残ったもの、遺ったもの

遺産相続でもめているって
友人が愚痴をこぼす

仲の良かった兄たちとも
ギクシャクし
義姉とは話もしなくなったらしい

それに比べると
遺産と言えるものが何にもない
うちの場合
姉ともめることは
この先もないに等しい

幸いかな
貧しきもの
って気分

父は
お人好しがたたって
母に言わせると
商売などには全くむいてなかったと
未だに愚痴をこぼすけど
あっさりと人に騙されて
会社も家も何もかもなくしてしまった
ちょうど、いまの私位の年の時だったな

それから
しばらく落ち込んで
傍目から見ると自殺するんじゃないかと
腫れものに触れるように
ヒヤヒヤする数年があり
ふっっと諦めがついたのか
働けるうちは日雇いの仕事をして生活をした

今の彼は
脳梗塞後遺症の体で
テレビ番組を見て笑っている
昔の行動範囲とはかけ離れた
狭い世界で生きている

父は
何も遺せない
残さなかったと思っていたけれど
最近
父が私に残したものに
気がついた

病気をしない体
頑張りの効く強い体だ

それがあるお陰で
今の私は強く生きている

震災で何もかもなくした人も
実は
自分のなかに
親からもらった何かが遺産として
残っていると気付いて欲しい

それは
お金では買えない
何にも変えられない
貴重な遺産

その遺産を大事に
今日も生きて欲しいなあと
心から願っている