法輪功だが、その組織なみの団体は今は数がぐんと増えている。おそらくチベットの蜂起に国内で共闘を始めているのではないか。

 是非その動きに注目したいが報道が全くされないのも不可解。マスコミに期待したいところだ。政府にとって悩みの種である。

 中国経済はバブルの域にある。日本のハイテクがどうしてもほしい。歴史や靖国に本気で批判しようとは思っていないふしもある。

 日本企業は今までどれほど中国政府にだまされてきたかわからないが、はめられたことを黙っていたから同じ徹を踏んではめられた企業は数知れなかった。しかし本気で抗議すれば一夜にして態度が変わってきたのが最近の中国。日本が撤退するのが怖いのである。日本企業は確かな戦略とこびない姿勢を持って中国政策を進めなくてはならない。

 いまはこの機に財界からの批判がどうしてもほしい。チベットの虐殺を止める鍵は財界からの抗議である。日本の財界が沈黙を守るのはどうしても解せない。

いまこそチベット国民を守るために財界の強いメッセージが必要である。