生きてるだけでもうけもん♪Today is a Gift.

昨日は過ぎたこと、明日は未知のこと、今日はもうけもの、それらはみんな、神様の贈り物。
今日の想いを明日に繋げるために。

父が警察にお世話になった話

2012年04月25日 | father
父は毎日ふらっと散歩に出る
自宅にいても
テレビはつけっぱなしで
思いつきで出かけてしまうことがある
と言っても車の運転は昨年末で放棄したので
歩くしかない
ちょっと歩いては他所様の屏に持たれたり
低い階段で座り込んだりして
休憩している
ちょっとワケのわからない老人である

それでも自宅の周りに幾通りものコースを見つけ
あっちこっちと歩いて帰ってくる

その父が母と一緒に
三週間、関東の姉のところに遊びに行った
そこで父は、生まれて初めての経験をして帰ってきた

警察に保護され
“不審者”として身柄を確保、されちゃったのである

終わってみれば笑い話と言いたいところだけど
実際のところ、あまり笑えない

いつものようにフラッと父は散歩にでかけた
姉の家はひと昔前の、山を切り開いて造成した新興住宅地にある
どの家も同じ時代に建てられ、通りによっては左右対称の同じデザインの家が並んでいたりする
そんな道で初めての散歩
父が迷わない訳がない

しかも造成地、坂道が多く
疲れた父は坂の途中で足が前に進まなくなり座り込んでしまっていた

そこを通りかかった老婦人が親切にも声をかけてくれた
まではよかったのだけど
父は生粋の阿波っ子、方言一本でしか話さない
その上、脳梗塞を患ったせいで口がもつれて慣れないと
父の言葉を聞き取るのは難しい

ため息の出る現実である

そこで、老婦人は親切にも警察に連絡をしてくれて
父は警察に保護された

問題はそこからである
名前を聞いてもわからない
おうちを聞いてもわからない
わんわんわわ~ん、モゴモゴ話のおじいさん・・・
しかも父が持っていた財布には
ず~っと昔にやってた事業の名刺が何種類も入っていて
それらの電話番号は全て
“現在使われておりません。番号をご確認の上・・・”ってメッセージが流れるし
どこから来たと聞くと「四国」とか言うし
怪しい詐欺まがいのことをしている男かもと疑われてしまった

そこで、一旦、“留置所”に入れられてしまった
なんてことでしょう

一方、暗くなっても家に戻ってこない父を心配した
母と姉はあちこち探したけれど見つからない
最後の手段で警察に連絡をした

そしたら
そんな人はいない・・・けど
違う地区に変な男が保護されているという情報がはいり
慌てて駆けつけた

警察では、怪しい男を姉のところに連れてくるのではなく
姉が、留置所に入って、その男で間違いないかを確認するという方法
そして、その男は父だった

これでめでたしめでたしだと良いのだけど
なぜ、この男は所在不明の名刺を何種類も持っているのか
四国にいる人間がどうしてここにいるのかとか
散々質問をされた
認知症の人には下着に名前と連絡先を書いておくようにと言われ
開放された時には、夜遅くなっていた
父を連れて帰るために
姉はいろいろ書類に記入し、拇印を押さされたとずっと文句を言っている

姉の不快感も気の毒だと思ったが
何よりも父がショックを受けている様子がわかり
ため息がでた

父は恐らく、軽く脳梗塞性の認知症ではあるが
住み慣れた場所では迷わないし、
今のところちゃんと散歩からもひとり帰って来られる

見知らぬ土地で迷ってしまい
足腰が弱っているから歩けなくなって休憩していて
こんなことになってしまい
怖かっただろうなあ、不安だっただろうなあ

姉の家を訪ねた私が姉からこの話を聞いているとき、
父がそれを思い出して怯えている印象を受けた
とっても嫌な経験だったのだろう

これで一段階、痴呆症が進むのじゃないかと私は不安になった
早く家に連れて帰らないと
また、嫌なことを思い出させるのじゃないかって

幸い、家に戻ると
父は機嫌よさげに、近所の散歩に出かけている
そして既に警察にお世話になったことを忘れている気がする
私も一切、そのことは言わない

いいこともあまり覚えていないのかもしれないけれど
嫌なことをすっと忘れられたら
それはそれで楽かもしれない

人は年を取ると最近起こった、自分にとってどうでもいいことは
どんどん忘れていくものらしい
父もほとんどのことを何も覚えていない

そんな父を見ていると、今日を生きるのに
あまり多くの思い出も必要ないかもしれないと
思うようになった






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1 コメント

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Unknown (Hi-chan)
2012-04-26 12:08:33
この警察の扱いはひどいですね。

犯罪も何も証明されないのに、とりあえず留置所にいれる。しかも引き取りに来た人を留置所に入れて面会させるというのは人権にかかわることだと思います。

話は戻りますが、忘れてしまうということは大切なことだと思います。赦すけれど覚えているのは本当の赦しではなくて、完全に忘れてしまうことが本当の赦し。そんなお父様を大切にしてください。
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