「垂心四面体ABCDの[垂心」のベクトルによる重心座標表現で見落としていた大事なこと」 2008.11.03(月)
☆ 先に垂心四面体において「内積」に着目して、垂心四面体ABCDの[垂心」の
「ベクトルによる重心座標表現」について述べた。また、別に
三角形の「垂心」の「ベクトルによる重心座標表現」についても、別の
稿で述べた。
◎ もともと、三角形の「垂心・外心」の「ベクトルによる表示」を求めようと
思ったきっかけは、名古屋大学の「栗田 稔」先生が著わされた
数学セミナー増刊 「入門|現代の数学[7」 具象から幾何学へ」(日本評論社)
を読んでいたら、p54に
「(三角形の)外心や垂心の位置ベクトルを(→OX)=p(→OA)+q(→OB)+r(→OC)
(p+q+r=1)の形に著わすことは複雑である。」とあったので、
これに触発されて計算したのであった。
計算して割と簡単に「垂心」について「内積」による「ベクトル表示」を得て、これを
「余接」cotを用いて三角関数による表示にし、また「オイラー線の関係」より
「外心」の「ベクトルによる表示」も得ることができ、三角関数の正弦(sin)を用いて表示ができた。
当時「内心」のベクトル表示はしばしば大学入試に出題されていて、「傍心」については、
例えば 石谷 茂 監修 徳峯 良昭 著 「ベクトルとその応用 ー数学ブック6(大阪教育図書)
に載っていて、「内心・傍心」については、知られていたことであった。
それで、「垂心・外心」について発表した。そのとき、「位相幾何学」のホモロジー群の計算に
でてくる「単体の重心座標」の言葉を借用して、「ベクトルによる重心座標表現」の考えの萌芽に
至った。また 名古屋大学の「栗田 稔」先生も同様な研究をされていて、お手紙をいただいた。
「栗田 稔」先生のものは、三辺 a,b,cと角A,B,Cの三角関数の混在したもので、
同封のコピー用紙に
『任意の点Xの位置ベクトルを
(→OX)=1/(p+q+r)[p(→OA)+q(→OB)+r(→OC)]・・・(1)とするとき、
(ア)
重心G については、p=q=r=1/3 ・・・ (1.1.1)
(イ)
内心 Iについては p=a ,q=b ,r=c ・・・(1.1.2)
(ウ
「外心O」については、p=acosA,q=bcosB,r=ccosC ・・・(1.1.3)
(イ)
「垂心H」については、p=asecA、q=bsecB 、r=csecC ・・・(1.1.4)
(エ)
「九点円の中心N」については、
p=acos(B-C) ,q=bcos(CーA) ,r=ccos(A-B) ・・・(1.1.5)
これらは、次のようにして統一的に導かれる・・・ 』
として、図形的に求めておられた。
さて、私が発表したものを読まれた、「一松 信」先生は、御子息の「明」氏と共に研究されて、
三角形の3辺 a,b,cだけで先の「垂心・外心」を含めて五心について表示され、
「三角形の諸心のベクトル表現」として「一松 明」氏の名前で投稿された。
そのときは、「一松 明」氏のものでは一切、三角関数表示については
触れてはいないので、三角形の「垂心・外心」の「ベクトルによる重心座標表現」の三角関数表示に
ついては、私の方に先行権があるはずである。まあ、そんなことをここで論ずるのではなく、次の
表題の「垂心四面体ABCDの「垂心」のベクトルによる重心座標表現で見落としていた大事なこと」について
触れよう。
☆(1)「(垂心)四面体の「垂心H」のベクトルによる重心座標表現」については、
2008年9月11(木)にBlogに発表したが、
そのとき、
『
四面体ABCDを考える。四面体では一般に、各頂点から対面に引いた4本の垂線は
1点では、交わらない。
この4本の直線が1点で交わるとき、その四面体を「垂心四面体」または
「直辺四面体」といい、その交点Hを四面体の「垂心」とよぶ。
BC=a,CA=b,AB=c,AD=d,BD=e,CD=f ・・・(1.1.7) とおき、
x=((→AB),(→AC))=((→AB),(→AD))=((→AC),(→AD)) ・・・(1.1.8)
y=((→BA),(→BC))=((→BA),(→BD))=((→BC),(→BD)) ・・・(1.1.9)
z=((→CA),(→CB))=((→CA),(→CD))=((→CB),(→CD)) ・・・(1.1.10)
w=((→DA),(→DB))=((→DA),(→DC))=((→DB),(→DC)) ・・・(1.1.11)
とおく。
このとき、
[命題2]
「垂心四面体ABCD」に対して
x+y=c^2,x+z=b^2,x+w=d^2,y+z=a^2,y+w=e^2,z+w=f^2 ・・・(2.1.1)
[定理3] mをm≧3の自然数、四面体ABCD⊆E^3⊆E^mとし「四面体ABCD」の6辺を
上の(1.1.7)のように a,b,c,d,e,fとし、x,y,z,wを上のようにおく。
PをE^m内の任意の点とすれば、「垂心H」の「ベクトルによる重心座標表現」は
(→PH)=1/{detJ(3)}[yzw(→PA)+xzw(→PB)+xyw(→PC)+xyz(→PD)]・・・(3.1.1)
で与えられる。
「命題4.2]
「垂心四面体ABCD」に対して6辺を上の(1.1.7)のように
a,b,c,d,e,fとし、 x,y,z,wを(1.1.8)~(1.1.11)のようにおく。
このとき yzw+xzw+xyw+xyz=detJ(3) ・・・(4.2.1)
が成立する。 』
を発表して、「証明」は後から発表した。
一方 △ABCの「垂心H」については事実を、もっと早く2008.9月の始めに発表して
『
「内積」を用いた表示では、
(→PH)={1/(4・S^2)}×{yz(→PA)+xz(→PB)+xy(→PC)}・・・(3)
ここに、
x=((→AB),(→AC)),y=((→BA),(→BC)),z=((→CA),(→CB))である。
ただし、((→AB),(→AC))は(→AB)と(→AC)の「内積」を表すものとする。
そして yz+xz+xy=4(S^2) ・・・(4)
が成立するので、(3)は「ベクトルによる重心座標表現」である。
また、Sは三角形ABCの面積である。』 とした。
☆ この、△ABCの「垂心H」の「ベクトルによる重心座標表現」の公式の「証明」が
「まだ現在発表してない」が、容易である。もう少し待っていただきたい。
◎さて、この「垂心四面体」の「垂心」と三角形の「垂心」の2つのことを得た時点で
次のことに気が付かねばならなかった。
つまり、「垂心H」の「ベクトルによる重心座標表現」において、
x=((→AB),(→AC))=((→AB),(→AD))=((→AC),(→AD)) ・・・(1.1.8)
y=((→BA),(→BC))=((→BA),(→BD))=((→BC),(→BD)) ・・・(1.1.9)
z=((→CA),(→CB))=((→CA),(→CD))=((→CB),(→CD)) ・・・(1.1.10)
w=((→DA),(→DB))=((→DA),(→DC))=((→DB),(→DC)) ・・・(1.1.11)
とおいたのだから、△BCD ,△ACD ,△ABD ,△ABCの「垂心」を
それぞれ、H_A ,H_B ,H_C ,H_D、また面積をそれぞれ S_A ,S_B ,S_C ,S_D
としたとき、例えば
△BCDについては 頂点がB,C,Dであって(1.1.9)から((→BC),(→BD))=y ,
(1.1.10)から((→CB),(→CD))=z ,(1.1.11)から((→DA),(→DB))=wとなっているから、
三角形の「垂心」の表示の公式より、
(→PH_A)=1/{4(S_A)^2}×{zw(→PB)+yw(PC)+yz(→PD)}・・・(*)
かつ、(*)はベクトルによる重心座標表現だから、
4(S_A)^2=zw+yw+yz ・・・(**) となるわけである。
以上のことより , 次の[定理5.1]が成立するのである。
[定理5.1]
垂心四面体ABCDにおいて、BC=a,CA=b,AB=c,AD=d,BD=e,CD=f ・・・(5.1) とおき、
x=((→AB),(→AC))=((→AB),(→AD))=((→AC),(→AD)) ・・・(5.1.1)
y=((→BA),(→BC))=((→BA),(→BD))=((→BC),(→BD)) ・・・(5.1.2)
z=((→CA),(→CB))=((→CA),(→CD))=((→CB),(→CD)) ・・・(5.1.3)
w=((→DA),(→DB))=((→DA),(→DC))=((→DB),(→DC)) ・・・(5.1.4)
とおく。
また、△BCD ,△ACD ,△ABD ,△ABCの「垂心」をそれぞれ、H_A ,H_B ,H_C ,H_D、
また面積をそれぞれ S_A ,S_B ,S_C ,S_Dとするとき、
(1) PをE^m内の任意の点とすれば、「垂心四面体ABCD」の「垂心H」の
「ベクトルによる重心座標表現」は
(→PH)=1/{detJ(3)}[yzw(→PA)+xzw(→PB)+xyw(→PC)+xyz(→PD)] ・・・(5.1.5)
detJ(3)=(3!V)^2=(6V)^2=yzw+xzw+xyw+xyz ・・・(5.1.6)
(2) PをE^m内の任意の点とすれば、「垂心四面体ABCD」の4つの三角形の面の
「垂心H_A」,「垂心H_B」,「垂心H_C」 ,「垂心H_D」の「ベクトルによる重心座標表現」も
求まり、
(→PH_A)=1/{4(S_A)^2}[zw(→PB)+yw(→PC)+yz(→PD)] ・・・(5.2.1)
(→PH_B)=1/{4(S_B)^2}[zw(→PA)+xw(→PC)+xz(→PD)] ・・・(5.2.2)
(→PH_C)=1/{4(S_C)^2}[yw(→PA)+xw(→PB)+xy(→PD)] ・・・(5.2.3)
(→PH_D)=1/{4(S_D)^2}[yz(→PA)+xz(→PC)+xy(→PC)] ・・・(5.2.4)
(3) 面積について
4(S_A)^2=zw+yw+yz ・・・(5.3.1)
4(S_B)^2=zw+xw+xz ・・・(5.3.2)
4(S_C)^2=yw+xw+xy ・・・(5.3.3)
4(S_D)^2=yz+xz+xy ・・・(5.3.4)
☆ したがって、前に「四面体の垂心・外心の重心座標表現の具体例」をあげたときに、その
「垂心・外心」またその体積 Vのみなず、
側面の「4つの三角形の面積」及び「4つの垂心」もすぐ簡単に計算できたわけであった。
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