「垂心四面体ABCD」の各頂点から対面の三角形に下した垂線の足はその「三角形の垂心」2008.11.2(日)
(1) 例によって 、BC=a ,CA=b, AB=c,BD=e ,CD=f とし
x=([→AB],[→AC])=([→AB],[→AD])=([→AC],[→AD]) ・・・(1.1.1)
y=([→BA],[→BC])=([→BA],[→BD])=([→BC],[→BD]) ・・・(1.1.2)
z=([→CA],[→CB])=([→CA],[→CD])=([→CB],[→CD]) ・・・(1.1.3)
w=([→DA],[→DB])=([→DA],[→DC])=([→DB],[→DC]) ・・・(1.1.4)
とおく。detJ(2)は、(→AB)と(→AC)のGramの行列式であり、detJ(3)は
(→AB),(→AC),(→AD)のGramの行列式とする。detJ(2)>0 ,detJ(3)>0 である。
(2) 表題の事実は、「三垂線の定理」を用いて「証明」ができる。
すなわち 次の「命題1.1」が成立する。
[命題1.1]
「垂心四面体ABCD」において、頂点Dから、対面の△ABCに下した「垂線の足」K_Dは△ABCの
「垂心H_D」になる。
「証明」
まず、K_D≠Aのときを考える。このとき、 BC⊥A(K_D) ・・・(1.1.5)を示そう。
BC⊥D(K_D) ・・・(1.1.6)である。また「垂心四面体ABCD」の条件 BC⊥DA から
BC⊥△DA(K_D) よって BC⊥A(K_D) [注意:これが「三垂線の定理」の1つの型である]
同様にして、K_D≠B ,K_D≠C のときは、
CA⊥B(K_D)・・・(1.1.7), AB⊥C(K_D)・・・(1.1.8)
(a) ゆえに、K_Dが△ABCの頂点 A,B,Cのどれにも一致しないときは、(1.1.5)と(1.1.7)(1.1.8)
から、点 K_Dは△ABCの「垂心H_A」になる。
(b) K_Dが△ABCの頂点 A,B,Cのどれかに一致するとき、例えばK_D=Aのとき、
K_D≠B,かつ K_D≠Cとなるから、上の(a)から
CA⊥(BK_D)・・・(1.1.8), AB⊥(CK_D)・・・(1.1.9がいえている。
K_D=Aだから これらは、 CA⊥BA ,AB⊥CA となる。
つまりAB⊥AC よって△ABCは、∠BAC=90度の「直角三角形ABC」になる。
この「直角三角形ABC」の「垂心H_D」は明らかに、「頂点A」である。
K_D=Aだから、頂点Dから、対面の△ABCに下した「垂線の足」K_Dは△ABCの
「垂心H_D」=「頂点A」になる。
なお、このとき、DK_D⊥△ABCより、DA⊥△ABCとなる、よって、K_D=Aのときは
この「垂心四面体ABCD」は「A-3直角四面体」となり、その「四面体」としての
「垂心H」=「頂点A」であることも分かる。
(「命題1.1」の証明終わり)
☆ この「命題1.1」の証明の(b)の部分を
[命題1.2]として掲げておこう。
[命題1.2]
「垂心四面体ABCD」において、頂点Dから対面の△ABCに下した「垂線」の足が
△ABCの「頂点Aに一致」
⇒ この「垂心四面体ABCD」は「A-3直角四面体」である。つまり、
「垂心四面体ABCD」の「垂心H」は「頂点A」である。
☆ さて、
「命題1.1」は、「頂点D」が「垂心四面体ABCD」の「垂心H」と異なるときには
「ベクトルによる重心座標表現」の公式から、計算によって示すことができる。
まず、次のことに注意しよう。前にBlogの「重心座標表現の具体例_第5(3直角四面体の場合)」で
述べたことの否定命題を考えて
[命題1.3]
「頂点D」が「垂心四面体ABCD」の「垂心H」と異なる
⇔ D≠H ・・・(1.3.1)
⇔ w≠0 ・・・(1.3.2) (wは上の(1)の(1.1.4)のものである)
⇔「垂心四面体ABCD」は「Dー3直角四面体」ではない ・・・(1.3.3)
◎これを用いて「頂点D」が「垂心四面体ABCD」の「垂心H」と異なるときには、
計算で「命題1.1]を「証明できる」
[命題1.4]
「頂点D」が「垂心四面体ABCD」の「垂心H」と異なる「垂心四面体ABCD」に
おいて、「頂点D」から対面の△ABCに下した垂線の足K_Dは、
△ABCの「垂心H_D」である。つまり直線DHと△ABCを含む平面との交点は
△ABCの「垂心H_D」である。
「証明」
「垂心四面体ABCD」の「垂心H」の「ベクトルによる重心座標表現」は
任意の点P∈E^m (mは3以上の自然数)に対して
(→PH)=1/{detJ(3)}[yzw(→PA)+xzw(→PB)+xyw(→PC)+yzw(→PD)]・・・(1.4.1)
また、△ABCの「垂心H_D」のベクトルによる重心座標表現」は△ABCを
考えているから、 x,y,zを用いて
(→PH_D)=1/{detJ(2)}[yz(→PA)+xz(→PB)+xy(→PC))] ・・・(1.4.2)
ここに detJ(2)は、(→AB)と(→AC)からできるGramの行列式であって、
S_Dを△ABCの面積としたとき、detJ(2)=yz+xz+xy=4(S_D)^2 ・・・(1.4.3)
であるから、
(→PH_D)=[yz(→PA)+xz(→PB)+xy(→PC))]/(yz+xz+xy) ・・・(1.4.4)ともなる。
さて、D,H,K_Dは一直線上にあるから、(→DH)=(1-t)(→DK_D) ・・・(1.4.5)
となる実数 tがただ一つ存在する。
κ=(yzw)/{detJ(3)} ,λ=(xzw)/{detJ(3)} ,
μ=(xyw)/{detJ(3)} ,ν=(xyz)/{detJ(3)} ・・・(1.4.6)として、
(1.4.1)は(→PH)=κ(→PA)+λ(→PB)+μ(→PC)+ν(→PD) ・・・(1.4.7)
かつ κ+λ+μ+ν=1 ・・・(1.4.8) となる。よって
t=ν ・・・(1.4.9)となり、
(t=ν ・・このことについてはまた別の機会に示す。垂心Hに限ったことではない。
重心座標表現において一般的に成り立つことである 。 )
(1.4.5)は
(→PH)-(→PD)=(1-ν){(→PK_D)-(→PD)}
⇔ (→PH)=ν(→PD)+(1-ν)(→PK_D) ・・・(1.4.10)
ゆえに 垂心Hは、線分DK_Dを (1-ν):νの比に分ける点である。
よって D≠H ⇔ 1-ν≠0 ⇔ ν≠1 ・・・(1.4.11)である。
(1.4.10)と(1.4.7)から
(1-ν)(→PK_D)=(→PH)-ν(→PD)=κ(→PA)+λ(→PB)+μ(→PC)
ここで D≠H より、ν≠1 よって
(→PK_D)=1/(1-ν)[κ(→PA)+λ(→PB)+μ(→PC)] ・・・(1.4.11)
(1.4.6)から κ+λ+μ=1-ν≠0 で(1.4.11)は
(→PK_D)=[κ(→PA)+λ(→PB)+μ(→PC)]/(κ+λ+μ) ・・・(1.4.12)
となる。(1.4.6) から
κ+λ+μ=(yzw+xzw+xyw)/{detJ(3)}=w(yz+xz+xy)/{detJ(3)} ・・・(1.4.13)
また κ(→PA)+λ(→PB)+μ(→PC)
=1/{detJ(3)}[yzw(→PA)+xzw(→PB)+xyw(→PC)]
=w/{detJ(3)}[yz(→PA)+xz(→PB)+xy(→PC)] ・・・(1.4.14)
よって (1.4.12)は w≠0 から
(→PK_D)=w[yz(→PA)+xz(→PB)+xy(→PC)]/{w(yz+xz+xy)}
=[yz(→PA)+xz(→PB)+xy(→PC)]/(yz+xz+xy) ・・・(1.4.15) となった。
(1.4.4)と(1.4.15)から
(→PH_D)=(→PK_D) ⇔ K_D=H_D
ゆえに 「頂点D」が「垂心四面体ABCD」の「垂心H」と異なる「垂心四面体ABCD」
において、「頂点D」から対面の△ABCに下した垂線の足K_Dは
△ABCの「垂心H_D」であることが、計算で示された。
(証明終わり)